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153 『かーぎやー!』



「バケツさんずいぶん買ったアルネ」

「食事系の露店は制覇したんじゃないですか~?」

「そうかもしれませんねー。でもどれもこれも美味しそうでしたし、あんまりこういうお祭りって経験ないんで新鮮なんですよー」


 大通りに出ると、気合の入ったNPC(ノンプレイヤーキャラ)の露店がたくさん並んでいました。

 普段はプレイヤーの露店ばかりで、基本的には専用のマットを敷くだけです。

 中には凝った露店を出しているプレイヤー開拓者もいますが、そういった人はそう多くはありません。

 でも、今日だけはTHEお祭りといった感じの露店ばかりです。

 NPC(ノンプレイヤーキャラ)とプレイヤーの区別は、フレンドにならなければわからないのが普通です。

 でも、今日だけは特別な見た目の露店を出しているのはNPC(ノンプレイヤーキャラ)だけなので、簡単に区別がつきます。

 普段はNPC(ノンプレイヤーキャラ)が露店を出すことはありませんが、今日は特別な日なので気合が入っているわけです。


 露店の内容も、お祭りに相応しいもので、焼きそばたこ焼きワタアメ、そしてリンゴ飴!

 プレイヤーメイドの焼きそばは売ってるのを見たことありますが、それ以外は見たことありません。

 たこ焼きは肝心の蛸が手に入らないので、中身が違うたこ焼きモドキなら売っていた気もします。

 でもそれじゃたこ焼きじゃないですよね。


 その他にも、フランクフルトやアメリカンドッグや焼き鳥など、お祭りなら定番の料理がこれでもかと売られています。

 もう、本当に嬉しくて端から全部数食分ずつ購入してしまいました。


 お祭りなんてもうずいぶん行ってませんからね。

 VRでは、何度かそういうゲームをプレイしたことはありますが、やはり【ふろんてぃあーず】ほどのクオリティはなかったので、あまり楽しめなかったんですよね。

 でも、【ふろんてぃあーず】は違います。

 何よりも味が完璧に再現されていますし、大通りに溢れる人混みや、客引きをするNPC(ノンプレイヤーキャラ)たちの臨場感。

 まさに、お祭り! といった感じです。


 これですよ。私が求めていたものはこれなんです!


「まだ二日あるんですから、今からそんなはしゃいでたらもちませんよ~?」

「いえいえ、大丈夫ですよー! あーこのお面欲しいですねー。でもこっちもー! もう全部買っちゃえー!」

「テンション高い!」

「子どもみたい!」

「「珍しいバケツさん!」」

「まったくだな。まあ、祭りの経験がないならこんなもんなのか?」

「バケツさん以外にも、変なテンションになってるのがもうひとりいるネ」


 お面屋さんの商品を全種類制覇するのは当然じゃないですか?

 ほらほら、みんなも買わないと!


「るーるーさんにしては珍しい……いや、これだけレシピにない料理が売られてたら当然ですかね~?」

「でも、結構簡単に作れるんじゃないか?」

「そこをこっちの素材でしっかり再現できるかを研究したいんじゃないですかね~」

「は~。まあるーるーだしな。再現できればバケツさんが喜ぶんじゃないか? ほれ、次は射的に突撃してるぞ」

「あ~もう~。ちょっと待って下さいよ~バケツさぁ~ん」

「おじさん! 十回分お願いします! 倒れたらもらえるんですよね!?」


 特賞は私のものですよー!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 いくら食べてもお腹が苦しくなることがないというのが、これほど素晴らしいことだと思ったことはないです。

 大通りに並ぶ食べ物系露店は全制覇しました!

 もちろん、全制覇なのですから全部食べましたよ!

 それぞれ一人前ずつ食べたので、『(アイテムボックス)』の中にはまだまだ残っています。

 これは帰ってから工房でゆっくり食べるつもりです。


 そろそろ、花火の時間なので食べ物系だけでも制覇できてよかったです。

 花火を見てからゆっくり残りを回るつもりですからね。


 あ、射的は十回では特賞を落とせませんでしたので、リベンジ確定です。

 他には輪投げやヨーヨー釣り、型抜きなんてものもありましたね。

 『魔術陣』で鍛え上げた私の腕の見せ所ですよね。少しだけならやれませんかね?


