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53 『とりゃー!』



 夕方のログアウトまで延々製作作業を続けていました。

 今日はずいぶんと作った気がします。

 いえ、『(アイテムボックス)』を見ればどれだけ製作したのかは一目瞭然なんですけどね。

 ……ずいぶん作りましたね。私頑張りました!


 それではログアウトです!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 夕ごはんやお風呂など諸々を済ませてログインです。

 そして待ちに待った合同採取ツアーの時間でもあります!


 ログアウト前に準備は済ませていたのであとは待つだけです。

 そう、待ち合わせは私の工房前だったりします。

 まだ『Works』の拠点はありませんし、みんなのお店も休憩スペースはそれほど広くありません。まぁ私のお店が一番狭いんですけど。

 そんなわけで南門に近くて広いスペースがあるということで、私の工房が選ばれたわけです。


「バケツさ~ん、来ましたよ~」

「はいはーい」


 リビングで待っているとドアをノックする音と共にそんな声が聞こえてきました。

 工房の出入りは生産設備がある部屋以外は許可を出している人は出入り自由です。

 ミカちゃんや姫ちゃんはもちろん、甘ロリさんにも許可は出してありますので勝手に入ってきても問題ないのですが、そこはやはり社会人の甘ロリさんです。

 ミカちゃんなら速攻で入ってきていますね。間違いありません。


「準備は大丈夫ですか~?」

「もちろんですよー。皆さんこんにちはー。いやこんばんは、かなー?」

「どっちでもいいんじゃないか? それよりもやはり羨ましいな……工房か。早く手に入れねば……」

「そうだよそうだよバケツさん! こっちは昼でもあっちは夜」

「「どっちでもいいよ!」」

「それより中級設備ってどうなのどうなの?」

「「どうなの!」」

「配合研究ばっかりで全然お金が貯まらないから」

「「ふんぎりがつかないの!」」

「でもやっぱり――」


 玄関のドアを開けて外に出れば皆さん勢揃いです。

 とはいっても甘ロリさん、るーるーさん、向田さん、ミーとムーで全員ですけど。


 向田さんは工房を見ては遠い目をしています。まぁわかります。私も悩みましたからね。

 ミーとムーは相変わらずのマシンガントークと息のぴったりあったツッコミようなそうでないような独特の話し方ですね。

 『錬金術』は素材と素材の配合で様々なものが製作できます。

 でもそれはどんな配合パターンがあるのか見極めなければいけないという側面も持ち合わせています。

 『錬金術』のトッププレイヤー開拓者である2人は毎日配合パターンの研究をしているそうです。

 そのため思ったよりもお金が貯まりづらいみたいです。

 他の生産活動とは少し違うんですよね、『錬金術』。

 まぁ私は彼らの研究の成果の上澄みを掬わせてもらっているわけですが、基本的にホムちゃんが製作する以外は『魔法紙』くらいしか作ってませんけどね。

 その『魔法紙』製作だけでも大量に製作しているせいで、相当なスキルLvを稼ぎ出しているわけですが。


 るーるーさんは控えめな性格なためか、押しが強すぎる双子の前ではあまり喋れません。

 軽く頭を下げて挨拶するだけですね。

 女子会でも聞き役になる方が多いですので仕方ありません。


「さぁ皆さんそれくらいに~。行きますよ~」

「おう」

「「はいはーい」」

「はーい」

「はい」


 向かう先は南門です。

 護衛のメンバーとはそこで待ち合わせになっていますので遅れるわけにはいきません。

 とはいっても十分に時間に余裕をもって待ち合わせしてありますので大丈夫ですけどね。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「やほーい! ここだよー!」

「やっほーミカちゃん、姫ちゃん」

「ん。やほ」

「いえーい! やっと一緒にプレイできるよー」

「あはは、そういえばそうかもねー」

「嬉しい」

「私もだよー。今日はよろしくねー。皆さんもよろしくお願いしますー」


 南門には護衛メンバーである『ミストナイツ』からミカちゃん含め6名。

 『キコリドットコル』から姫ちゃん含め6名の12名がすでに集まっていました。


 【開拓者組合(ギルド)】で募集している合同採取ツアーでも採取者の倍の数が護衛として募集されます。

 採取場所と護衛の人にも寄るところはありますが、基本的にはこれが通常の構成となるようです。


 採取はどうしても周囲のMOB(モンスター)が大量によってきますからね。

 それを大人数で行えば当然それだけMOB(モンスター)も増えることになるわけです。

 そうなれば護衛の戦力がそれなりには必要となるのは当然でしょう。


 でも今回の護衛メンバーは戦闘系トッププレイヤー開拓者達です。

 本来なら過剰戦力といってもいいくらいに彼らは強いのです。

 甘ロリさんの今回の合同採取ツアーにかける意気込みがどんなものであるかというのがわかるというものですね。

 なんといっても今回は『Works』初めての合同作業ですから。

 失敗するなんてことは絶対に避けたいのでしょう。

 もちろんそれは私も同じ思いです。

 『クランメンバー』との初の合同作業ということもありますが、【首都サブリナ】から出るのも初めてですし、合同採取ツアーも初めて。

 初めて尽くしなんですから!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 護衛メンバーとの挨拶も無事終わり、甘ロリさんから諸注意などがもう一度伝えられてから出発です。

