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29 『厳密な規格でもあるんですかね』



 『キッドモンキーでもわかる属性教本2』を隅々まで読みなおしている間に店員さん達の出勤時間になっていたようです。

 今日のシフトは淡いブロンドにそばかすが似合う女性――シャーロさんと濃い緑色の髪をお団子にしたシニョンの女性――ニロさんです。

 今日はお休みのもう1人は水色の髪をいつもポニーテールにしている女性――アーロさん。

 3人とも最後がロで統一されていますが偶然です。


 皆さん店員経験豊富なベテランさんですが、年齢も20代後半でそろっています。


「「おはようございます、店長」」

「おはようございますー。ララルさんからお土産にケーキをもらっていますのであとで食べて下さいー」

「ありがとうございます。ところで店長、昨日なんですが――」


 ニロさんが私のケーキ発言に反応して、小躍りしそうなくらいな笑顔になってトリップしている間に、真面目なシャーロさんが昨日あったことを報告してくれます。

 特に大きな事件というわけでもなく、いつもの製作依頼でしつこかった輩の報告ですね。

 適当に処分を下して今回はスルーすることにします。でも次また同じことがあったら出禁ですね。

 店員さん達が警戒対象の客を報告してくれるのでとても楽です。

 さらに彼女達は私が出禁にした開拓者達を【開拓者組合(ギルド)】の方にも報告してくれています。

 【開拓者組合(ギルド)】に報告した内容から衛兵への巡回願いなどが出ているようで、そのおかげでお店の周辺は平和なんですよね。

 【開拓者組合(ギルド)】を通した雇用はこういうところでも便利です。


 甘いもの大好きなニロさんが戻ってきて一緒に報告を始めますが、緊急性を要するものは『メール』ですぐに連絡を取るようにしてあるので定時報告みたいなものです。


「では今日も元気に頑張りましょうー」

「「はい!」」


 店員さん達への対応にも大分慣れてきました。

 初めのうちはどうしても年上でベテランな店員さん達にリードしてもらっていましたが、今では慣れてきて普通に指示を出せるようになりました。

 とはいってもまだまだ経験が浅い小娘ですからね。色んな部分で店員さん任せです。

 でなければいくらシステムで簡略化されているといっても、店舗運営なんて私には無理ですからね。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 お店から出る時には変装はしません。

 変装のパターンがばれちゃいますし、お店の周辺は掃除がされているので平和ですからね。

 もちろんすぐに近場の店舗に入って変装して他のお客さんに紛れますけどね。

 夜タイムが終わり、狩り帰りのプレイヤーの開拓者が多いので、どの店舗もそこそこの賑わいです。

 おかげで自然にお客さんに紛れることが出来たと思います。

 まぁ私もプロではないので、本当に尾行を撒けているかはわかりませんけどね。

 【ザブリナ王立図書館】に寄って読み終わった本を返却して、新しい本を借りていきます。

 『言語』はLv50を超えていますので借りていける本も5冊です。

 館内で読んでいってもいいのですが、最近は1冊1000ニルを払っても借りて行くパターンが多いですね。

 お店のおかげで5000ニル程度なら本当に一瞬で稼げますし、先ほどのようにちょっとした待ち時間に読んだり出来るのも利点です。

 刺繍や『魔術陣』製作をしてもいいんですが、本を読むのも好きなんですよね、私。レシピも手に入りますしね!


 『キッドモンキーでもわかる属性教本』の1巻、3巻などを借りて向かう先はいつもの【レンタル生産施設】です。

 もうここに通うのも完全に日常の一コマですね。


 最近は買取素材を使い切るのも大変ですから、プレイ時間のほとんどをここで過ごしているといっても過言ではありません。

 でもそういえばここ――南門大通りの【レンタル生産施設】以外はほとんど使ったことがありません。

 どの【レンタル生産施設】も同じ内装だとは知っていますが、たまには気分転換に他のところに行くのも悪くないかもしれないですね。

 それこそ噂になっている違う施設を使っているというのに信憑性をもたせられますし。


 でも一番近いところだと徒歩で30分はかかるんですよね。【首都サブリナ】を定期的に周っている駅馬車を拾っても10分くらいはかかります。

 まぁ散歩ですね。相場の収集にもなりますし。


 せっかく着いた【レンタル生産施設】ですが、スルーして向かう先は西門大通りです。

 西門はPT(パーティ)向けの難易度がちょっと高い狩り場が近くにありますので、今一番活気がある場所です。

 活気がありすぎて混雑しすぎで面倒くさい場所でもあります。


 初日から私も避け続けてきたところですが、掲示板で私の主な活動場所が南門と周知されてからは、活動拠点を南門に移すプレイヤー開拓者も増えて混雑も多少はマシになったとかなんとか。

