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134 『はっはっはー』



 十二月二十五日。クリスマスです。

 そして、【ふろんてぃあーず】では初の大型アップデートが実施される日でもあります。

 というか、もう実施されてすでに八時間以上経過しています。

 『ゲーム内時間』ならその三倍ですから、すでに丸一日経過していることになりますね。


 徹夜でプレイしていた人も、連続ログイン制限で追い出されて休憩を入れていることでしょう。

 まあ、私はこれからログインするわけですから関係ないですけどね!


 いつもの暗転からのゲーム内への没入ですが、今回は少し違いました。

 どうやら大型アップデートだからか、特別にワンクッション挟むようです。


『お久しぶりです、開拓者よ。お知らせしたいことがあります――』


 普通のゲームだったら、告知リストやなんかが出るところでしょう。

 でも、【ふろんてぃあーず】はVRですからね。

 オープニングと同じように、荘厳な神殿で女神様からアップデート内容を教えてもらえるようです。

 ただ、オープニング同様動けない代わりに、スキップすることができるようです。

 オープニングは飛ばせなかったんですけどねー。


 一応、私はスキップせず女神様の話を聞いてみたいと思います。

 でも、女神様の口からアップデート内容が語られてるのはちょっと違和感激しいですね。

 特にかなりメタいことばっかり言ってますし。

 もう少しなんとかならなかったんですかねー。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 一通り女神様の話という名のアップデート内容を聞き終わりました。

 どうやら、告知されていた以外の情報も少しだけですが教えてくれたみたいです。

 スキップしなかった特典みたいなものでしょうか?

 まあ、きっと掲示板にはこの情報も出ているでしょうから、独占するのは無理でしょうけど。


 再びの暗転のあとは、見慣れた我が工房です。

 さて、さっそくですがやることは決まっています。

 まずは情報収集ですよ!


