表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/154

13 『もう少し頑張りましょう』



 【開拓者組合(ギルド)】のクエストは討伐と納品の他にも護衛や伐採といったものがある。

 護衛はその名の通りで採取行動などを行う際に、MOB(モンスター)に煩わされるのを排除するための護衛だったりするらしい。


 【ふろんてぃあーず】の採取行動は『採取』や『採掘』のスキルを装備していると『採取ポイント』が見えるようになり、そこで様々なアイテムを複数入手できるようになります。

 ソレ以外での採取行動は難しく、専門の知識や動作を知らなければまずまともに入手することはできません。例え出来ても一度に大した量は手に入らず非常に効率も悪かったりする。


 なので一般的に採取といえば『採取ポイント』でアイテムを入手することを差すわけですが、『採取ポイント』に手を出すと周囲のMOB(モンスター)から敵対行動を取られるデメリットがあります。

 こちらから攻撃をしないと敵対することのないMOB(モンスター)や、一定以上近づかなければ敵対しないMOB(モンスター)すらも結構な距離から襲いかかってくるのでなかなか面倒だったりします。


 戦闘系の開拓者ならばMOB(モンスター)を倒してゆっくりと採取するわけですが、生産系の開拓者だとMOB(モンスター)を処理しきれなかったりする場合もあるのでその護衛というわけです。

 処理しきれない生産系開拓者というのは私みたいな人ですね。

 プレイヤー側には少ないみたいですけどNPC(ノンプレイヤーキャラ)側には結構な数いるみたいで、そういった合同採取のメンバー集めのクエストやその護衛といったものもあるようです。

 1人で護衛を雇うのは金額的に大変でも複数人で雇えばそうでもないというやつです。

 『採取ポイント』は個人個人で個別になっているようで、例え同じ場所に『採取ポイント』が被ってもそれぞれにアイテムが入手できるようになっています。

 なので複数人で狭い範囲で一気に採取行動を取ったほうが総合的に処理するMOB(モンスター)の量は少なくて済むのです。


 こういう合同採取にはちょっと参加してみたい気もしますね。

 かかるのは護衛代とクエスト手数料の折半だけみたいですし、まず赤字にはならないでしょう。まぁそれもスキルLvが低くては微妙でしょうけど、Lv上げのための投資と考えれば元は取れます。

 素材代も結構ばかにならないですし。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 伐採系クエストは【ふろんてぃあーず】の世界の根幹を支える大事なクエストだったりします。

 【ふろんてぃあーず】の世界は『魔樹』と呼ばれる危険な樹の侵攻を受けていて、『魔樹』は世界を蝕んでいます。

 その勢いは凄まじく、すでに多くの村や街が飲み込まれ人間の生活圏はかなり後退しています。

 今私がいる【ザブリナ王国】も例外ではなく【首都サブリナ】以外では大きな街くらいしか残っていない状態です。


 NPC(ノンプレイヤーキャラ)の多くが今尚侵攻してくる『魔樹』から街を守るために伐採作業を繰り返しているのです。

 そんな折り、世界中で大きな異変が起こり、滅亡の危機に瀕したこの世界を救うために遣わされたのが私達プレイヤーの開拓者、という設定です。


 とはいっても神殿に行って素質を認められればNPC(ノンプレイヤーキャラ)も開拓者になれるので、物量作戦みたいなもんなんですけど。


 そんなわけでクエストとして『魔樹』の伐採作業があるわけです。

 NPC(ノンプレイヤーキャラ)の多くがこの伐採作業に従事しているので募集されている量はそれほどではないですが、この伐採作業は割りと美味しいクエストです。

 まぁ滅亡の危機を脱するための大事な作業ですけど、NPC(ノンプレイヤーキャラ)にも生活がありますからね。美味しくないと士気も下がるでしょう。


 ちなみに斧系の武器がよく売れる理由はこの辺にあったりします。

 『魔樹』は危険ですが樹なので斧系の武器がよく効くそうです。逆に他の武器では効果が薄いらしいので多く求められるわけです。


 今現在プレイヤー達が狩りをしている場所はそういった『魔樹』の侵攻を防ぎ、守っている人間の生活圏なのです。

 現状プレイヤーには伐採作業はいい稼ぎのクエストとしか認識されていませんが、スキルLvが上がって行けば狩り場が頭打ちになるので『魔樹』を伐採し、新たな狩り場を開拓していかなければいけなくなります。


 βテスト時にもNPC(ノンプレイヤーキャラ)が切り開いた狩り場では頭打ちになったプレイヤー達が『魔樹』を伐採し、新たな狩り場となるフィールドエリアを開拓していました。

 『魔樹』を一定以上を伐採するとフィールドエリアが出現するようになっており、こうしてゲームが進んでいくようです。

 しかし新たに開拓しても『魔樹』は侵攻してくるので引き続きのケアは必要になるみたいですけどね。


 ちなみに『魔樹』は切り倒すとMOB(モンスター)同様にブロック状になって消滅し、アイテムを得ることができます。

 とはいっても一種類のアイテムしか得られないのですが、それが他では得られない『魔石』と呼ばれる『魔道具』の燃料となるものだったりします。

 【ふろんてぃあーず】では家電製品の代わりに『魔道具』が使われており、『魔石』は電気の代わりとなっているのでとても大事です。

 夜タイムに街を照らす魔導灯も『魔道具』であり、これがなければ夜タイムに露店を出すのも難しくなってしまいますからね。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 【開拓者組合(ギルド)】の登録も見学も一通り済み、混雑しているのもあるのでそろそろ生産活動に戻ることにします。

