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124 『あははー』

 研究棟の内部は外のマッドサイエンティスト感溢れる様相とは違って、なんとも普通でした。

 設備も道具も基本的には同じものです。

 一般人立入禁止の区画だけあって、上級の設備や道具が揃っているのは使用する上では嬉しいことですけどね。


 渡されたレシピはやはり『リベール』では購入できない難易度の高いもののようです。

 いつものように中間素材の量や使用素材から難易度を判別しているのですが、そうですね。

 シルバー以上スティール未満といったところでしょうか。

 まぁつまりこの程度なら楽勝ですね。


 渡されたレシピの数もそう多くないので、ぱぱっと作ってしまいましょう。


「ではバケツさん殿。よろしくお願い致します」

「任せてくださいー」


 ラクシャさんからのゴーサインも頂きましたのでさっそく指定された設備と道具のあるところで製作開始です。

 もちろん使用できるのは上級の設備と道具です。

 素材も当然あちら持ちです。


 ラクシャさんも製作協力してくれるそうなので、中間素材の一部の製作をお願いしました。

 1人で製作するより手伝ってもらったほうが早いのは確実ですからね。

 まぁスキルLvや腕が足りなければランクが落ちてしまいますが、このクエストは高ランクを目指すものではないので大丈夫でしょう。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「これは大したもんだ……。

 あんたうちに来ないか? 大歓迎だぞ」

「すみませんーお店があるのでー」

「そうか、残念だ……」


 渡されたレシピの分の製作が終わり、担当者のチェックが終わったと思ったら勧誘されました。

 まぁ当然お断りなんですけどね。

 ラクシャさんもこれには苦笑いです。

 ちなみに彼女の作った中間素材は可もなく不可もなく、といったところでしょうか。

 私が作ったほうがランクが高いものが出来るのは間違いないでしょうが、彼女の作ったものでも十分なのでそのまま協力してもらいました。

 おかげで製作時間が大分短縮できて助かりましたね。

 ちなみにこの協力はクエスト評価には関係ないので遠慮なく手を借りることができます。


「しかし『魔導科学』が大して育っていないにも関わらずこれか……。

 よければ今度うちからの依頼も受けてくれんかね?」

「はいー。いいですよー」

「ゴホン。皆さん、今はこちらの依頼に集中して頂けますか?」

「おっと、これはすまん。

 では次はこれだ」

「はいー」


 今回のクエストを行う上で『魔導科学』のスキルは必須です。

 そういうレシピで製作していますからね。

 もちろん『魔導科学』のLvが高ければそれだけ製作が楽になり、ランクも高くなりますが、『魔導科学』だけを必要とするわけではないので低くても他のスキルや腕で補うことは可能なのです。

 ですので皆さん驚いているようです。


 まぁ横道に逸れ始めてしまったので、ラクシャさんが軌道修正をしてくれて助かりました。

 いつの間に他の部署の人達と思しき人達も集まってきて、このままではまた勧誘やら何やら始まりそうでしたし。


 渡されたレシピは難易度が上昇しており、スティール系装備と同等くらいですね。

 まだこれなら全然いけます。

 スティール系装備の★6辺りまでならいけますので、もう少し難易度が上昇しても対応できるでしょう。

 ただラクシャさんのお手伝いはこの辺で終わりですね。

 また難易度が上がるようでは中間素材のランクも必要となってきますので。


「ではここからは私だけで製作しますねー」

「お力になれずすみません」

「いえいえー助かりましたー」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 さすがに難易度が上昇して製作に少し時間がかかりましたが、今回も相応のランクで完成です。

 しかしだんだんと近代化が進んできているのを嫌でも感じてしまいます。

 今回製作したものは部分的な動作補助装置である所謂ウェアラブルロボットやマッスルスーツ、わかりやすいところでパワードスーツなどといったところでしょうか。

 防具にであるにも関わらず攻撃力が増加したり、速度が増加したりと、今までの防具では『オプション』に頼っていた部分を最初から持っていたりします。

 もちろん『オプション』が付けばさらなる強化が可能でしょう。

 これはなかなか面白い防具になりそうです。


「うむ。非の打ち所がないな。

 それどころか私達よりも腕がいい……」

「ありがとうございますー」

「ヘイフリック団長が強く薦めるわけですね。

 私が手伝った方がランクが低くなっているなんて……」

「あ、あははー」


 完成品を見て唸り声を上げる人集りと落ち込むラクシャさんに苦笑いで応えますが、私としては高ランクなのに『オプション』が発生しなかったのが残念でなりません。

 まぁ有用な『オプション』がついても完成品は納品扱いですから自分のものにはならないんですけどね。

 それでもレシピは自分のものになるのでいいんですけど。


「バケツさん殿、ちょっと相談があるんだが」

「はいーなんでしょうー?」

「本来はここでクエストは終わりなのだが、どうだろう。

 もう少し続けてはもらえんだろうか?

