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144 『まだ秘密』



「ボクは賛成」

「えー」

「さすが姫! ほら、百合! 賛成だって!」

「でも、ミカンのやり方はだめ」

「ごめんなさい!」


 姫ちゃんに連絡したところ、近くに来ていたそうなのですぐに合流してくれました。

 ミカちゃんも同じように合流し、経緯を話したところ賛成されてしまいました。

 でもやっぱりミカちゃんのやり方にはまずかったみたいで、お説教モードです。


 ミカちゃんと私は小さい頃から一緒ですからねー。

 なんだかんだいってお互いに甘いところがありますし、友達に対しては無理なことでも家族にはできちゃう感じで行動しちゃうことがあるんですよね。

 私たちの間では許容できても、端から見るとちょっとって思うこともあるので、姫ちゃんが客観視してくれるのはとてもありがたいです。

 でも、姫ちゃんだって同じくらい大好きなんですよ?


「ミカンはバケツさんに甘えすぎ」

「うぅ……ごめんなさい」

「バケツさんもミカンを甘やかしすぎ」

「ごめんなさい」


 以前にも姫ちゃんにはミカちゃんを甘やかしすぎていると、怒られたことがありました。

 それから気をつけるようにはしていたのですが、なんだかんだでやっぱり私はミカちゃんに甘いようです。


「でも今回のことは受けるべき」

「え、えーとー」

「宿題」

「うっ」

「あ、そうだよ! 百合の宿題にもなるじゃんこれ!」


 でも、姫ちゃんは今回ミカちゃんがもってきた話には、参加の姿勢を崩さないみたいです。

 こういった場合、姫ちゃんは反対すると思ったんですけど……そうですか。例の件を持ち出すつもりみたいです……。

 うぅ……これはまずいですよー……。


「……バケツさん」

「はうっ! 姫ちゃんがジト目だー!」

「もしかして、百合ひとつも手を付けてないの?」

「も、もう少し馴染んでからでもいいかなーって」

「はぁー……先生も言ってたじゃない。もう大分馴染んだから思考プロセスから始めるって。だから【ふろんてぃあーず】続行を許してもらったんじゃなかったの?」

「そ、そうなんだけどー……」

「バケツさん」

「は、はい!」

「決定」

「はいー……」


 ジト目の姫ちゃんの迫力はすごいです。

 お説教されてるミカちゃんが、大人しくしているのがよくわかりました。


 今現在、私にはいくつかの宿題が出ています。

 その中に日常ではあまりしない行動を取るというものがあります。

 ぷち引退中に埋め込んだ、とあるものの活性化テストのためだと言う話です。

 【ふろんてぃあーず】は没入型のVRゲームですが、没入しているときの思考は平常時よりもむしろ活発になっているので、活性化テストの思考プロセスにおいてはこちらの方がよい結果を得られるそうです。

