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35 『まったくもー』



 昼食ログアウトとお店への補充を挟みつつも、生産作業を続けること10時間ばかり。

 途中で『渇水度』と『空腹度』が4割をきったので、休憩代わりに露店で買ってきた物を適当につまんでみましたが、ほむちゃんも普通に食べられるみたいです。

 でも別に召喚対象には『渇水度』や『空腹度』はないんですけどねー。

 まぁ喜んでいたのでよかったです。

 あ、ちなみに★3でしたので味は普通でした。


 作業を続けていると、ミカちゃんから『コール』です。

 珍しいですね、『メール』を挟まずいきなり『コール』をしてくるなんて。何かあったのでしょうか


『ユリ聞いてよユリー!』

『どうしたの? レイドボスは? そういえば2時間くらい前に街道が再開通したって『女神(システム)インフォ(インフォメーション)』があったよね』


 『女神(システム)インフォ(インフォメーション)』とは、運営からの緊急告知やゲーム的に大事な出来事があった場合にのみ行われるアナウンスです。

 今回の『女神(システム)インフォ(インフォメーション)』は街道を塞いでいた魔樹を切り倒し、街道の再開通を知らせるものでした。

 これは魔樹に侵食されたエリアを解放した場合に行われるタイプのものです。


 【ザブリナ王国】で起こっている異変の1つがとある街道ですので、ミカちゃん達は今到達可能な異変であるそこを目指していたわけです。

 途中で街道を魔樹が塞いでいて入れない事態になっていたりして、まずは伐採作業をしていたみたいですし、その完了告知が先ほどの『女神(システム)インフォ(インフォメーション)』というわけです。


『それがさーレイドボスはやっぱりいたのよ! でも問題はそこまでの道のり!

 これが酷くてさ! もう凄まじい数のMOB(モンスター)MOB(モンスター)MOB(モンスター)

 消耗戦になっちゃって、しかもある程度倒したらいきなり沸くんだもん!

 結局全滅よ! 全滅!』

『ありゃりゃー』


 ミカちゃん達の読みは的中したみたいですが、そこまでの道のりが険しかったみたいですね。

 ミカちゃん達はレイドPT(パーティ)と呼ばれる複数のPT(パーティ)を連結した大型のPT(パーティ)を組んで挑んでいたはずです。

 しかも戦闘系トッププレイヤー集団が集まっていたはずなのに、そのレイドPT(パーティ)が全滅ということは相当な修羅場だったのでしょう。私じゃ絶対無理ですねー。


『――なのよ! 今度はアイアンで揃えて逆襲してやるわよ!

 だからね!』

『はいはい、早く作れってことでしょー?

 実はそろそろ試してみようと思ってたんだー。タイミングいいねー』


 全滅して溜まっていた愚痴をぶちまけていたミカちゃんですが、あっさりとリベンジ宣言です。

 まぁミカちゃんですのでやられたままにするわけがないのはわかりきっていたことですけどね。

 負けず嫌いですから。


『ほんと!? あ、あのさ……ユリさん』

『何、気持ち悪いよ、ミカちゃん?』


 こういう反応をするときのミカちゃんは決まっています。

 なので私の返しもただの確認みたいなものです。


『今すぐ『クラン』たちあげるからそのお祝いとして私のPT(パーティ)の分も作って!』

『えぇー……』


 ですが、これはさすがに予想外でした。

 ミカちゃんの装備一式くらいならアイアンで揃えるくらいはしてあげたいですけど、それがPT(パーティ)メンバー全員となると話は別です。

 しかもそれを『クラン』立ち上げのお祝いとして要求するとは……。

 まったくミカちゃんには勝てませんね。


『はぁ……。でもまだ安定して作れるかはわからないから一端保留ねー』

『わかった。でもユリならやれるってあたしは信じてる!』

『はいはい、一応メンバーの装備構成をよろしくねー』

『了解! じゃあ今すぐ『メール』する! そんで『クラン』立ち上げてくる!』


 テンションが最高潮になったミカちゃんが『コール』を切ると、すぐに彼女のPT(パーティ)メンバーの装備構成が書かれた『メール』が返ってきました。

 すごい早さです。さすがミカちゃん。

 きっとそのまま特殊クエストを受けに行ったんでしょうね。

 まだデスペナルティが効いていると思うんですけど、『クラン』を立ち上げるための特殊クエストは戦闘要素などはないので問題はないでしょう。


 それにしても戦闘系トッププレイヤー集団で組んだレイドPT(パーティ)が全滅するほどのレイドボスですか……。

 掲示板でも一番簡単だろうと言われている異変の相手がこれですから、他の異変はもっとつらそうですね。

 まぁ私は生産者ですから関係ないんですけど。


 ミカちゃんのPT(パーティ)は魔法使い以外は全員重装系で固めているみたいで、アイアンが安定して作れれば大幅に戦力が上がるはずです。

 重装系といってもレシピはいっぱいあります。

 ミカちゃんはその中でも割りと動きやすいタイプで若干防御力に劣る装備ですし、盾となってPT(パーティ)メンバーを守るタンク役の人は大盾を主軸に、重量などで動きを制限するけど防御力が非常に高い系統の装備で固めています。