 あなたの作品は皆に良い刺激を与えているようだし、是非ともお願いしたい。

 もちろん追加のクエストとして発行するし、報酬もはずもう。

 どうだろうか?」


 これはなんとも嬉しい提案です。

 完成品を見て唸り声を上げていた人集りも、じっと期待のこもった視線を送っています。

 私としては報酬もはずむということですし、大歓迎なのですが本来私は協力者の立場ですからね。

 まずお伺いを立てるとしたらラクシャさんに、でしょう。


「どうしますか、ラクシャさん?」

「こちらのクエスト分は終わっていますのでバケツさん殿がよろしければ。

 あなたの作業を見れるのはとても勉強になります。

 私も生産者の端くれですので、是非とも」

「ならお受けしますー。あ、でもその前に内容と報酬の確認をー」

「おぉ! 受けてくださるか!

 内容と報酬はこれでどうだろうか?」


 ラクシャさんからのお許しも貰えたので追加のクエストを受けることにしました。

 でも一応その前に確認だけはしますけどね。

 もし万が一無理そうなら断らないといけないですから。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「今回は大変勉強になりました。

 深く感謝致します」

「いえいえー。こちらもたくさんレシピをゲットできましたし、何より報酬もはずんでもらえましたからねー」

「予定していたよりもクエストが増えてしまったのですから当然です。

 勉強になりましたし、直にあなたの製作を見れたのは本当に運がよかったです」

「あははー」


 追加のNPC(ノンプレイヤーキャラ)クエストも無事完了し、報酬もたっぷりと弾んでもらえました。

 大勢の人に見られながらの製作は少し緊張しましたが、製作したものはスティール系より少し難易度が高い程度のものばかりだったので問題ありませんでした。

 スティール系装備で『ダブルオプション』を付けることが出来るなら適正ともいえるくらいの難易度でしたね。

 なので経験値的にも美味しかったです。

 おかげで『鍛冶職人・改』がLv100に到達できました。


 ラクシャさんのクエストの報酬でSP(スキルポイント)が20手に入っていたのでさっそく進化させてみましたが、その後はさらにランクが1段階上がって集まっていたみんながさらに唸っていました。

 いやぁさすがに進化はすごいですね。


 でも職人から次の段階に進むかと思っていただけに進化して『鍛冶職人・真』になったときはちょっとがっかりしました。

 まぁランクが上がるという目に見えるパワーアップがあったからいいんですけど。

 次こそは段階が上がるでしょう。

 真の次で見たことあったのは異くらいなものですからね。

 それも『商人・改』の『アーツ』――『相場自動収集・異』くらいなものです。

 運営の設定した相場が見れるというちょっと変わった『アーツ』ですが、非常に有用で、今でも頼りにしているものです。

 ですがコレ以外ではみたことないので次は期待してもいいでしょう。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ラクシャさんと別れ、工房まで戻ってきました。

 いやぁなんだかんだで収穫の多い非常に良いクエストでした。

 でもこれ、他の人は受けることができるのでしょうかね?

 私はヘイフリックさんという伝手があったからこそですし、【ふろんてぃあーず】のNPC(ノンプレイヤーキャラ)のAIの性能を考えると繰り返し行えるクエストというのは限られます。

 何せNPC(ノンプレイヤーキャラ)に必要でなければ発生しないのですから。

 きっと何かしら他のところでレシピが取れるようになっているのでしょう。

 今回は恐らく先行取得が出来る特別なクエストだったのだと思います。

 トップを走っている人に対するご褒美ってやつですね。


 入手したレシピも防御力などではスティール系装備に劣りますが、特殊な性能をもった結構ピーキーな装備が多いです。

 なので使い手を選ぶでしょうし、安定思考の人は手を出しづらいかもしれません。

 それでも使いこなせば相当な戦力強化になるのは言うまでもありません。


 選択肢が狭まっていた装備品に新たな道が示されたのです。

 これは販売を始めたらまた掲示板が賑わうこと間違い無しですね。


 ではではそのためにもまずは数を作らねばなりません。

 がんばりますよー!



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