151 『遂にやりました!』
『アブソリュートクリアライトインゴット』は、加工の段階から反射ダメージが発生して死に戻るという経験をしています。
ですので、インゴット化したあとでも油断は禁物なのですよ。
手持ちにあったポーションは全て加工する際に使ってしまったので、お店の方に置いてある『生命のポーション』を拝借してきました。
スティール系やカイザーアイアン系はよく売れるのですが、こういった普通の『生命のポーション』は飛ぶように売れるものではありません。
それに、休止中に『Works』のメンバーにお店を貸していたときの名残で、ひとり数枠ずつですが、そのままスペースを貸しままにしてあります。
元々スティール以上の装備は製作するのに時間がかかりますからね。
全ての販売枠を埋めることはなかなか難しいんですよ。
そこで、未だに余っている枠を『Works』のメンバーに貸し出しているわけです。
私のお店の知名度は抜群ですからね。
そこに、私が製作している分野以外のアイテムが並べば、ついでに買っていく人が多いわけです。
『Works』のメンバーはそれぞれの分野でトップクラスですからね。
私の製作した装備を購入できるレベルの戦闘系トッププレイヤー開拓者からも、十分な評価のものなのです。
向田さんだけは私と製作しているものが被っていますが、私は基本的に売り物に関してはオリジナルをほとんど作っていません。
ですが、向田さんは全てオリジナルなんですよね。
そういったこともあって、向田さんの装備の売れ行きもかなりいいです。
お店の枠が余っているとはいっても、『Works』のメンバーに全てを貸し出しているわけでは当然ありません。
ただ、製作した装備は開店と同時に未だにあっという間に売れ切れますからね。
そのあとに空く枠には、今回拝借してきた『生命のポーション』などを置いているわけです。
生命力が増加する系統のスキルは一切取っていない私なので、普通の『生命のポーション』で十分な回復力になります。
ミーとムーが製作している『超生命のポーション・小』なんかだと、過剰回復になって勿体無いんですよね。
反射ダメージも即死するわけではないですし、今のところこれで問題はありません。
ただ、今回の死に戻りという経験を活かすために、新たに『生命力強化』のついた装備を用意しておきたいところですね。
結局は『オプション』なので、ランダム性が高いために狙っては作れません。
でも、防御力などを気にしない、完全な『オプション』狙いなので、とにかく手早く数を作ればいいので楽です。
というわけで、ブロンズ系でアクセサリーを作ってみました。
スティールやカイザーアイアンと比べると驚くほどに楽だし、早いですね。
あっという間に相当数製作できました。
全て『トリプルオプション品』で完成したのですが、四つ目の『オプション』はつかないみたいですね。
この辺は装備自体に元々ついている属性やなんかの領域なのでしょうか。
『ダークショートソード』も必ず闇属性がついていましたから、ああいったタイプでならいけそうな気がします。
まあ、材料がないから無理ですけど。
完成したブロンズ系アクセサリーで、『生命力強化』の『オプション』がついているものを全て装備してみると、初期の生命力しかなかった私ですから、なんと十倍以上の生命力になってしまいました。
これはすごいですね。
もしかしたら、『生命のポーション』を使わなくても死なないくらいのタフさなのではないでしょうか。
いや、無理ですね。
インゴット化するときにも何個『生命のポーション』を使ったのかわからないくらいなんですし。
『生命のポーション』は使用した際に、クールタイムと呼ばれる再使用時間がありますから、死なないように時間をかける必要性がありました。
でも、これだけ生命力があれば死ぬ前にクールタイムを終えて回復することができそうです。
そうなってくると、普通の『生命のポーション』ではちょっと役不足でしょうか。
念のため、お店に置いてある『超生命のポーション・小』を購入しておきましょう。
まだあったはずです。
生命力もかなり上がりましたし、『超生命のポーション・小』も用意できました。
製作するもののイメージも、他に必要そうな材料も全て揃っています。
あとは私の腕次第です。
作るのはオリジナルとはいえ、通常のレシピにありそうなタイプの形状です。
なので、難しいことは考えず、今まで散々製作してきた完成品をイメージをいきましょう。
さあ、やりますよ!
