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68 『頑張りましたー!』

 夕方のログアウト前にはいくつかスティール系装備を製作することが出来ました。

 その中には当然アリミレートさん用の軽めの体装備――『スティールブレストプレート』も入っています。

 でも残念ながらログアウトが迫っていますので、ログイン時間を明記して『メール』を送るだけにしておきましょう。

 ラッシュさんは申し訳ないですけど、アリミレートさんの後ということで。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 夕食など諸々を済ませてログインです。

 まずはじめに気づくのはやはり『メール』の着信ですね。

 さっそくアリミレートさんから返信があったようです。

 でもまだスティール系装備が製作できるようになったとは書いていないのです。

 ちょっとしたサプライズのつもりです。


 返信には工房に来れる時間が書かれていたので、その時間に待っている事を折り返しておきました。

 ふふふ……これでばっちりですね。


 あ、そういえばスティール系装備を製作できるようになったのに夢中ですっかりお店の商品の補充をしていませんでした。

 そのせいか店員さんからも『メール』が着ていました。

 現在は『ゲーム内時間』で昼タイムの12時です。

 普段なら最低でも開店前には補充されているわけですから、そりゃ心配もしますよね。


 スティール系装備はまだ知り合い優先ですし、アイアン系装備より製作に時間もかかります。

 ここは1つ、アイアン系装備を適当に製作して時間を稼ぐべきでしょうか。

 それともたまにはお店をお休みするべきでしょうか。

 よく考えれば開店以来まだ一度もお店は休業日がないんですよね。

 店員さん達はシフトを組んできちんとお休みを取っていますから問題はないはずです。

 休みが欲しい場合は連絡してくれればシフトの変更もするとは言ってありますしね。


 でも突然休業というのもどうかと思います。

 いやゲームですから私の都合優先でいいとは思うのですが、そこまで逼迫した状況というわけでもないわけで。


 よし……アリミレートさんが来るまでアイアン系装備を製作して、お店の大休憩が終わる前に補充してきましょう。

 そして明日と明後日はお休みにしましょう。

 休みが一日だけだと就寝中のログアウト中に終わってしまいますからね。

 その間にスティール系装備をできるだけ製作すればいいんです。

 そうと決まれば店員さん達に連絡ですね!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 店員さん全員とはすぐに連絡が取れたので、明日と明後日はお休みになることは了承してもらえました。

 ついでにお店の契約の更新が来ていたそうなので、補充のついでに不動産屋さんまで足を運んでおきましょう。

 当分はあそこで営業を続けますし、30日更新ではなく、もっと長い契約にしておきましょうかね。

 どうせなら買い取ってもいいです。


 何せミカちゃんと姫ちゃんに一式ずつのスティール系装備を販売済みなのです。

 アイアン系装備の値段とは文字通り桁が違うので、この調子ならすぐに設備の更新も終わりそうなくらいです。

 さすがは現在判明している製作可能な最高の装備ですね!


 ではまずは大休憩後の営業のためにアイアン系装備を製作しましょう。

 スティール系装備が製作できるようになったのにアイアン系にまた戻ることになるのはちょっと残念ですけど、これは仕方ありません。


 さぁガンガン作りますよー!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「あ、アリミレートさん!」

「あら、出ていたの? ちょうど今来た所よ。

 こうして直接会うのは久しぶりね。

 でもミカンの話によく出てくるからそんな気が全然しないわ」

「そうなんですかー? ミカちゃんとはよく会うんですか?」

「えぇ、よく『エーク迷宮』で一緒に狩りをしているわ」

「そうだったんですかー」


 ここ最近みんな忙しいので女子会をあんまり開けてない影響で情報収集不足ですね。

 ミカちゃんとアリミレートさんが一緒に狩りしているなんて知りませんでした。


 まぁでもイベントも終盤で、ミカちゃんも姫ちゃんも夏休み最後の追い込み時期ですから仕方ないのかもしれません。

 学校が始まったらログイン時間はどうしても減りますからね。

 トップを維持するには今のうちに頑張っておかないといけないのでしょう。


「それで、用って?」

「まぁまぁ立ち話も何なので、どうぞー」

「おじゃまするわ」


 アリミレートさんとは工房の前での鉢合わせでした。

 お店への補充のついでに不動産屋さんでお店の買取契約を済ませてきた帰りでばったりです。

 そう、やっぱり賃貸契約の更新ではなく、買取にしたんです。

 思ったよりも買取にかかった費用は多くなかったのは喜ばしいのか、悲しいのか微妙なところです。

 安いのはそれだけ狭いからです。

 いや、本当に狭いですからうちのお店。

 隣の甘ロリさんのお店なんてそこそこ広々しているんですよ?

 まぁそれでも10人もお店に入れば満員状態ですけど。

 やっぱり多少広さがある状態ならスペースの有効活用などで広く見せることも可能なんですよね。

 最初から狭いと頑張りようがないんですよ。


「え……ここって工房……?

