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41 『ドン引きです』

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 今回は大事な事なので、『メール』を送ったのはミカちゃんと姫ちゃんだけです。

 普通にお喋りをするなら甘ロリさんにも送るのですが、今回は残念ながらパスです。


 姫ちゃんからはすぐに返信がありましたが、ミカちゃんからは少し時間がかかりました。

 まぁ2人共狩りしていたようですし。

 約束の時間までアイアン系装備を製作し、いつものように【開拓者組合(ギルド)】で評価査定を済ませてからお店で補充して、読書しながら待ちましょう。


 ちょっと変則的な補充タイミングでもあったのですが、事前にブログに情報をアップしてあったのでアイアン系装備はすぐに売り切れたみたいです。相変わらずの人気商品ですね。

 残念ながらまだ私以外にプレイヤーの生産者はアイアン系装備を安定して製作できていないみたいです。

 『鍛冶・改』に進化すればインゴットだけなら丁寧に丁寧にやれば★3で製作できますから、運が良ければ少しは製作できるようです。

 でもとてもではないですけど、安定しては製作できないので露店に並んでもすぐになくなってしまうのが現状です。

 まぁ私は露店に並んでいるを見たことないので全部掲示板情報なんですけどね。

 露店でも食料を買うばかりですし。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「きたぞー」

「ん。きた」

「いらっしゃーい」


 約束の時間に2人が一緒に裏手の休憩スペースのドアの方から入ってきました。

 表は開店中ですので、他のお客さんの迷惑になったらいけませんからね。

 『(アイテムボックス)』から取り出した私の『ルーム』の鍵を空中に差し込み、ドアを出現させて2人を招きます。

 今日は女子会ではないのですが、それはソレ。

 姫ちゃんがお土産に買ってきた特大マロンケーキを取り分けてから、さっそく本題に入ります。


「――これは確かにやばいわね」

「ん。意味がなくなる」

「だよねー。まぁ製作に時間がすごくかかるから量産は難しいんだけど、レシピ化されるはずだから、そこを過ぎちゃえばもう……」


 2人に『魔青銅の大盾』と刻まれた『魔術陣』などの説明をもう一度しましたが、やっぱり私が思った通りに危険な代物だと2人も思ったようです。


「マジックインゴットを使った装備に『魔術陣』を刻む事自体は問題ないと思うんだけど……そのあとだね」

「リペア」

「何度でも使えちゃうのはまずいよねー」

「……それに多分これ『重装』の爆速Lv上げに使えると思う」

「え?」


 ミカちゃんの口から出た言葉に私は一瞬意味がわかりませんでした。

 『重装』は金属系の比較的重めな装備の性能を底上げしてくれるスキルです。

 カッパー、ブロンズ、アイアンの装備は当然この『重装』の恩恵を得られるものなので、前衛開拓者はほとんど取得しているといっても過言ではありません。

 でも育てるのがなかなか大変なスキルでもあります。

 何せ重装系装備で攻撃を受けなければ育たないのです。


 ……攻撃を受ける?


「ぁ、耐久!?」

「正解。実験してないからなんともいえないけど、たぶんいけちゃうと思うよ」

「検証」

「ぇ、いやでも……バグ利用にならない?」

「検証結果としてその辺も報告すれば悪いようにはならないでしょ。まぁ『重装』のリセットくらいはあるだろうけど。

 ユリ、まだ取ってないでしょ? だったら問題ないじゃん」

「んー……2人共育てちゃってるしね。仕方ない私がやるかー」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「うわー……Lv1から一気にLv17……」

