表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/154

24 『まずランクがおかしいです』



 私の小さなお城の外観は少し大きめの明かり取り用の窓があるだけの、一見したら一般家屋に近い形をしています。

 宣伝などはするつもりですが、これではわかりづらくて仕方ないと思います。

 ミカちゃんと姫ちゃんからも外観についてどうにかした方がいいと助言をもらっているので、一番簡単な方法で解決することにします。

 実はこのお店は入り口上部に看板を設置する場所があるんです。

 それほど大きなものは設置できませんが、目を引くには十分なものが設置できるので十分でしょう。


 近場の木材販売店舗でちょうどいい大きさの板を購入してきましたので、さっそく【レンタル生産施設】で作業を行います。


 私のお店の名前はもう決まっています。


 『バケツさんのお店 Lily』


 私の意匠の百合を英語にしただけの簡単なものですが、語感の良さは抜群です。

 何より私もミカちゃんも姫ちゃんも満場一致で気に入ったのですからコレ以外にはありえません。


 『木工』と『細工』のスキルLvがそこそこあるので、看板は簡単に出来上がりました。

 隅っこには百合の花を一輪彫り込み、可愛らしさを追加しています。

 色付けを行い、『完了処理』で細部の補正を行えば完成です。


 ====

 看板:バケツさんのお店 Lily

 家具/★4/耐久150

 ====


 特に何というわけではありませんが、看板は家具扱いなんですね。

 耐久があるということはメンテナンスが必要なのでしょうか。早々減らないと思いますけど気がついたら確認しておきましょう。


 これで看板の準備は完了ですので、露店で宣伝を行うためにもブロンズ系装備の生産に邁進することにしましょう。


 がんばりますよー!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 十分に販売品を製作して露店で販売しつつも、お店の宣伝を行います。

 お店の宣伝がメインなのでしばらく刺繍はお預けですが仕方ありません。

 お客さんの開拓者の人達も不定期な露店ではなく、場所も時間も決まっているお店の方が歓迎ムードのようです。

 まぁそうですよね。いつどこで開かれるかわからない露店よりは場所も時間も決まっているお店の方が購入しやすいですから。


 営業時間は昼タイムの8時から夜タイムの20時までなので、タイム毎に街に戻ってくる人が多いからか歓迎されています。

 中間では大きめの休憩時間を取っているので、店員さんに無理をさせることはないはずです。


 掲示板にも宣伝の書き込みをしようと思ったらすでに書かれていました。

 誰かと思ったら姫ちゃんでした。

 どうやら専用スレがある姫ちゃんが本人証明のチェック欄にチェックを入れた上で書き込んでくれたみたいです。

 基本的に掲示板は匿名性なので、本人証明にチェックを入れなければ誰かわかりません。

 逆に本人証明にチェックを入れるだけで本人だとシステム的に証明できるので、こういう場合は楽ですね。

 あまり利用する人はいないですけど。


 姫ちゃんも私もある程度有名ですし、友達なのはよく会っているので周知の事実らしいです。

 そこにトッププレイヤーのミカちゃんも合わさって、『美少女3人組』として話題になっているみたいです。


 ミカちゃんは贔屓目なしに見ても確かに美少女です。

 元気っ子で物怖じしない性格でみんなをぐいぐい引っ張っていくので、男女問わず人気がある子です。

 姫ちゃんはとても綺麗な子ですが、私が作ったフェイスマスクをずっと被っているので顔はわからないはずです。まぁ最初の頃はつけてませんでしたけど。

 私に至っては美少女ではないし、すぐに『バケツヘルム』を被ったので覚えている人なんていないはずです。

 なので一括りに美少女とされてしまうのはちょっと困惑しかないですが、こういうのは話題性を出すための演出みたいなものですから仕方ないですよね。

 美少女ですって! ひゃー恥ずかしいー!


 そんな『美少女3人組』の1人で、プレイヤー側のトップ生産者がお店を出すということで、姫ちゃんの書き込みは瞬く間に広がっていきました。

 これなら掲示板への宣伝はいらないくらいですね。姫ちゃん様様です。ありがとうー。


 販売と宣伝、買取をこなし、お店に並べる商品確保のための製作もがんばります。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 頑張って製作していたからでしょうか。

 いつの間にか★4のブロンズ系装備が出来上がり始め、『鍛冶Lv70』を超えた辺りから遂にちらほらと『オプション』がつき始めました。


 開店に際しての目玉商品確保に成功です。

 今のところブロンズ系装備の『オプション品』どころか、★4すら露店では見かけませんからね!


