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138 『うぅ~食べたかったです~!』




「ララルさん」

「いや、いけると思ったんですよ~! だって【ユングスメリス共和国】行きの駅馬車で大体の広さは測ってましたし~!」

「……見誤ったんですね」

「そ、そんなはずはぁ~……」


 初期地点に選べる国は現在三箇所です。

 【ザブリナ王国】、【ユングスメリス共和国】。そして、【タバリスト皇国】。


 今回の目的地は、もちろん残っている【タバリスト皇国】になります。


 本公開時には、三箇所のどこを選んでも特に違いはありませんでした。

 ですが、すでに『現実時間』で半年近く経っている状態ですからね。

 開拓できるフィールドエリアがランダムである以上は、それぞれに特色がでてきています。


 開拓されたフィールドエリアも、拠点エリアと戦闘エリアに分かれ、拠点エリアは『リベール』のように新たな街となったりします。

 『リベール』の他にも『ミズーリの村』を【ザブリナ王国】では開拓していますが、あそこは街というよりは農耕地なので役割が異なります。


 戦闘エリアもいくつか種類があり、階層構造になっているダンジョン型や、見た目の大きさと一致しない内部面積を持つフィールド型などがあります。

 どちらかというと、ダンジョン型の方が難易度が高い傾向にありますが、それも確実とはいえません。

 街から遠くなれば遠くなるほど、難易度は上昇していきますので。

 開拓されたときの周囲の状況によって難易度が決定されるようで、あとから拠点エリアが開拓されてもすでに開拓されているフィールドエリアには影響はありません。


 ただし、フィールドエリアは、開拓後のアフターケアを怠ると防衛戦が発生します。

 大型アップデートでは、防衛戦発生までの期間がさらに長くなるように修正されたようですが、代わりに防衛戦の難易度が上がったようです。


 【ザブリナ王国】では、一度防衛戦が発生していますが、それほど大きな被害もなく終結していました。

 ですが、今後はどうなるのかわかりません。

 あの時よりも、防衛戦に参加するだろう戦闘系開拓者はスキルLvも装備も向上していますし、実際に防衛戦が発生してみないことになんともいえませんね。


 フィールドエリアといえば、『フィールドポータル』という移動手段が追加されています。

 これは、どんどん遠くなるフィールドエリアへの移動を短縮するための措置ですね。

 ゲートと同じようなもので、一瞬で目的地まで移動が可能なので、非常に便利なようです。

 ミカちゃんたちもとても喜んでいました。

 ただ、ゲートと同じように使用するのに『魔石』がいりますし、遠くなれば遠くなるほど『魔石』の必要量が増えます。

 でも、今まで徒歩か馬車での移動しかなかったのですから、利便性は格段にあがっているようです。


 それに伴い、『魔石』が少しだけ値上がりしていますが、まあ許容範囲内でしょうね。

 街から遠い方が難易度が高くなり、比例して高ランクの素材が手に入りやすくなります。

 つまりは、手に入る素材の値段も上昇していくわけです。

 移動時間の分だけ狩れる時間も増えるわけですし、それを考えれば多少の値上がり程度なら問題ないといえるようです。


 ちなみに、『ドトリル』近くにある『ドトリル銀鉱山』へ【首都ザブリナ】から『フィールドポータル』で飛ぶよりも、【首都ザブリナ】から『ドトリル』へゲートで飛び、『ドトリル』から『フィールドポータル』で飛ぶ方が安上がりだったりします。


