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17 『見えなくても微笑みを感じるのです』



 素材が尽きるまでポーションを作り、『錬金術』のLvがある程度上がった段階でさっそく『魔法紙』の製作にとりかかってみました。


 『生命のポーション・小』を『魔導錬金鍋』にいくつか流し込み、それを魔力を使いながら煮詰めていきます。

 そして出来るのがコレ――『濃縮魔法液』。


 『生命のポーション・小』を煮詰めているものなので、一段階上の回復アイテムを製作する際にも必須となるこの『濃縮魔法液』は、実は用途が結構幅広く存在します。

 『魔法紙』の製作もその1つですので、『生命のポーション・小』製作はスキルLv上げと材料確保の2つの意味がある大変素晴らしい工程というわけですね。

 ついでに余ったら売れるのでもう1つ意味がありましたね。


 他の材料もすり潰して液体を混ぜ、さらに『濃縮魔法液』に混ぜて煮詰めて作り出すのは『濃縮魔法液・改』。

 しかし残念ながら『生命のポーション・小』を加工して、さらにそれを加工している段階でわかっていたのですが、スキルLvが全然足りません。


 『魔導錬金鍋』の中の物体が完全に液体ではなくなってきました。なんでしょうこれ。

 もうここまで来るとダメな事は嫌でもわかります。

 あぁ……遂に作り出してしまいました。


 ====

 物体X

 素材/★1/耐久1

 ====


 製作失敗品、それが『物体X』です。

 通称燃えないゴミ。


 今まで運良く私は作り出すことがなかったのですが、遂に作り出してしまいました。

 一応素材とされている『物体X』ですが、珍しく素材なのに耐久値があります。しかしその低すぎる耐久のせいなのか、何をしようとすぐに消滅してしまうらしいです。


 一応私も確かめてみようと『乳鉢』に入れて『乳棒』で押した時点で耐久がなくなってしまい、消滅してしまいました。

 装備と違い、素材やアイテムと分類されているものは耐久が0になると破損状態ではなく消滅します。

 まぁ滅多に耐久値がある素材はないのですが。


 ブロック状に分解されていく様は狩りをしない私には見慣れない光景なので、ちょっと綺麗でしたけど。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 気を取り直して今まで『物体X』を一度も出したことがない『鍛冶』をしていくことにします。

 まぁ『ブロンズインゴット』を製作するときにちょっとぎりぎりだった気もしますが、失敗には至っていないので問題ありません。

 それに次にブロンズ系に挑むのはもっとスキルLvを上げてからと決めていますから。


 製作するのは図書館で見つけたレシピにあったカッパー系装備です。

 レシピを専門に販売している店舗でも売っているものなので、悪目立ちするようなことはないでしょう。まぁ今更な気もしますけど。


 出来上がったのはこちら――


 ====

 カッパーフルプレートアーマー

 頭体手腰足/重装/★4/DEF+52 HPR+8/耐久強化・微/耐久270

 シリーズ/銅の全身装具 1/1 HPR+8

 ====


 初級レシピにはない、複合装備と呼ばれる装備箇所を複数使用するタイプの装備ですね。

 私がオリジナルで作った『サロペットスカート』も肌着の上下を使用する複合装備ですが、『カッパーフルプレートアーマー』は5箇所も使う全身装具タイプです。


 複合装備の利点は同じ系統の装備を一式装備するよりも高い防御力とシリーズボーナス標準装備な点、あとは1つの装備で済む事でしょうか。

 もちろんデメリットもあります。

 今回『オプション』がついてますが、現状では装備1つに対して『オプション』1つが限界です。

 つまりは複合装備を選んだ時点で『オプション』の数が必然的に少なくなるということなのです。

 まぁ狙った『オプション品』の入手自体に手間がかかることから考えると良し悪しですけど。


 他にも総合的に見て耐久が若干少ない点でしょうか。

 ただこれは合計値で見る場合なので、単品の装備として見る場合は遥かに耐久が高いです。

 なので見る人によってメリットになるかデメリットになるか変わる部分ですね。


 装備枠を5つも使うので買い換えるにもちょっと躊躇するかもしれないのもデメリットでしょうか。

 その他にもシリーズボーナス標準装備の全身装具タイプは、実はカッパー系装備では唯一のシリーズボーナスだったりします。

 その他に確認されているシリーズボーナスは初期装備の『開拓者装備一式』だけですので、序盤では稀有なタイプの装備ですね。

 だからといって売れるとは限らないのが悲しいところですが。

 まぁ試しに作ってみただけなので売れたら恩の字といった程度です。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 買取した素材の数が数なだけに、一度に全部使いきるのが難しい状況になってきていますが、私はやります。

