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111 『ぐぬぬ……!』

 ドワーフさんから受けたNPC(ノンプレイヤーキャラ)クエスト――『ディヴァインゴブレット』の製作は中間素材の製作の段階から驚きの連続です。

 上級道具の性能の高さというのはそれほどのものだからなのです。


 中級設備では驚きましたが上級設備ではそれほど驚くことはなかったのですが、やはり道具は2段階飛ばしなのが効いていますね。

 おかげで中間素材を高ランクのもので揃えることが出来ましたし。

 その中間素材の数もスティール系装備と同等くらいには必要です。


 『ディヴァインゴブレット』のカテゴリーは食器です。

 その食器というカテゴリーは製作全般に於いて難易度が低く設定されているのですが、その中に於いても『ディヴァインゴブレット』の難易度はかなり高いと言わざるを得ません。

 ランクでいえば恐らくスティール系装備以上なんでしょうね。


「では行きますー」

「おう、任せた」


 高ランクの中間素材を大量に目の前で製作したおかげもあって、ドワーフさんからは完全に信頼されている感じです。

 まぁこれだけ高ランクの中間素材は早々お目にかかれないと思いますし。

 親方さんクラスでもこういった特殊な製作でもない限りはないでしょうね。


 『ディヴァインゴブレット』は食器です。

 通常、食器は『魔導合成器』を使って製作するものですが、『ディヴァインゴブレット』は違うようです。

 まず『鍛冶』で大量の中間素材を1つにまとめ、次に『細工』で複雑な彫金を行います。

 そして最後にやっと『魔導合成器』の出番になるのですが、ここで例の謎素材――『聖銀鉱石』が登場するのです。


 最初はこの『聖銀鉱石』を加工してインゴット化してメインに使うのかと思っていました。

 でも実際は違うようです。

 インゴットにすることもなく、ほぼ完成域にある『ディヴァインゴブレット』と一緒に『魔導合成器』へと投入し、レシピを設定して使用するのです。

 ここで必要になるスキルは当然『道具製作』。

 私のスキルは『道具職人Lv45』ですのでいけるでしょう。

 実際手応えとしては十分な感じです。

 中間素材のランクも現状では最高といえるほどに高いものでしたし、設備も道具も最高のものがそろっています。


 これで出来なければ私のスキル不足、ひいては腕不足でしょう。

 でも――


「完成ー!」

「おぉ! やったか!」


 失敗なんて当然なく、『ディヴァインゴブレット』完成です!

 でも完成しただけでは意味がありません。

 いえ、もちろん全然ないわけではないのですが、報酬はランクに応じて、なわけですのでここからが問題なのです。


「ではさっそく見せてくれ」

「はいー」


 まだ私も詳細を確認していませんので、ドワーフさんと一緒に見てみることにしましょう。


 ====

 ディヴァインゴブレット

 食器/★8/神属性・特大

 ====


「こ、こいつは予想以上だ……」

「食器って『オプション』つくんですかー」

「それはある程度予想通りなんだが、ランクが★8……。

 想定していた最高ランクを2つも上回っている……報酬を上乗せする必要があるな」

「え、そうなんですか?」


 ドワーフさんが驚愕したり、悩んだり、色々と表情が変化していますが、大部分が髭で見えません。

 というか想定していた最高ランクは★6だったんですね。

 ついでに『オプション』がつくのも予想範囲内だった、と。

 なら教えて欲しかったですねー。


 まぁ今となっては上乗せされる報酬の方に興味がいっていますのでどうでもいいですが。

 いえ、『神属性・特大』もちゃんと気になってますよ。

 特に特大が。

 属性的には名前もあってそういう可能性があるとは思っていましたけど、特大は初めてみます。

 大の次の効果だったと思いますが、属性なのでその効果の程は詳細欄からは読み取れません。

 というか食器に属性って意味あるんでしょうか?


