112 『……お返事を聞かせてもらえませんか?』
もうすっかり秋です。
部屋の窓からみえる景色も紅葉が始まりかけているのが見て取れますね。
でも【ふろんてぃあーず】では季節を感じることは出来ません。
まぁ快適で過ごしやすい状態が常に保たれているので構わないのですが。
『ディヴァインゴブレット』を製作したNPCクエストは『現実時間』で昨日の話です。
『ゲーム内時間』でならすでに2日以上経過していますので、追加報酬の協議が終わったのでしょう。
ドワーフさんから『メール』が届いていました。
内容は追加報酬についてと、追加の依頼があるので工房にきてもらえないかというものでした。
追加報酬の内容は書いてないのであちらで話すのでしょう。
追加の依頼は『ディヴァインゴブレット』を制作して終わりだと思っていただけに驚きましたが、出来そうならやりたいですね。
もちろん報酬が目当てなのですけど。
何せ上級の道具レシピがもらえたクエストの追加依頼なのですからね。
否が応でも期待が膨らんでしまうというものです。
でもまだ『ゲーム内時間』で深夜ですので、工房も開いてないでしょう。
昼タイムになったら『メール』でお返事してそれから出かけるとしましょうか。
それまではスティール系装備の製作です!
昨日はあれからもうずっと作っていましたが、まだまだ有用な『オプション』は出てきません。
有用な『ダブルオプション品』となるとやっぱり『シングルオプション』よりもずっと運がいりますね。
ある程度製作したら優先販売の告知をしようとは思いますが、現状ではシングルよりはマシ、といった程度なので次を期待して誰も購入しないと思います。
まぁ足りない部位を補うために買う場合もあるかもしれませんが。
でも優先販売で売れなくても問題ありません。
何せお店に並べれば『オプション品』でなくても即完売なのですからね!
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銀装備の登場で後続の生産系プレイヤー開拓者のスキルのLvアップ速度も上がっているはずですが、設備や道具に関してはそうもいきません。
私のように先行して独占販売を行い、一気に資金を増やした特殊な状況でもない限りは設備を更新するのも一苦労なはずです。
それに設備を置くには工房をもたなければいけません。
お金はいくらあっても足りないんですよね。
道具レシピに関してはお金では買えないものです。
もちろんオリジナルレシピで道具を製作したり、道具自体を販売する方法もあります。
オリジナルレシピの場合は現在掲示板でも議論されていますが、実際に中級以上の性能をもった道具は作れていないのが現状のようです。
道具自体の販売は道具レシピ所持者が非常に少ない上にアドバンテージを確保するために販売をしていません。
まぁ私もその1人なのですけどね。
『Works』の場合は情報の共有などでNPCクエストを通じて全員が中級の道具レシピまでは取得済みです。
ですがもちろん中級改や上級となると誰ももっていません。
上級も私だけですし。
この辺はすでに話し合いが済んでいる領域ですので、道具レシピが手に入っても情報の共有や道具自体の融通などはきちんとした見返りがない限りは行わないことになっています。
設備や道具を揃えるのは生産者にとっては非常に有用ですが、だからといって必ずしも必須というわけではないですし、同じ『クランメンバー』とはいえ、それはソレ。
結構厳しいんですよ? 『Works』は。
掲示板で噂されている身内で情報や設備、道具を共有している独占『クラン』なんてのはただのやっかみでしかないのですよ。
まぁ難易度が高くなってくるに従って設備や道具の重要性は増してきます。
なかなか手に入らないフラストレーションが募っていった結果こういう噂が出るのは当然だと思います。
だからといってなんだとは思いますけどね。
私は私の道を突き進むだけです。
さぁドワーフさんに『メール』も送って返事も頂きました。
すぐにでも来て欲しいとのことだったのでさっそく向かうとしましょう!
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「遅くなってすまなかった。
これが追加の報酬だ、受け取ってくれ」
「ありがとうございますー」
北門通りの奥にある工房にたどり着けばすぐさま奥へと通されました。
今日はドワーフさんだけではなく、なぜか完全武装の開拓者も数人一緒です。
紹介がなかったので彼らには会釈だけしておきましたが、次の依頼に関わる人達でしょうか。
なんか物々しいです。
それより追加報酬なのですが、なんとSPが30という大盤振る舞い!
これは美味しい! 美味しすぎる! 人がいなければ万歳三唱しちゃいたいくらいですよ!
回りに人が結構いるのでさすがに恥ずかしいので我慢していると、ドワーフさんが何か仰々しい封がしてある手紙を取り出しました。
な、なんでしょう。
封蝋とかではなく、何かもっと特殊なもので封がされているようです。
……ものすごく嫌な予感がします。
「ではバケツさん。次の依頼についてだが、こちらを確認してくれ」
「あ、あの……なんだかすごい封がされてるんですけど……」
「あぁ、これは『ザブリナ王印』で封がされている。つまりは国王からの依頼だからな」
「ちょ、ちょっと待って下さい! それは聞いてないですよ!?」
「言ってないからな。
まぁだが安心してくれ。断っても特に罰などはない」
「えぇー……」
なんだかすごいことになっている気がします。
というか嫌な予感的中じゃないですか!