 ちょっと息抜き用に店舗で『魔法紙』なんかを買いに行ったりもして、『魔術陣』を何枚か書きつつもどんどん販売用の装備を製作していきます。

 まぁ事前加工のインゴット製作に馬鹿みたいに時間を取られたりもしていますし、もう時間はこの際気にしない方向で行くべきでしょう。

 自分の店舗を持てたら店員さんを雇って販売と製作を同時に出来るんですけど、『商人』のLvも資金も足りません。


 全ての『カッパーインゴット』を使いきったのは、『ゲーム内時間』で約8時間後のことでした。

 いやぁ頑張りました。途中で『魔術陣』製作休憩を入れなければ私でももちませんねこれは。

 きっとミカちゃんが聞いたら「修行僧か何かなの?」とか突っ込まれそうです。さらには「『魔術陣』製作は休憩じゃないからね?」とも突っ込まれそうです。

 私には癒やしなんですけどねー。


 『オプション品』ももちろん出来ていますので、知り合い達に『メール』を送り、【レンタル生産施設】をあとにして【開拓者組合(ギルド)】に向かいます。

 評価を貰わないといけませんからね。それに今回で多分【開拓者組合(ギルド)ランク】が★2になるでしょうから、遂に『(アイテムボックス)拡張パック』が手に入ります。

 カツカツの所持品枠ともおさらばなのですよ!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「★2へのランクアップおめでとうございます、バケツさん様。

 こちらがランクアップ報酬でございます。お受取り下さい」

「ありがとうございますー」


 予想通りに今回作ったもので【開拓者組合(ギルド)ランク/★2】へと上がることが出来ました。

 というか大幅に★2への評価に持ち越しが出来るほどの量だったので、不安はなかったですけどね。


 『製作アイテム評価システム』の受付をしていた狸耳の受付嬢さんに大量の製作品を渡す時にはきちんとシステムでのトレードを行っているので、周りにたくさんいる開拓者には見えていないはずです。

 でも前回にここで交渉をしてしまったのが悪かったのか、私の後ろには交渉の順番待ちができていました。

 まぁ時間の無駄なので交渉には応じませんけどね。


「ランクアップおめでとう! さっそくだけど「すみません、露店開くのでそちらでおねがいしますねー。あと交渉や製作依頼は受け付けてませんのですみませんー」……ぁ、はい……」


 先頭で意気揚々とまっていた開拓者の人の台詞を遮り、そそくさと露店を開くために移動を開始します。

 順番待ちをしていた人には悪いとは思いますが、交渉や製作依頼なんかは受ける側である私に権利があります。強制できることでは決して無いのでお断りなのですよ。昨日のはまぁ、たまたまです。


「おい! 待てよ! こっちは並んで待ってたんだぞ!」

「はぁ、そうですかー。でも私は交渉や製作依頼を受け付けるなんて一言もいった覚えはありませんよ?」

「そ、それは……」


 でもやっぱりそれを不満に思う人が出るのは仕方ないことです。

 しかし私の勝ちは揺るぎませんよ?


「私はただのいちプレイヤーに過ぎませんので自分が楽しめない方法で知らない人に奉仕する気はありません。

 あなただって話したこともない人から求めてもいないクエストを押し付けられたらどう思いますか?」

「ぃ、いやその……」

「前回ここで不用意に交渉を受けてしまったのは確かに私の落ち度です。

 ですがその後にしっかりと交渉などは受け付けないと言ったはずです。

 不満があるなら他の生産者のところで購入してください」

「……はぃ……すみませんでした」


 不満を述べてきた人には悪いとは思いましたが、ここで一気呵成に攻めさせてもらいました。

 そうしないと次来た時も同じことを繰り返すことになりますからね。

 でもさすがに生け贄にしてしまったのはちょっと可哀想な気がしますが、最初に声を荒らげたのはあちらですからね、自業自得です。


「わかってもらえたのならいいんですよー。

 露店で普通に購入するのなら大歓迎ですからー。あ、素材の買取なんかも少ししたらしますので、よかったらどうぞー」

「ぁ、はい……あの無理言ってすみませんでした」

「いいんですよー。ではではー」


 頭に上っていた血が落ち着けばちゃんと謝れる方だったみたいです。

 『バケツヘルム』で見えないでしょうけど、ニッコリ微笑んで今度こそ移動ですよ。見えなくても微笑みを感じるのです。


 前回に引き続きハプニングに見舞われましたが、今回もそれほど問題もなく片付けられたので大丈夫です。

 一応大きな声が聞こえた時点で録画開始していましたが、今回は無駄になったみたいです。いや、無駄になった方がいいんですけどね。


 ハプニングのおかげで宣伝効果が出てしまったのか、ついてきた人も多かったので露店を開くと同時にどんどん装備類が売れていきました。

 あんなにいっぱい作ったのにもう3分の2が売り切れてしまっています。『カッパーフルプレートアーマー』もいつの間にか売れていて、さっそく買取開始ですね。

 しかしよくまぁこんなに売れるものです。

 ハプニングは困りますが、いい宣伝になっているのも否めないのが複雑な限りですね。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 販売量が増えても露店を開く時間はほとんど変わらないのは嬉しいようなそうでないような。

 待ち時間で刺繍や縫い物なんかをしたい私としてはなんとも複雑なものなのです。

 でも次こそはハプニングに見舞われるなんてことはないでしょう。

 今回の私の主張はあの場に居た開拓者にはしっかりと広がったはずですし。

 まぁもちろん開拓者全員ではないので油断はできませんが、一応それなりの有名人らしい私の主張はしっかりと掲示板に載せられていました。

 でも悪い書き方ではなく、「生産者への押し付けはやめましょう」といった感じの応援だったので大丈夫だと思います。

 ……思いたいです。


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