「うげ」

「すごい」


 『重装』を取得して『魔青銅の大盾』を装備した状態で『フィジカルエンチャント:物理攻撃力強化・微』を1回使っただけでこれです。

 『重装』が重装系装備の耐久を減らす事によって育つ事が立証された瞬間でもあるわけですが、ソレ以上にLvの上がり具合にドン引きです。

 耐久は普通、1減らすだけでも結構な攻撃を受けなければいけません。

 攻撃を受ければ当然ダメージを受けるわけです。

 でもこの方法ならダメージを受けずに耐久を減らせる上に、耐久の減り方が半端ではないので超効率になってしまうようなのです。


 ダメージを受けない方法で『重装』を鍛えるやり方は他にもありますが、リスクが半端ではないので誰もやらないでしょう。

 街中などのある種のセーフティゾーンではMOB(モンスター)以外からの攻撃はダメージになりませんが、耐久は減ります。

 それを利用して鍛えることは可能ですが、当然ながら犯罪行為に該当します。

 街中で武器を使用しただけで、自動的に犯罪行為になるのでこれは当然ですね。

 ダメージの有無など関係ありません。

 その結果待っているのは衛兵や騎士団による追いかけっこです。割に合わないどころではないでしょう。


「……これは本気でだめだね」

「運営に『メール』するねー」

「ん」


 相談した結果、完全に不具合と思しき発見までしてしまったので、満場一致で報告となりました。

 『魔青銅の大盾』だけならもう少し話し合うことになったでしょうが、これはもうだめです。

 『重装』の検証実験は動画に撮ってあるので、一緒に添付して送信しておきました。

 もちろん検証のために取得した『重装』についても書いておきました。

 不具合利用でLvアップしたスキルなんて私もいりませんので、出来ればSP(スキルポイント)を返して欲しいですね。まぁLv1にリセットされるのが関の山でしょうけど。


 一先ず運営にも報告したので、これで一安心でしょう。

 製作したのは私ですが、罰せられることはまずないはずです。

 『重装』の急激なLvアップも検証した結果ですし、バグ利用といえるものではありません。あくまで検証ですからね。


 そこからはもう普通のお喋りに移行です。


 初めはやはり私の『ルーム』の内装に関してでした。

 ゴレ君に手伝ってもらって配置替えしただけなので、ほとんど初期状態に等しいです。

 2人もそうかと思ったんですが、忙しい中を縫って結構色々買い集めて内装を整えていました。

 もちろん見せてもらいました。私も負けないように頑張りましょう。

 買ってもいいですし、色々作るのもいいかもしれません。


 話題は色んなところに移っていきますが、やっぱりミカちゃんはリッチ討伐に向けてスキルLv上げに勤しんでいるようです。

 そのリッチ討伐もクエスト定員に達したようで、『現実時間』で明後日に行われるようです。

 定員に達するまでに結構時間がかかったようですが、NPC(ノンプレイヤーキャラ)の強者は他の異変に対応するためにすでに違うクエストを受けていたりするようです。

 そのため、アリミレートさんのようにたまたま手が空いていたNPC(ノンプレイヤーキャラ)の強者が参加はしても、そう人数が多かったわけではないようです。

 そうなると残りはプレイヤー開拓者となるわけですが、トッププレイヤー開拓者でレイドPT(パーティ)を組んで敗北しているのです。

 何の強化もなしに突撃するのは愚策でしょう。

 ミカちゃん達のように早々にアイアン系装備で強化できた人達ばかりではないのですからね。


 つまりは私の製作するアイアン系装備や『魔術陣』、自己スキルの強化などを行った上でクエストを受ける事を選んだみたいです。

 アイアン系装備を欲しがるのは当然トッププレイヤー開拓者だけではないので、手に入れるのに時間がかかった結果が今になってのクエスト定員というわけです。

 討伐実行日の決定も定員に達し次第だったみたいですし。


 ちなみに姫ちゃんは受けてないそうです。

 今は違う場所の伐採作業を進めているそうで、もうすぐエリア開放しそうなんだそうです。

 未だにプレイヤー開拓者によるエリア開放はありませんので、姫ちゃん達が第一号になりそうですね。頑張ってもらいたいです。


 マジックインゴットを使った装備に関しては、『魔術紋様』を彫り込まなければ魔法防御に優れた装備として需要がありそうです。

 今はまだ魔法を使って攻撃してくるMOB(モンスター)の数は非常に少ないですが、これからもそうとは限りません。

 むしろ開拓が進んでエリアが増えればどんどん強敵が増えてくるでしょう。


 現在も夜間や雨の時など、稀ではありますが強MOB(モンスター)と呼ばれるかなり強いMOB(モンスター)が魔法攻撃を使ってくるのを確認されています。

 不意打ちされると盾役の前衛が一瞬で落とされるほどの強力な攻撃なようで、魔法対策はトッププレイヤー達にとって常識になりつつあります。


「でも『魔青銅の大盾』って物理防御がかなり低いよね。

 これがマジックインゴットで作る装備の傾向だとちょっと躊躇するなぁ」

「そうだねー。それにまだブロンズまでだから余計にねー」

「使い分け」

「まぁそうなんだけど面倒は面倒よねぇ。『ショートカット』埋めちゃうのはきついし」


 まだ『魔青銅の大盾』しか製作していないのでなんとも言えないのですが、MDEFが追加されている分、DEFがかなり低いです。

 『ブロンズラージシールド』ならDEFは29あるのですが、『魔青銅の大盾』のDEFはたったの13しかありません。

 『アイアンラージシールド』に至ってはDEFが53もあり、確かに使い分けるにしても防御力の低下は深刻でしょう。


「ん。アクセサリー」

「あぁ! そっか! 別に防具にこだわる必要ないじゃん!」

「あー……そうだねー。使い分けが面倒なら物理防御の恩恵が大してないアクセサリーにすればいいかもねー」

「というか今ならアクセなんて『オプション』前提なんだからありだよあり!」


 姫ちゃんの鶴の一声によりマジックインゴットの未来が切り開けたように思えます。

 DEFに不安が残る防具よりも、DEFが元々低くて『オプション』頼りになっているアクセサリーでMDEFを強化する。悪く無いですね。

 もちろんアクセサリーを製作したらMDEFが相応に低くなる可能性もありますので、まずは作ってみないことには話になりませんけどね。

 でも防具よりは期待が持てます。

 これにMDEFの『オプション』がつけばさらに倍率ドンです。


 どんなアクセサリーを作るかで盛り上がっていると、『公式メール』が届きました。


「お? まさか?」

「ん。まさか」

「はやー。まだ報告してから1時間経ってないよー?」


 そうです、なんと『公式メール』の内容は不具合の修正。

 大きく広がって多数に影響の出るものでもない限りは、昔のゲームと違ってメンテナンスなどのサーバーの停止を挟む必要はないのですが、それにしても早いです。


「あーやっぱりまだコレを作ったのは私だけみたいだねー」

「え? そんなこと書いてあったの?」

「ない」

「あれれ? もしかして私だけ?」


 ミカちゃんと姫ちゃんに届いていた『公式メール』と私に届いた『公式メール』では多少内容が違うようです。

 報告者で製作者だからでしょうかね?


 とはいってもその差異も本当に少しといったところです。

 ちなみに期待していなかった『重装』のリセットに関してはSP(スキルポイント)に戻してもらえました。やったね!


 修正の結果、『魔青銅の大盾』で『フィジカルエンチャント:物理攻撃力強化・微』を使用しても耐久が減らず、リペアでの使用回数の回復もなくなっていました。

 これで判明していた不具合と思しきものは対処されたことになります。

 一先ずは一件落着というところでしょう。


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