38 『やばいです』
【レンタル生産施設】に戻る前に、図書館に寄って借りた本の返却と新しい本を借りて行きましょう。
急ぎの用事は大体片付きましたからね。
移動中はお馴染みのマナちゃんが変装グッズの中に紛れてLv上げ中です。
移動程度ではなかなか育ちませんが、多少とはいえ経験値が入っているのでちりも積もればなんとやらです。
スタスタ、と慣れた道を歩いていると、装備が初期に近い状態の開拓者を結構目にします。
アップデートに合わせて入ってきた新規組でしょうか。
皆一様に楽しそうに何か話していたり、露店を見て回っていたりするようです。
私はもうカッパー系装備は作っていないですから、彼らと関わりが出来るのは当分先の話でしょうね。
でもほんの10日ほど前は私も似たようなものでした。
人それぞれのプレイスタイルがあるのでなんともいえませんが、早い人ならすぐに追いついてくるでしょう。
プレイヤーの『クラン』も出来始めてあちこちで勧誘を行っている人もいます。
食料を購入するために覗いた露店にも、自身の所属している『クラン』のHPへの誘導メッセージを設置しているところもちらほらあります。
私もお店の玄関ドアにでも貼っておいたほうがいいんですかね。
まぁでも商品が商品ですので、必要になる人は下調べをきちんとしてくるのが大半です。
掲示板をちょっと覗けばわかりますしねー。
今でもお客さんには困っていないですし、お店も小さいのでこれ以上は過剰ですし別にいいでしょう。
色々と変化している大通りを眺めながら進めばすぐに図書館にはつきました。
借りていた本を返却し、さっそく『発見』を常時使用しながら本探しです。
『魔術陣』の新しいレシピも欲しいですし、他にも販売されていないレシピも欲しいです。
全部が全部製作するわけではないですが、何がきっかけで必要になるかわかりませんからね。集められるだけ集めておくべきでしょう。
そういう意味ではレシピ専門店の方で販売されているものも全部購入しておくべきかもしれません。
例え、図書館で入手できるものもあるといっても、狙ったものが見つかるというわけではありませんからね。
本を借りたら行ってみますか。
『魔術陣』といえば、そろそろ進化が出来るLv100に届く頃だったと思います。
ただ問題は最近立て続けにスキルの進化を行っているので、SPがちょっと減少気味なんですよね。
今までの傾向から『魔術陣』の進化は問題ないと思いますが、新規取得してSP確保用に育てているスキル群での増加が追いつかなくなってきています。
生産しかしていない私では、そろそろSP不足で進化させることができないスキルが出てきそうです。
順調に育っているという証なのですが、これは嬉しい悲鳴というやつですかね。
もしかして遂に街の外に出る時期が来てしまったのかもしれませんね。
ついでに前から気になっている合同採取ツアーとか行きたいかもしれません。
【開拓者組合】の掲示板にも毎回貼られていて、定期的に行っているようですし。
とはいえ、まずは本探し……なのですが、先ほど確認したら『魔術陣』のLvが99ではありませんか。
ログアウト前までアリミレートさんの注文の品を描いていたのに気づきませんでした。
『鞄』の在庫を確認すると、まだ『魔法紙』は残っているので、ここで少し書いて進化させてしまいましょう。
『魔術陣』はこれからも私の癒やしとして活躍してもらうので、例えSP不足で喘いでいても進化させるのです。
さくっと1枚10分程度で描き上げちゃいます。
最初の頃に比べても格段の進歩ですね。まぁ今は『集中』などの補助スキルで底上げしつつ、慣れと『魔術陣』のLvのおかげもあったりするんですけどね。
あとはやっぱり私の癒やしですから。好きこそものの上手なれ、で自然と上達して早くなっているのですよ。
「さて……どうかな?」
描き上がった『魔術陣』を仕舞いつつLvを確認すると、案の定Lv100になっているではありませんか。
ログアウト前に気づいていればすぐでしたねぇ……。
まぁ、別にだからどうしたというわけでもないので、さくっと進化です。
『魔術陣Lv100』の進化後は、やはり『魔術陣・改』のようです。
SPは20です。
これで本格的にSP不足に陥ってしまいましたが、後悔はありません!
ちなみに残りSPは2です!
現在の私のスキル群はこんな感じです。
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メイン
鍛冶・改Lv22/商人・改Lv2/言語Lv68/魔術言語Lv34/魔術陣・改Lv1
発見Lv55/集中Lv57/魔力操作・改Lv27/魔力強化・改Lv27/魔力回復力強化・改Lv27
召喚Lv51
サブ
皮革Lv91/細工Lv97/裁縫・改Lv2/織Lv70/道具製作Lv93
木工Lv94/錬金術Lv88
SP2
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次に進化できそうなスキルは『細工』ですね……。
『木工』『道具製作』『皮革』もきてますねぇ……。やばいです。
どれもこれも私の生産作業では必須のスキルですから、全部進化させたいです。
困りましたねー。
まぁでも、困っていても仕方ありません。
今できる事をしっかりやってしまいましょう。何せ図書館には閉館時間というタイムリミットがありますからね!
