136 『連絡お待ちしておりますー』
お昼を済ませてログインすれば、もう甘ロリさんもるーるーさんもログインしていました。
みんなご飯食べるの早いですね。私が遅いんですかね?
そのまま目をつけておいた露店が多い通りに向かい、各自それぞれ露店巡りです。
素材を買い集めるのが目的ですが、製作しているものが違うので目的となる素材もそれぞれ違います。
なので、通りにはいるけど三人ばらばらでの行動になります。
『鞄』にも限りがあるので、個人倉庫が活用できる【開拓者組合】が近くにある通りを選んでもあります。
というか、【開拓者組合】のある通りに露店が集まりやすいのは、どこの国も同じなんですよね。
利便性というのは大事ですから。
販売されているものは、基本的に互換性のある素材ばかりです。
すでに入手済みのもので互換性があるものは、詳細欄に自動で明記されているのでわかりやすいです。
でも、国が違えば開拓されているフィールドエリアも違います。
そこから手に入る素材は、難易度が高ければ高いほどランクが高くなりますし、新しい素材になりやすいです。
つまりは――
「ラートラットの雪皮と互換性のある皮の★5が売ってましたよ~!」
「……塩砂糖という素材が茨砂糖と互換性があるみたいです。でもこちらの方がランクが高いみたいです」
「互換性があるわけじゃないですけど、王鉄鋼売ってましたー」
「ボスドロップじゃないですか~!」
「……国が違えば流通量にも違いが出てくるんですね」
「これは他の国も行ってみる価値ありますねー」
互換性があるとはいえ、新しい素材なのでそれをメインに買い物を進めていましたが、【ザブリナ王国】ではあまり出回っていないレア素材なんかが結構売り出されていて驚きました。
開拓される順番やフィールドエリアに出てくるボスによっては、たくさん狩ることができ、こうしたレアアイテムが流通しやすくなっているみたいですね。
実際、【ザブリナ王国】ではよく値崩れを起こしているレア素材が、【ユングスメリス共和国】ではまだかなり高い値段で取引されてもいるようです。
あ、ちなみに『商人』スキルでの値段設定は各国ごとに集計されているようです。
それもあって値段の違いが顕著にわかりますね。
でも、こうしてすぐに気づくことができていますからね。
今はまだ値段の差異を利用した転売行為で儲けることができるでしょうけど、それも時間の問題でしょう。
一度、他の国に来てしまえば、あとはゲートを使って一瞬で移動できます。
ゲートを使用する料金――『魔石』の量にもよりますが、転売で儲けるのはだんだんと難しくなっていくでしょう。
これも大型アップデート当初のお祭りの一種なのでしょうね。
流通の問題でレアアイテムが手に入りやすいのは、生産者としては非常にありがたいことです。
まあその分販売額も下がりますから利益は出しづらくなるかもしれませんが、そこは仕方ないことでしょう。
手に入らないよりはずっとましですから。
それにしても、【ザブリナ王国】ではほとんど加工できずに手こずっていた王鉄鋼が【ユングスメリス共和国】では安値で放置されているのが現状です。
ランクが高く、レアな素材でも、加工難易度が高い素材なので早い段階で手に入りやすくなっても意味がなかったのでしょうね。
きっと外れレア扱いを受けていたのでしょう。
そうでなければこんなことにはなっていないはずです。
ちなみに私も挑戦しましたが、一応インゴット化はできました。
装備にするにはレシピがないので、オリジナルになります。
でも、残念ながら完成したのは★2の装備でした。
★3にまでもっていけなければ性能が極端に落ちてしまいますからね。完全に失敗です。
ぷち引退をしていたとはいえ、私は未だ生産系トッププレイヤーのひとりだと思います。
そんな私のスキルLvで足りないのですから、他の国でもそうそう王鉄鋼を扱えるプレイヤーはいないでしょう。
少なくとも【ユングスメリス共和国】には。そうじゃなきゃこんなにだぶついてないはずです。
まあ、私としてはこれから挑戦するいい素材なので、買えるだけ買っていきましょうかね。
露店に並んでいなくても、在庫として抱えている人もいるかもしれませんので、交渉しながらですね。
さあ、忙しくなってきましたよー!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【開拓者組合】と露店を行ったり来たりしながら素材を買い集め、たっぷりと買い物を楽しんだあとはまだ見ていない場所の観光です。
戦闘系プレイヤー開拓者は、フィールドエリアに出て会ったことのないMOBなんかと戦っているみたいです。
ミカちゃんとか姫ちゃんとかラッシュさんとか。
でも、三人はかなり強いのでほとんど相手になってないみたいですけどね。