 私以外のメンバーは全員合同採取ツアーの経験があったりしますので、実は私のためだったりしますけどね。

 まぁその辺を突っ込んだらいけません。


 何気にミカちゃんも護衛経験あるんですよね。

 戦闘ばっかりしてるのかと思ってました。

 あーでも護衛といっても戦闘は不可避ですので、ミカちゃんからすれば一緒なのかな?

 高い殲滅力で普通に狩りをしていても護衛できちゃうだろうし。


 姫ちゃんはかゆいところに手が届きまくるので、護衛などでも大活躍するみたいです。

 あ、でもちょっと語弊がありますね。

 姫ちゃんは攻撃力という面ではミカちゃんに当然劣ります。

 でも様々な阻害を主とする事で凄まじい戦果を上げるのが姫ちゃんです。


 どれほどの数がいっぺんに襲ってきてもミカちゃんなら殲滅力で、姫ちゃんならその阻害力で護衛を完璧に遂行するのです。

 まったく頼もしすぎる親友たちですよね。さすがです。


 【首都サブリナ】からほんの少し離れればそこはもうMOB(モンスター)の闊歩するフィールドエリアです。

 でも当分は『ララビット』などの雑魚中の雑魚しかいません。

 でも採取ポイントはそれなりに点在しています。

 まぁこの採取ポイントは個人個人で個別に見えているので同じ場所にあるとは限りません。

 ですので採取ポイントで素材を採り尽くしても他の人に迷惑をかけることは一切ありません。


「採取しま~す」

「どうぞー!」


 採取ポイントは個別であっても、採取行動を取れば周囲のMOB(モンスター)を集めてしまうのは同じです。

 ですので合同採取ツアーではある程度皆で同時に採取行動を行うようにしなければいけません。

 その場所の選定をするのは合同採取ツアーのリーダー役の人、今回は甘ロリさんになります。

 『Works』のみんなから採取ポイントの情報を聞き、場所を選定して護衛メンバーに伝える。

 周囲のMOB(モンスター)から採取メンバーを守れるように配置が整えば採取開始です。


 とはいっても護衛メンバーは手慣れたものです。

 甘ロリさんが場所を選定して伝えれば30秒もかけずに配置が完了するのですから大したものです。


「バケツさん、講習(チュートリアル)は済ませてあるんですよね? 大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよー。ほらちゃんと採集道具も★6で揃えてきてあります」

「★6ですか~。さすがですね~」

「今日はがっつり採取しますよー」

「えぇ~がんばりましょ~」


 合同採取ツアーが初めての私に気を遣って色々と心配してくれる甘ロリさんですが、私だって事前情報はしっかりと仕入れてきていますし、準備も万端なんです。

 そんなに心配しなくても大丈夫ですよ?


 甘ロリさんの採取ポイントは私のすぐ近くにあったみたいで、一緒に並んで採取開始です。


 目の前には淡い緑の光の塊。

 これが採取ポイントです。

 光の色に応じてどんな素材が手に入る採取ポイントかの傾向がわかります。

 緑は野菜や果物などの食材関係ですね。


 これに用意してきた『初級採取セット・改』から『スコップ』など様々な道具を突き入れる事により素材を入手できるようになるのです。

 道具を入れるまでは何が手に入るのか、どのくらいの量になるのかもわかりません。

 更には適切な道具を突き入れる事により入手素材の量やランクが高まる事もあるそうです。

 見極めは光の加減の量だったり、動きだったりと……正直今の私ではわかりません。

 でもそれも『採取』や『採掘』のLvが上がったり、何度も経験することによりわかってくるらしいです。

 Lvも経験もない私にはとにかく試してみる事が大事です。


「とりゃー!」


 気合一閃。

 手始めに『スコップ』を光の中に突き入れてみれば、『小粒人参』が手に入りました。

 数は1個。

 私の小指サイズの小さな人参で、確か1個10ニルで販売されているやつです。

 平たく言えばハズレです。しかも1個……1個。


「……ですよねー」

「大丈夫ですよ~。運が悪くなければ一回では採取ポイントは消えませんから。次は違う道具でチャレンジですよ~」

「ですよね! さぁ行きますよー」


 甘ロリさんの励まし通り、採取ポイントは運にもよりますが数回の採取チャンスがあります。

 もちろん今回の採取ポイントも1回で消えるようなことはありませんでした。


 さぁめげずにガンガン行きますよー!


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