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154 『勘弁してくださいー……』



「――はしゃぎすぎですよね~」

「祭りを存分に楽しんだってことだな!」

「でもちょっと見てみたかったですね」

「私も見てみたかったかな」

「勘弁してくださいー……」


 【ふろんてぃあーず】での大晦日も、すでに二日目が終わっています。

 二度のお祭りを大いに堪能した私は、今その様子を甘ロリさんたちに盛大にいじられているところだったりします。

 イベントアイテムの共同製作は、大晦日は一度だけ行われることになっていて、その日が今日だったりします。

 そのため、甘ロリさんだけじゃなく、本日のPT(パーティ)メンバーである、アケビさん、リオウさん、ハーメルンさんにもいじられているのです。


 今日は、大晦日ということもあり、【タバリスト皇国】と【ザブリナ王国】の二国のみでPT(パーティ)を組んでいます。

 【ザブリナ王国】王国側の最後のひとりは、向田さんです。

 イベントアイテムの共同製作を最初に行なったメンバーですね。

 特に狙ったわけではないので、偶然ですけど。


 休憩時間での話題はやはりお祭りのことになり、口止めもしていなかったので、テンションが異常に高かった私の話となったのでした。

 うぅ……楽しかったからいいんですけど、改めてこうして聞くとかなり恥ずかしいですね……。

 今夜のお祭りはもう少し冷静にいきたいです……。

 でも、楽しいんですよ、お祭り。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 今年最後の共同製作は、特に問題も無く終わりました。

 基本的にやっていることは、工房に集まって各自製作しているだけですからね。

 問題が発生する余地はあまりありません。

 これまでも特に問題はありませんでしたし、今年最後だからといって何か起こるわけではないようです。

 そもそも、問題を起こすようなメンバーは選考の段階で弾かれますしね。

 来年は、それぞれリアルの用事もありますので、一月七日から共同製作を行うことになりました。

 まあ、私の場合はお正月中もログインするので、いつでもいいんですけどね。

 甘ロリさんも特にお正月は用事がないそうなので、ログインするそうです。

 初詣とかいかないんですかね?

 向田さんは、お正月中は親戚廻りなど色々忙しいそうです。

 他の『Works』のメンバーも、お正月は忙しいらしいのでプレイヤー主催のお正月のイベントは甘ロリさんと一緒に回ることになりそうですね。

 ミカちゃんは家の行事ですし、姫ちゃんも三が日が終わるまではログインできそうにないそうです。

 残念ですが、甘ロリさんがいますので、退屈はしないでしょう。

 それに、場所が狭いですから大通り全体を使って行われている公式イベントよりは規模が小さいはずです。

 私もここ二日のお祭りで大分満足していますからね。

 これ以上の失態はおかさないでしょう、たぶん。


「じゃあ、同じ時間に迎えにきますからね~」

「わかりましたー」

「あ、でも、お正月ログインできない組はいませんから、私たちだけですよ~」

「あれ? 今夜からもういないんですか?」

「クールーさんとミー君とムー君は予定通りですけど、向田さんは親戚が早くきちゃったみたいですね~。るーるーさんも予定変更があったそうです~。『メール』きてませんでした~?」

