46 『合法ロリ』
生産設備購入に向けて資金集めのためのアイアン系装備製作に邁進していました。
気づけばすでに深夜を大きく回っています。
でも実際の作業時間はそこまで多くありません。
私は最長で10時間くらいぶっ通しで製作していたことだってあるんですからね。
今日ぐらいのペースだとまだまだ……。
でも商品はいっぱい出来ました。
この調子でどんどん作ってガンガン売っていきたいです。
ですがたっぷり作った弊害というか恩恵というか、スキルLvが100に到達してしまったものが幾つも出てしまいました。
『道具製作』『木工』『皮革』です。
SPは残念ながらまだどれも進化させるには足りないです。
これは参りましたが、現状ではどうしようもありません。
昼タイムは修行ですし、夜タイムは資金集めのための製作です。
一先ずは保留にしておくしかなさそうですね。
どちらかが解決したらその時は……。
というわけで、たっぷり作った後は休憩です。
今日の女子会はミカちゃん、姫ちゃん、甘ロリさん、私の4人です。
露店にお菓子が売ってたら買って行きたいですね。
残念ながらNPC店舗は閉まっていますので、そちらは利用できません。
まぁ買えなくても誰かしらがお土産に持ってきてくれるでしょうけど。
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予想通りにテーブルの上にはお菓子が乗っています。
しかも結構いっぱい。
露店で見つけたクッキーは私が。ドーナツはミカちゃんが。マロンムースは姫ちゃんが。色とりどりのマカロンは甘ロリさんです。
なんと今日はみんなお土産持参というお菓子パーティになっていました。
「さすがにこれは多いわ」
「問題ない。美味しい」
「このムース作った人なかなかですね~。おいし~!」
「姫ちゃんは相変わらずのマロン攻めだねー」
「美味しいは正義」
「姫らしいわぁ」
【ふろんてぃあーず】では当然いくら食べても太りません。
カロリーを気にせずドカ食いが出来ると、甘ロリさんの食べるペースは一向に落ちる気配がないくらいです。
あれだけあったお菓子がどんどん減っていくのですから、どれだけ甘いものに飢えているのでしょうか。
ストレスでも溜まってるのかな?
「は~満足です~」
「すごい食べたわねぇ。何かあったの?」
「そうなんですよ~聞いてくださいよ~!」
どうやら甘ロリさんは【開拓者組合ランク/★4】を目指して追い込みに入っているみたいです。
でもそれを邪魔するかのように現実の方で色々とトラブルが重なって大変だったみたいです。
今はもうなんとかトラブルの処理も終わったみたいで、製作に邁進しているようですが……というか甘ロリさん、社会人だったみたいです。
「そ、その見た目で……。いや見た目はある程度変えられるか……でも身長って……」
「……言わないでください~……」
【ふろんてぃあーず】の自分の外見はかなりいじれますが、体型に関しては現実との整合性などの問題でほとんどいじれません。
背の低い人が身長2メートル超えなどには出来ず、逆もまた然りです。
せいぜいいじれても1,2センチというほとんど誤差程度のものなのです。
つまりは甘ロリさんはちっちゃな大人の女性だったのです。
「合法ロリ」
「うわーん!」
姫ちゃんの容赦のないツッコミに甘ロリさんが撃沈していますが、姫ちゃんも似たようなもんですからね?
まぁまだ高校生の姫ちゃんには成長の可能性が残されている分だけ甘ロリさんよりは有利だと思いますけど。
平均身長な私とミカちゃんは苦笑いですが。
「うぅ……姫さんがいじめる~」
「ララルさん、大人なんだから泣かないでよ」
「大人だって泣きたい時もあるんですよ~! うぅ……あ、そうだ。私お店をそろそろ検討しようかと」
「いきなりだなぁ!」
「まぁまぁ聞いてくださいよ~」
やっぱり嘘泣きだった甘ロリさんの唐突な話題転換にミカちゃんのツッコミが容赦なく入りますが、当人はケロッとしてますね。
楽しそうだから別にいいんですが。
「バケツさんのお店を見ていると少し大きめのお店がいいかなぁとか思うんですよ~。
特に私の作品をディスプレイするスペースが欲しいですし~。
あとですね――」
甘ロリさんは軽装系装備をメインに製作しています。
分類上は一応、軽装系装備なんですが見た目は普通? の洋服のような感じで、お店もブティックのような感じにしたいそうなんです。
私のお店のような棚に装備を陳列して販売するだけではなく、マネキンなどに着せてディスプレイしたり、色んなコーディネートを提案したりなどアパレル店員みたいなこともしたいとか。
完全に接客を店員さん達に丸投げしている私にはわからない世界です。
でも私たちに色んな自作の服を着せようとする時の甘ロリさんのトークテクニックはすごいものです。
いつの間にかノリノリで姫ちゃんがファッションショーしていますからね。
まぁ半分くらいは姫ちゃんが好きでやっているのですが。
「不動産屋さんで見学だけでもしてみるといいですよー。やっぱり実際に見てみると違いますからねー」
「ですよね~……。ですよね……。そ、それでですね~……誰か一緒に行きませんか!?」
「なら経験者がいいんじゃない?」
「適任」
「じゃあ一緒に行きますかー」
「やった~! 実は私不動産屋さんってすごく苦手でして~……」
不動産屋さんが苦手っていうのは珍しく無いですかね?
