81 『――手に入らないなら作ればいいじゃない!』
現実では夏休みが終わって初めての週末ともあり、今日は【ふろんてぃあーず】のプレイヤー人口もかなり多いみたいです。
さすがは世界初のVRMMOですね。
でもそんな混雑しているだろう状況とは無縁なのが私達生産者です。
最初の頃よりはずっと増えたとはいえ、まだまだ戦闘系プレイヤー開拓者の方が圧倒的に多いのが実情です。
生産系プレイヤー開拓者は戦闘系プレイヤー開拓者の1割もいないんじゃないですかね?
まぁ掲示板や『Works』のみんなとの情報交換の際に小耳に挟んだ程度の情報ではありますので、確度は不確かなものですけどね。
今も尚、新規のプレイヤー開拓者は増え続けています。
そのほとんどが戦闘系なのですからそう見えるのも仕方ないでしょう。
そんな少ない生産者の中でも個人の工房を持つのはどうやらまだ私だけのようです。
個人の、と前置きしたのは『クランメンバー』で共同で工房を購入したところが出てきたからです。
【レンタル生産施設】では初級の設備までしか使えませんからね。
でも中級以上の設備も、工房の購入も、個人ではかなり難しいと思います。
そこで最近増えてきたプレイヤーの『クラン』などで共同で購入するのです。
個人工房ではありませんが、十分にその恩恵には預かれるでしょう。
生産者が少ないとは言いましたが、『クラン』専属の生産系プレイヤー開拓者は結構います。
私のお店『バケツさんのお店 Lily』の繁盛具合を見てもわかるように、高い性能の装備は誰もが欲しがるものです。
お店に補充する際にはブログで告知をしていますが、現在レシピが判明している最高峰の装備――スティール系装備は製作するのに時間がかかるため、数があまり出来ません。
そのため並んでもなかなか手に入れる事ができない状況が続いているのです。
――手に入らないなら作ればいいじゃない!
今度もこういった状況が出てくるのはまず間違いありません。
ならば共同でお金を出してでも工房を確保することは『クラン』にとっても有益です。
生産作業にとって設備はとても大事な要素ですからね。
中級の設備があるとないとでは大きく変わってきます。
まぁ設備も工房もどちらも大変お金がかかるものですから、例え共同出資でもなかなかに大変な話です。
掲示板情報でもまだ2つの『クラン』が専用の工房を購入した話しか出ていません。
設備までは手が回らない様で、初級のままみたいですけど。
それじゃあんまり意味が無いんじゃないかとも思えますが、まぁ私も自分の工房を持てた時はとても嬉しかったものです。
例え共同出資でもそれは大して変わらないと思います。
それに少しスペースを用意すれば十分に『クランホーム』として機能させることは出来ると思います。
集まったり、話したりするにもお店に入るか【開拓者組合】の会議室を借りるのは面倒です。
『クランコール』や『PTコール』を使えばそれぞれ複数と内密な話は可能ですが、やはり屋外で会議などをするのは抵抗が多い人が結構いますからね。
私だって女子会を屋外でやるのは気が進みません。
お店でやるにも個室を借りて行ったりしていましたからね。
それが今では私の工房のリビングスペースで毎回行えています。
やっぱりこういった拠点となる物件を所有するのは色んな意味で利点があるんですよね。
まぁもちろん工房なので7割くらいのスペースは生産設備用のスペースですけどね!
……まだ将来の設備設置用の空きスペースがたくさん空いている状態ですけど。
でもスティール系装備の売上のおかげで残っていた中級設備は全て更新できました。
やはりスティール系装備はいいですね。
大儲けですよ!
なにせまだプレイヤー開拓者では私だけしか製作できていませんからね!
たまに★2や★1のも露店で販売されているようですが、★3未満では性能が著しく下がりますからね。
それだったらアイアン系装備の『オプション品』を購入した方が有益なくらいです。
ちなみにスティール系装備での『オプション品』ですが、未だに★4すら出ていません。
『鍛冶職人』は順調に成長しているのですけどね。
★3のスティール系装備が安定して製作できるのが思っていたより早かっただけに、『オプション品』が遠く感じられます。
それにまだ先の話ですが、スティール系装備の次の段階の装備レシピも探さなければいけません。
ですが、残念ながら図書館やNPCクエストの報酬では未だに発見できていません。
図書館は2階の閲覧許可をもらっていますが、読むには『言語・改』が必要なのでもう少しかかりそうです。
NPCクエストの方も、ケデリック商会からの依頼や向田さんから教えてもらった例の鍛冶師5人から継続的に受けていたりします。
例の鍛冶師5人からの最初の報酬が生産道具の中級レシピだっただけに、期待したいところですが現状では報酬には出てきません。
その報酬も高度なAIを積み、【ふろんてぃあーず】で実際に生きている彼ら相手ならば、通常のゲームとは違って交渉が出来ます。
毎回色々とチャレンジはしているのですが、なかなか難しいみたいです。
ですが私は諦めませんよ。
生産には設備も重要ですが、道具だって重要なのです。
もちろん一番重要なのはスキルLvと素材のランクですが、道具のランクを上げる事はそれらに続いて非常に重要です。
ですので今後も交渉は続けていくことになるでしょう。
もし彼らがレシピを持っていなくても、誰かレシピを持っている人を紹介してもらう事が出来るかもしれませんしね。
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いつものようにお店に補充するスティール系装備を製作した後は自由時間です。
とはいってもあまり数が作れないスティール系装備ですので、それなりの数を揃える頃には大分時間もかかってしまいます。
その分自由時間が減ってしまうのが少し悲しいですね。
まぁ製作数を減らしてもいいんですが、独占状態の今がチャンスですからね。
今のうちにしっかり稼いで上級の設備更新に向けて貯金です!
