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86 『もちろん?』

 ミカちゃんと姫ちゃんを見送ればもういい時間です。

 とはいえ、今日のログアウト時間まではまだ少しあるので生産作業に励むことにしましょうか。


 あ、でもその前に決めなければいけないことがあったのを思い出しました。

 そう、『影の大結晶』の処遇です。

 レシピ自体はすでに運営が配布済みですので問題ないのですが、掲示板でも『物体X』先生に来訪された人が多いことでちょっとした話題になっている素材なのです。


 レシピはいくつかあって、基本的には現在製作されている特攻のついた装備や消費アイテムの上位を製作できるようです。

 私が目をつけているのはその中でも消費アイテムで、『魔術陣』型の物です。

 まぁ要するに新しい『魔術紋様』が描きたいというだけなんですけどね!


 レシピに描かれている『魔術紋様』自体はそれほど難しいものでもないです。

 私にとっては、という注釈がつきますけど。


 ですので癒やしとしてはちょっと足りない感じですけど、何より期間限定の『魔術紋様』というのが惹かれる理由ですね。

 みんなだいすきですよね、期間限定。

 イベントアイテムを使っているのですから、イベント中の期間限定なのは当然です。

 もしかしたらイベント後も回収されずに残るタイプのもあるかもしれませんが、これは異変の1つとはいえイベントですからね。

 おそらくはイベント終了時に解決されるはずです。


 なので、まだ期間はあるのですが、イベント中にはやっておきたい事柄の1つです。

 ただ、現状では『影の大結晶』は結構なレアですので、なかなか買い取れないのが残念です。

 これを持ち込んできたのは以前【開拓者組合(ギルド)】で挨拶された『ゴスペル』という『クラン』の人達だそうです。

 ボスは強いとはいえ、倒せないほどではないので競争率がかなり高いみたいです。

 遭遇するには運も必要なのでミカちゃん達もまだあまり会えていないみたいです。

 その中でも『影の大結晶』のドロップを勝ち取るのは更に運が必要です。

 確定でドロップするわけではないようですので。

 まぁそれでも倒せばある程度は出ているみたいですけどね。


 でなければ掲示板でたくさんの『物体X』先生の来訪で話題になるわけがないですし。

 そんなわけで、現状ではなかなか手に入らないこの『影の大結晶』。

 『魔術陣』に使う事は決めましたが、『物体X』先生が来訪されるのは勘弁願いたいです。

 『魔術紋様』的には大丈夫だとは思いますが、ちょっと怖いですね。


 まぁこれも挑戦。

 一種の開拓です。

 今まで培ってきた私のペン捌きを信じましょう。


 さぁかもーん! 私の新たな癒やしちゃん! ひゃっほー!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 さてこちらをご覧ください。


 ====

 魔術陣:破影結界

 アイテム/★7/使用回数15回

 ====


 『魔術陣』で★7はびっくりですね。

 まぁ『影の大結晶』が★6の品なので妥当ともいえるかもしれませんが。

 もちろん『魔法紙』も現在製作できる最高ランクのものを使用していますが、大部分は『影の大結晶』のおかげでしょうね。


 あ、いや、もちろん私の腕とスキルのおかげもありますよ!


 無事『物体X』先生が来訪されることもなく完成したのはいいのですが、効果がまったくわかりません。

 配布されたレシピにも効果までは書いてませんからね。

 詳細欄にも使用すると「使用者を中心として『破影結界』が発生する」としか書かれていません。

 その『破影結界』の効果を知りたいのですけどねー。


 無論、各スキルの『アーツ』にもこのような名前のものはありません。

 結界系のスキルだってまだ未確認ですし。

 まぁ予想はできます。

 多分この結界の中ではイベントMOB(モンスター)が弱体化、もしくは専用装備、アイテムなどの効果が上昇するのでしょう。

 使用回数も15回とそこそこありますので、検証するのも十分に可能でしょう。


 問題は使い所ですね。

 現状ではボス格のイベントMOB(モンスター)だって、普通に倒せています。

 まぁもちろんそれなりの強さがないと苦戦は必至ですし、対策もなければ全滅の危機すらありえます。

 それでもイベント中ですからね。

 戦闘系プレイヤー開拓者ならほぼ全員が対策をしているといっても過言ではありません。

 今はもうすでにたくさんの対策アイテムが販売されていますからね。

 イベント当初とは違うのですよ。


 それに開拓された新しいエリアにイベントMOB(モンスター)が出現していないのも原因でしょう。

 開拓されたエリアの方がMOB(モンスター)も強い傾向があります。

 必然的にそのフィールドエリアの雑魚MOB(モンスター)が影を纏って出現するイベントMOB(モンスター)が相手であれば、元々のMOB(モンスター)が強ければそれだけ厄介になりますからね。


