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147 『こりゃすまん! ははは!』



「お、思った以上に広いじゃないですか~!」

「えーでも言いましたよね? 広いって」

「そ、そうですけどぉ~!」


 クールーさんの復帰祝いから『ゲーム内時間』で数時間ほど。

 まだ『現実時間』では夜はこれからです。

 『ミストナイツ』も『遙か時の彼方』も、基本的にゴールデンタイムはこの辺りの時間から深夜過ぎまでだそうです。

 まあ、私並とは言いませんが、ログイン時間が長い人もそれなりにはいますが、そのログイン時間全てを戦闘や生産につぎ込んでいる人は稀です。

 私は稀な部類なんだそうですよ?


 そういうわけで、三『クラン』合同での生産タイムも今あたりに調整してもらっています。

 私の場合は、『現実時間』の二十二時でタイムアップですからね。

 深夜とか無理です。


「ほらほら、ララルさん。もうすぐ他の『クラン』の人たちもきますよ。『Works』の『クランマスター』なんですから、きりっとしてください。きりっと」

「そうだぞ、ララル。こういうのは始めが肝心だ。しっかり頼むぞ」

「わ、わかってますよ~! それにしても広い……ここを弟子に使わせるんですかぁ~……なんか贅沢ですね」

「まあ、そうですねー。設備も道具も中級まで揃ってますからー」

「オレのところよりいい設備だぞ……」

「向田さんならそろそろ上級いけるんじゃないですか?」

「もう少しだな」


 今回、【ザブリナ王国】側の生産者として、私たち『Works』から私、甘ロリさん、向田さんの三人が出ることになっています。

 『遙か時の彼方』が【タバリスト皇国】側ですので、効率を考えるなら【ユングスメリス共和国】からふたり連れてくるべきなのですが、顔合わせの意味もあるので今回だけ、三人と三人で行うことになっています。

 とはいっても、基本的にはPT(パーティ)を組んで、生産をするだけです。


 生産に使う素材は、『ミストナイツ』と『遙か時の彼方』の戦闘メンバーがすでに狩りを行い、集めてありますので問題ありません。

 作ったものはそのまま戦闘メンバーに渡して活用してもらう形になりますので、作るものも色々と考えなければいけませんね。

 でも、イベントですから、専用のレシピが配布されていますし、その辺を作っていけば問題ないでしょう。

 それに、一応一通り作って使用してもらい、好評だったものを次から作るようになるので、まずはガンガン作っていけばいいんです。


 私と向田さんで得意とする生産カテゴリーが被っているように見えますが、向田さんはかなり器用な方で、オリジナルの装備ばかり作っているほどです。

 なので、意外と私が手を出していない分野、シリーズ系や複合系なんかに強かったりするんです。

 専用レシピには、そういった装備も割りと多くありましたので、向田さんはそちらを製作するようです。


 ただ、イベント専用の特化装備は性能面ではあまり高くないようです。

 その代わり取得できるポイントに補正がついたり、ドロップする素材にイベント限定の特殊補正がついたりするようです。

 そのため、普段使いの装備ではなく、多少性能が下がってもイベント装備を使う方が効率がよくなるようです。


 まあ、イベント装備なので、普通の装備よりは耐久値などが低く設定されていて壊れやすいみたいですけどね。

 その代わり、生産者側がたくさん作っても消費されていくということでしょう。

 こうでもしないと、装備類はイベント中に大した数作れなくなってしまいますからね。

 製作するのに素材が必要な以上は、赤字にならない程度に販売などしないといけませんからね。

 その辺もよく考えてあるイベントのようです。


 もちろん、装備以外にも消耗品や料理など、幅広くレシピは存在しています。

 今回は初顔合わせということで、るーるーさんやミーとムーは遠慮してもらいましたが、次以降では一緒にやる予定です。

 ただ、その場合は各国の出身者がふたりずつになるの予定だけど。


 残っている【ユングスメリス共和国】の出身者がふたり入ることになるけど、ひとりずつ『ミストナイツ』と『遙か時の彼方』でつれてくることになっている。

 各それぞれで何人かに話を通しているそうなので、毎回同じ人ということではないみたい。

 私の宿題のために、色々と交流の幅を広げようとミカちゃんが頑張ってくれたみたいです。

 姫ちゃんにお説教されたのが効いたのかな?


