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133 『バケツさんこんなの着るの!?』



 【ふろんてぃあーず】初めての大型アップデートは十二月二十五日、つまりはクリスマスに行われます。

 大型アップデートといっても、長時間のメンテナンスが行われるわけではなく、サーバーを再起動するだけでいいみたいです。

 その代わり、私たちは事前に追加分のデータをダウンロードしておかないといけないみたいですけど。

 でも、ダウンロード自体はバックグラウンドで勝手にやってくれるので、実質的に私たちがやることはありません。


 とはいっても、アップデートの内容はいくつか公開されており、その内容に向けて用意すべきことはたくさんあります。


 例えば、『他の国とを繋ぐ街道の解放』。

 【ふろんてぃあーず】は、開始するときに初期地点としていくつかの国の中から好きな国を選ぶことができます。

 これは最初はサーバー選択だと思われていました。

 でも、今回のアップデートで行き来が可能となります。

 つまりは、どの国を選んでもゲーム内で会えるということになるんです。


 最初はこんなに早くサーバーの統合か、とプレイヤー間に不安を芽生えさせました。

 何せサーバーの統合は、末期の終焉間近のネットゲームで行われる撤退作業のひとつだからです。

 夏に始まったばかりの【ふろんてぃあーず】が、半年も経たないうちにサーバー統合なんて言われたら不安になるのも当然ですよね。


 ですが、実際はそうではありません。

 開始時に選ぶ国についても、それぞれ別のサーバーとは一言も言っていませんでした。

 これは、最初から他の国とも街道を繋ぐつもりだったのでしょうね。


 世界初のVRMMOですから、慎重を期したのかもしれません。


 開始時の国によって、ゲーム内で使える専用掲示板もそれぞれ異なるので、アップデート後は各国の掲示板も見れるようになるみたいです。

 ちなみに、ぷち引退中に調べた情報によれば、各国ごとにフィールドエリアの開拓状況も違えば、手に入る素材も名称も違うみたいです。

 でも、基本的には互換性のある素材ばかりであり、用意されていたレシピに関しては同じもののようです。

 それでも、新しい素材が手に入るならば喜ばしいことです。

 互換性があるとはいっても、完全に同じとは限らないですからね。

 もしかしたら、何か新しいものが作れるかもしれませんし。


 ただ、街道は最初から完全に開通しているのかどうかはわかりません。

 開拓をメインテーマにしているゲームですし、今まで開通していなかった他国への街道が突然解放されるのもちょっと変です。

 なので、おそらく開拓が少しは必要になるんじゃないかと掲示板では言われていました。

 まあ、私は開通してからのんびり行くつもりですし、特に問題があるわけじゃないんですけどね。


 ミカちゃんや姫ちゃんは、開拓して一番乗りするつもり満々のようですけど。



 私がぷち引退中にも、彼女たちは色々と準備を進めてアップデート直後にもログインする気満々です。

 アップデートは十二月二十五日ですが、時間はなんと零時開始なんです。

 アップデートをクリスマスにぶつけるというのもどうかと思いますが、開始時間を零時にするなんて……運営は一体何と戦っているのでしょうね。


 まあそんなわけで、私は例のごとくログインできないのです。

 こういう時ほど時間制限を恨めしく思ったことはないですね。


 でもものは考えようです。

 今回のアップデートは大型。

 【ふろんてぃあーず】の運営としては珍しく、告知内容が結構多いです。

 普段は、自分たちの手で開拓して見つけ出してね、というスタンスですからね。

 でも、当然告知されている内容が全てのわけがありません。


 そして、こういった告知されていない追加要素というのは、掲示板に情報がどんどん集まってくるのが定例です。

 それは時間を置けば置くほど、情報量が増えていくのです。


 しかも、初の大型アップデートですから、掲示板に情報をあげてくれるプレイヤーの数はきっと多いでしょう。

 出遅れは必至ですが、隠し要素を求めて右往左往する時間が減る、と思えば少しは溜飲も下がるってもんです。


「だから情報はあとで『メール』にまとめてね!」

「わかったわかった。あんたはちゃんと寝なさいよー」

「ん。がんばる」

「大丈夫ですよ~。クリスマスに暇な我々がしっかり楽しんできますから~」

「いや、確かに暇っていうか、ログインするけど……ララルさん、予定とか」

「あったらログインなんてしませんよ! ていうか、クリスマスに大型アップデートをぶつけるとか運営ばかなんじゃないですか!? 普通、そこは見栄を張ってログインを自粛してちょっとばかりのプライドを守るためにですね!」