「あーきてましたー。製作してたときかな? 気づきませんでした。じゃあ、ふたりきりでデートですねー」

「あはは~そうですね~。デートなんて久しぶりですよ~」

「あははー」


 甘ロリさんからの報告を聞いて確認すると、みんなからそれぞれ『メール』が着ていました。

 製作中に受信すると、どうしても気づけ無いんですよねぇ。

 内容は、お祭りに一緒に行けないことの謝罪と、年末の挨拶などでした。

 工房に帰ってからゆっくり返信するとしましょう。


「じゃあ待ってますねー」

「はいは~い。ではまた~」

「またー」


 甘ロリさんと別れて工房に戻ると、何やら門の前をウロウロしている不審人物がいました。

 こちらが発見するのが早かったか、あちらはまだ私に気づいていないようです。

 私の工房の前でウロウロしている不審者ですから、私に用事があるのは確定でしょう。

 工房にまで押し掛けてくる人は実は結構います。

 なので、対処法は確立しているんですよね。

 あ、ちょうどその対処法を実行できる人がいました。


「衛兵さーん」


 ケデリック商会のNPC(ノンプレイヤーキャラ)クエストを続けている私です。

 ケデリックさんの計らいで衛兵さんがこのあたりを巡回してくれているんですよね。

 ケデリックさんの息がかかった衛兵さんは、お店や工房でトラブルがあるとすぐさまかけつけてくれます。

 今回のような不審者についても、声をかけて必要に応じて対処してくれるのですよ。


 衛兵さんに事情を説明すると、二つ返事で請け負ってくれました。

 普段、お店の方にも顔出してくれる衛兵さんだったので、あっさりです。


 こっそり隠れて見ていると、衛兵さんに声をかけられた不審者はかなり慌てて逃げていってしまいました。

 さすが衛兵さんですね。素晴らしい排除能力です。

 まあ、この場合、衛兵さんがすごいのか不審者がよほど後ろめたかったのかわかりませんけどね。

 とにかく、これで大丈夫ですね。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「また不審者ですか~」

「最近多いですよねー」

「製作依頼でしょうね~」

「ですよねー」


 アップデートによって三カ国が繋がったことにより、プレイヤー開拓者の数は実質三倍になっています。

 他の二カ国でも、スティール系装備の『ダブルオプション』を安定的に製作できる生産者はいないようで、私のことはかなりの速度で広まりました。

 始めのうちはお店の方に詰めかけるプレイヤー開拓者が多く、大半の人は製作依頼を受け付けていないということで諦めてくれました。

 諦めきれない人はしつこく店員さんに詰め寄り、出禁になったりしていましたが、最近ではその辺の情報も出回ってくれたようで、無理に製作依頼をしようとする人も減っていました。


 ですが、お店に補充された商品はすぐに売り切れてしまうので、全員が手に入れられるわけではないですし、『オプション』は必ずしも狙ったものがでるわけではないですからね。

 自分の欲しい『オプション品』を手に入れる確率を上げようと、どうにかして私と接触しようとする人は一定数いるわけです。

 それはもちろん、私が優先販売を行っている人がいるという情報が出回ったからでしょう。

 とにもかくにも、私と接点がなければ優先販売に入る以前の問題ですからね。

 ああやって工房の前でウロウロして私と接触しようとする人がいるわけです。


 でもぶっちゃけ、そんな方法で接触されても気持ち悪いだけです。

 そんなんで優先販売に入れると本気で思っているのでしょうか。

 まあ、他に方法がないので仕方ないんでしょうけど。


 実際、私はあまり外出しませんからね。

 最近は、共同製作のためにあちらの工房の方に行ったりしますが、そのときは大抵『Works』の誰かと一緒です。

 甘ロリさんなんかが一緒だと、特に対処が早いですし、他のメンバーでもあっさり撃退してくれます。

 私、結構みんなに守られてるんですよねー。

 ミーとムーですら、私を守ってくれますし。

 というか、ミーとムーの場合は楽しんでる節さえありますけどね。


 まあ、大抵は衛兵さんがなんとかしてくれるんですけどね。


「お祭りの間なんかは人が多すぎる上に普段とちょっと違う格好です、そういったことはなくてよかったですけどね~」

「ですねー。いつぞやの変装セットが役に立ってくれてよかったですよー」


 実は、この大晦日のお祭りの間は浴衣を着ている以外にも、以前活躍した変装セットで私の特徴であるバケツヘルムを隠していたりするんですよね。

 あと、お面屋さんを制覇しているので、バケツヘルムにお面をいっぱいつけたりするだけでも十分変装になるみたいですよ?

 何せ、私の製作する頭装備はバケツヘルム一択ですからね。

 それなりに装備している人はいるわけです。

 お祭りといえども、普段装備している防具そのままで来る人は結構な人数います。

 わざわざ浴衣を用意する方が少数なんです。


 周りを見渡せば、私のようにバケツヘルムを装備した人が十人にひとりくらいの割合でみつかります。

 中には女性もいますので、意外と隠れ蓑になっているみたいです。

 その上で変装までしているわけですからね。

 お祭り中に不審者に絡まれる確率は低いでしょう。

 ――と思っていたのですが、世の中そんなに甘くないみたいです。


「いた! そんな変装してもごまかされないんだから!」

「バケツさん、逃げますよ~」

「このひとごみなら余裕ですねー」

「ちょうどいいですから、北通りの方行ってみますか~」

「いいですねー。もう南通りは回り終わってますしねー」

「ま、まてー! ちょ、ちょっとどい、むぎゃ!」


 私を発見したと思しき声は、少し離れた位置からだったので、甘ロリさんの素早い判断であっさり撒くことが出来ました。

 お祭り中でも街中を周っている駅馬車はやっています。

 出発するぎりぎりだった駅馬車を捕まえて、北通りのお祭り会場までやってきました。

 【首都ザブリナ】は広いですからね。

 見失ったらもう見つけるのは困難でしょう。

 特にお祭りで人でごった返していますし。


「基本的に出ている出店は同じみたいですね~」

「全部回りきるのは難しいですからねー。そもそも三日に渡って行われているのも、どれか一夜でも参加できればいいようにですし」

「といいつつも、さっそく買い込んでるわけですね~」

「それとこれとは別ですからー。さあ楽しみましょー!」

「はいは~い。付き合いますよ~」


 三日に渡って続いた大晦日のお祭りをたっぷり満喫することができました。

 これで、もう今年は思い残すことはなさそうですね。

 来年もよろしくお願いしますね、【ふろんてぃあーず】。


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