 でもさすがに夜タイム明けの活動期といっても過言ではない時間帯は混んでますね。

 まぁ南門も混んでましたので、どっこいどっこいといったところでしょうか。


 変装中なので問題はないですけど、わかりやすいいつもの格好だったら即絡まれそうですね。自意識過剰とかではなく、『公式メール事件』の前は実際に絡まれていましたので厳然たる事実なのですよ。


 西門の【レンタル生産施設】は外観も内観も南門の【レンタル生産施設】とまったく同じです。

 ただ共有スペースを借りている開拓者の数が少し多いですね。個室の状況は同じくらいみたいです。


 掲示板情報では南門は私や甘ロリさんみたいなトップの生産者が多く活動しているらしいので、生産者の数が比較的多いみたいです。

 トップの製作するアイテムにつられて集まる開拓者が素材もついでに売っていってくれるので、素材の回りもよく、その素材を目当てに集まる生産者がさらにアイテムを製作して販売する。

 正のスパイラル的なものが発生しているようで、素材の使い回しが効く現状では特に効果的に南門に生産者が集まるようになっているようです。

 それでもその南門と同じくらいには【レンタル生産施設】が稼働している西門は、それだけ開拓者が多いということでしょう。


 逆に北や東の状況は芳しくないようですが、まぁ私の知ったことではないので別に問題ありません。

 駅馬車を拾えば移動はそれほど苦ではないですしね。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 さっそく個室を借りてみましたが、情報通りに全部同じです。厳密な規格でもあるんですかね。いえ……ゲームでしたのでそういうものなのでしょう。


 場所は違いますが、【レンタル生産施設】の個室は個室です。やることは変わりありません。

 なのでさっそく生産作業です。


 とはいっても今回はいきなりですが、私の大好きな『魔術陣』製作です。

 せっかく手に入った盾系の『魔術陣』レシピですからね。実際に描かずして何がバケツさんでしょうか!


 使うのは自分で作った『魔法紙』です。

 『錬金術』のLvも日々成長していますので、安定して製作できるようになったのです。

 これでNPC(ノンプレイヤーキャラ)店舗で高い『魔法紙』を購入する必要はなくなりました。

 ランクも安定の★3です。

 安定して製作できるようになった段階で大量に作ってあるので、まだまだいっぱいあるのでガンガン描いていきますよ!


 『魔術陣:火弾』の『魔術紋様』と違い、同じ初級のはずなのに複雑さが増しています。

 実にいいですね。複雑さが増せば増すほど私の胸はキュンキュンしちゃいますよ!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 複雑さが増したとはいえ、所詮は初級の『魔術陣』です。

 たくさんの『魔術陣』を癒やしとして描いている私にとっては、少し癒やしが増すだけです。

 いえいえ、癒やしは増せば増すほどいいものですけどね!


 というわけで完成したものがこちら――


 ====

 魔術陣:水盾

 アイテム/★3/使用回数2回

 ====


 安定の★3ですが、使用回数が『魔術陣:火弾』に比べれば1回少ないです。

 でもこれはLvの高い『アーツ』になればなるほど、元となる『魔法紙』の耐久値を食うので仕方ない話です。

 逆に言えば元になる『魔法紙』の耐久を上げれば上げるほど使用回数が増えるということでもあります。しかしまだ★3の『魔法紙』しか安定して製作できませんので仕方ありません。

 それでも水盾が2回も使えれば十分な商品となるでしょう。さすが私の癒やしです。素晴らしい。


 相場の方も情報があったみたいでしっかり詳細欄に記載があります。

 私の『商人』のLvははっきりいってかなり高いです。現在所持しているスキルの中でもトップクラスなのは言うに及びません。

 そりゃあ作った端から売ってますからね。今では店員さん任せとなっているといっても、それでもお店は私のものですから経験値は当然入ってきます。


 そんな『商人』のLvは81です。

 Lv80を超えると新たな『アーツ』が取得できますので、今回はその『アーツ』――『商人アーツ/Lv80/相場自動収集・真』のおかげだと思います。

 『商人アーツ/Lv30/相場自動収集・改』で過去に渡って相場情報を収集できるようになっていますが、『商人アーツ/Lv80/相場自動収集・真』ではさらに広く深く収集できるようになるのです。

 これにより今までまったく情報が出てこなかった、この『魔術陣』が過去に販売された事があることがわかりました。

 恐らく製作された数が少なすぎて当事者達しか知り得なかったのでしょう。

 『魔術陣』の使用は端から見て、普通にスキルを使っているようにしか見えませんからわからないのも無理はありません。


 まぁ私としては相場情報がわかればそれでいいです。所詮推測でしか無い過去になんて興味はありませんしね。

 現状では間違いなく希少な物ですが、相場情報があるならその値段で売るべきでしょう。

 現状では希少でも図書館を利用する開拓者が増えればいずれは発見されることですからね。現に少しずつ増えてましたし。

 値段も重要ですが今は他のレシピもどんどん試してみるべきでしょう。


 さぁ私の癒やしタイムはこれからですよー!


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