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28 『くぅ! やった~! やりましたよ~!』




 美味しいケーキに楽しいお喋り、今日の女子会も非常に有意義なものでした。

 でもそろそろ甘ロリさんに『クラン』に関しての話をした方がいいんですよね。

 甘ロリさん的にはもっと私と親しくなって、それから話の続きとしたいのでしょう。そうしたほうが断られる確率がグッと下がると思っているでしょうし。

 でも私としてはミカちゃんの助言と、こうしてお喋りしたりして楽しい時間を過ごしている間に掴んだ甘ロリさんの性格とかもあって、断る気はもうほとんどないですからね。

 当然甘ロリさんはそのことを知りませんので、もっと仲良くなるためには『クラン勧誘』なんて邪魔にしかならない事項は排除しておくべきなんです。


 『クラン』に入ってもらうために仲良くなるんじゃなくて、そういうのを抜きにして仲良くなりたいじゃないですか。


「というわけで、今勧誘ってどの程度進んでるんですか?」

「ぇ、あの~……何がというわけなのかわかりませんけど~……まぁいいです。今のところはですね~」


 甘ロリさんが始めた現在の勧誘状況解説によると、お土産に持ってきてくれたお菓子系生産者の他にも、武器専門、錬金術専門の双子の計4人の勧誘に成功しているみたいです。

 全員がトップ生産者という話なので、甘ロリさんの勧誘の腕前はなかなかのご様子。

 何せトップ生産者となれば普通は他の『クラン』が専属に、と欲しがるわけですからね。

 専門としているものが違うとしても、トップクラスの腕前を持っていればそれだけで十分に価値があります。

 特に武器や回復アイテムなんかは生産している人も多いですから、そのトップとなれば競争率は段違いのはずです。


 私自身も重装系装備を中心に生産しているので、専属への勧誘はかなり多いですからね。


「つまり専属勧誘にうんざりしてる人を狙ってるんですかー?」

「結果的にそうなってるだけですね~。

 最初はもっと幅広く勧誘してたんですけど、他の『クラン』に入ってしまう人ばかりでしたから~」

「まぁ戦闘系の開拓者がいる方が素材の確保とかしやすいですからねー」

「そうですね~。でも私が作りたいのは生産専門の『クラン』ですから~」


 でもこれは私にとっては都合がかもしれないですね。

 トップ生産者となれば加工素材のクレクレ行為なんてしないでも自分で製作するでしょう。

 若干ジャンルが被っているとはいえ、基本的に私はレシピの分だけ幅広く作っているに過ぎません。その方が商品のバリエーションも増えて売れやすいですからね。


 勧誘に成功している人達は専門にしているみたいですから、ギブアンドテイクを前提にした情報交換も期待できそうです。

 それに専属勧誘にうんざりしている点なんて私も一緒ですし、色々と気が合いそうな気もしてこないでもないです。

 まぁその辺は実際に話してみないとなんともいえないでしょうから、希望的観測ですけど。


 でも釘を差しておくべき事はいくつかありますので、その辺の交渉から入ってみましょうかね。


「ララルさん、話を聞く感じだと前よりもずっと魅力的になってますよねー。

 それでちょっと聞きたいんですけど――」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ではでは! これからよろしくお願いします~!」

「はーい。こちらこそよろしくお願いしますねー」

「めでたい」

「本当ですよ~。一番の難関だったバケツさんからこんなに早く確約を貰えるなんて~……くぅ! やった~! やりましたよ~!」

「あははー、大げさですよー」

「そんなことありません~! 最初の最初なんてバケツさんのつれなさに私本当に泣きそうになったんですよ~!?」

「その節はごめんなさい」

「ぁ、いえ……いいんです。バケツさんの状況を考えたら仕方ないですし。

 あの時は私もタイミングが悪かったかなぁ~とは思ってますので~」


 私が出した条件のほとんどは問題なく甘ロリさんに承諾してもらえました。

 ただ中には今後次第という保留のものもあります。

 特に今はトップ生産者のみが加入確約状態ですが、今後はどうなるかはまだわかりません。

 そうなった時に素材の融通や情報交換などで問題が発生する可能性は大きいです。

 甘ロリさんもクランマスターとして対処はしてくれるという話ですので、一旦保留にして様子をみることにしました。

 あくまでも甘ロリさんが作る『クラン』に入るわけですからね。


 それでもこの数日で彼女の人となりをある程度知ることが出来て、もっと仲良くなりたいと思えるくらいには好意的に見れています。

 なのでその辺は安心して見ていればいいんです。


「それで実際に『クラン』を立ち上げるのはいつになるんですかー?」

「あ~……それがですね。まだ私【開拓者組合(ギルド)ランク】が★3になったばかりでして~……」

「じゃあまだかかる感じですね~」

「急ピッチで色々作っているので、そんなに待たせることはないと思うんですが~……」

「まぁこればっかりは仕方ないですよー。プレイ時間は人それぞれですしー」


 『クラン』は【開拓者組合(ギルド)ランク/★4】の特殊クエストを受けなければ作れません。

 早い人ではもうこの特殊クエストをクリアして『クラン』を立ち上げたプレイヤー開拓者も出ていますが、まだまだ圧倒的に少ないはずです。

 他にも『クラン』はNPC(ノンプレイヤーキャラ)の開拓者が立ち上げたものがたくさんあります。ですので自分で立ちあげなくてもそちらに入るという選択肢もあって余計に少ないみたいです。


