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02 『さぁ被っちゃいますよー』



 【訓練所】から大通りに戻ると人人人。

 本公開で一度に数万人もの規模でログインしてくるプレイヤー達は各国に分散されているとはいえ、かなりの量です。

 目の前に広がる光景は、ゲーム特有の現実では見られないような髪の色や動物の耳や尻尾をつけたプレイヤーもいれば、尖った耳でエルフのような人もいる。それぞれが自由に『キャラクタークリエイト』した結果、本当に多種多様な見た目の人々がいますが、総じて言えることはみんな割りと美形なことでしょうね。

 私は特にその辺はいじらなかったけど、今思うとちょっと惜しかったかなと思えるくらいには目の前に広がっている光景は非現実です。

 でも現実は大量の人でごった返していて講習(チュートリアル)を受ける前の状態とほとんど変わっておらず、ファンタジー溢れるこの光景を楽しむ余裕はあまりありません。


 あれから2時間くらいは経ってるんですけど……。


 正式稼働が『現実時間』の10時からで『ゲーム内時間』では朝の6時。

 『ゲーム内時間』は『現実時間』の3倍の速さで進むのでまだ現実では1時間も経っていない。

 ログインサーバーが貧弱なんて問題は過去の出来事だから時間をずらして混雑を避けたのかな?

 でもみんな考えることは一緒という残念な結果がコレなんでしょう。


 人混みをかき分けて目指すは【レンタル生産施設】。

 私の設定した初期のスキル10個は完全に生産者よりなので、街の外に出て狩りに行くよりもこっちになるのですよ。

 ちなみに取得したスキルはこちらです。


 ====

 細工Lv5/裁縫Lv5/織Lv5/商人Lv5/道具製作Lv5/

 鍛冶Lv5/魔術陣Lv5/魔力操作Lv8/魔力強化Lv8/魔力回復力強化Lv8

 ====


 講習(チュートリアル)を受けることが出来たスキルは全てLv5にまで上がっていて、残りの魔力関連は講習(チュートリアル)を受けまくった結果です。

 生産活動には魔力が必須なのです。


 なんとかたどり着いた【レンタル生産施設】は外の人混みに反して中にほとんど人がいない。

 1階の共有スペースには30人ほどが一度に生産活動が出来るくらいのスペースがあるのに、使っている人は一桁前半です。

 生産はあまり人気がないというよりは、NPC(ノンプレイヤーキャラ)の問題だったりする。

 βテストの頃から【ふろんてぃあーず】のNPC(ノンプレイヤーキャラ)は話題になるほどすごかった。

 高度なAIにより、人間とほとんど変わらない人格を搭載し、さらにはプレイヤーが出来る事のほとんどがNPC(ノンプレイヤーキャラ)が出来るというのが【ふろんてぃあーず】の売りの1つでもあったりするのです。

 用意されていたNPC(ノンプレイヤーキャラ)に結構な数の生産者がいたのも拍車をかけていたりします。

 それもそのはず、NPC(ノンプレイヤーキャラ)はこの世界で生活しているのだ。

 生産活動を行わなければ当然生きていけない。

 そういったリアルな行動の結果としてNPC(ノンプレイヤーキャラ)の生産者がプレイヤー側を駆逐してしまうという現象が起こり、βテストではモノ好きなプレイヤーのみが生産を行う状況になってしまっていました。


 尚、当然このままだとプレイヤーの生産者不足に陥るので修正が入っています。

 プレイヤー側はNPC(ノンプレイヤーキャラ)側より成長が早くなっており、NPC(ノンプレイヤーキャラ)とは異なり成長限界が高く設定されているらしいです。

 まぁそれでも駆逐された結果があるために今のような閑古鳥が鳴いているのでしょうけど。

 まぁ空いてて私的には大歓迎ですけどね!