いつまでも悩んでいたら本を探せません。
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『発見』を酷使しつつ本を探していると、さきほど『魔術陣』の進化前にちらっと『発見』で見た部分が反応しています。
進化前は反応せず、進化後は反応している。
つまりは条件を満たしたということでしょう。
ということはもしかして、前に読んだ本にも新しいレシピがある可能性が?
もちろん前に読んだ本も『発見』によって反応があります。というかレシピは入手しても反応は消えませんので、当然スルーしていました。
『発見』が新たに反応する条件の詳しいところは当然わかっていませんが、読みなおしてみる価値は十分にあるでしょう。
それほど文量があるわけでもないので、一度読んだ本ならすぐに読み返せますし。
新たに反応した本と以前読んだ本を手にして、机に向かいます。
とりあえず、読んだことのある方からさくっと読みなおしましょうか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
結果として、3冊読みなおした時点で最後の一冊だけ新しいレシピを入手することに成功しました。
どうやら『魔術紋様』の読めなかった部分が読めるようになったおかげで入手できたみたいです。
『魔術陣・改』に進化したことにより、『魔術紋様』が読めるようになるんですね。『魔術言語』だけではないようです。
……いや、もしかしてこれも条件を満たしたから? どちらか単独ではだめとか?
疑問に思ったならやってみればいいんです。
何せスキルはメインスキル枠に装備しなければ効果を発揮しませんからね!
というわけで、簡単な実験の結果、私の予想は正しかったみたいです。
『魔術言語』と『魔術陣・改』の両方をメインスキル枠に装備しなければ、新たに読めるようになった部分は読めませんでした。
『魔術陣』を育てているような奇特なプレイヤーはほぼいないでしょう。
図書館に通っているプレイヤーもほとんど見ませんので、他に入手手段がなければ私しかこのレシピを持っていないことになりますね。
まぁでもレシピの入手手段はいくつかあるわけですし、他のルートもあるはずです。
ちなみに手に入ったレシピはこちら――『レシピ/鍛冶:マジックカッパーインゴット』。
まさかの新種のインゴットです。
カッパーなのが残念ですが、他の本も読めばもしかしたらブロンズのもあるかもしれません。
これは俄然やる気が出てきましたよ!
何せ以前行った耐久値の高い素材への『魔術紋様』の刻印実験では、「素材探しからになる」と結論付けたわけです。
その素材になりそうなもののレシピが見つかったわけですからね!
さぁガンガン読んでいきますよー!
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結果から言って、『マジックブロンズインゴット』のレシピはやはり存在しました。
『マジックカッパーインゴット』のレシピを入手した次の次に読んだ本での入手です。
ここまでくると『マジックアイアンインゴット』もあるはずです。
でもこれ以上はまだ読んだこと無い魔術系の本になるので、読みなおしのような早さでは出来ないようです。
基本的に読みなおしの場合は一度読んで知っているので、『魔術紋様』以外はほとんど飛ばしてます。
『魔術言語』と『魔術陣・改』の合わせ技で読めるようになっているので、Lvが低いとどうやら読めないようです。
つまりはちゃんと読んで『魔術言語』のLvを上げろというわけです。
何気なく明かり取りの窓に目を向けると、外は雨が降り始めたようです。
【ふろんてぃあーず】ではストレス排除の一環として、水に濡れる事はありません。なので川や海に入っても装備も体も濡れません。
でも潜っていると対応するスキルがなければ一定時間で溺れます。
私は街の外に出ないので川や海に行く事はありませんが、海はともかく川は【首都サブリナ】の近辺にあります。
いずれは海のフィールドエリアも開拓されるでしょうが、私が行くとしたら安全なところで遊ぶくらいでしょうか。
ちなみに雨が降っている間限定で配置や量が変わるMOBなんかもいるみたいで、限定素材を狙う開拓者なんかは雨が降ったら喜々として狩り場に突撃していくみたいですよ。
閑話休題。
【レンタル生産施設】で長い時間を過ごす私は運良く今まで雨に遭遇することはありませんでしたが、濡れないとはいえ雨の中歩き回りたくありません。
それに【首都サブリナ】近辺はあまり長く雨が降らないそうで、少ししたらあがるでしょう。
なので今日は図書館でまったり本を読むことにします。
お店の商品補充はその後でも十分間に合いますしね。