もしかして完全武装の開拓者と思ってた人達は開拓者じゃなくて騎士とかそういうのですか!?
ゲーム内ではみたことなかったのでわかりませんでしたよ!
よくみればみんなお揃いの装備ですし、なんだか威厳もあるような気がしてきました。
衛兵さんは見慣れていても騎士は初めてです。
ま、まぁ本当に騎士なのかはまだわかりませんが。
「ちなみにこいつらは『ザブリナ騎士団』の連中だ。
今回の依頼での説明役だな」
「や、やっぱり騎士の人達だったんですか……」
「まぁ基本的に城か、異変の対処におわれてるから見ることは少ないだろう」
ゲーム内でさっぱり見ないと思っていたら異変の対処をしていたようです。
あとお城なんかはプレイヤー開拓者では用がないですからね。
それでは騎士をまったく見かけないのも頷けます。
異変はまだ3箇所残っています。
イベントも含めれば4箇所ですが、期限があるわけですからそれが終わったら異変も解消されると踏んでいます。
なので数には含めないのですが、残りの3箇所が結構問題だったりします。
未だにプレイヤー開拓者は到達すら出来ていないのですから。
おそらくは開拓が進まないとだめなんでしょう。
でも現状ではイベントやフィールドエリアのアフターケアに追われ、【首都サブリナ】周辺の開拓はほとんど進んでいないのです。
閑話休題。
渡された手紙にはとんでもない封がされていますが、開けないわけには行きません。
なので意を決して開けてみると、目の前が真っ白になりました。
比喩でもなんでもなく、凄まじい光のエフェクトで目の前が真っ白になったのです。
そして気がついたらそこは先程までいた工房ではありませんでした。
『ようこそ、祝福されし開拓者よ。
あなたに依頼があります。
『異変:消えた国宝』を解決してほしいのです。
あなたが製作した『ディヴァインゴブレット』を用いて、騎士を導くのです』
そこはゲームスタート時に女神様から祝福を受けたあの場所。
てっきり最初は神殿の中だとばかり思っていたのですが、どうやら違うようです。
恐らく女神様とのイベントシーン用に用意されたエリアなのでしょう。
ちょっとだけ懐かしい感じがします。
あの頃から2ヶ月近く経ったんですね……。
『……お返事を聞かせてもらえませんか?』
「え、あ、すみませんー。えぇっと、もうちょっと具体的にお願いします」
懐かしい回りの景色に見とれてしまって女神様のお話をあんまり聞いていませんでした。
でも全然聞いていなかったわけじゃないんですよ?
なんか異変を解決しろ的な話ですよね。
でもそれだけじゃさっぱりわかんないじゃないですか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「それで、どうだ? 受けてくれるか?」
「あー、はいー。受けさせてもらいますー」
女神様から詳しい話を聞いた結果、元の工房に戻されました。
女神様の領域にいた間は私が考え込んでいたと思われたようで、ドワーフさん達に変化はありません。
体はこっちにもあったのかな?
それとも全部ご存知?
「ではここからは私が説明しよう。
『ザブリナ第2騎士団』団長のヘイフリックだ。以後よしなに」
「開拓者のバケツさんですー。よろしくお願いしますー」
騎士団が何番目まであるのか、その番号の騎士団が何を担当しているのかは全く知りませんが、偉い人だというのはわかります。
他の騎士達よりも鎧がなんか偉そうですし。
でも嫌な感じはしません。
どちらかというと叩き上げの豪傑って感じですね。
物腰は柔らかですが。
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ヘイフリックさんが説明した内容は女神様から聞き出した、『異変:消えた国宝』に関しての事と、進捗状況でした。
まぁ要するに【ザブリナ王国】の国宝が突如として消え、女神様から異変の告知があった。
そして捜索の結果手がかりを掴んだものの、特別なアイテムが必要な封印が施されたフィールドエリアを攻略しなければいけないらしいそうです。
その封印を解くためのアイテムというのが『ディヴァインゴブレット』。
女神様曰く、ランクの高い『ディヴァインゴブレット』は製作者しか使用できないそうです。
詳細欄にそんなこと書いてありましたっけ?
どういうことなんですか?
運営、ちょっと説明を要求します。
私は生産一筋であり、戦闘なんてまったくできないんですよ?
「それと安心してほしい。
君のことは我々が命を賭して守ることを誓おう」
「そうですかー。まったく戦えないので本当にお願いしますー」
「任せてくれたまえ。これでも我々は戦闘の第2と呼ばれているほどだ」
どうやら『ザブリナ第2騎士団』はとても強いみたいです。
これなら安心できるのですが、問題は攻略するフィールドエリアですよね。
プレイヤー開拓者ではまだ到達できない場所なのは確実です。
あぁ、怖いような楽しみなような。
倒したMOBの素材とか貰えませんかね?




