150 『これは困ったなぁ……』
もう今年も終わりです。
夏に始まった【ふろんてぃあーず】ですが、あっという間の半年間だった気がします。
色々なことがありましたが、基本的に私は生産ばかりしていた半年間ですね。
でも、とても楽しかったですし、リアルではとてもではないですができませんから、充実した半年間といえます。
イベントは年を越して来月末までと、いつものイベント期間よりも少しだけ長くなっています。
私たち『Works』と『遙か時の彼方』は、毎日工房でPTを組んでイベントアイテムの製作に打ち込んでいます。
すでに、何人も入れ替わり立ち替わりで行われているので、フレンドリストがかなり増えてきました。
さすがに、この状況下で断るのは難しいものがありますからね。
まあ、問題が起こったら解除すればいいだけですし、フレンドだからといって工房に勝手に入れるような許可は出してませんからね。
特に問題はないでしょう。
うちの工房に私の許可なしに入れるのは、『Works』のメンバーか、ミカちゃんと姫ちゃんくらいなものでしょう。
一応、所持している施設への入室許可などは、フレンドという枠を対象としたものもあります。
その他にも、『クラン』指定や、現在組んでいるPT指定など、様々な種類があります。
もちろん、個人指定もできます。
これは、逆に出禁用の設定でも同じことが可能ではあります。
まあ、大抵こちらは個人指定でしか使いませんが。
今まで私がやってきたゲームでは、こういう指定は大雑把に自分だけか、全員か、といったものばかりだったのですが、【ふろんてぃあーず】は細かいです。
痒いところに手が届くシステム周りの設定は、嬉しい限りです。
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合同イベントアイテム製作は、とても順調です。
毎回参加している私は特に、イベントポイントがすごい勢いで貯まっています。
交換できるアイテムは、ゲートの無料使用権や、ミニコットなど、魅力的なものが多いです。
私はもちろんミニコット全制覇を目指しますよ。
この調子なら来月始めくらいには制覇できそうですけど。
あとは、お祭り用に限定エフェクトを放てる花火系のアイテムなどですね。
今までこういったものは、【ふろんてぃあーず】ではほとんどみかけなかったのですが、今回は大量にラインナップが揃っています。
線香花火から始まり、大きなお祭りで使うような大型の花火まで、よりどりみどりです。
ただ、もちろん、大型の花火は派手で広域にエフェクトを撒き散らすようなので、ポイントがとても必要です。
しかもこれ、消耗品ですからね。
一発打ち上げるだけでもすごくポイントを消費するわけですから、何発も打ち上げるのは難しいかもしれません。
ただ、ひとりで集める場合は難しくても、何人も協力して集めればそうでもないわけです。
お正月に行われる『エセ関西弁協会』主催のお祭りでは、夜の部に花火大会も企画されているので、楽しみです。
ちなみに、私も試しに一発だけ交換して打ち上げてみました。
何重にも夜空に華が咲いて、とても綺麗でしたが、やっぱり一発だけでは寂しいものがありましたね。
それでも、個人であそこまで巨大なエフェクトを放てるアイテムを使えるのは、気持ちがいいものです。
サーバーの方は大丈夫なんでしょうか。
お正月とか、大量に打ち上げることになるでしょうし、負荷がかかりすぎて鯖落ちなんていやですよ?
