123 『腕がなりますね!』
『リベール』から戻ってくればやることはやはり製作です。
しかも今回は新しいレシピがいっぱいありますからね。
腕がなるってもんです。
でも難易度がそれほど高くないのが気になるところです。
まぁ小額とはいえ、有料のレシピです。
それなりのものは出来るでしょうが、値段が値段なのであまり期待がもてないのも事実ではあったりします。
ともかく作ってみればわかることです。
まずは取得したてほやほやの『魔導科学』がどんなものか見てみるとしましょう。
主に使用するのは中間素材の製作ですね。
パーツ製作といった方がしっくりくるような感じです。
何せ『ギアβ』とか『ストンスプリング』とか、今までの世界観ではおめにかかれないようなものばかりですからね。
もちろんこれらは『道具製作』スキルも絡んでくるようで、使用する設備は『魔導合成器』です。
……まぁぶっちゃけ『道具製作』も『道具職人』がLv100に到達した際に進化させて『道具職人・改』になっていたりします。
一連のクエスト報酬や『影の主』の討伐時の特別報酬などでSPがかなり大量に手に入ったので助かりました。
ちなみに『道具職人・改』に進化するのにはSPが30必要でした。
でもそれでもまだSPは大量にあったので『魔法陣』もLv100と同時に進化して『魔法陣・改』へ。
まだ残っていますが、『鍛冶職人・改』がそろそろLv100に到達しそうですので残しておくことにしてあります。
たぶん結構かかるはずですからね。
『魔導科学』がガンガンLvが上がってくれればよいSPの補充になりますので頑張って製作しましょう。
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入手した『魔導科学』を必須とするレシピをいくつか作ってみましたが、完成品はどれを取っても特殊な感じです。
例えば武器――
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火鉄銃 Bカスタム
銃/★6/ATK+40 属性:火 HIT+21 CRT+44 HP+150/エンチャント:火 クリティカル強化・中 生命力強化・中/耐久75
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アイアンベースなのでランクが高くなり、『ダブルオプション』が発生していますが、元々は名前の通りに『属性:火』を持つ武器のようです。
そう、属性武器なのです。
ここにきて結構普通に登場してくれましたね、属性武器。
でもスチールベースのレシピは売ってませんでしたので、はっきりいって攻撃力が低すぎて使い物にならない感じです。
まぁそれは戦闘系トッププレイヤー開拓者の話ですので、ライト層にとってはありがたい武器になるはずです。
でも銃なんて武器スキルあったかな?
装備品がある以上はあると思うんですが、これももしかして『リベール』で取得できる類なんでしょうか。
まぁ私は戦わないから別にいいんですが。
銃に始まり、レシピは種類や形が現代に近い形になってきています。
防具なら鎧ではなく、強化繊維を編み込んだものになっていたり、盾なども強化素材のライオットシールドだったり。
いくらオリジナルで好きな形を製作できるとはいえ、既存のレシピでこうくると世界観とはなんだったのか疑わしくなってきます。
まぁスチームパンクな街でしたから半分諦めてはいましたけどね。
なら自動車や電車など、馬車以外の交通手段も欲しいところです。
街から街へはゲートがあるし、フィールドエリアにはMOBもいるので無理でしょうけど。
あ、でも自転車とかバイクとかはあってもいいんじゃないでしょうかね。
バイクは乗ったこと無いので乗ってみたいんですよねー。
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『リベール』で入手したレシピは粗方製作が終わりましたが、どれもライト層向けの難易度でした。
つまりは私にとっては製作する意味はあまりないものですね。
例え『ダブルオプション品』でもアイアンベースではそれほど高値にはなりませんからね。
中間素材の量的には比べ物にならないくらい少ないので数を作って大量販売するというのも手ですが、それを私がやってしまうと後続の生産者達が困ってしまいますからね。
少しは増えてきたとは言え、戦闘系プレイヤー開拓者に比べれば少ない生産系プレイヤー開拓者を減らすのは嫌です。
前回のイベントの最後のように共闘する場面というのも今後出てくるかもしれませんしね。
いえ、むしろ絶対出てくるでしょう。
なので生産者の育成を阻害するような行為はなるべくしたくありません。
もちろん私が主に生産しているスティール系の領域になってくればライバルですので手加減はしませんけど。
さてではそろそろスティール系装備の製作を再開しますか。
イベントアイテムの製作が無くなった代わりに、新レシピの製作に時間を割いていましたからね。
補充商品は数合わせで製作した『魔導科学』装備を含めますが、性能的にスティール系装備を求める人が圧倒的です。
特に私のお店に来る人ならアイアンなんてすでに卒業していて当たり前くらいですからね。
まぁ目新しい装備ではありますので、物珍しさに購入していく人もいるかもしれませんけど。
あとは後続へのプレゼントとか。
まぁプレゼントにしては結構値がはるとは思いますが。
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スティール系装備の製作に集中していれば、いつの間にか視界に『メール』の着信を知らせるマークが点滅していました。
一体いつ届いたんですかね。
全く気が付きませんでした。
確認してみるとそこには『ザブリナ第2騎士団』の文字。
これはSPゲットの匂いがぷんぷんしてきました。
読み進めてみるとやはりNPCクエストのようですね。
しかも『リベール』でのクエストのようです。
戦闘の第2と呼ばれているらしい『ザブリナ第2騎士団』ですので、今回はただの仲介みたいです。
まぁ私と繋がりがある王宮の人なんて彼らとドワーフさんくらいですしね。
詳細については担当者から聞いて欲しいそうです。
SPのためですので選択肢なんて1つですよね。
さっそく返信すると、現地で落ち合うことになりました。
補充などを済ませたら行くことにしましょう。
約束の時間まではまだ余裕がありますからね!