自由時間は好きなことをするわけですが、現状の小目的は『言語・改』の取得ですね。
図書館の2階へとチャレンジしたいわけです。
『言語』のLv自体はすでに100ですので、あとはSPさえどうにか出来ればいいんですが、色々と進化待ちだったスキル達を進化させてしまって相変わらずのSP不足です。
現在のスキル構成はこんな感じです。
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メイン
細工職人Lv32/裁縫・改Lv100/織・改Lv12/商人・改Lv100/道具製作・改Lv97
鍛冶職人Lv51/魔法陣Lv20/魔力操作・改Lv100/魔力強化・改Lv100/魔力回復力強化・改Lv100
召喚Lv100
サブ
皮革・改Lv67/木工・改Lv66/錬金術・改Lv87/
言語Lv100/魔術言語・改LvLv72/解読・改Lv31
発見・改Lv17/集中・改Lv17/人形製作・改Lv24
採取Lv88/採掘Lv81/察知Lv71/隠密Lv67/魔導糸手袋Lv45
SP3
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進化させたスキルは『魔法陣』『織・改』『発見・改』『集中・改』『細工職人』『解読・改』『人形製作・改』と結構大量です。
頑張ってSPを稼いだ甲斐がありました。
特に『魔法陣』と『細工職人』は3段階目のスキルです。
『鍛冶職人』同様に進化後の性能アップは著しいものがありました。
今までの積み重ねもあって結構早く描けていた『魔術陣』が『魔法陣』に進化したおかげで更に早く綺麗に描けるようになったのです。
私の癒やしでもある『魔術紋様』の複雑怪奇な構図をここまで早く、綺麗に描けるようになったのはなんとも言えぬ快感です。
『細工職人』でも同様で、素材に施す細工の数々が実に素早く綺麗に仕上がるようになりました。
もしかしたら金属素材に『魔術紋様』を描くのもかなり楽になっているかもしれません。
以前は簡単なものでも2,3時間はかかっていましたからね。
『魔法紙』に描くなら5分もかからないのに、です。
使用回数が劇的に増加するのですから仕方ない話ではありますけどね。
その他のスキルは2段階目なので、今まで通りに性能の向上がはっきりわかるものでしたが、3段階目に比べればやっぱり劣りますね。
これは仕方ないことです。
でも素材加工でランクなんかがはっきりと向上するので、やっぱり進化させてよかったです。
『発見・改』や『集中・改』は常時使用しているスキルなので、進化させて恩恵が一番あったかもしれないスキルですね。
かもしれない、というのがポイントで、その性質上どうしても底上げ的な役割ですからね。
他のスキルがあってこその『発見・改』と『集中・改』です。
でもやっぱり進化させてよかったと思えます。
『発見・改』で新たにレシピを得られたのも嬉しいです。
ただ問題はスティール系装備の複合装備なんかのレシピなだけで、さらに上のレシピなどは見つかっていないことですね。
そう、この辺の解消のためにも図書館の2階、つまりは『言語・改』がいるのです。
でも見てもわかるように残りのSPはたったの3です。
『言語・改』に進化するにはSPが15必要ですので、あと12……。
NPCクエストの報酬にSPが出てくることは滅多にありません。
ケデリックさんにオークション用の出品物で『ダークショートソード』を納品した時が最後でしょうか。
まぁそのおかげでたくさん進化させることができたんですけど。
途中で『異形なる影の下僕』が出現して中止になったオークションですが、私が納品した『ダークショートソード』はその前に競りが行われていて、結構な額で落札されたそうです。
中止にはなりましたが、ケデリックさんもホクホク顔で上機嫌でしたのでよかったです。
私にも手数料を引いた額が入ってきたので美味しかったですけど、スティール系装備を販売している今ではそれほど大きな額ではないように思えてしまって困りますね。
というわけで、目指せ『言語・改』ですよ!