まあ、【ふろんてぃあーず】は同時接続人数が万を超えてもラグらしいラグがまったくないほど、鯖が強いですから大丈夫でしょうけど。
そうそう、ゲートの無料使用権が交換アイテムにあるのですが、本来ゲートの使用には魔石が必要です。
アップデートで、フィールドエリアにもゲートを使用して行けるようになったし、『パーティオートマッチング』などでも使用する機会が多いです。
そのため、最初は魔石が若干値上がりしたのですが、今では逆にどんどん値が下がってきています。
現在も、ドロップ率は体感的に変わっていないそうなのですが、難易度が高いフィールドエリアでは、一度に手に入る魔石の量が格段に増えているそうなのです。
今まではドロップしても一個だったのが、一度に五個や十個と、大量に入手できるようになったのが原因です。
難易度が低いフィールドエリアでは、今まで通りなのですが、アップデートで追加されたフィールドエリアの階層化により、深い階層ほど難易度が高くなり、入手量が増えました。
深い階層では、当然MOBの強さも上がり、ドロップする素材もランクが高くなります。
基本的に入手できる素材は変わらないのですが、ランクが上がれば需要は一気に増しますからね。
★3程度の素材だったら私はあまりほしくありませんが、それが★5や★6となれば話は変わってきます。
設備や道具、スキルも大事ですが、やはり素材のランクが高いに越したことはないのです。
レア素材は加工の条件が厳しいですが、ランクが高いだけの普通の素材ならそうでもないですからね。
多少は難しくなっても、普段低ランクのものを余裕を持って扱えていれば、十分に扱えますから。
フィールドエリアの階層化によって、高ランクの素材が入手しやすくなってきたため、お店の買取も低ランクの素材の買取には上限を設けるようになりました。
今までは、割りとランクを気にせず買い取っていましたが、これからは高ランクの素材を中心に買取するようにしています。
高ランクの素材は当然値段も跳ね上がりますが、高ランクだからといって必ずしもランクの高い完成品ができるわけではありません。
まずは低ランクの素材で、安定して製作できるようになってから使うべきものなのでしょう。
まあ、そうはいっても需要は当然低ランクの素材よりも高ランクの方がありますけどね。
優先販売のメンバーは、深い階層のフィールドエリアで十分に余裕をもって狩りができるトップクラスのプレイヤー開拓者で。
彼らが売りにきてくれる高ランク素材だけでも、かなりの量になりますので、現在のところ素材が枯渇することはなさそうです。
他にも売りに来てくれる人はたくさんいますしね。
素材がなければ製作もできませんし、まだまだ『ダブルオプション』のスティール系装備は私が独占しているようなものです。
自分たちが手に入れるためにも、素材の枯渇なんてさせないように優先的にうちに売りにきてくれるわけです。
なので、レア素材なんかも入手する機会が多いのですが――
「これは困ったなぁ……」
実は先程、死に戻りしました。
生産オンリーの私ですので、死に戻りなんてほとんど経験がありません。
その数少ない経験がひとつ増えたのですが、その原因がこれです。
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絶対零度の光鉱石
希少素材/★8
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『ゴスペル』が【ユングスメリス共和国】のフィールドエリアで入手した素材なのですが、見ての通りに高ランクのレア素材です。
アップデートからレア素材は、わかりやすく希少素材というカテゴリーに変化しています。
どうやら、かなり深い階層のボスを倒した際に入手したもののようですが、鉱石なので加工方法はインゴット化だろうとあたりをつけたまではよかったのです。
ですが、なんとこれ。
加工の際にダメージを負うという、とんでもない代物だったのですよ。
おかげで気づいたときには手遅れ。
意外とダメージが大きく、回復しようとポーションを探して『鞄』を操作している間に死に戻ったわけです。
普段、ポーションなんて使いませんし、急に『鞄』から取り出すなんてこともありません。
ミカちゃんたちのような戦闘系プレイヤー開拓者なら、専用のショートカットに登録しておいたり、いつでも取り出せるようなポーチを装備しているそうです。
ポーチ系の装備は、小物なので私は作りませんし、ショートカットにも登録してませんでしたからね。
まさかこんな素材があるとは驚きです。
不幸中の幸いだったのは、加工途中で死に戻っても、自身の所有している工房であれば、そのまま残っている点でしょうか。
ただし、時間経過で失敗する確率は高くなっていきますし、ランクも落ちていきます。
加工するとダメージを受けるとわかっていれば、回復しながら完成させればいいだけなので、戻ってきてからは問題なく加工できました。
ただ、やはりランクは落ちて、★2という結果でした。
まったく情報がないレア素材ということもあって、結構な高値で買取したのでがっかりですが、一個だけではなかったので次以降はなんとか★3を保てました。
完成したインゴットは――
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アブソリュートクリアライトインゴット
素材/★3
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なんとも格好いい名前のインゴットができましたよ。
問題はこれで何を作るか、です。
残念ながら、レシピはありません。
無論、レシピの欠片にも『アブソリュートクリアライトインゴット』を使うものはありません。
あまり数もないので試行錯誤をするのにも限度があります。
でも、そういった条件下で試すのなら……やっぱりアレですよね。
「お正月にログインできないミカちゃんのために、ひとつやってやりますかねー」
最近は姫ちゃんの装備更新ばかりで、さっぱり変化がないミカちゃんの装備です。
防具は、有用な『ダブルオプション品』ができたら更新してはいたのですが、武器の方はなかなか製作できないものですからね。
ずーっと同じものを使い続けています。
まあ、それでも今のところ最高峰の性能を持っているので問題ないのですけど。
それでもそろそろ新しいのがほしいと、ぼやいていましたからね。
さあ、いっちょやってみますか!