 掲示板でも、そろそろイベントに慣れてきた頃なのでここらで何かあるのではないかと囁かれています。

 つまりはまだ出現していないフィールドエリアへのイベントMOB(モンスター)の進出ですね。


 そうなってくると求められてくるのは開拓されたエリアに出現する強MOB(モンスター)がイベントMOB(モンスター)化した際の対策でしょう。

 ただでさえ強いのに更に強化されるわけです。

 おそらくそこで『魔術陣:破影結界』の出番なのでしょう。

 レアアイテムで製作できるものですので期待は大きいです。

 もしイベントMOB(モンスター)になった際に纏う影を無効化できれば、おそらくですがそれだけで無属性攻撃への耐性をある程度減らせるのではないでしょうか。

 まぁ現状では殆どの人が特攻付きのイベント装備か、属性による攻撃を使っていますけどね。

 でもイベント装備はあまり強くないのが玉に瑕です。

 属性攻撃もスキル頼みが現状です。

 ミカちゃんのように属性付きの武器を所有しているのなんて稀もいいところですからね。

 たぶん、【ザブリナ王国】のプレイヤー開拓者ではミカちゃんだけなんじゃないでしょうか?


 そんなわけでどうしましょうかね。

 相場を見てみると結構な額の品物です。

 まぁそれだけ効果が期待できるとは思いますので、とりあえず身内にお知らせしてみましょう。

 早い者勝ちということで。


 最近、身内用の掲示板の使用頻度もめっきり下がってますからね。

 たまには使いましょう。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ほほー。これが例の」

「掲示板に書いた通り効果はわからないからね?」

「もんだいなっしん!

 なんたってあの『影の大結晶』が材料なんでしょ?

 だったら他のやつと同様期待がもてるわ!」

「でも支払いはできるの? お金あるの? レンタルもつけもだめだよ?」

「ふふふ……。もちろん!」

「もちろん?」

「ないです! これ買い取ってください!」

「まったくもー……って『影の大結晶』じゃん」

「ゲットしました。結構高く売れるんだよねこれ?」

「あーうん。でも『魔術陣:破影結界』はそれ以上に高いよ? 素材として使ってるわけだから」

「まぁそうよね。でも大部分は減るじゃん?」

「そうだねー。これくらいかな」

「おおー! すごい減った! ありがとー! これなら払える!」


 えぇ、購入したのは他でもない。

 ミカちゃんでした。


 ミカちゃんは二刀流で属性武器を2本所持していますが、PT(パーティ)メンバーまではそうはいきません。

 火力を担当しているミカちゃんといえど、1人で全部を倒すのは難しいですからね。

 特効武器を使っても、ミカちゃんほどの火力は出ませんし、無属性耐性がなければスティール系の武器を使った方が圧倒的に火力がでます。

 なので耐性を無効化できるかもしれない『魔術陣:破影結界』は期待の逸品というわけです。


 今回はミカちゃんの個人的な買い物でもないですし、『影の大結晶』の買取もしたので即金で支払えたようです。

 この調子で『影の大結晶』をたくさん確保できれば、ミカちゃんの借金もすぐ……いえ、遠くないうちに返せるんじゃないでしょうか。

 まぁ正確には借金とは少し違いますけど。


 ミカちゃんへの販売も終わったので今日はもうログアウトですね。

 明日ログインしたら総資金のチェックをして上級設備への更新に向けて本格始動したいところです。


 『魔導炉』を上級設備に出来れば、スティール系装備を★4で製作できるようになります。

 そうしたらもう『オプション』は目の前です。

 『オプション』が付けばさらに値段が上がりますので、他の設備更新資金を貯めやすくなります。


 現状ではまだまだスティール系装備は補充したらした分だけすぐに売れる状況です。

 そこに『オプション品』が登場すればさらに売れ行きは伸びるでしょう。

 まぁ製作できる個数は多くないのでちょっと表現が違うかもしれませんが。

 とにかく利益は増えるのは確定です。

 有用な『オプション』なら倍率ドン!

 実に楽しみですね!


 でもその前には上級設備を購入するための試験があります。

 もちろん今の私なら合格間違いなしでしょうけど、やっぱり試験と聞くと緊張してしまいますよね。

 特にあまり学校に行けなかった私は試験やテストの経験が少ないです。

 なのでミカちゃんがよく愚痴っていたのを聞いていましたから、怖さ倍増というか、想像が膨らんでしまっているのです。


 でも怖さだけじゃないんですよね。

 だって仕方なかったとはいえ、普通の生活を送れなかった私ですので、憧れというものがあります。

 学校のテストとはちょっと違うとはいえ、それはソレ。


 怖いのと同時に楽しみでもあるのです。

 明日が待ち遠しいですね!



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