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「呼び立ててしまってすまない、バケツさん殿」
「いえいえー。今回もよろしくお願いしますー」
「あぁよろしく頼む。
とはいっても私は仲介なのでね。ここからは彼女にお願いすることになる。
『兵装開発部門』のラクシャだ」
「お初にお目にかかります。『兵装開発部門』のラクシャです。
今回は急な依頼を引き受けてくださりありがとうございます」
「開拓者のバケツさんですー。よろしくお願いしますー」
ヘイフリックさんと合流するとそこには知的な雰囲気なキリッとした真面目な印象の女性が一緒にいました。
『兵装開発部門』はもちろん初耳ですが、名前からして装備品を開発してるんでしょうね。
『リベール』では『魔導科学』が発達していますし、ここで入手したレシピで製作した装備からもわかるように、【首都サブリナ】で主に使用されているものとはかなり異なります。
『リベール』が魔樹に飲み込まれる前にはどこにあった街なのか知りませんが、これを機会に技術を取り込んで発展させるのが狙いでしょうかね?
私は装備製作に関しては一家言ありますからね。
選ばれても不思議ではありません。
「では私はこれで。
あとは任せたぞ、ラクシャ」
「おまかせください、ヘイフリック団長」
ヘイフリックさんは本当に仲介だけで帰ってしまったのですが、ラクシャさんは見た目の印象通りの真面目の人のようで、さっそくクエストの内容の説明が始まりました。
どうやら一般では立ち入れない区域で、『リベール』の技術者からレシピを提供してもらい、それを製作するというのがクエスト内容のようです。
報酬は狙い通りにSP!
でも『リベール』の技術者も無償でレシピを提供するわけではないようで、私が製作するもののランクに応じて提供されるレシピの量が決まるようです。
これはSPの他にも一般販売されていないレシピのゲットのチャンスです。
『リベール』側としてはこれから魔樹の伐採やアフターケアなどで『ザブリナ王国』の力は必要でしょうが、交渉の材料は多くは出したくない。
でも技術者の集団のような『リベール』では腕がものをいうみたいです。
なのでこんなクエスト内容だったみたいです。
政治の駒にされているみたいでいやですが、一般販売されていないレシピをゲットするためです。
腕がなりますね!
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やってきたのは『リベール』の中央区画。
このあたりは確かに一般人は立ち入り禁止になっていたところですね。
地面に設置されたケーブルがどんどん太くなってきて歩くのに邪魔になっているのはどうにかならないですかね?
おかげで専用の通路以外は歩けないくらいです。
荷運び用の馬車なんかもそれ専用の通路が確保されているようですが、そんなに広くないので往来が大変そうです。
蒸気機関や『魔導科学』が発達している『リベール』でも、やっぱり荷運びなどは馬車なんですよねー。
一般人が立ち入れないここならと期待したのですが、やっぱり馬車です。残念ですね。
研究棟、と書かれている施設が目的地のようですが、ケーブルが建物を何重にも覆っていてなんともいえない感じです。
これが研究棟かー……。
もうちょっとスマートな見た目にできなかったんですかね?
まぁマッドサイエンティスト感が出ていて一部の人には高評価を得そうですけど。
さて、もうすぐクエスト開始です。
がんばりますよー!




