表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/154

59 『元々断る選択肢はないんですけどねー』

 『木人形獣型・狐』を新たに1つ製作したところで姫ちゃんから『メール』が返ってきました。

 内容は検証魔の姫ちゃんらしい、見事なレポートでした。


 普段は簡素な物言いの姫ちゃんですが、事検証になるとその真価を発揮するのです。

 そのまま論文として発表できそうな感じの見事なレポートですね。

 何よりわかりやすいです。


 結果としては、やはり人形を武器として扱えるようです。

 糸で武器を操る場合にあったペナルティは人形を介することでなくなっています。

 ですが問題は『木人形獣型・狐』は操るのに最低で6本の糸を要することでしょうか。

 姫ちゃんでもそれは変わりません。

 それにどうやら6本全ての糸を接続していないとペナルティが発生するようです。

 つまりは2体同時には操れないことを意味しています。

 これはなかなかどうして大変ですね。

 姫ちゃんなら残りの4本で妨害出来るでしょうが、他の人ではそうはいかないでしょう。


 ちなみに『木人形獣型・狐』に様々な武器を咥えさせてダメージの検証をしたみたいです。

 専用の爪や牙なんかを作ってあげれば戦いやすくなるかもしれないですね。

 大きな尻尾も武器とするならばよいかもしれませんが、私としてはやはりそこはもふもふであってほしいです。

 一応姫ちゃんに聞いてみましょうかね。要望があるなら尻尾も武器に出来るように何か作っても別に構いませんよ? 本当ですよ?


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ……姫ちゃんの要望により、尻尾も武器になることになりました。

 いいんです。使用するのは姫ちゃんですし、取り外しが出来るようにすればいいんです。

 それに元が木製ですから顔をぐりぐり押し付けたら痛いですし。

 もうちょっと尻尾の改良を頑張りましょうかね。


 結局製作したのは牙と爪と尻尾型の刃です。

 これらは単体としてはただのアイテムでしかないようで、『完了処理』前の『木人形獣型・狐』に埋め込まないと効果が発揮されないようです。

 尻尾の取り外しができなくなってしまったのは非常に残念です。


 ですが良いこともあります。

 牙を『完了処理』で埋め込むと1本の糸で口の開閉が可能になるようです。

 これは便利ですね。どうやって牙を有効に活用できるようにするかちょっと迷っていましたから。


 全ての武器を埋め込んだ完成品がこちら――


 ====

 木人形獣型・狐

 人形/★6/ATK+57 CRL+15 HIT+4/クリティカル強化・小 命中強化・微/耐久30

 ====


 『ダブルオプション品』にもなってくれてなかなかのものではないでしょうか。

 操るのに必要な『魔導糸手袋』の攻撃力は無関係となるようですし、牙、爪、尻尾の3つの武器全ての合計なのか、それぞれの攻撃力なのかもいまいち判然としてません。

 ですが、『アイアンホビングローブ』の攻撃力は34ですので大きく上回っています。

 『魔導糸手袋』の攻撃力強化系『アーツ』である『魔導糸手袋アーツ/Lv1/魔力纏』なども有効らしいので、攻撃力はかなり期待できると思います。

 あとは姫ちゃんに検証してもらえばいいですね。


 すでに完成したことは『メール』で伝えてあります。

 適当なタイミングで受け取りに来てくれるでしょう。

 ちなみに値段は『商人・改』がLv30を超えたことにより取得できた『アーツ』――『商人・改アーツ/Lv30/相場自動収集・異』で判明しました。

 『相場自動収集・異』は運営が定めた価格を閲覧できるようになるという変わった『アーツ』です。

 これにより、今まで売買履歴がないアイテムでも値段がわかるようになるのです。

 『商人・改』に進化して初めてよかったと思える『アーツ』です。

 進化させたのは無駄じゃなかったようですね!

 もちろん今までの相場収集系の『アーツ』の効果もありますので、運営が定めた値段以外にも実際の取引の値段もわかります。

 結構これが面白いんですよね。

 需要と供給次第では値段なんていくらでも変化しますからね。

 でも現状では装備品に関しては極端な『オプション品』でもない限りは運営が定めた値段通りになっているようです。


 ちなみに『封闇秘剣』はレンタルトレードで貸し出しているので私の『(アイテムボックス)』の枠の中にもありますので詳細を閲覧することが出来ます。

 それによると運営が定めた値段は結構な額ですね。

 スティール系装備の20倍くらいの値段になっています。

 これはまたなかなかですねー……。

 掲示板に情報を出さないで正解です。

 嫉妬の嵐でミカちゃんがPKに狙われちゃいますよ。

 まぁ例えミカちゃんを倒したとしてもシステム上『封闇秘剣』は手に入らないでしょうけどね。

 その前に倒せるのか疑問ですけど。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 夕方のログアウトまでは『魔術陣』を描いたり、【開拓者組合(ギルド)】で評価査定をしてお店に補充したり、やってきた姫ちゃんに人形を渡したりして過ごしました。