 まあ、多少移動工程が増えるので、直接飛んでしまう人も多いみたいですけど。

 ゲートが混んでいたら余計な時間もかかりますしね。


「とりあえず、そのすごろくはしまいましょうかー」

「そ、そんな~……せっかくですからやりましょうよぉ~」

「……邪魔ですし」

「邪魔じゃないですよ~!」

「いやいや邪魔ですよー。ていうか明らかに大きさ間違ってますし。ほら、皆さんの迷惑になりますから諦めましょうねー」

「うぅ~……」


 甘ロリさんが張り切って用意してきた道中の暇潰しアイテムは、なんとすごろくでした。

 ただ、ひとつ問題があり、張り切りすぎて随分と大きくなってしまっていたのです。

 駅馬車は今回も満席であり、私たちは三人で座れる席を確保していますが、とてもではないですが、大きなすごろくを広げて遊べる余裕はありません。


 渋る甘ロリさんを宥めていれば、いつの間にか駅馬車は出発時間になり、動き出しました。

 でも、相手は甘ロリさんです。

 すごろくがだめだからといって、用意しているのがそれで終わりというわけではなかったようです。


「頑張って作ったすごろくができないのは残念ですが、ならばこちらをやりましょ~!」

「なんですかそれ?」

「……モノポリー?」

「その通りです~! これなら場所も取りませんよ~!」

「小さいすごろくみたいなものですかー」

「ふっふっふ~。甘いですね~甘すぎますよ、バケツさん! モノポリーの歴史はとても古く――」


 大きな自作すごろくがだめだとわかれば、次に取り出しのはモノポリーというボードゲームのようでした。

 甘ロリさんの鼻息荒い解説を聞いてみると、先程のすごろくよりはスペースもとらないのでいけそうですね。

 私はルールも知らない完全な素人ですが、どうやら投資をしたり、不動産を購入したりして相手を破産させればいいみたいなので試しにやってみるとしましょう。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「そ、そんな! ご、五軒目が! なぜ!?」

「……恐ろしい。素人が一発型を……」

「これで勝ちですかねー」

「も、もう一回! もう一回やりましょう~!」

「いいですよー。なんとなくわかってきましたから。次は暖色カラーっていうんですか? これもいいですねー」

「ま、まずいですよ、るーるーさん! バケツさんの吸収力が思った以上です!」

「……恐るべし、バケツさん」


 なんだかよくわからないうちに勝ってしまいましたが、なかなか楽しいゲームのようですね、モノポリー。

 甘ロリさんが途中で、「ローカルルールがががが」と言っていたので色々とルールを追加できるみたいですが、まあまだ素人同然の私はよくわかりません。


 【タバリスト皇国】に着くまでにはわかるようになっていればいいですねー。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 【ザブリナ王国】から【タバリスト皇国】の【首都リバス】までは、『ゲーム内時間』で六時間程度かかりました。

 もちろん、途中休憩を含めた時間ですが、【ユングスメリス共和国】よりは少し遠いみたいです。

 とはいえ、一度来てしまえば次からはゲートを使いますからあまり関係ないですけどね。


 道中の暇潰しでやっていたモノポリーは、私が三連勝した時点で甘ロリさんから別のゲームにしようという提案を受け変更となりました。

 【ユングスメリス共和国】行きのときもそうですが、甘ロリさんはあまりこういうゲームは強くないみたいですね。

 でも、勝つ気満々で挑んでくるのですから微笑ましいです。


「ま、またるーるーさんのお菓子食べられませんでした~!」

「勝負の世界は非情ですねー」

「……そういう条件で始めたんですから仕方ないです」

「うぅ~! お菓子~……」

「ほらほら、気を取り直して行きますよー」


 今回もるーるーさんのお菓子を賭けて勝負していたのですが、見事に全敗を喫した甘ロリさんは一口もお菓子を食べられませんでした。

 【ユングスメリス共和国】行きのときも同じ結果になっているのに、なぜまた同じ条件で勝負しようと思ったんですかねー。

 まあ、勝負内容が違っていましたし、自信満々の顔でしたのでわかる気はするのですが、残念ながら結果は悲惨です。

 今回はるーるーさんのお菓子は新作ではなかったですけど、日頃の研鑽の成果でスキルLvも上がっていてとても美味しかったです。


 生産系プレイヤー開拓者でも、お菓子を専門にしている人はそれほど多くありません。

 というか、『魔術陣』なみとはいいませんが、それに近いくらい少ないようです。

 料理という区切りならば、結構いるようですが、その中でもお菓子だけ、となるとるーるーさんとあと数人だけしかいないようなのです。

 そんな中でも熱心にスキルLvを上げて、オリジナルをたくさん製作しているるーるーさんですから、美味しいのも当然ですよね。


「うぅ~食べたかったです~!」

「はいはい、残念でしたねー。それより見てください。なんか和風ですね」

「……門が鳥居ですね」

「あ~【タバリスト皇国】は和テイストなんですよ~」

「もしかして、売ってる装備も?」

「……でも話題になってないですよ?」

「確かにー」

「装備やレシピなんかは変わんないみたいですよ~」


 観光も兼ねているので、今回はあまり国自体の情報は仕入れずに来たのですが、ちょっとびっくりです。

 【ザブリナ王国】も【ユングスメリス共和国】も、どちらも中世ヨーロッパテイストなファンタジーな街でした。

 でも、よく考えてみれば和テイストな国があっても不思議ではないかもしれません。

 むしろ、そういう国はゲームではよくありますよね。


 ですが、残念ながら初期地点のひとつの国なので、販売されている装備やレシピは他と変わりないようです。

 武者鎧とか刀とかそういった和風の装備が売っていたら面白かったんですけどねー。


 でも、観光する分にはいいかもしれません。

 なんといっても、鳥居をくぐった先には桜並木の大通りが見えていますしね!


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