 とはいえ、最初は先生も渋っていたんですよね。

 【ふろんてぃあーず】は世界初のVRMMOですからね。専用のVRアプリを使ったほうがいいのではないかと。

 なんとか、いくつもの資料を集めてプレゼンした結果、【ふろんてぃあーず】で行うことになったのですが、その際に宿題を言い渡されたわけです。

 まあ、宿題といっても専用アプリでやるはずだった行動の代わりを行うんですけどね。


「百合の交友関係を広げることができるし、宿題にもなるし、一石二鳥!」

「ミカンが得して一石三鳥」

「そうでしたー!」

「仕方ない……わかったよーわかりましたー」

「やったー!」

「でも、いくつか条件を出させてもらうよー」

「どんとこい!」


 現実の部屋にはモニター機器が大分増えていますが、特にいつ宿題をしなければいけないとは決まっていません。

 体に馴染んでも正常に機能しているかどうかは、実際にモニターしている機器でしかまだわからないそうです。

 未だ世界で数例しかない実験的なものなので、仕方ないですね。


「私の工房は使わせたくない」

「んーじゃあやっぱり【レンタル生産施設】?」

「今更初級の設備はちょっと……」


 私としてもあちら側同様に工房を貸し出すのはちょっと嫌です。

 汚されたり、壊されたりすることは、システム上ないとはいえ、工房は私のお城ですからね。

 まったく知らない人に使われるのは、あまり気分のいいものではないのですよ。

 でも、かといって【レンタル生産施設】の初級の設備を今更使うというのも辛いです。

 こういうときのために、携帯設備を購入していればよかったんですけど、上級のものは通常設備よりも高いですからね。私でもつらいです。


「じゃああっち側の工房を空けてもらうように交渉するかぁ。できれば完全に恩を売るためにさけたいんだけどなぁ~? だめかなぁ~?」


 チラチラ見てくるミカちゃんがちょっとうざいですが、やっぱり私はミカちゃんにどうしても甘いようです。

 ミカちゃんが持ってきた話なんだし、なんとか交渉してきなさい、と思う反面代案を考えてしまっています。

 そしてそれを口にしてしまうんですから、私はやっぱりミカちゃんにとことん甘いんでしょうね。


「もうひとつ工房を作ってそこでやる、とか」

「えっ……それは、その、金銭的にどうなの?」

「賃貸? それに設備」

「上級は無理でも、中級の設備なら費用もそれほどかからないかなー。あと賃貸は工房の場合、無理だから買い取りになるかな。でも場所を工夫すれば安くあがると思う」

「なるほど」


 ぶっちゃけ、中級の設備程度なら全種類揃えても大した額ではありません。

 工房も、安いところを探せばかなり出費を抑えられると思います。

 【開拓者組合(ギルド)】や大通りに近いところだとかなり高いですが、通りを何本も挟んだ奥なら大分安くなりますからね。

 工房は賃貸では借りられないので、買い取りになりますが、それを考慮しても問題ないでしょう。


「ていうか、百合お金持ちだねぇ……」

「ミカちゃんたちから大分巻き上げてるからねー」

「元は私の金だったよー!」

「優先的に『オプション品』買えてるんだからいいでしょー?」

「その通りでございます!」


 これも散々ミカちゃんたちにスティール系の『オプション品』を販売したおかげですね。

 もちろん、お店の売り上げもですが、有用な『オプション品』は目が飛び出るような価格になりますから。


「あと、もしかしたら『Works』のメンバーが増えるかもしれないんだよね。増えたら自分の工房を持てるようになるまでは使ってもらうってこともできるし」

「おお! ついに増えるんだね! やったじゃん!」

「おめ」

「いやいや、まだ増えるかもしれないって段階だよ。『師弟システム』でララルさんが弟子とるかもーって感じなの」


 私は弟子を取る気はないですけど、甘ロリさんばかりに負担を押し付けるのはよくないとは思っていたんですよね。

 例え、甘ロリさんが『クランマスター』という立場だからといって、何もしないのは同じ『クランメンバー』として、ちょっと気が引けるところもありましたし。

 それに、割りと私のせいで迷惑をかけているわけですし。


 今までは具体的に何か進展があったわけでもないので、何もしていませんでしたが、甘ロリさんが弟子を取るのはもうほぼ確実でしょう。

 弟子になるような人なら、自分の工房を持っているというパターンは多くはないはずです。

 むしろ、現状でも自分の工房やお店を持っているプレイヤー開拓者というのは少ないはずですからね。

 その少ない工房やお店を持っていても、中級以上の設備を完全に揃えることができている人はさらに少ないでしょうから。


「あー。弟子ねー。あたしはどうしようかなー。取っても攻略に忙しくて面倒見きれないしなー」

「ボクは取る」

「え! 姫ちゃん取るの?」

「ん。もうクリアした」

「おお~……。姫の弟子かぁ……募集したら殺到しない?」

「姫ちゃん人気者だし、殺到しそうだよねー」

「募集はしない。目をつけてる子がいる」

「ほほー! 誰々!? どんな子なの!?」

「まだ秘密」

「えー。教えて、姫ちゃーん!」

「ふふ」


 姫ちゃんの弟子となる人がどんな人なのか、かなり気になりますが、秘密ということなら仕方ありません。

 でも、姫ちゃんが取る弟子ですからね。きっと姫ちゃんばりに才能のある人なのでしょう。

 正式に弟子となったら紹介してくれるでしょうけど、今から楽しみで仕方ありません。


 ミカちゃんの持ってきた案件を受けることにした以上は、色々と行動しなければいけません。

 新しい工房に、中級設備の購入。

 道具も新しく作らないといけませんね。

 あ、でも、フルPT(パーティ)だと設備や道具の量も増やさないとだめなんですかね?

 その辺も色々考慮しないといけなさそうです。


 安く済ませようと思っていましたが、実はこれ、結構お金かかるんじゃないですかね?

 まあ、多少増えたところで問題はないと思いますが、詳しい話を早急に詰めてもらわないといけないですねこれは。

 さあ、ミカちゃん。いつまでも弟子のことで姫ちゃんを突いてないで動いてください。


 昼時間になったらさっそく動きますよー!



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