「あーあーごめんなさいごめんなさい、わかったからぁ……」


 ぷち引退を終えてログインすると、さっそく『Works』メンバーやフレンドたちからたくさんの復帰を祝う『メール』や『コール』を頂きました。

 そして、今はたくさんの知り合いたちが参加してくれた『バケツさんの復帰を祝う会』を終えて、少人数での久々の女子会の最中です。


 たくさんの人たちから温かい声で迎えてもらえて、ちょっとだけ泣きそうになっちゃいましたよ。

 私は必要とされているんですねー。とてもありがたいことです。

 『Works』のメンバーからは、復帰祝のプレゼントまで頂いてしまいました。


 るーるーさんからは、ウェディングケーキかと見紛うほどの巨大なケーキを。

 みんなで食べましたが、とても美味しかったです。

 前回のイベントでたくさんゲットしたお菓子を研究した成果が出ていると思います。

 さすがですね、るーるーさん!


 向田さんからは、特製の金床を頂きました。生産系の道具の括りにははいらない金床ですが、飾りとしては見栄えのするものです。

 うちの金床は、設備にくっついているものなので、リアル系製作をしない私にはただの飾りなんですよね。

 でも、向田さんはリアル系製作をするみたいで、そのときにはかなり役に立つということでした。

 もし機会があったら使ってみたいですね。


 ミーとムーからは、大量の魔銀や錬金素材でした。

 どうやらふたりはまた魔導人形の製作がしたいようです。

 たっぷり用意したからいつでも呼んでね、と言っていました。

 プレゼント、ですよね?


 最後に、甘ロリさんからはふりふりのたくさんついた作業用エプロンを頂きました。

 甘ロリさんの趣味全開の可愛いエプロンです。

 気分で毎日替えられるように、なんと色違いで七着です。

 甘ロリさん気合入りすぎですよ。


 ふりふりのたくさんついた作業用エプロンは、リアルでは危ないし汚れてすぐに可愛くなくなってしまうでしょう。

 でも、【ふろんてぃあーず】なら問題ありません。


 問題があるとすれば、私がこれをつけるということでしょうか。

 満足そうな甘ロリさんの表情から、とてもでないですけど私は言えません。

 でも、空気を読まない小学生の双子が代わりに言ってくれました。


「うえー」

「うわー」

「「バケツさんこんなの着るの!?」」


 その時の甘ロリさんの表情は、とても口に出せるものではなかったですね。

 まあ、すぐにミーとムーとの追いかけっこになりましたけど。


 ……どうしよう。マイルームに飾っておくのはありかなー?


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 無事ぷち引退から復帰し、大型アップデートも目前です。

 というか、もう明日です。


 今日は復帰を祝う会に女子会に、とても楽しかったです。

 残りの時間で引退中の情報を集めたりしていましたが、とてもじゃないですが集めきれませんでした。


 少しですが、生産もしました。

 久々でしたが、体が覚えていたのか、問題なくスティール系の『ダブルオプション品』が完成しました。

 でも、少しだけ違和感があったので、勘を完全に取り戻すまでちょっとだけかかりそうですね。

 アップデートで追加される要素のためにも、素早くなんとかしないといけません。


 明日の大型アップデートは、零時開始ですが、メンテナンス時間は必要ないみたいです。

 事前にバックグラウンドでダウンロードもされていました。

 大型アップデートなのに、メンテナンス時間を必要としないのですからすごいですよね。


 私はいつもどおりに就寝して、いつもどおりに起床。そして、ログインです。

 他のみんなはこのまま徹夜コースだそうです。

 羨ましいですけど、言っても始まりませんから粛々と行動しましょう。


 ちなみに、明日がクリスマスですので、当然今日はクリスマスイヴです。

 リアルでは、私専用に調整されたケーキを食べたりもしました。

 両親にも久しぶりに会えましたし、楽しかったです。

 次に会えるのは夏くらいになるそうですけど、私ももういい年です。

 学校に通えるなら高校生ですからね。

 親に会えないくらいで寂しいなんて思いませんよ。


 【ふろんてぃあーず】にログインすれば、ミカちゃんや姫ちゃん、『Works』のみんなにフレンドもたくさんいますから!


 それに何より私の大好きな生産もできます。

 久しぶりに行なった『魔術陣』製作は、やはり私の癒やしであることを如実に証明してくれました。

 だって、とてもとても楽しかったですからね!


 なので、もうちょっと描きましょう。

 まだログアウト時間まで少しありますし。

 大丈夫大丈夫。ちょっとだけですよ。ちょっとだけ……。



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