 私、モノ好きなプレイヤーの1人ですから!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 【レンタル生産施設】の共有スペースはレンタル料金が安い代わりに周りから丸見えで、1つのスペースに1つのスキルに対応した機材しか置いていない。

 他のスキルに対応した機材を使いたい場合は再度レンタルする必要がある。

 個室も当然ありますが、複数の機材が揃っている代わりに値段が3倍になるという、初期資金では厳しい現実が待っています。

 最初にやるべきことは共有スペースで十分なので問題ないですけどね。

 お金が溜まってきたら個室を借りたいところです。


 2時間コースで受付を済ませてさっそく始めるのは『鍛冶』。

 温度調節が出来る『魔導炉』に魔力を流して温度を設定して金床の前にスタンバイ。さくさくと『(アイテムボックス)』から素材を取り出していく。

 『鍛冶』の講習(チュートリアル)報酬で貰ったレシピをセットし、『銅鉱石』を全部取り出すとさっそく『魔導炉』に投入していく。


 ゲーム内でのストレス軽減のためなのか『魔導炉』に近づいてもまったく暑くないのはとても楽です。

 でも投入した『銅鉱石』はどんどん溶けていって不純物が浮かび上がってくる。

 この不純物を『鍛冶アーツ/Lv1/抽出』で排除していく。

 まだまだ始めたばかりでLvの低い『鍛冶』では一回では到底全ての不純物は排除できません。なので根気よく丁寧に『抽出』を続けていきます。


 スキルには『アーツ』と呼ばれる魔力を消費して使える必殺技のようなものがあり、これらをうまく使っていくと作業工程を何段階もすっとばせます。

 使えるものは有効利用しないとですよ。

 それに根気よく丁寧に作業することは関連するスキルの成長に大きく繋がるので無駄ではありません。

 スキルLvを上げて色んな物を作れるようになるのが生産の醍醐味。

 急いでるわけでもないのでゆっくり丁寧に根気よく。


 十分に不純物を排除したら『魔術陣』の時と同じように『完了処理』をすれば魔力を消費して1つ目の『カッパーインゴット』が完成する。

 6個の『銅鉱石』の不純物を排除し終わり、『カッパーインゴット』が6個完成した頃には1時間以上経過していたりするのは丁寧にやったのだから仕方ないでしょう。

 スキルLvも上がれば時間も短縮されるのだから今は精進あるのみです。


 ====

 カッパーインゴット

 素材/★4

 ====


 それでも丁寧に根気よくやったおかげで【レンタル生産施設】でも販売されている『カッパーインゴット』よりもランクが高いものが出来た。

 低Lvでも根気よく丁寧にやればランクが上がるというのは、βテストの情報でもあったので嬉しいけれどそれほど驚きはなかったりする。


 完成した『カッパーインゴット』を『アイテムボックス』に一個を除いて仕舞うとここからが本番です。


 『カッパーインゴット』を『魔導炉』に投入して溶かし、『鍛冶アーツ/Lv1/成型』を使いつつ完成品を強くイメージしながら槌で力いっぱい叩いていく。

 真っ赤に溶けた『カッパーインゴット』がどんどんイメージ通りの形に変形していくのは正直言って面白い。

 ただ槌で叩いているだけでいいのだから楽でいい。

 本場の職人さんからはクレームが大量にきそうな作業工程だけど、ゲームなんだからありでしょう。

 『アーツ』を使わなければ現実と同じ作業工程も踏めるという話だけど、私は正直興味がないのでどうでもいいです。


 叩きに叩きまくってほぼイメージ通りに変形させたところで『完了処理』をすれば完成。


 ====

 カッパーバケツヘルム

 頭/重装/★3/DEF+7/耐久40

 ====


 私のトレードマークとなるだろう装備の完成に、思わず万歳三唱してしまうくらいには嬉しかった。


 円柱形のフォルムに視界確保のためのスリットが入り、口の部分はスライド式で開閉が出来る。

 大した細工もない無骨な見た目だけどこれぞまさに『バケツヘルム』。

 イメージ通りの物に仕上がっています。

 これが『カッパーインゴット』1個を叩くだけで出来るのだから堪らない。


「さぁ被っちゃいますよー」


 うっとりと『カッパーバケツヘルム』を一頻り眺めていざ装備。


 改めて私の【ふろんてぃあーず】はここからスタートします。

 私のゲーム内での名前は【バケツさん】。

 トレードマーク予定の『バケツヘルム』が相棒の生産者なのですよ!



*16/4/30 1話改稿に伴い修正

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