ミカちゃんや姫ちゃんはすでに難易度が高いフィールドエリアに足を運んでしまっているみたいです。
ラッシュさんは、返信が返ってこないのでわかりません。
私たち生産系プレイヤー開拓者は、フィールドエリアに出ても死に戻りするだけですからね。
街の観光が精一杯です。
とはいっても、【首都メリス】は初期地点のひとつですからね。【首都ザブリナ】並に広いです。
お城というか、政治の中心地になっている議事堂は一般開放されていないので入れませんが、それ以外の場所は大体見て回れるようです。
無論、NPCやプレイヤーの家なんかは勝手に入ったりはできませんけど。
最初に町並みを見たときにも思いましたが、【首都メリス】は統一感を重視している街のようです。
買い物をした【開拓者組合】近くの通りから奥に進んでも、また違った光景を見ることができますが、やはり町並みは統一されています。
色合いもそうですが、建築様式が決まっているのでしょうね。
代わり映えしない、といえばそれまでですが、私たちは楽しめました。
駅馬車を拾って、【首都メリス】一周なんてしてみましたが、場所によって違う統一性は一種の芸術のようです。
甘ロリさんなんて、何かヒントをもらえたみたいで、途中からスケッチブックに何か描いていました。
紙があるんだからスケッチブックもあって当然ですよね。
あと、そのペンなんですか? なんだかとても格好いいですね。どこで売ってたんですか?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【首都メリス】でも、基本的にNPCのお店が閉まるのは【首都ザブリナ】と変わらないようです。
『ゲーム内時間』の二十時を過ぎれば、もうほとんどのお店は店じまいをしてしまいました。
残っているのは酒場やバーなどでしょうか。
あ、もちろん、【レンタル生産施設】や【開拓者組合】なんかは元気に営業しているみたいですけど。
基本的なものは、どの国でも変わらないようです。
いや、違ってたら公平性がなくてだめでしょうけど。
ゲートのある神殿ももちろん二十四時間営業なのでやっています。
一通りの観光を済ませた私たちは最後に神殿でゲートの解放をしておきました。
これでいつでも【ザブリナ王国】と【ユングスメリス共和国】を行き来できます。
ただ……覚悟はしていましたが、使用料金がすごく高いですね。
『ゲーム内時間』で五時間かかるのが一瞬なのですから、仕方ないといえば仕方ないですが……。
でも、高くても五時間かけて帰るつもりはないので、利用します。
これでも私たち三人は生産系トッププレイヤー開拓者ですからね!
これくらいなら痛くないんですよ!
今回買い集められた王鉄鋼で★3の防具を製作できれば、★2でみた性能からしてスティール超えを果たせるはずです。
もちろん、有用な『オプション品』には勝てないでしょうが、それでも十分に期待が持てます。
それに追加されたレシピに王鉄鋼を使った装備がきっとあるはずです。
まだ追加されたレシピの情報は、掲示板にほとんどありません。
ほとんどなので、少しはあるのですが、装備のレシピではないものでしたし、私が製作している系統のものではありませんでした。
ですが、こんな情報も載っていました。
それは、『レシピの欠片』というものです。
これはいくつかの『レシピの欠片』を集めてひとつのレシピを完成させる……のではなく、レシピのヒントとなるもののようなのです。
今までは、レシピといえば素材も製作方法も全てわかるものでした。
でも、『レシピの欠片』はそれらの一部しかわかりません。
わからない部分は自分で補い、完成させるのです。
オリジナルの一歩手前みたいな感じでしょうか。
運営もオリジナルの生産を推奨している部分があります。
『レシピの欠片』を使って、独自にアイテムを開拓してほしいという主旨でしょうか。
まあ、何もなしにオリジナルのアイテムを作るのは難しいですからね。
段階を踏ませてハードルを下げるのはいいことだと思います。
『レシピの欠片』は各地のフィールドエリアで低確率でドロップしているようです。
ボスなんかからも出ているみたいで、強いMOBからは製作難易度が高めの『レシピの欠片』となっているようです。
これからは『レシピの欠片』の買取もしっかりと行なっていかないといけませんね。
まあ、私にはミカちゃんや姫ちゃん、他にも頼もしいフレンドたちがいますからね。
それほど困ることはないでしょう。
困ったらオリジナルで作ってしまえばいいんです。
というわけで、みんなにさっそく『メール』を送っておきましょう。
『レシピの欠片』、買い取りますよー。
ものによっては色つけますよー。
王鉄鋼が素材にあるやつだったらさらにー。
連絡お待ちしておりますー。