「ほらほら、バケツさん。型抜きは花火が終わってからですよ~」

「るーるーさんもその辺にしておくアルネ。お祭りのテンション怖いアルヨ」

「ほーんと」

「ふたりとも」

「「子どもだよねー!」」

「今時の子どもは祭り程度じゃはしゃがねぇのな」


 名残惜しくも甘ロリさんに手を引かれ、向田さんが話を通しておいてくれたとある店舗の屋上へと向かいます。

 NPC(ノンプレイヤーキャラ)クエストをかなりの量こなしている向田さんは、今回の花火が特によく見える場所の情報をしっかり手に入れてくれていました。

 それがこの店舗の屋上なのです。

 普通は店舗の屋上なんて入れませんので、さすがは向田さんです。


 それほど大きな店舗でもないので、当然ながら屋上も狭いです。

 でも、私たちだけなら十分なスペースですね。

 店舗の持ち主は露店を出しているそうなので、私たちの貸し切りです。


「花火までもう少しあるか。テーブル出しておくから適当にな」

「ではでは私のお薦めのロシアンたこ焼きをやりましょー!」

「それ、確かバケツさんが一発で辛子入りひいたやつですよね~?」

「今度は負けませんよー!」


 普通のたこ焼きもたくさん買ってあるのですが、こういうときはやっぱりみんなで楽しめるやつがいいですよね!

 辛子とわさびが入ったロシアンたこ焼きは私の一押しです。

 なんといっても甘ロリさんが言っているように、最初に買ったやつで一発で辛子を引きましたからね! リベンジですよ!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「綺麗ですね~」

「たーまやー!」

「さすがは公式イベントだな。規模が違う。これじゃあ、三が日の花火は対抗するのは難しそうだな」

「あぁぁあぁ口が痛いよー」

「涙がとまんないよー」

「「なんでバケツさんが当たらないのさ!?」」


 夜空に咲く大輪の花に、一度は言ってみたい掛け声をしっかりとかけておきます。

 やっぱり花火といえば、この掛け声ですよね!


 ちなみに、ロシアンたこ焼きはミーとムーの双子が仲良くハズレを引いて涙目になっていました。

 辛子を思いっきり引いた私だからわかるんですよ。

 どうやらこのロシアンたこ焼きのハズレは、水などを飲んでもそのままなんです。

 なので、結構辛いんですよー。

 状態異常とかに分類されてるんですかね?


「おお~! ナイアガラですよ~! ゲームならではですね~。リアルでやるなら空中とか無理ですよ~」

「かーぎやー!」

「……ミー君、ムー君、これを飲んでみてください」

「なにこれ?」

「今作ったの?」

「「治った!」」

「やっぱり当たりアルネ」

「……はい。どうやらジョーク系の状態異常みたいです」

「おまえら、花火そっちのけでそんなもん作ってたのかよ……」


 公式が行うイベントだけあり、割物の他にも蜂や柳、仕掛け花火など盛りだくさんです。

 現実では難しそうな高所からの仕掛け花火などもあり、とても盛り上がっていますね。

 打ち上げている数も大盤振る舞いで、もう二十分くらい打ち上げているんじゃないでしょうか。


 そんな中、るーるーさんとクールーさんはミーとムーが花火の音に負けないくらい騒いでいるのに見兼ねて、解除のアイテムを製作したみたいです。

 私のときにも欲しかったですね、それ。

 まあ、私は辛子を打ち消すように他の料理を食べまくって事なきを得たんですけどね。

 どうやら、他のところで売っている料理で解除できるみたいなんです。

 うまいやり方ですよね。まあ、どれで解除したのかわからないですけど。


「……面白いですね。他にも応用できないでしょうか」

「うちでもやってみたいアルネ。今度共同研究するアルか?」

「……そうしましょう」

「花火で宣伝なんてしてますよ~。そういうのもありなんですか~」

「たーまーやー!」

「枠仕掛けなんだろうが……まあゲームだしな……」


 普段は人見知りが激しいるーるーさんですが、今日は研究対象がたくさんあったからか、とてもテンションが高いです。

 クールーさんとの共同研究も決まったみたいですし、がんばって再現してくださいね。

 ジョーク系のアイテムはなかなか見ないので、楽しみです。


 花火の方も小休憩なのか、お店の宣伝などの仕掛け花火が始まっています。

 でも、その宣伝も全てNPC(ノンプレイヤーキャラ)店舗のようですね。

 宣伝で出てくる店舗は全て大店のようです。

 プレイヤーの店舗の宣伝もないようですし、スポンサーとかでしょうか?


 三が日で上げる予定の花火は、全てイベントアイテムになるはずですから、こういうことはできそうもないですね。

 さすが公式イベントです。


 でも、どうせならプレイヤーにも宣伝枠をくれてもいいんじゃないでしょうかね?

 それとも、今日がお披露目で明日明後日の宣伝枠を販売したりしてくれるんでしょうか?

 現実だったら、とてもじゃないですができそうにないことですが、ゲームですからね。

 もし、宣伝枠が販売されたら、購入してみたい気もします。

 まあ、宣伝しなくても私の製作するものはすぐに売れるんですけどね。


 さあ、宣伝も終わって花火大会の続きが始まりましたよ!

 たーまやー!



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