 とはいっても、私が工房や施設なんかを用意している手前、それを話さないわけにもいかず、尚且つ私や『遙か時の彼方』の専属生産者とともに生産が行えるわけです。

 あわよくば仲良くなり、トップ生産者の仲間入り! なんて思っている人も多いことでしょう。

 そういうこともあって、誰を連れてくるか、でミカちゃんにかかる負担は高くなっています。

 まあ、『遙か時の彼方』も同じですけど。


 私はいつものことなので、ミカちゃんが今回画策したことについてはあまり思うところはありませんが、客観的に見るとそうでもないみたいですからね。

 姫ちゃんのお説教も長かったですし、ミカちゃんには苦労を背負ってもらうことで帳消しということにしましょう。


 あ、でも、連れてくる人によっては迷惑を被る可能性もあるので、それは許しませんよ、ミカちゃん!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「初めまして、『遙か時の彼方』の『クランマスター』ミツヒコです。今回はお世話になります。それにしても……聞いていたよりもずっと広いですね!」

「あはは~やっぱりそう思いますよね~。私は『Works』の『クランマスター』リラルル・ララルです~。よろしくお願いしますね~」


 初顔合わせということで、『ミストナイツ』と『遙か時の彼方』の戦闘メンバー全員と、『遙か時の彼方』の専属生産者三人が工房にやってきました。

 『クランマスター』同士の自己紹介が終われば、広すぎる工房の話題が真っ先に登場です。

 まあ、実際広すぎますからねー。


「しかし、これは……本当にバケツさん個人の工房なのですか? いや、失礼。疑うわけではないのですが、ここまで広い工房に設備や道具も中級までのものを全て揃えてあると聞いたもので」

「今のところそうですよ~。でも、イベントのあとは『Works』のメンバーにも貸し出してもらうことになっているので、その時にまた話し合いですね~」

「そうなのですか。いやぁ……羨ましい限りですね」

「まったくですね……。うちの工房もこれくらい整えてくださいよ、マスター」

「その前にスキルLvをしっかりあげてくれよ、リオウ」

「ははは! なかなか上がらんのだから仕方あるまい!」

「ハーメルンさん、うるさいですよ。ここは他所様の工房なのですから、声量を抑えてください」

「こりゃすまん! ははは!」

「すみません、うるさい連中でして。こちらがうちの専属生産者のリオウ、ハーメルン、アケビです」


 工房の話で盛り上がっていると、ミツヒコさんの背後でまだかまだかと紹介されるのを待っていた三人が待ちきれずに会話に入ってきました。

 彼らが今回共同で製作を行うメンバーのようです。

 工房の充実を頼んでいた人がリオウさん。

 うるさい人がハーメルンさん。

 ハーメルンさんにツッコミを入れていた女性が、アケビさんのようです。

 それぞれ、オリジナルと思しき独自の装備を纏っているのも特徴ですね。

 とはいってもそこは生産者です。

 みんな動きやすそうでいて、生産者でございといった格好です。


 私も初期の頃に作った『サロペットスカート』のままですが、実はこれ、何度もリニューアルしてるんですよね。

 製作しているだけでは装備の耐久値は減りませんが、初期の頃と今ではずいぶんスキルLvも違いますし、扱える素材も違いますからね。

 そもそも『サロペットスカート』には耐久値ありませんけどね。


 今着ている『サロペットスカート』の性能はこんな感じです。



 ====


 サロペットスカート

 肌着・上下/軽装/★8/DEF+7 DEX+18 MP+303 AGI+22/器用・小 魔力・大 速度・小/


 ====


 防御力は据え置きですが、★8の『トリプルオプション』なんですよね。

 極最近、ぷち引退明けに作ったものなのですが、なかなかのものではないでしょうか。

 とはいえ、魔力は余っていますし、器用や速度は実感できるほどの数値ではありません。

 無いよりはマシかな、といった程度の底上げですね。


 それでも、『バケツヘルム』同様に私の一張羅ともいえる装備なので、これからも『サロペットスカート』を愛用するでしょう。

 もっとスキルLvが上がれば、生産にも影響が出るくらいの『オプション』がつくかもしれないですからね!


「――今回の素材はこれで全てです。どう使うかは生産者の皆さんで話し合ってください」

「了解しました~。では、アケビさん、リオウさん、ハーメルンさん、よろしくお願いしますね~」

「こちらこそよろしくお願いします」

「ははは! もっと気楽にいこうぜ!」

「ハーメルンのことは気にしないでくださいね」

「あはは~……」


 戦闘組が稼いできた素材は、一旦工房のテーブルの上に全て積み上げられています。

 設置してある倉庫は、各個人の倉庫へのアクセスができるだけですからね。

 そこは仕方ありません。

 かといって、誰でも中身を共有できる倉庫なんてないんですけど。


「さて、何を作るかですが、やはりここは工房の持ち主でもあり、この中の誰よりもスキルLvが高いバケツさんが優先されるべきでしょう」

「だそうですよ~バケツさん~」

「え、あーそうですか? んー……そうですねー」


 甘ロリさんが先頭に立って、私を守るように話を進めていたので、やっと話ができるとさっそく私に話が振られてきました。

 素材はたくさんあります。

 さあて、何を作りましょうかねー。



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