 いつも通りに掲示板を開くと、そこには昨日よりもたくさんのスレッドが並んでいました。

 デフォルトでは、各国毎に分かれているようですが、好きにカスタマイズやお気に入り登録なんかもできます。

 各国に行けるようになったわけですから、分散していた掲示板もまとめられているわけです。

 昨日までは、他の国の掲示板はどうやっても見れませんでしたから。

 興味を惹かれますが、まずは『アップデート総合スレッド』を開いて確認しましょう。

 大体の情報はここで問題なく集まるはずです。

 より詳細に知りたい場合は、派生しているスレを覗けばいいんです。


 ……やはり、かなり情報が集まっているようですね。

 そりゃあ丸一日も経っていれば、当然ですよね。


 告知されていない情報の方もかなり集まっていて、当然ながら女神様からの情報も載っていました。


 大型アップデート一番の目玉である、各国への街道の解放ですが、やはり最初は未開通だったようです。

 でも、NPC(ノンプレイヤーキャラ)がわかりやすく街道の位置を教えてくれたようで、すぐに開通できたみたいです。

 その時の動画が貼り付けてあったので見てみたのですが、開拓できる範囲にプレイヤーの山ができていました。

 見物人も含めると完全にお祭り状態だったみたいです。


 襲ってくるMOB(モンスター)なんて、出てきた瞬間に袋叩きにされていました。

 強いMOB(モンスター)はいなかったみたいですけど、それでも出てきた瞬間には倒されていたので恐ろしい限りです。


 開拓されたあとは、長い長い街道になっていましたが、我先にと走り出す者、のんびり移動する者、そのまま解散して別のところへ行く者と様々でした。

 動画はそこで終わっていたのであとはわかりませんが、全員が全員別の国にいくわけではないみたいです。


 でも、開拓された瞬間にイベントも発生していたみたいで、別の国に行くメリットが追加されているみたいです。

 そのイベントは、『各国横断スタンプラリー』というものです。

 まあ、つまりは別の国に行ってみようというものですね。


 最初に設定した国以外の国に到着すると、スタンプがひとつもらえて、スタンプの数に応じてアップデート記念のメダルがもらえるみたいです。

 メダルが何に使えるのかはわかりませんが、掲示板にはすでに取得した人の書き込みもあり……ただの記念の品みたいです。

 『マイルーム』や、お店なんかに飾ったらいいかもしれませんね。


 他の国に行く手段は、開拓された街道を徒歩で行く以外にも駅馬車があるみたいです。

 どうやら、これは開拓されてから『ゲーム内時間』で一日経ったら使えるようになったみたいです。

 つまり、ついさっきから運行が開始されたみたいですね。

 徒歩は面倒なので、私は駅馬車を利用しましょうかね。

 一度行ってしまえば、あとはゲートもちゃんと使えるようですし。


『バケツさぁ~ん! おはようございます~』

『おはようございます、ララルさん。どうしたんですか?』

『どうしたもこうしたも、大型アップデート初日ですよ~! るーるーさんと一緒に待ってたんですよ~。よかったら一緒に【ユングスメリス共和国】行きませんか~?』


 【ユングスメリス共和国】は、先程見ていた動画で繋がった先にある国のことです。

 他にも別にもう一国ありますが、そっちの街道もすでに開拓されていて駅馬車も通っているようです。


『『各国横断スタンプラリー』のスタンプももらえますよ~』

『いいですねー。ご一緒しますー』

『やった~! 駅馬車を使う予定なんですけど、結構時間かかるみたいなので暇潰しの道具は持ってきても持ってこなくてもいいですよ~。私がいっぱい持っていくので~』

『了解ですー。じゃあ待ち合わせ場所は――』


 本当は、もう少し情報収集をしてから別の国には足を運ぶ予定でしたが、せっかくのお誘いですからね。お付き合いさせてもらいましょう!

 ミーとムーは、昨日の段階で今日はこれないかもしれないって行ってましたし、向田さんも予定があるそうです。

 非常に残念そうにしていましたが、リアル優先ですよね。

 なので、暇な残りの私たちは大型アップデートをたっぷりと堪能するとしましょう。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「――これで三連勝ですねー」

「ぐぬぬ! バケツさんの意外な特技がががが~!」

「……オセロ、強いんですね……」

「はっはっはー」


 るーるーさんの作った新作お菓子を賭けたオセロ勝負は、どうやら私の圧倒的勝利で幕を閉じたようです。

 ……さすがるーるーさん! 美味しい! 口の中でとろけて後味もすっきり! 素晴らしい! 美味しいですよ、甘ロリさん! 美味しいですよ!


「ぐぬぬ! フェルトで作ったオセロだから勝てると思ったのに~」

「……材質は関係ないかと」

「ぐぬぬ! 私もるーるーさんの新作食べたかったのに~!」

「勝負なんて持ち出さなければ、食べれたと思いますけどー」

「それは言わないお約束です~!」


 駅馬車は、完全に席が埋まるくらいの大盛況です。

 でも三人座れる席を確保できたので、私たちはまったりとオセロをしながらるーるーさんの新作を食べてのんびりです。

 まあ、甘ロリさんは負けてしまったので食べれませんけど。


 それにしても、このオセロはフェルト生地を使った、もこふわなオセロの癖に中に磁石が入っているのか、揺れてもずれたりしない優れものです。

 磁石なんてどこにあったんでしょう? 新しい素材ですかね?

 というか、地味にオリジナルですよね、これ。


「じゃあじゃあ、次はチェスなんてどうですか!?」

「あ、私チェス知らないですー」

「……私少しできます」

「よーし! じゃあるーるーさん勝負です~! バケツさんは見学して覚えてください!」

「解説しながらやってくれるならー」

「真剣勝負なので無理です~!」


 私たち以外にも、お客さんはいっぱいいます。

 そのほとんどがプレイヤー開拓者みたいですが、みんな連れ合いがいるようで楽しそうにお喋りしたりしています。

 なので、甘ロリさんがちょっとくらい騒いでも問題はないみたいです。


 でも、甘ロリさんが負けて悔しいのかちょっと興奮しているので、声が大きいのが悪かったのか、耳を澄ませばひそひそと私たちのことを話している声が聞こえたりもします。

 まあ、悪口とかではないみたいですけど。

 ぷち引退していた情報は、掲示板に流れていますので私が復帰したこととかですね。

 これでまたスティール系の『ダブルオプション品』が店に並ぶんじゃないかとか、そういった話みたいです。


 まあ、実際少しだけお店に補充も済ませていますから、今日から買えたりするんですよね。

 今こうして駅馬車に乗っている人は買うのは無理でしょうけど。


 そういえば、他の国の生産者のプレイヤーはどのくらい作れるんでしょうね?

 甘ロリさんとるーるーさんのチェス勝負を見るついでに、別の国の掲示板を見てみることにしましょう。

 どうせ、見ているだけでは覚えられませんし、チェス。


 将棋なら少しはできるんですけどねー。穴熊とか得意ですよ!


「むむ! これはエクスチェンジバリエーション! るーるーさん、ほんとに少しですか!?」

「……少しですよ。本当ですよ。少しです」

「う、嘘っぽい~!」


 よくわからないですが、ふたりの対戦はとても盛り上がっているようです。

 やっぱり動きを知ってないと全然わかりませんね。

 というわけで、掲示板でもみましょうか。


 頑張れ、甘ロリさん。

 きっと、るーるーさんの少しはやりこんでる人の少しですよ。



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