40 『要相談案件です』
注文分の『魔術陣』を製作し終えれば、そろそろ商品の補充をしに行かねばならない時間です。
あと2時間程度で開店時間ですからね。
みんなに『メール』を送信し、ブログに補充商品の情報をアップしておきましょう。
閲覧数が結構すごい事になっている気がしますが、まぁ気にしない方向で。
次はいつものコースで、【開拓者組合】で評価査定してからお店です。
たくさん描いた『魔術陣』も一緒に査定してもらいましたが、こちらの評価点数は結構美味しいみたいです。2枚で1セットですが、アイアン系装備1つ以上に高いです。
まぁ★5まではまだまだ長い道のりですので、コツコツ行きましょう。
時間もまだ若干早いので店員さんの出勤までそこそこあります。
でも買い取りした素材を『個人倉庫』に移したり、商品補充や買取料金の調整などしていればあっという間に過ぎていきますが、出勤まではもう少し。
残った時間は本を読んで過ごしているとみんな出勤してきました。
「おはようございます、店長」
「おはようございます。少しですが並んでますよー」
「おはようございますー。まだアイアンが欲しい人はいっぱいいるから仕方ないですねー」
ブログ効果でまた行列が出来ているみたいですが、最初の頃に比べれば少なくなったようです。
報告や連絡事項なんかを交わしていれば開店時間が迫ってきました。
店員さん達は商品の陳列などの業務開始です。
私は描き上がった『魔術陣』の販売のために休憩スペースで待機しつつ、さきほどの読書の続きと行きましょう。
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ラッシュさん、アリミレートさん、姫ちゃんの順で訪問してきたので、それぞれに注文通りの『魔術陣』を販売して少し雑談して解散です。
ミカちゃんからだけはまだ返信が返ってきてませんので寝ているのでしょう。
『現実時間』ではそろそろ午前11時近いです。
まぁ起きてくるのはお昼過ぎでしょうけど。
ラッシュさんとアリミレートさんは【開拓者組合】発行のリッチ討伐に参加するわけですが、姫ちゃんは不参加です。
それよりも今姫ちゃんは伐採作業に夢中のようですからね。
ミカちゃん達が全滅したあの一戦には伐採だけ参加したみたいですし、
以前見せてもらったあの神動画のペースで伐採しているのなら、姫ちゃん1人で7,8人分の働きですからね。
イベント中でもありますし、頑張っているようです。
でも残念ながら本当に7,8人分の働きとはなっていないようです。
なんと悲しい事にアップデートで修正が入ってしまったんです。
検証魔の姫ちゃんにより、どの程度の修正かはすでに詳細に判明しているそうで、「18.3%の下方修正。無念」と悲しそうにしていました。
まぁそれでもまだ5,6人分の働きにはなるので、姫ちゃん無双は続きそうですけど。
販売が済めば図書館に寄って【レンタル生産施設】に戻ります。
借りた本を全部読み終わったわけでは当然ないので、終わった分だけ返して再度新しいのを借りてきただけです。滞在時間も10分にも満たないです。
もっとゆっくりしたかったですが、『魔術陣』の注文などでマジックインゴットの実験が出来ていないので今回は仕方ありません。
商品補充はしましたが、すぐに売り切れてしまうのは火を見るよりも明らかです。
なので一応少しアイアン系装備を製作してから実験です。
アイアン系装備を製作するのも、もう大分手慣れたものです。
さくさくと製作予定から逆算して『アイアンインゴット』を確保するとどんどん作っていきます。
お昼休憩を挟んで、大体『ゲーム内時間』で3時間ほどで予定の数は作り終えました。
これで気兼ねなく実験をすることが出来ます。
まず製作するのは『マジックカッパーインゴット』です。
これが一番難易度が低いわけですから、順を追うならこれからです。
材料の核となるのは当然『銅鉱石』。
これに『魔石』と『サファイア』などの宝石を混ぜて、『抽出』を行います。
レシピがなければ溶けた『魔石』や『サファイア』なども不純物として『抽出』されてしまうようですが、私にはあるので問題ありません。
丁寧に『抽出』を続けること2分程度。
これ以上不純物は排除できないようです。
意外と簡単です。所詮はカッパーってことでしょうか。
『完了処理』を施した完成品がこちら――
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マジックカッパーインゴット
素材/★6
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感触からしてわかっていましたが、いきなり★6です。
なかなかの高ランクですね。これならブロンズもいけそうです。
ですのでさくっと行ってみましょう。
材料は『魔石』の量が倍近くに増えましたが、他の分量は『マジックカッパーインゴット』と同じです。
完成品はこちら――
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マジックブロンズインゴット
素材/★4
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悪くはないのですが、この結果からいうと『マジックアイアンインゴット』は恐らく無理ですね。