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生命力を大幅にあげたのは、やはり大正解でした。
むしろ上げなければ、また死に戻っていたことでしょう。
『アブソリュートクリアライトインゴット』を加工する際には、インゴット化する際の反射ダメージよりももっと大きなダメージがきました。
予想通りというか、予想以上というか。
あまりのダメージ量に慌てて『超生命のポーション・小』を使用したほどです。
でも、さすがミーとムーですね。
『超生命のポーション・小』には、使用すると同時に一気に生命力を回復させる他にも、持続的に生命力を回復させる効果もありました。
これがなければクールタイム中に死んでいたかもしれません。
いや、さすがに死ぬ前に加工をストップしますけどね。
でも、そうすると製作を失敗するんじゃないかと思えるような手応えだったんですよね。
でもおかげで、手をほとんど止めること無く、製作を終えることができました。
ただ、用意した『超生命のポーション・小』は全て使い切ってしまいましたし、最後は生命力がぎりぎりでした。
危ない危ない。
本当にぎりぎりの完成です。
そして、完成したのがこちら――
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零光小剣
小剣/★9/ATK+188 E:光 AGI+61 CRT+155 Ref+89/エンチャント:光・大 速度上昇・大 クリティカル強化・特大 反射ダメージ・大/耐久400
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遂にやりました!
『クアドラプルオプション』です!
でも、素材の特性を受け継いでいると思われる『オプション』がふたつなので、どうなのでしょう?
現状でどれだけ力を入れてブロンズ装備を作っても、『トリプルオプション』が限界でしたからね。
特殊な素材を使わなければ『クアドラプルオプション』は無理な感じなのでしょうか。
でも、『オプション』を抜いても人形以外なら過去最高の攻撃力です。
人形の攻撃力はちょっと数値的にアレですからね。
姫ちゃんの検証結果では、あの数値と実際の攻撃力とは差があるみたいなのです。
どうやら、魔改造した全ての武器の合計値になっているようで、全ての武器を同時に扱えば相応のダメージになるみたいですが、姫ちゃんでもなかなかつらいみたいなのです。
なので、ただの小剣でこの攻撃力というのは実質的には人形の攻撃力を上回っているようなものです。
しかも、使い手がミカちゃんとくれば……やばいですね。
それに、最近問題になりつつある耐久値問題にも対応できそうなものです。
『パーティオートマッチング』を利用すると、設定された条件をクリアしないと自動帰還はできませんし、途中で棄権するとある程度のペナルティが課せられます。
条件は大抵、そのエリアのゴール地点となる場所まで行くことなのですが、途中で遭遇するMOBの量が多く、強くなる深い階層では、装備の耐久値が問題となっているのです。
MOBの量が多いだけで弱いなら大した問題はないのですが、それに強さまで重なると、装備の耐久値の減少度がどんどん増えていってしまうらしいのです。
耐久値が100や200程度の武器では、予備を持っていかないと武器が破損状態になってしまうこともしばしばのようです。
イベント装備なんかは、五、六本もっていかないと、まったく耐えられないくらいですね。
そんな状態なので、深い階層に挑む場合は耐久値の高い装備を持っていくか、予備を用意する必要が出てきています。
しかし、この『零光小剣』なら耐久が400ありますからね。
そうそう壊れることはないでしょう。
まあそれでも、街に戻ったら必ず耐久値を回復させないとだめでしょうけど。
現在、掲示板でも、狩りが終わったら必ず耐久値を回復させにいかなければいけないというのが面倒だと、結構な話題です。
でも、兼業で『鍛冶』などのスキルを上げている人はリペアが使えるので、例えフィールドエリアで耐久値が危なくなっても回復させることができるんですよね。
そのため、せめて自分の武器くらいは応急処置できるようにはしておこうと、生産系スキルを上げて、リペアできるようにしている人が増え始めています。
まあ、使えるようになるまで時間がかかりますし、携帯セットでは耐久値を回復させられる量も少ないですから、本当に応急処置ですけど。
それでもないよりはずっとましなのですけどね。
NPCの鍛冶屋さんで回復してもらえば、すぐに耐久値は全快しますから、フィールドエリアで破損させる前に回復したいという人向けのようです。
でも、NPCの鍛冶屋さんもおかげで繁盛しているようです。
新規プレイヤー開拓者も多いですが、NPCのお店で買えるのは★3の装備ですからね。
『オプション品』もどの装備でもかなり出回っている状況ですから、あまり売れ行きはよくないようです。
それでも、売れていないわけではないみたいですけど。
元々、プレイヤーが存在しない状態でも経済は回っていたわけですし。
ちなみに、NPCの鍛冶屋さんでのリペアとプレイヤー開拓者のリペアに違いはありません。
NPCの鍛冶屋さんも、修復石を使って耐久値を回復させています。
プレイヤー開拓者も同じで、フィールドエリアで使えるのが携帯修復セットなだけで、鍛冶屋さんでは携帯型ではないちゃんとした施設を使っているだけです。
ちゃんとした施設でなら同じ修復石での耐久値回復量も多くなりますからね。




