14 『これでもっと戦える』
『ブロンズリング』のことはすっぱり忘れて『カッパーインゴット』を製作することしばし、作業が終わった頃には施設をレンタルしてから1時間は経過していました。
確かにこれは一般的には苦行と言われても仕方ないかもしれませんね。
私は問題ないですけど。
ではまずは姫ちゃんからのお願いを処理していきましょう。
製作するのは『魔導糸手袋』のカッパー系統――『カッパーマジックホビングローブ』です。
女子会で詳しく聞いたところ、姫ちゃんの現在の武器は『オプション』なしの『カッパーマジックホビングローブ』でしたので、目指すは有用な『オプション』です。
レシピがあるので材料を用意してカンカン『成型』していくだけの簡単なものです。
もう【ふろんてぃあーず】の『鍛冶』をするのもだいぶ慣れた私なのでさくさく出来ていきます。
最後の仕上げにさくっと『完了処理』を施せば、現実では実現不可能なロマン装備の完成です。
====
カッパーマジックホビングローブ
魔導糸手袋/★4/ATK+8 CRL+7/クリティカル強化・微/耐久90
====
ブロンズと違ってカッパーは簡単ですね。『オプション』もついたし、なかなかいいんじゃないですか?
続いて専用の糸である『魔導糸』と『ワイヤー』も製作するとしましょう。
『魔導糸』と『ワイヤー』は『鍛冶』ではなく、『織』で製作するアイテムです。
『魔導糸』はまぁわかりますが、『ワイヤー』に『鍛冶』がいらないのはちょっと納得出来ないですが、そういうものなので仕方ありません。
『織』は『鍛冶』ほどスキルLvが高くないのでどちらも★3止まりでしたが、一先ずは十分でしょう。
『魔導糸』と『ワイヤー』は消耗品なのである程度数を作ってほしいと言われていたので、ちょうどいいLv上げになって満足です。
次は姫ちゃん用の鉄仮面ですが、これはなぜかレシピが普通にあったのですぐに完成しました。
====
カッパーフェイスマスク
頭/重装/★4/DEF+5/耐久40
====
顔を完全に覆うタイプのフェイスマスクですが、姫ちゃんのトレードマークの姫カットを阻害しないタイプのデザインです。
一応装備してみましたが、『バケツヘルム』同様視界を阻害しないようになっています。
さらにはベルトなどの固定がないのにずれたり落ちたりしないのはゲームだからでしょうね。
肌が接触する部分にはクッションを小さく貼り付けて何度か自分で試してみましたが、蒸れない世界なのでいい感じですね。
これで姫ちゃん用の製作は完了なので『メール』を送るとすぐに返信が返ってきて、狩中なので少し時間を置いてからということになりました。
姫ちゃんのことですからきっと狩りをしながら『メール』の対応をしているのでしょう。彼女はそういった複数を同時にこなすことが本当に得意ですから。
私も施設のレンタル時間が残っているのでその方がありがたいので即了承です。
『ブロンズリング』を作った時も思ったのですが、レシピ通りに作るアクセサリーは雛形というか碌な細工も施されていない本当に無骨なものです。
言うなればアクセサリーの体をなしているだけの金属、でしょうか。
まぁ初級のレシピであり、『細工』というスキルがある以上は雛形で十分なのでしょう。
レシピには完成図も載っているので大体の形はわかります。
3D映像で全方位からも眺められるのである程度はわかるのですが、やはり実際に作ってみた方が分かる部分は多くあります。
なのでまずは作れるものは積極的に作っていこうということになりました。
作った分だけ経験値になるのですから一石二鳥ですしね。
アクセサリーの装備枠は2枠なのに対して、レシピの数は10近くあります。
指輪だったり、腕輪だったり、イヤリングだったりと、かなりの種類です。
これらを雛形としてオリジナルを作れ、と言わんばかりのラインナップですね。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一通りのカッパー系アクセサリーを作り終えると、そのいくつかに『細工』で色々な彫り物をしていく。
ですが一定以上の量を超えるとそこで彫り込むことはできなくなってしまう。
『完了処理』後にある程度形状変化させたり、性能を変化させたりすることができないという制限がこの辺までなのでしょう。
つまりはこれ以上を施す場合は『完了処理』の前にやらなければいけないということです。
『完了処理』はとにかく優秀で、イメージさえしっかりしていれば大まかな調整はもちろん、ある程度細部まで調整が出来てしまうのでちょっとした細工程度なら『完了処理』で施せたりするほどです。
ですが、イメージで補正するのにはやはり限界があります。
そのイメージで補正できない部分をしっかりと『細工』で施していけば、『完了処理』後の限界を超えた物が製作できるのでしょう。
それがオリジナルとなったり、性能面に現れたりもするはずです。
なので試しに作ってみました。
====
カッパーチェーンプレートブレスレット:向日葵
アクセサリー/★4/DEF+2/耐久15
====
チェーンブレスレットのプレート部分に大きく花咲く向日葵を彫り込んでみました。
プレート部分もそれほど大きくないのでかなり大変でした。
『細工アーツ/Lv1/修正』がなければ完成させることは不可能だったでしょう。
この『アーツ』は名前通りにある程度まで自由に修正できてしまうとんでも『アーツ』です。
彫り込んでいるので普通はその修正は容易ではないはずです。
ですが『細工アーツ/Lv1/修正』があれば簡単に間違った部分をやり直せるのでとても助かりました。
まぁそれでもかなり時間はかかってしまいましたが楽しかったので、よし。
その甲斐あってオリジナルのアクセサリーとなり、性能面でもただのカッパー系アクセサリーより上です。
まぁほんの少しですし、残念ながら『オプション』もつかなかったですけど。