『物体X』にはならなくても★2、最悪は★1が限界といったところでしょう。
まぁやっと普通のアイアン系装備が安定して製作できる程度なのですから仕方ありません。
マジックインゴットをもういくつか製作し、さっそく試作品を作ってみましょう。
まずは簡単に板状に『成型』して、そこに『細工』をフル活用して『魔術紋様』を刻んでいきます。
じっくりと2時間近くかけて刻みあげ、完成したのがこちら――
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青銅板/魔術陣:フィジカルエンチャント:物理攻撃力強化・微
アイテム/★3/使用回数4回
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試作品として作ったのですが、防犯機能も働いていないようで『魔術陣』同様に『魔術紋様』も消えて、無事成功です。
しっかりと『魔術陣』として機能しているようですし、使用回数も『魔法紙』の倍です。
でも思ったよりも使用回数の伸びが悪いですね。
もしかして『青銅板』は耐久値が低いのでしょうか。
ちなみに『青銅板』はレシピなどはないのですが、オリジナルではないみたいです。まぁただの板状にしただけですしね。
一応余っている『マジックカッパーインゴット』で『銅板』を作ってみましょう。
完成品はこちら――
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銅板
アイテム/★6/耐久20
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……思った以上に耐久が低いですね。ただの板なので銅も青銅もそう大して耐久は変わらないでしょう。
やはりこれなら装備に刻んだ方がよさそうです。
予定通りに大盾に刻んでみましょう。
ブロンズ系のレシピは使えないので、見本にするだけにして『成型』していきます。
その他にも木材による補強も必要ですが、レシピがないので結構大変です。
レシピの有り難みがよくわかるくらいには面倒な作業が多いですが、何度も作っているのでなんとかなりそうです。
組み上げる前に『魔術紋様』を丁寧に刻み込み、組み上げて『完了処理』で細かいところを仕上げれば完成です。
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魔青銅の大盾
大盾/重装/★4/DEF+13 MDEF+9/耐久80
魔術陣:フィジカルエンチャント:物理攻撃力強化・微
使用回数16回
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完成までに3時間近くもかかりましたが、驚くべき結果が出ました。
DEFが少し低くなり、MDEFが追加されているのは恐らく、マジックインゴットの特性でしょうか。
それよりもやはり装備の耐久が高いおかげで使用回数がとんでもないことになっています。
もちろんオリジナルとして自分で名前もつけられました。
では実際に使ってみましょう。
『魔術陣』同様の使用が出来るならば完璧ですが、装備はアイテム使用短縮システムである『ショートカット』に登録すると脱着にしかなりません。
どうやらこれは『魔青銅の大盾』でも変わらないようで、『ショートカット』からの使用はできないみたいです。脱着は出来ましたけど。
ですが触れてさえいれば問題なく使えることはわかりました。
そして使用すると耐久が大幅に減少するです。
耐久は戦闘をしても、早々減るものではありません。
でもたった1回の使用で、『魔青銅の大盾』は耐久が5も減少しました。
当然使用回数も減っているので、使用回数が0になれば破損状態になるのか、それとも『魔法紙』の『魔術陣』同様に消滅するのか。こちらも実験が必要ですね。
でもその前に耐久を回復してみましょう。
装備はリペア系の『アーツ』で耐久を回復させることが出来るのですから、もしかしたら使用回数も回復する……なんて。
「うわー……」
どうやらビンゴだったようです。
減った耐久を回復させたところ、使用回数も16回に戻っていました。
これってやばくないですかね。
『魔法紙』の『魔術陣』の需要がなくなってしまいますよ。
……でも『魔術紋様』を描き慣れている私でも刻むのは大変でした。
レシピ登録した場合にどうなるかにもよりますが、量産するのは時間と労力の観点から言って無理です。
それに『魔術陣』は威力が固定ですから、鍛えたスキルには遠く及びません。
それでもスキル枠を占領せず、魔力も詠唱時間も必要ない『魔術陣』を、リペアすれば何度でも使えてしまうのは危険でしょう。
デメリットは手を触れていなければ使えないということでしょうか。
装備ですから、装備していれば問題ないかもしれませんが、性能が若干落ちているのも気になるところです。
でもその程度なら使用する時に『ショートカット』から脱着すればいいだけのような気もします。
使用回数を0にもしてみましたが、どうやら消滅せず、破損状態になるだけのようです。
なのでリペアでちょっと修復値がかかりましたが、無事直せてしまいました。
本格的にこれはダメでしょう。
ミカちゃんと姫ちゃんに要相談案件です。