 ちなみに私の【開拓者組合(ギルド)ランク】は★3の後半に入ったところです。

 毎回製作したものは評価してもらっていてもこれですから、純粋な生産者で『クラン』を立ち上げるのはとても大変です。

 甘ロリさんは私と同じで戦闘はまったくしない純生産者ですが、オリジナルのアイテムをたくさん製作しているので早い方ではあります。

 私はほら、プレイ時間がものすごく多いですし、そのプレイ時間のほとんどを生産に充てていますからね、仕方ありません。


 甘ロリさんがトップ生産者の1人といっても、プレイ時間の全てを生産に注ぎ込めるわけがありません。

 彼女は彼女で勧誘を行っていますし、普通は延々生産なんて出来ませんからね。

 特に作業工程が簡略化されているといっても、適当に作業をしては相応のものしか出来上がりません。酷すぎれば失敗ですので、ある程度の集中力というものは必要です。

 私みたいに毎日連続で10時間近く安定して生産を続けられるような人は稀みたいですからね。

 まぁおかげでこうして楽しくお喋りなどしていても、他のプレイヤーの追随を許さないスキルLvを維持しているわけです。


「バケツさんの確約も頂けたところで、★4目指して頑張るとします~」

「頑張ってくださいねー」

「がんば」

「はい~、超頑張りますよ~! またです~」

「ん、また」

「また『メール』しますねー」


 そんなわけで今日はちょっと長めとなった女子会も終わりです。

 普段はミカちゃんに大量の『メール』が送られてきて強制終了するのが常ですので、終わり時がわからずついつい話し込んでしまいました。大体4時間くらいでしょうか。いっぱいお喋りしてしまいましたね。


 もうちょっと待てば店員さん達が出勤してきますので、私はこのまま借りている本を読んで待っていましょうかね。

 甘ロリさんのお土産のケーキはミカちゃんの分を除いても、店員さんの分までありますからね。

 さすが甘ロリさんです。ちゃんと店員さんの分まで考えてくれているその気遣いが嬉しいです。

 NPC(ノンプレイヤーキャラ)といっても搭載されているAIがかなり高度ですからね。話しているとAIとはとても思えないほど感情豊かなんですよ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「えっ!? こ、これ……」


 借りてきた本を読んで待っていると、新しいレシピを取得することが出来ました。

 それも『魔術陣』のレシピで、見たこと無いレシピです。

 レシピの専門店でも『魔術陣』のレシピは数が少なく、基本的なものしか売っていません。

 βテストでも『魔術陣』自体、NPC(ノンプレイヤーキャラ)から購入するものとして定着していたので、こういった新しいレシピの情報なんてほとんどありませんでした。


 取得した新しい『魔術陣』のレシピは講習(チュートリアル)報酬として貰える初級のレシピにはないものですが、カテゴリーは初級のものです。


 『レシピ/魔術陣:水盾』。


 『属性魔術:水』のLv30で取得できる『アーツ』――『属性魔術:水アーツ/Lv30/水盾』の『魔術陣』版です。

 使用者を包み込むように半球状の水の盾を位置を固定して張って、ダメージを肩代わりしてくれる『アーツ』です。

 スキルLvが上がるほど肩代わり出来るダメージ量が上がり、水の魔法攻撃に対して少し耐性を持っています。

 肩代わり出来る分のダメージは完全に無効にしてくれるという強力な『アーツ』です。


 『属性魔術』系統のスキルは基本的に同じ系統の『アーツ』を取得しますが、その挙動はそれぞれに違っています。

 例えば水盾は使用者を包み込むように位置固定で張れますが、火盾は正面にしか張れませんが任意で動かせます。

 それぞれに個性があるわけです。


 ですが『属性魔術』の盾系の『アーツ』は使用後の冷却時間――クールタイムがかなり長く設定されています。

 しかし『魔術陣』の場合はこれを無視できるので、使い方によってはかなり強力なアイテムになるはずです。

 さらにスキルを選ばずあらゆる属性に対応できるのも魅力の1つですね。

 まぁ今は水盾しかありませんし、実際の『アーツ』の方は肩代わり出来るダメージ量がスキルLvによって増えていくのに対して『魔術陣』は完全に固定です。

 他にもいくつか弱点はありますが、それでもまず間違いなく売れる商品となるでしょう。


 水盾は、ただ本を読んでいたから入手できたわけではないようです。

 実は本を読むのに必須となる『言語』のLvが50になったときに派生したスキル――『魔術言語』のおかげのようなのです。ちなみに取得に必要だったSP(スキルポイント)は初期から取れるスキルの1とは違い、10ほどかかっています。


 『魔術紋様』をもっと理解して綺麗に描けたらいいなぁ、と取得した『魔術言語』でしたが、低Lvでは当然の如く『魔術紋様』を理解するどころか読むことすら出来ませんでした。

 ですのでスキルLv上げにと魔術系の本を読んでいたのが功を奏した様なのです。

 もちろん最初はさっぱり読めませんでしたが、そこで諦めずに暗号を解読するかのように色々と試行錯誤しながら読んでいきました。

 最初の取っ掛かりを見つけてからはほんの少しずつ読める箇所が増えていき、遂に努力が実を結んだというわけです。


 どうやら今読んでいる本――『キッドモンキーでもわかる属性教本2』は『属性魔術』の盾系のレシピだけが入手できる本のようです。

 これはぜひとも前に読んだ1巻の方も読みなおす必要がありますね。

 あの時にはまだ恐らく『魔術言語』のLvが足りなかったのでしょう。でも今読めばきっと……。


 あぁ……早く図書館開く時間にならないかにゃー。


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