 こんなところに工房があるなんて知らなかったわ」

「まぁそうですよねー。ここは最近出来た私の工房なんですよー」

「え……あ、あなたの……?」

「はいー」


 工房の中にアリミレートさんを案内すると、キリッとした凛々しい顔が驚きに彩られています。

 まぁ確かにお店を持つプレイヤー開拓者も少しずつ増えてはいますが、工房となると私だけでしょう。

 もしかしたら『クラン』で共同で出資して、というケースもあるかもしれませんが、今のところ私は知りません。

 アリミレートさんが驚くのも無理はないのですよ。


「あなたの製作したアイテムにはお世話になっていたけど……まさか自分の工房を持てるほどに腕をあげていたのには驚いたわ。

 だってあの時はほとんど素人だったでしょう?」

「頑張りましたからねー」


 確かにアリミレートさんと出会ったばかりの頃は完全に素人でしたね。

 でもゲームだからこその成長速度ではありますが、それにしたって私は普通の人よりもずっとログイン時間も生産に充てる時間も非常に長いですからね。


「それで、今日はこの工房を見せるために呼んだのかしら?

 私から見ても十分にすごいと思うわ」

「ありがとうございますー」


 リビングに腰を落ち着けて、とっておきのミルクティーを提供するとアリミレートさんから賞賛のお言葉を頂けました。

 でもメインデッシュはこれからなんですよねー。


「実はそれだけじゃないんですよー。

 見て欲しいのはコレです!」

「なっ!? あ、あなたコレ!? ま、まさか!?」

「頑張りましたー!」


 じゃじゃーん、と『(アイテムボックス)』から取り出した『スティールブレストプレート』をテーブルの上に置くと、先ほど見せた驚きの表情よりもさらに目を見開いたアリミレートさんがご登場です。

 ばっちりサプライズ成功ですねーこれは!


「す、すごい……。こんな短期間でここまで……?

 あなた……一体何者なの……?」

「何物ってほどでもないですよー。

 ほら、初めて会った時に約束したじゃないですか。

 あれを目標に頑張っただけですよー」

「あんな口約束とも思えないような事を……?」

「あ、やっぱり覚えていてくれたんですねー」

「え、いやそれは……だって結構インパクトあったわよ、あなた?」

「あははー」


 確かに『バケツヘルム』を被って、大男に絡まれているような出会いではインパクト抜群ですよね。

 でも実際、あの約束のおかげでスティール系装備は目標の1つになっていましたからね。

 がんばれたのは確かにアリミレートさんのおかげでもあるんですよ。


「じゃあ約束通りコレは売ってもらえるのね?」

「もちろんですよ。

 今日はそのためにお呼びしたんです。

 それにもし他にもスティール系装備が欲しかったら製作しますので、遠慮なく言ってくださいー」

「本当!? お言葉に甘えさせてもらうわ。

 それにしても、直接話すのはあの時以来だけど、ミカンの話通りなのね」

「えー……。ミカちゃんに一体なんて言われてるんだろー」

「ふふ……。心配ないわ。ほとんどほめてばかりよ。

 よほど好かれてるのね、あなた」

「そうなんですかー? 本当ですかー?」

「本当よ。心配しないで」

「だったらいいんですけどー。

 付き合いがかなり長いので色んな私を知ってますからねー、ミカちゃん」

「ふふ……そういうの羨ましいわ」

「アリミレートさんにはいないんですかー?

 姉妹みたいに育った人とかー」

「そうねー。あなた達の関係とは少し違うけど――」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「あら、もうこんな時間だわ。

 今日は楽しかったわ。じゃあ依頼、よろしくね?」

「はいー。こちらこそ楽しかったですー。

 製作はお任せくださいー。出来たらすぐに連絡しますねー」

「そんなに急がなくても大丈夫よ。リッチのような大物が出てこないかぎりは急がないから」

「了解ですー」


 アリミレートさんとの会話は話題が尽きないほど盛り上がりました。

 その中でも一番驚きだったのはアリミレートさんとは1歳違いでしかないということでしょうか。

 もちろんお姉さんです。

 ツリ目勝ちで気の強そうな見た目と凛々しさで、もっと年上かと思っていたので驚きです。


 そしてアリミレートさんの装備の製作ですが、なんとNPC(ノンプレイヤーキャラ)クエストとして発行されることになりました。

 その報酬が驚きのSP(スキルポイント)です。

 今までNPC(ノンプレイヤーキャラ)クエストではSP(スキルポイント)が報酬で提示されることはありませんでしたのでびっくりです。

 もちろんSP(スキルポイント)だけではなく、お金も相応に支払われるのですが、お金はいいのでSP(スキルポイント)を上乗せにできないものですかね?

 未だに進化待ちのスキル達が順番待ちをしている状態なんです。


 とはいえ、これでラッシュさんがスティール系装備を手に入れる日はまた遠のいたわけです。

 何せ全身一式分の依頼ですからね!

 ただ今回は前回のミカちゃん、姫ちゃんの2人分よりも製作量は半分以下ですのでそれほど時間はかからないでしょう。

 それでも時間をもらったのはもうすぐ本日のログアウト時間だからです。


 次にログインする時には『ゲーム内時間』で1日以上空きますからね。

 まぁそれでもその日中には製作できるはずなので十分早いとは思えますけど。


 ではでは、ログアウトぎりぎりまで製作は進めておきましょう。


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