 ちなみにこの人形は姫ちゃんが買取しています。

 最初に渡した人形は下取りしてリサイクルする予定です。


 『鍛冶・改アーツ/Lv15/リサイクル』という『アーツ』を使うと、『完了処理』済みのアイテムであっても使用した素材をランダムで得られるのです。

 それ以外では解体不可能ですので『リペア』して再販売くらいしか手はありません。

 それに『リサイクル』は『鍛冶・改』の『アーツ』ですので、人形などのジャンル外のカテゴリー品は素材の取得確率が少し悪くなります。

 それでも武器も埋め込まれていない人形では戦闘に向きませんので仕方ないでしょう。

 もちろん毛皮は脱着可能なので脱がして新しい方に着せてあります。尻尾部分に関しては姫ちゃんに渡しただけですけど。


 素材はお店の方で大量に買取しているとはいえ、無尽蔵にあるわけではありません。

 出来る所で『リサイクル』すべきなのです。


 まぁ武器や防具に関しては『リペア』して再販売で十分なんですけどね。


 さてそれではログアウトです。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 夕飯など諸々を済ませてログインしました。

 時刻はすでに『ゲーム内時間』で昼タイムの12時です。

 ログアウト前にお店に商品は補充してありますが、もう売り切れているかもしれませんね。

 まだまだ私のお店のアイアン系装備は売れ筋商品ですから、ガンガン補充しておかないといけません。


 ですがその前に『メール』が着てますので確認しておきましょう。

 ……差出人は店員さんのシャーロさんです。

 内容はケデリック商会からの依頼でした。

 アイアン系装備の納品の依頼です。

 数はそこそこですが、このくらいなら問題ないですね。

 でも規格があるので★3で揃えなくてはいけないのが大変です。

 とはいえ、親方さんに色んな修行をつけてもらった私には規格通りに装備を作るのは不可能ではありません。

 むしろランクを意図的に揃える行為は高ランクの装備を製作する上で非常に役に立つ技術だったりするのです。

 狙ったランクを意図的に製作するのは成型段階での槌の打ち込みタイミングや力加減だけではなく、使用する素材の見極めにもつながります。

 そういった技術はスキル外スキルとして、着実に実力を伸ばす手助けになってくれるのですから。


 これも修行のうちです。

 ケデリック商会の依頼、受けさせていただきましょう!


 ……まぁ元々断る選択肢はないんですけどねー。


 『メール』に添付されていた『依頼受領確認』を使って正式なNPC(ノンプレイヤーキャラ)クエストとして受領します。

 これで相手側に依頼を受けたことが伝わる事になり、システム的にクエストとして発行されます。


 さぁ、あとは製作して納品するだけです。

 納品数はそこそこありますのでガンガン製作していきましょうか。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 規格通りにアイアン系装備を製作すること3時間あまり。

 依頼されたアイアン系装備はこれで全て完成です。


 かなり気を遣いながら製作しなければいけなかったので普段よりもずっと大変でした。

 でも大変な分だけ自分の実になったような気がします。いえ、確実になっているでしょう。

 スキルLvには反映されないところがわかりにくいですがそれは仕方ありません。


 さて、まだケデリック工房の方も開いている時間ですし納品しにいってしまいましょうか。

 親方さんやお弟子さん達に会うのも久しぶりです。

 そうだ、お土産に露店でいろいろと買い込んでいきましょう。

 親方さん達はあれで甘いものなども大好きですからね。

 るーるーさんのお店にも寄っていくことにしましょうかね。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 るーるーさんのお店で購入したお菓子詰め合わせは大好評でした。

 さすがはお菓子系生産者トッププレイヤーの作ったお菓子です。

 とても美味しかったです!

 ……まぁ私は結構毎日食べてるんですけど。別にいいですよね。毎日食べても美味しいものは美味しいんですから。

 それにいっぱい種類もありますからね!


 納品に関しては特に問題もありませんでした。

 むしろ納期自体はもっと長く取られていたので早すぎてびっくりされたくらいです。

 親方さんは「さすがオレの弟子だな」と豪快に笑っていましたけど。

 ケデリックさんは残念ながら不在でしたが、ナイスミドルなあの店員さんからクエスト報酬を貰う際にとても期待されている旨を伝えられました。

 なんだか照れてしまいますね。


 クエスト報酬はなんと『エーク迷宮』産の高ランク素材でした。

 もちろんアイアン系装備の値段が値段なので結構な量です。

 ただそこは商売でもありますので、相場の7掛け分ではありましたけど。

 相場通りではお店が成り立たなくなってしまいますからね。それは仕方ありません。

 でもお金よりも現段階でこれだけ『エーク迷宮』産の素材が貰える方が嬉しかったりします。


 『エーク迷宮』には結構な数の開拓者が攻略に参加していますが、まだまだ素材の流通は少ないです。

 お店の方にも売りに来てくれる開拓者は多いですが、まとまった数となるとそう多くありません。

 これで『ダブルオプション品』をガンガン製作して設備更新に向けて資金を一気に稼ぎたい所ですね。


 本日のログアウトまでまだもう少しあります。

 さっそく製作に励むとしますか!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