必要がなければ滅多に行く機会もないような場所だと思いますし。
あ、行ったことがないからってことですかね?
何はともあれ、甘ロリさんと一緒に不動産屋に行く約束をすると、当の本人は一仕事終えたみたいに力が抜けてテーブルの上で溶けています。
甘ロリさん的にはこの約束を取り付けるのにかなり気合を入れて挑んでたみたいですね。
別に一緒に行く約束をしただけなのに。不思議な人です。
その後はのんびりとお喋りをしたり、残っていたお菓子を平らげたり、甘ロリさんの『ルーム』の内装が予想以上にメルヘンだったり、近づいてきたリッチ討伐について話したりと楽しく過ごせました。
終わりはいつも通りにミカちゃんに『コール』攻撃……と思ったら姫ちゃんに『メール』攻撃でした。
イベント中でもありますし、姫ちゃんは伐採作業にはなくてはならない重要人物です。
1人で5,6人分の働きをするんですから当然ですね。
それに今回の女子会は思ったよりも長かったみたいで、いつの間にか3時間くらい経過していました。
楽しい時間は本当にあっという間ですね。
店員さんの出勤時間も近づいていますが、私はログアウトの時間が近づいています。
生産作業には微妙な時間ですし、読書をして暇つぶしをしてログアウトです。
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夕食や入浴などの諸々を済ませてログインすれば、すでに『ゲーム内時間』は昼タイムの12時です。
今日から本格的な修行となります。
さっそくケデリック商会に急ぎ、裏手の工房に入ります。
システム的に工房への出入りが自由になっているので、特に問題もなく入っていけるようになっているのです。
今の私はケデリック商会工房長――メルリゲントの弟子ですからね!
「よろしくお願いしますー!」
「おう、来たか! まずは飯だ! 腹が減っては槌は持てねぇからな!」
さっそくですが、ご飯みたいです。
時間的にもお昼ですからね。でも私の『空腹度』はお菓子をいっぱい食べたせいでほぼ100%です。
システム的に『空腹度』は100%が上限ですが、それ以上食べられないわけではありません。
満腹という感覚は【ふろんてぃあーず】では再現されていないのが原因でしょうね。
つまりいくらでも食べられちゃうんです。
「いただきまーす!」
「おう! よく食ってよく働け!」
金属を叩く音はまったくしない食堂ではありますが、お弟子さん達や店員さん達がいっぱいでガヤガヤと結構うるさいです。
まぁ親方さんの声はそんな周囲の声よりももっとうるさいわけですが。
これも一種の職業病なんでしょうね。
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食事を終えて工房に戻ってくると、納品分のアイアン系装備を製作します。
お店で出すものなので厳密な規格を守る必要がありますが、基本的には★3でレシピ通りのものであれば問題ありません。
現状なら初級設備で丁寧に製作して★3ですし、何の気負いもなく作れますね。
それにどうやらあのアレンジ品も規格を守ってレシピ通りに製作されたものだったようです。
あのレシピも教えてもらえるんでしょうか。楽しみですね。
納品分の製作が終われば、昨日に引き続き『ブロンズライトサークレット』のレシピ化です。
ひたすら『ブロンズライトサークレット』を作り続けます。
素材も設備も全て工房持ちですし、親方さんからもアドバイスを時々貰えます。
そのアドバイスがまた的確で非常にわかりやすいものなのがすごいです。
私のイメージする工房の親方は、もっと頑固で技は見て盗め! 的な職人さんというのが強いですが、親方さんは全然違いますね。
見た目は頑固一徹な職人さんですが、優しいですし丁寧で教え上手。完璧ですね!
そのおかげか、『ブロンズライトサークレット』のレシピ化が完了しました。
『バケツヘルム』の製作などでレシピ化するまでの製作量というのはなんとなく把握していましたが、それよりも圧倒的に少ない量で済んでしまっています。
確実に親方さんのアドバイスのおかげでしょう。
レシピだけ貰っただけではわからない製作のコツなんかも教えてもらえていますし、確実にスキル外で進歩しているのがわかります。
……修行、すごいです! スキルLvはほとんど上がってませんけど!
親方さんにも筋がいいと褒められ、お弟子さん達も私が製作した『ブロンズライトサークレット』を見て唸っていました。
『ブロンズライトサークレット』がレシピ化できたからといって修行が終わりではありません。
私の独断で終わりにはできますが、勿体無くてそんなことは出来ません。
「親方さん!」
「おう! 次はこいつだ!」
「はい!」
上機嫌の親方さんが見せてくれるお手本を一挙手一投足、見逃さないようにしっかりと目に焼き付けます。
見るのも修行です!
私の修行はまだまだこれからですよー!




