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119 『これはやばいんじゃないか?』

「バケツさん! 新しいレシピだ!」

「はいはーい」


 巨大結晶から強MOB(モンスター)が出現し始めても、ミカちゃん達率いる戦闘組の優位は今のところ揺るぎないようです。

 これも優先的に『聖銀』装備を配布しているからでしょう。

 『聖銀』装備は他にも欲しがる人が結構いそうなものですが、実はコレなんと最低限のスキルLvが設定されており、それをクリアしていなければ装備できないみたいです。

 でも戦闘系トッププレイヤー開拓者が集まっているだけあってそこそこの人数がクリアしていたりします。

 でも全員ではないので配布が間に合っているんですよね。


 普段1人で製作しているスティール系装備ではこんなに早く作れません。

 助手が3人もいるから出来ることですね。

 一番時間がかかる中間素材の製作を手分けして行えるのですから。


「『ディヴァインゴブレットダミー』? なんだこれ?」

「え? 『ディヴァインゴブレット』なんですか?」

「バケツさん知ってるのか?」

「えぇ、ついこの間NPC(ノンプレイヤーキャラ)クエストで製作しているので」

「ならいけるな!」

「あ、でもダミーなんですね。

 問題はなさそうですけど」

「じゃあうちらは中間素材をちゃっちゃと作るから任せたわよ!」

「はいー」


 強MOB(モンスター)がドロップするレシピはどうやらこの『ディヴァインゴブレットダミー』だけのようです。

 雑魚からはたくさんのレシピがドロップしていただけにさらに強力な装備やアイテムで段階を踏んでいくのかと思ったらそうでもないみたいです。

 しかし使用するための祭壇がないみたいですけど、どうするんでしょう?


「素材あがったよ!」

「こっちもだ!」

「同じく!」

「じゃあいきますねー」


 製作が分散しているしているだけあってやっぱり早いですね。

 『ディヴァインゴブレットダミー』は『ディヴァインゴブレット』よりも製作難易度は低いようで、その分中間素材の数も減っています。

 やっぱりダミーだからでしょうかね。

 でもそのおかげで製作速度もあがっているのですからいいでしょう。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「外周に突然なんか出たぞ!」

「次の段階に移行したのか!?」

「何が出たんだ! レイドボスか!?」

「違う! どうやらただの祭壇みたいだ! なんだこれ!?」


 『ディヴァインゴブレットダミー』を1つ製作し終わったところでどうやら変化が起こったみたいです。

 祭壇が現れたということはやはりこの『ディヴァインゴブレットダミー』は祭壇で使うんでしょうね。

 でも外周に出現しているですので設備や道具があるここからは少し遠いです。

 幸いなのは『ディヴァインゴブレット』のように製作者しか使用できないわけではないということでしょう。


「出現した祭壇は外周に12箇所だ!」

「祭壇で『ディヴァインゴブレットダミー』を使用すればいいらしい!

 すでに1つ製作完了している!」

「強MOB(モンスター)が祭壇に向かっているぞ!」

「全力で死守よ! 恐らくここが正念場! みんな気合いれなさい!」


 ミカちゃん達には『ディヴァインゴブレット』の話はしてありますからね。

 2人から情報の共有がなされたのでしょう。

 戦闘組が祭壇の防衛に動いています。

 でもそのせいで生産組を守る人員がどうしても減ってしまっています。

 強MOB(モンスター)はどうやら祭壇に向かうグループと生産組を狙うグループに別れているようです。

 しかも巨大結晶から出現する量が増えているというおまけつき。

 ミカちゃんの言うとおり、ここが正念場なのでしょう。

 まだ『ディヴァインゴブレットダミー』をあと11個製作しなければいけませんし、耐久値がどんどん減少しているイベント装備も替えが必要です。

 ここで強力なイベント装備がなくなるのはかなり厳しいでしょう。


 『聖銀』装備は私しか製作できないのですが、ここは『ディヴァインゴブレットダミー』が優先でしょう。

 戦闘組もそう思ったのか、総指揮をとっているミカちゃんからすでに優先するように連絡がきています。


 戦闘組も生産組も正念場ですが、運搬組も大変みたいです。

 何せ戦闘組が分散したおかげで装備やアイテムの配達が面倒になっていますからね。

 強MOB(モンスター)が闊歩している中を突破しないといけないですし。


 まぁ私は『ディヴァインゴブレットダミー』の製作を優先です。

 あと11個も作らないといけないですからね!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「4班起動終了!」