 同じ装備を作ればいいなら楽ですけど、そうでもないので結構大変そうです。

 それにカッパーやブロンズでは単一素材で装備を作れる場合が多かったですが、アイアン以上になると必要となる素材が複雑化してきます。

 この辺もスキルに合わせて時間がかかるようになっているのでしょう。

 こういった制限はネットゲームですので仕方ありません。


 何はともあれ、まずはアイアン系装備が安定して作れるようになったかどうかの確認です。


 さぁやりますよ!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 結論からいうと『鍛冶・改Lv20』で安定してアイアン系の装備の製作が可能となるようです。


 ====

 アイアンショートソード

 小剣/★3/ATK+48/耐久80

 ====


 NPC(ノンプレイヤーキャラ)店舗にたまに入荷するアイアン系をちょいちょい入手しているミカちゃん達なので、全部が全部作る必要はありません。

 この『アイアンショートソード』も1本は確保しているそうです。

 でもミカちゃんは『二刀流』のスキルを最速で取得しているので、もう1本必要なのです。


 ミカちゃんの要望通りにいくつか装備を作ってみましたが、やはり★3が限界です。

 上のランクや『オプション品』を目指すにはもっとLvを上げなければ無理でしょう。

 それには私といえども時間がかなりかかります。

 となるとこれ以上の戦力強化はアイテム頼りになります。


 一番簡単なのが装備強化用アイテム――『魔晶』です。

 使用すると装備の性能を強化してくれるレアアイテムです。

 レアアイテムですので、ブロンズ系装備にすら使う人が稀な感じです。カッパーに至っては相当お気に入りの装備じゃないと使う人はいないでしょうね。

 ですが、アイアンなら使う価値が十分にあります。

 まずブロンズの倍近い性能を持っていますし、次のスティール系装備に換装するまでの時間を考えたら尚の事です。

 経験上、私がスティール系装備を安定して製作できるようになるまでは相当な時間がかかるはずです。

 生産にかける時間が他のプレイヤー開拓者よりも多い私でそれなんですから、他のプレイヤー開拓者ではお察しもいいところです。


 以上の理由から、ミカちゃん達は溜めておいた『魔晶』を使うでしょう。

 とはいっても、腐ってもレアアイテムですからそう数はないでしょうけど。

 しかも『魔晶』は消耗品で、必ずしも強化が成功するとは限りません。

 そしてここでランクが大きく関わってきます。

 ランクが★5を超えると、安全圏と呼ばれる強化成功率100%の領域が発生するのです。

 ★5では安全圏も『魔晶』使用1回分の+1まで。

 ★7で安全圏が+2となり、★9で安全圏+3、★10で安全圏+4となります。

 飛ばしたランクでは成功率100%ではなくなりますが、ある程度成功率が上がるみたいです。

 これらは公式HPに書かれていることなのでまず間違いありません。


 ちなみに+が増える毎に装備の性能全て(・・・・)に対してプラス補正がかかるようになります。

 これが『魔晶』による装備強化の醍醐味でしょうか。

 性能全て(・・・・)なので、当然『オプション』などにも効果が及びます。

 掲示板での検証結果では、固定値の加算ではなく、乗算(・・)という話ですので、元となる装備の性能が良ければ良いほど効果も高くなるということです。


 もちろんメリットばかりではなく、『魔晶』の使用に失敗した場合は安全圏以上の+が付いている場合は一定確率でマイナスされ、装備の耐久が全損して破損状態になります。

 さらには低確率ですが装備自体が消滅するそうです。

 メリットが大きいだけにデメリットもそれなりには高いのです。


 ギャンブル性が強いものなので、やりすぎて『魔晶破産』とかになる人も出てきそうですね。

 強化数が多ければ多いほど性能も値段も跳ね上がりそうですし。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 一先ずアイアン系の安定生産が可能なことがわかりましたので、ミカちゃんに『メール』しておくとしましょう。

 今頃もう『クラン』立ち上げは終わっているでしょうし。


『よっしゃきたー!』

『ミカちゃん……女の子なんだから……』

『そんなことはいいのよ! 『クラン』立ち上げたよ!

 『ミストナイツ』! あたしの『クラン』よ!』

『はいはい、おめでとー。『メール』に書いた通りだから今から作るけど、今回だけだからね? わかってる?』

『もちろんでございますユリさま!』

『まったくもー』


 毎回理由をつけて全員分の装備の新調を頼まれるのは、例えミカちゃんといえどどうかと思います。

 他の全ての製作依頼を断っているわけですし。

 それでもミカちゃん個人の装備新調だけなら一式でも別に構いませんけど。そこはほら、親友ですので。


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