オリジナルなので相場情報もないのでこんな時には頼りになるミカちゃん先生にすかさず『IDメール』です。多分寝てますからね。
オリジナル品なので性能情報なんかも書いておきましょう。ゲーム内の『メール』ならもっと詳しいものも添付できるので、一応そっちにも詳しい情報を添付して送っておきますか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『カッパーチェーンプレートブレスレット:向日葵』の製作でずいぶん時間を食ってしまったのでレンタル時間も残り僅かです。
一先ず姫ちゃんとの約束の時間なので合流しようと思ったら、【レンタル生産施設】を出たところでちょうどばったり会っちゃいました。
「姫ちゃんちょうどいいところに」
「ん。実は狙ってた」
「そうだったんだー。待たせちゃってごめんねー。じゃあはい、これ」
「大丈夫」
狩りを早めに終えてどうやら私が出てくるのを待っていたみたいです。
それだったら『コール』してくれればよかったのに。
でも姫ちゃんの性格から考えて時間まで待っちゃうでしょうねぇ。こればっかりは仕方ないです。
待たせたお詫びも兼ねてちょっとおまけして装備を売ってあげることにしました。
ついでに今使っている方の『カッパーマジックホビングローブ』は下取りすることにします。姫ちゃんが持っていても予備にしかなりませんし、基本的に予備の武器がいるような状況ではないですからね。
「耐久減ってる」
「いいよー、試したいこともあるし」
「ん、ありがとう」
「どういたしましてー」
さっそく姫ちゃんが新しい装備を身につけると、ミステリアスな感じでとても格好いいです。
姫ちゃんにフェイスマスクというのはとても似合っていて素晴らしいですね。
私にバケツ、姫ちゃんにフェイスマスクと、譲れない装備になりそうです。
「これでもっと戦える」
「がんばってねー。私も続き頑張るよー」
「ん。任せて」
やる気漲る姫ちゃんを手を振って見送ると、私も【レンタル生産施設】に戻ってさっそく残りの『カッパーインゴット』を処理していく。
これからはお金稼ぎのための装備製作の時間です。ゴリゴリいきますよ。
売れ行きの良い『カッパーアックス』を多めに作り、全然作っていなかった盾系統の装備も作ってみる。
盾には小盾、手盾、大盾の3種類があり、順に大きくなっていく。
大きくなればその分防御力が上がり取り回しが難しくなるらしいです。防御力を取るか取り回しを取るかは人それぞれ。
もちろん盾を使わない人もいます。ミカちゃんとかですね。
ミカちゃんは二刀流のアタッカーですが、純粋な回避系ではなく重装を纏って防御力を上げているゴリ押しタイプです。
彼女は割りと脳筋な部分があるのでこのスタイルが合っているんですよね。
一通りの盾を作ってみたところ大盾が1つ『オプション品』に。
しかも今まで付いたことがない『オプション』なので結構嬉しいです。
====
カッパーラージシールド
大盾/重装/★4/DEF+16 HP+35/生命力強化・微/耐久80
====
生命力は初期の状態だと200なので+35はかなり大きいと言えます。
ただスキルに『生命力強化』があるので、前衛の開拓者はほとんどがこれを取得しているのもあって、生命力が200のままではありません。
それでも生命力が増えるのは歓迎すべき事柄です。
でも私の知り合いには大盾を使っている人はいないので露店行きですね。
ちなみに魔力の初期値は半分の100だったりしますが、私は『魔力強化』を装備してかなり上がっているので、すでに3倍近くにはなっていたりします。
生命力は初期値ですが。
盾系の装備は材料に木材を使うこともあって、事前加工で『木工』がよく上がってくれていいLv上げになりました。
メインの『鍛冶』の方も遂にLvが30を超えて新しい『アーツ』――『鍛冶アーツ/Lv30/リペア』を取得。
これで重装系装備の耐久を自分で回復させることができるようになります。
これまではNPCの鍛冶屋に頼るしかなかったものが、プレイヤー側でも出来るようになってきます。
私がこの『アーツ』を使うのは多分知り合いだけか、下取りした装備が対象になると思います。
なので一応準備だけはしておきましょう。
装備を『リペア』するには専用のアイテムが必要になります。
『鍛冶』などで製作できる重装系装備と、『裁縫』などで製作できる軽装系装備では使用するアイテムが異なり、重装系装備は『修復石』が必要となります。
そして『修復石』を使うには2種類方法があり、【レンタル生産施設】のリペアキットを使うか、『初級携帯修復セット』などの専用の携帯セットを用意する必要があります。
私が用意できる携帯セットは『初級携帯修復セット』なのでさくっと『道具製作』で作っておきました。
『修復石』も同様に『道具製作』で作れるので同じように作っておきます。
====
初級携帯修復セット
道具/★4/耐久100
====
====
修復石
道具/★3/修復500
====
『修復石』は通常のアイテムとは少し異なり、耐久に代わり修復という項目があり、その数値を使って装備の減った耐久を回復させることができるようになります。
『初級携帯修復セット』と施設のリペアキットでは同じ修復値1でも耐久を回復させる量が異なり、施設のリペアキットの方が2倍くらい回復させることができる。
施設のリペアキットはそこまで行かないと使えないですが、携帯セットはどこでも使えますのでこれくらいは仕方ないでしょう。それに携帯セットも初級などではなくもっとランクが高いものになれば回復させることができる量が増えますしね。
これで用意も完了して姫ちゃんから下取りした『カッパーマジックホビングローブ』の耐久回復が出来ます。
ちゃんと試しておかないといけませんからね。
まぁ結果からいうと修復は非常に簡単でした。
所定の位置に装備と『修復石』を置いて『アーツ』を使うだけですからね。
でもこれで耐久が減っても心配なくなりました。




