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76 『ちゃんと交渉しないからそうなるんですよ』

 いつも通りに親方さんのところに先に寄って、ナイスミドルな執事さんが応接室まで案内してくれました。

 普段恥ずかしくてお菓子などの甘い物は買えないそうなので、私が持ってくるお菓子は大人気です。

 ケデリック商会の工房の人達はみんなムキムキマッチョですからね。

 ケーキ屋さんとかは入りづらいのだそうです。

 そんなに好きなら気にしないで買えばいいと思うんですけど、男心とは複雑なものらしいです。

 私にはさっぱりわかりませんね。


 出された紅茶に口をつけた辺りでケデリックさんがやってきました。

 今日も忙しそうですね。

 でもこうして時間を割いてもらっているのですからありがたいことです。

 まぁ事前にアポイントメントもとってあるのですし、当たり前といえば当たり前ですけど。


「まさかこれほどの短期間で用意できるとは思わなかったぞ。

 期待していないといえば嘘になるが、間に合わなくても仕方ないとも思っていたのだぞ?

 ではさっそくだが見せてくれ。

 無論、ケデリック商会の枠で出すのだから相応のものでなければならんぞ」

「まずは見てもらうのが一番ですのでー」

「ほぅ……。

 属性武器か。やはり『リッチの骨』を使ったか。

 しかも悪くない。『トリプルオプション品』ならばある程度内容には目を瞑れるからな。

 これがダブル程度なら今回のオークションに出すには不的確だったが」


 どうやら一応合格のようですね。

 でもやはり『ダブルオプション』ではだめだったみたいです。

 それに使った素材もばっちり当てられてますね。さすがは大店の商会長。


「トリプルなら『オプション』の内容はいいんですか?」

「さすがにあまりにも酷い内容では不的確だが、コレならば問題あるまい。

 『トリプルオプション品』は実際には使用せず、コレクションとして集めている好事家も多いからな」

「なるほどー。

 確かにオークションに参加するのは実際に使用する開拓者だけではないでしょうから、コレクションというのも納得です」

「うむ。さらにはコレクター同士の方が値が釣り上がる可能性が高くなる。

 実用性を求めるものは相当入れ込まなければある程度で降りてしまう場合が多いからな」

「予算の関係もあるんでしょうねー」


 一応の合格を貰えたので、オークションで出品側としてのルールを教えてもらったり、競りで参加する場合のルールなんかも教えてもらうことができました。

 ですが出品側でやるべきことは今回は全てケデリック商会で請け負ってもらえたので、私は競りに参加するだけです。


 【ふろんてぃあーず】は当然ゲームですので、オークションでもシステムのアシストがいろんなところで入っているようです。

 初めての参加でも問題ないように配慮されていたりするので、結構気軽に参加できそうですね。


「では後付になるが個人依頼として処理しておこう。

 これが報酬だ。受け取ってくれ。

 オークションには競りで参加するのだろう?

 こちらは全てやっておくので存分に楽しんでくるといいだろう」

「はい、ありがとうございますー」


 出来るかどうかもわからなかったので、正式な依頼として受けていたわけではなかったのですが、後付でも個人依頼として処理できるみたいです。

 渡された報酬にはちょっとびっくりしましたが。


 なんと、報酬はSP(スキルポイント)が30だったのです。

 私がSP(スキルポイント)不足で喘いでいるのもバレているのでしょうか。

 大店の商会長の情報網はやはり怖いですね。


 いや少し考えればわかるのかな?

 プレイヤー開拓者はみんなSP(スキルポイント)は不足しているはずですし。

 まぁ何はともあれ非常にありがたいことです。


 さらには出品する『ダークショートソード』が競り落とされたら、手数料を引いた額が私にも入ってきます。

 オークションの運営側へと払う分とケデリック商会へと払う分で2割くらい引かれますけどね。

 一体いくらになるのか、ちょっと楽しみですね。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ケデリック商会を後にしました。

 やはりケデリックさんは忙しいようで、話が終わるとすぐに退出してしまいました。

 私も特に残る理由もなかったので親方さんとお弟子さんに再度挨拶だけして辞去しました。


 さぁこれで大きな依頼は終わりましたね。

 NPC(ノンプレイヤーキャラ)クエストも他には受けていませんし、イベント終盤とはいえ私にはあまり関係ないイベントでしたのでラストスパートも何もありません。


 オークションまでもう少しですし、普段通りに過ごすことにしましょう。

 スティール系装備を製作し、読書をしてレシピを増やし、癒やしとして『魔術陣』を書く。

 他にも人形を作ったり、採取ツアーに参加したり色々ありますね。


 でも時間はあっという間に過ぎ去りそうな気がします。

 あ、でもその前に甘ロリさんのところに行かねば行けません。

 何せ今回のオークションは国が主催者です。

 当然ながらドレスコードというものがあるのです。


 普段通りの格好でいったら追い返されちゃいますからね。

 でも私のトレードマークである『バケツヘルム』は問題ないみたいです。

 他の人でもマスクとかつけてくる人もいるみたいですし。

 身分にとらわれずに競りを楽しむためだそうですよ?