 多少情報収集している開拓者ならわかるはずです。

 ★4の装備が製作できるようになれば『オプション品』までもう少しだと。

 つまり露店で★4のブロンズ系装備を販売すれば、『オプション品』の販売も近いということになり、さらにはお店が開店する日が近いのです。

 当然、目玉商品としてそちらに並べられると考えるはずです。


 つまりは、無言の宣伝というわけです。

 掲示板でも恐らくすぐに情報が拡散することでしょう。

 これで開店当日に閑古鳥が鳴くことはまずないはずです。


 目玉商品を増やすべくどんどん装備を製作し、露店で販売しつつも宣伝です。

 ただし時間的にもこの露店で最後になるので販売品数も若干少な目です。

 お店の開店を控えているからといって、私には徹夜をしたりするのは許されていませんからね。

 最後の露店が終わったらログアウトしなければならない時間ですし、最後の製作追い込みはログインしてからです。


 興奮で寝れなくて寝不足で作業になんてなってしまうと目も当てられません。

 ★4が安定して製作できるようになったといっても、丁寧に集中して作業しなければ『オプション品』の製作率は下がってしまいますからね。

 ただでさえ低い『オプション』の発生率が下がってしまっては目玉商品が少なくなってしまいます。

 出来る限り『オプション品』をたくさん作って、初日を大成功で終えたいのですよ。


 ログアウト間際に興奮を落ち着けるために借りている本を全部読み、さらには『魔術陣』を数枚描いて満足したのでぐっすり寝れました。

 やっぱり誰がなんと言おうと私の癒やしです。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ぐっすりと眠り寝不足もなく、朝の諸々を終えてログインです。

 『ゲーム内時間』は深夜ですが、開店時間まで製作に充てるのであまり時間はありません。

 急ぎつつも丁寧に丁寧にカンカンカンカン、製作していきます。


 集中して作業をしていると、ふと『鍛冶アーツ/Lv50/追加』の事が脳裏をよぎりました。

 前回素材での『追加』を試した時はカッパー系装備ですら失敗した思い出があります。

 転売不可系の設定の『追加』は『オプション品』にまとめて開店前に行うつもりですので今は関係ありません。


 追い込み中で少しでも商品を増やしておきたい今、失敗する要素を入れるのはあまりよいことではありません。

 でもなんでしょう。虫の知らせというのでしょうか。

 ほんとうになんとなくふいに素材での『追加』を思い出したんです。


「1つくらい……」


 気がつけば私のトレードマークである『バケツヘルム』の製作途中で適切な素材を投入していました。

 以前はここで作業を続けると『成型』がうまく行かず、『物体X』となってしまったのです。

 でも今回は違いました。

 今まで以上にうまく形が整っていきます。


 なんでしょう、手応えが違います。音が違います。

 感じる空気が、感触が全てが違っていて……タイミング、力、角度、全てがわかるのです。

 『成型』が終わったのは本当にあっという間でした。

 さらには『細工』による彫り込みも同様に抵抗を感じる事など一切なく、すいすいと進んでいき、イメージがそのまま形になっていくような錯覚を引き起こしていきます。

 実際に私はイメージ通りのものと寸分違わず……いいえ、それ以上の百合の意匠を彫り終わっていたのです。


 感じたことがない不思議な時間が終わり、『完了処理』を施して完成した『ブロンズバケツヘルム』には驚くべき結果が――


 ====

 ブロンズバケツヘルム:百合

 頭/重装/★7/DEF+21 HP+105 MDEF+8/防御力強化・微 生命力強化・小 魔法防御力強化・微/耐久40

 ====


 まずランクがおかしいです。

 今までの最高ランクは★4ですので、3つもすっ飛ばされてます。

 この時点で驚くべきことですが、もっとすごいのは『オプション』です。

 NPC(ノンプレイヤーキャラ)の販売する装備にも『オプション品』は非常に少ないです。

 ましてや2つをすっ飛ばして3つ同時に『オプション』がついた装備となると、見たことすらありません。

 それはプレイヤーメイドであっても同じです。今現在誰も2つですら『オプション』をつけることはできていないのです。

 トッププレイヤー集団の専属であるプレイヤー生産者がある時、掲示板で愚痴っていたのを見たことがあります。

 効果のほども微だけではなく、その1段階上の小がついています。これももちろん初めてみました。一応段階的に存在しているのは知っていたのですが、自分の製作品についたのはもちろん初めてです。


 これはとんでもないものを製作してしまったかもしれません。

 『トリプルオプション』なだけでもとんでもないことなのに、防具としては非常に有用な『オプション』がつき、さらには1つは一段階高い効果です。


 すぐさまミカちゃんと姫ちゃんに『コール』を送って相談しないと!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