「6班終わったぞ!」

「あと3箇所よ! 最低限の防衛戦力を残して移動開始!」


 設備や道具が設置されている私達がいるところから近い順に『ディヴァインゴブレットダミー』を祭壇で使用していますが、どんどん遠くなっていっているので結構大変です。


 祭壇で『ディヴァインゴブレットダミー』を使用すると光の柱が立ち、中央にある巨大結晶にその光が集まっているようです。

 光の柱も残す所あと3本。


 『ディヴァインゴブレットダミー』の製作はすでに終了していて、『聖銀』装備の製作に移行していますが問題は戦闘組ですね。

 光の柱が立った祭壇には強MOB(モンスター)があまりよりつかなくなっていて、逆に光の柱が立っていない祭壇に群がるように集まっているのです。

 でもまったくよりつかないわけではないようで、最低限の防衛戦力を残しておかなければ何をされるかわかりません。


「10班終わった!」

「あと2箇所よ! 根性みせなさい!」


 ですがそこはミカちゃん率いる戦闘系トッププレイヤー開拓者です。

 今のところ死に戻りしたプレイヤー開拓者の数は片手で数えられる程度に留められており、順調にイベントは進行しています。

 製作面や情報面で有利ではあってもやはりまったくの被害なしとはいかないようです。

 でも私達でこれなのですから、他の門はもっと被害が大きいのではないでしょうか。

 もちろん他の門でも同じことが起こっていればの話ですけど。


「出来ましたー運搬の人よろしくお願いしますー」

「任せろ! いくぞみんな!」

「「おう!」」


 今強MOB(モンスター)が群がっているのは私達がいる場所から一番遠いところなので運搬担当の人達も徒党を組んで突撃しています。

 他よりはマシとはいえ、『聖銀』装備も耐久値がゴリゴリ減っていますからね。

 出来たそばから届けてもらわないと前線を維持できなくなってしまうかもしれません。

 強制的に巻き込まれたとはいえ、全員が一丸となってイベントに参加しているというのはとても珍しいことだと思います。

 でもみんな楽しそうですし、野暮なことはいいっこなしですね。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「12班終了! 見ろ! 光が!」


 遂に最後の祭壇に『ディヴァインゴブレットダミー』が到達したようです。

 12の光の柱が巨大結晶に光を集中し始め、フィールドエリア全体が発光しているかのような輝きに包まれています。

 まだ大量に残っていた強MOB(モンスター)はどうやらその光を浴びるとどんどん光のかけらになって消滅していっているようです。

 これはもしかして終わりなんでしょうかね?

 もちろん私達の勝利で。


「あ」


 でもどうやらそんな私の思いはフラグだったようで――


「総員戦闘体勢!」


 巨大結晶が光の洪水によって砕け散った瞬間、光を飲み込むように影が噴出し巨大な異形のバケモノが現れたのでした。


 現れたのは『異形の主』。

 どうやらこれが本当の最終決戦みたいです。


「各班は防衛陣を構築! 特に生産組を死守よ! 今装備の供給が止まると総崩れするわよ!」


 『異形の主』が現れたと同時に周囲にイベントMOB(モンスター)が次々と出現し始めています。

 戦闘組のほとんどは一番遠い祭壇に集結していただけにこちらにこられると、あの数はちょっと無理じゃないでしょうか。

 現状の強力な装備だけで対抗できるならいいのでしょうけど、すぐに耐久値が尽きそうな気がします。

 ミカちゃんの指示によりすぐに防衛陣が敷かれ始めていますが、やはりいちばん遠い祭壇に集結していたのが仇となっています。


「これはやばいんじゃないか?」

「う、うちらも戦わないと……」

「え、ええっとアレを相手に?」

「無理ですよねー」


 生産組も全員が全員戦えないわけではないです。

 実際に一時的にでも防衛に加わるために何人かは前に出ています。

 でも大半は無理なわけです。


「運搬班! 今ある分だけでも持って逃げろ! ここはもうだめだ!」

「だ、だけど!」

「いいからいけ!」


 あぁ、もうこれは完全にだめですね。

 どうやら私達も死に戻りになるみたいです。

 でも今ある分だけでも戦闘組に届けてもらわないといけないですよね。

 もう少しで今製作している分も完成しますし、どうせなら死に戻る間際まで製作していましょうか。


「まさか製作しながら死ぬとは思いませんでしたねー」

「まったくだ」

「でも生産組としては一度はやってみたい死に方よね」

「こういう機会でもないとやれないでしょうしね~」


 助手の3人もみんな同じ意見のようです。

 手を動かしながらも迫り来るイベントMOB(モンスター)をチラ見して――


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