 高い身分の人と競り合った場合に下の人が遠慮しなくてもいいような処置だそうです。

 まぁ私達開拓者にはあんまり関係ないですけどね。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


『【ザブリナ王国】/フィールドエリア『砂に埋もれし都』が解放されました』


 甘ロリさんのお店に向かう途中で突然の『女神(システム)インフォ(インフォメーション)』です。

 イベントも終盤ですし、ラストスパートの成果でしょうか。

 もちろん姫ちゃん達の成果である可能性もありますので、さっそく『コール』してみましたが、違ったみたいです。

 でも姫ちゃん達ももうすぐ開拓できるみたいなので、次々とフィールドエリアが開拓されていくようです。


 私的にも素材がどんどん増えるのは非常に嬉しいことです。

 既存の素材がランクアップするのだって当然ですがありがたいです。

 むしろ既存の素材のランクアップの方が嬉しいくらいですね。

 もしかしたらスティール系装備のランクアップも早いうちに達成できるかもしれないのですから。


 さぁ、どうしたって私に情報が入ってくるのはもう少しあとになります。

 それまでの時間を無駄にすることは出来ません。

 さっそく甘ロリさんにドレスの注文をしに行きましょう。


 事前に連絡してありますし、本人もかなり気合が入っていました。

 姫ちゃんは結構いろんな服の注文をしているみたいですが、私が服の注文をするのは実は初めてですからね。

 ある程度は自分で作れちゃいますし、あまり自分の服は作りませんから。


 でも私もドレスなんて注文するのは初めてのことなので、甘ロリさんに大部分の事は任せることになるでしょう。

 でも甘ロリさんに全部任せるとフリルだらけになりそうなので、その辺はしっかりと抑えておかないといけません。


 気合の入った甘ロリさんが相手ですので、こちらも気合を入れておかないと負けちゃいそうです。

 ドレスの注文をするだけのはずなのに、なんだかボス戦の気分ですよ。


 さぁ、甘ロリさん退治に行くとしますか!

 あ、違った注文ですよ、注文。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 時間が過ぎるのは早いものです。

 イベントも残す所あと数時間。

 国主催のオークションが最後の締めとなります。


 結局あの後に開拓されたフィールドエリアは3つにも及ぶ数になりました。

 みんなラストスパート頑張りすぎです。

 姫ちゃん達『キコリドットコル』も当然そのうちの1つを開拓しています。

 最後に確認したイベントランキングでは姫ちゃんの独走は揺るぎないものでしたのでこれは決まりでしょう。

 『現実時間』でイベント終了2日前にはランキングのトップ10はシークレットになっていましたけどね。


 ミカちゃん達『ミストナイツ』は『エーク迷宮』の攻略を見事に最初に果たしたようです。

 最後の迷路でかなりの時間を浪費したようですが、ボス戦は雑魚を強化して数を増やしただけだったそうで、割りとあっさりと終わってしまったようです。

 雑魚とはいえ、強化されたボス格ですので、それなりには強かったようです。

 それでもあっさり倒せたのは『封闇秘剣』と『トリプルオプション』の『ダークショートソード』のおかげだと絶賛されました。

 まぁどちらも現状で確実にトップレベルの攻撃力と能力を持つ武器ですからね。

 さらにはその使い手がミカちゃんです。

 リアルでも武術の心得のある大人を相手に無双する本物なのです。

 ゲームのアシストなしでMOB(モンスター)と戦える数少ないプレイヤー開拓者なのですから、トップレベルの武器を使用すれば、その戦果は他の追随を許さない揺るぎないものなのです。


 もちろんNPC(ノンプレイヤーキャラ)開拓者の強者にはまだ追いつけないでしょうけど、ミカちゃんならそう時間をかけないで追いつき、追い越す事でしょう。


 そんな2人は今私と一緒にオークション会場へと向かう馬車にいます。

 2人共甘ロリさん製作のドレスを着てばっちり決まっています。

 もちろん私も甘ロリさん製作のドレスを着用しています。

 大苦戦した交渉の結果、私のドレスは2人のドレスと比べてもおとなしくまとまっています。

 姫ちゃんはフリル過多なドレスに大満足ですが、ミカちゃんは恥ずかしそうです。

 ちゃんと交渉しないからそうなるんですよ。


 2人がこの場にいるのは当然オークションに参加するためです。

 戦闘系トッププレイヤー開拓者の2人は当然【開拓者組合(ギルド)ランク/★5】に到達していますので、参加資格も文句なしです。

 残念ながら『Works』で【開拓者組合(ギルド)ランク/★5】に到達しているのは私だけなので、他のメンバーは参加できませんでした。

 というか、生産系プレイヤー開拓者ではまだ私だけみたいです。

 もしかしたら掲示板に情報をアップしていないだけで到達している人もいるかもしれませんが。


 そんなわけでオークションに参加できるのは私達3人だけです。

 参加できなかったみんなにはお土産を約束してあるので、頑張って競り落とすことにしましょう。

 まぁオークションのパンフレットとかでも十分お土産になりそうですけど。


 さぁ、【開拓者組合(ギルド)ランク/★5】到達メンバーだけに与えられる今月最後の大イベントの開幕ですよ!


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