 ここで討伐系クエストの1つでも受けて狩りに行くのが普通なのでしょうが、生憎私は純生産者。未だに街の外に出たこともないほどの引きこもり? ですし。

 でも合同採取のクエストは魅力的でしたねぇ。

 いつかは参加したいです。


 いつもの【レンタル生産施設】で個室をレンタルしてさっそく生産にとりかかるわけですが、資金もだいぶ多くなり買い取りする素材も増えたことにより『銅鉱石』の数が大変なことになっています。

 これを全部インゴット化するというのは普通の人には控えめに言って苦行だとミカちゃんが言っていました。

 いや前回の買取時の量で苦行だと言っていたので、前回よりも多い今回はもっと酷いんでしょうね。


 βテストでプレイヤーの生産者が駆逐された原因はたぶんこういうところにもあるとも言っていました。まぁ一理あるかもしれません。

 スキルLvが上がって『アーツ』などでスピードアップは図れても数が増れば結局は同じことですからね。


 だから残ったのはそういう作業を苦にしない私のようなプレイヤーなのでしょう。

 特にβテスト中は現状とは違い、NPC(ノンプレイヤーキャラ)が早くから品薄状態を打破してしまいましたので、「あいつらに生産は任せた方がいんじゃね?」的な状況になってしまうのもうなずけるというものです。


 一応【レンタル生産施設】でも在庫に限りはありますが★3のインゴットが販売されているので、面倒ならばそちらを使う手もあります。

 しかし高い性能を求めるなら★3のインゴットを使っていては当然ダメですし、何より高いですからね。儲けが減っては意味がありません。


 しかしやはり面倒になっている人もいるようで、さっき覗いてみれば受付で販売されている『カッパーインゴット』は品切れ状態でした。

 もしかしてここで『カッパーインゴット』を売ったらすぐ売り切れるんじゃないでしょうか。まぁやりませんが。


 ですが『カッパーインゴット』を作る前にそろそろ自分の服を作るとしましょう。

 前々からデザイン案はあったのですが、なんだかんだで余裕がなかったので伸び伸びになっていたので、だいぶ余裕が出てきた今がチャンスです。


 残念ながら私が考えていたデザイン案はレシピにはないので、型紙から起こして行くことにしましょう。

 こういう時にブラウザが使えないのは不便ですね。

 まぁ使えたら見本として使えて、オリジナルのレシピを量産できそうなのでダメでしょうけど。

 さくさくと断裁して『魔導ミシン』でどんどん縫っていきます。

 やはりサイズを気にしないでいいのは便利です。仮縫いなどの工程を省けるのでガンガンいけます。

 凝ったものでなければ本当にあっという間に出来上がるのは、やはり『完了処理』の融通が効きまくりだからでしょうか。


 完成したのがこちら――


 ====

 サロペットスカート

 肌着・上下/軽装/★4/DEF+7

 ====


 まぁ簡単に言えばオーバーオールのスカート版ですね。

 色はベージュでポケットがいくつかあり、作業しやすい形になっています。

 肌着の上下を占領してしまいますが、別に防御力に拘りがないので問題ありません。

 ストレス排除のために汚れなんてつかない世界ですから、完全に見た目重視のものですし。

 まぁそれならオシャレで可愛い服でも着ればいいんじゃないかと思うかもしれませんが、私は生産者なのです。

 可愛い作業着という形を整えるのも悪く無いと思うのですよ。


 ちなみに胸当てがあるとはいえ吊りスカートなので、インナーがないとちょっとエロいです。いえ、だいぶエロいです。

 ですが【ふろんてぃあーず】ではそんなエロは許されません。

 ちゃんとインナーが用意してあるので今回はTシャツを選んでおきました。これで見えません。大丈夫ですよ、ちゃんと着てます。


 ちなみにインナーは製作できません。だからなのか20種類以上のデザインが用意され、色も自由に変更できたり小物を追加できたりとやりたい放題です。

 普通に作れるようにした方がよかったんじゃないでしょうか。

 あ、エロいの作る人がいるだろうから作れないのかな。


 まぁそんなわけでバケツを被った可愛い作業着姿が完成です。

 えぇ、だいぶヤバイですね。でも問題ありません。


 見た目からしてもう完全に生産者な私ですから、気を良くして『カッパーインゴット』の前に『ブロンズインゴット』にチャレンジしてみちゃったりしますよ!

 なんか今なら出来そうな気がします。★4とか5とか!?


 ブロンズ系統はカッパーの次の段階の重装備です。

 『銅鉱石』と『錫鉱石』を同量『魔導炉』で溶かして不純物を『抽出』すれば完成です。

 丁寧にゆっくりと『鍛冶アーツ/Lv15/抽出・改』を使って不純物を取り除いていきますが、『カッパーインゴット』を初めて作った時よりも圧倒的に難しいのは気のせいではありません。

 ヤバイですね。まだスキルLvが足りないのが顕著にわかるほどにダメダメです。

 全然不純物が取れません。このままでは失敗してしまうでしょう。

 限界と思われるところで『完了処理』をしましたが、結果は残念なものでした。


 ====

 ブロンズインゴット

 素材/★2

 ====


 ★3どころか★2です。★1にならなかったのは恐らく限界まで不純物の『抽出』を頑張ったからでしょうか……。

 まだまだ私にはブロンズは早かったようです。

 インゴットですら★2なのですから、他の装備を作ろうとしたら失敗しないまでも★3なんて夢のまた夢でしょう。

 露店で販売していた人達もこんな感じだったのでしょうかね。


 ちなみに残念ついでに製作した初ブロンズ装備がこちら――


 ====

 ブロンズリング

 アクセサリー/★2/DEF+1/耐久10

 ====


 『カッパーリング』と性能が一緒って……。

 ★2や★1は性能が大きく下がるので理解できます、仕様ですから。納得はしたくないですが。

 まぁこれが今の私の実力ということですね。もう少し頑張りましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