「すまんが、上乗せ分の報酬については協議せねばならない。

 これだけの品だ。期待してもらっていい。

 今渡せる分の報酬は支払おう。お疲れ様、これでクエストは完了だ!」

「ありがとうございますー」


 失敗も考慮して予め大目に用意されていた素材でしたが、予想以上の物が一発目で出来たことでお役御免となったようです。

 初めはどうなることかと思いましたが、無事最高の評価で終わらせることができて良かったです。


 そして報酬は当然、全種類の上級道具レシピです!

 いやー美味しいですね!

 すごく美味しいです!

 これで道具も上級で揃える事が出来ます。


 でも中級改のレシピは一体どこにあるんですかね?

 まぁ今更出てきても意味はないのですけど。


 それに上乗せ分の報酬は一体何が貰えるんでしょうね。

 ドワーフさんの言葉からも期待がとても持てます。

 上級道具レシピ全種類だけでもかなりの大盤振る舞いだと思いますし、楽しみですね!

 連絡は後日ということで解散となりましたが、この場合は継続的にクエストが発行されるのはなさそうですね。

 ちょっと残念ではありますが、特別なクエストだと思えばなんてことありません。


 さぁ工房に帰って道具を揃えるとしましょう!

 スティール系装備の『ダブルオプション』も見えてきましたよ!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 お昼のログアウトを挟んで上級道具を揃え終わりました。

 中間素材の量がそれなりに増えていたのと、数が数ですので少し時間がかかりましたがこれで漸く準備が整ったわけです。


 さぁいざ作りましょう!

 何をってもちろんスティール系装備です!

 『ダブルオプション』が私を待っているはずです!

 さぁ運命の女神様!

 有用な『オプション』を我が手に!


「ちーっす」

「ふおっ!?」

「なんて声だしてんの……。なんか前にもこのやり取りしたような」

「ミカちゃぁーん!」

「いやだってちゃんと呼んだよ? 何度呼んでも返事ないし」

「うっ」


 どうやらまた集中していて呼ばれたことに気づいていなかったみたいです。

 でもまぁ今回は仕方ないですよね。

 前々からずっと欲しかった道具のレシピが、しかも上級のが手に入ったのですから。

 これは誰に聞いても仕方ないというでしょう。

 だから仕方ないんです。


「それで、どうしたの?

 私これからスティール系装備作るんだけど」

「あー……レイド待ちついでに素材売りと駄弁り?」

「んー……。ちょっと集中したいんだけど……」

「じゃあソファーでゴロゴロしてるよ」

「ごめんねー」

「いいってことよー。この本借りるねー」

「いいけど、それ読めないと思うよ?」

「おお? なんだこれ! 全然読めない!」


 レイド以外は暇なのか、ミカちゃんが読めない本を広げてソファーでゴロゴロし始めましたが、まぁミカちゃんですので構いません。

 というか暇なら『ドトリル銀鉱山』でも行けばいいのに。


 では改めてスティール系装備の製作をしましょう。

 いざ参る!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「出来た?」

「出来た」

「見せて?」

「いいけど……がっかりしないでね?」

「おう? ……おう!? ……ええー!?」


 1つ目のスティール系装備は『スティールショートソード』です。

 もちろんミカちゃん用に製作しました。


 えぇ、上級道具のおかげで中間素材のランクが軒並み上昇。

 その後押しもあり、最終的に到達したランクは★6。

 そう、★5を一気に追い越してしまいました。

 とはいっても★5で『ダブルオプション』が発生するのは掲示板の統計データによるとかなり低いようです。

 発生しないわけではないというのがポイントですが、ランダムなのも合わさってとてもではないですが実用的ではないみたいです。

 その点★6はやはり運が絡むことは変わりませんが、ずっとマシになります。


 上級道具の効果は恐ろしいですね。

 あ、それで完成したものがこちら――


 ====

 スティールショートソード

 小剣/★6/ATK+102 MP+138 HIT+67/魔力強化・中 命中強化・大/耐久80

 ====


「ぐぬぬ……!」

「ねー」

「遂に『ダブルオプション』がきたってのにこれかぁ! これなのかぁ!」

「まぁ今後に期待だねー」

「そうね……。でも『封闇秘剣』や『ダークショートソード』を超えるには相当なやつつかないとだめだね……」

「こればっかりは運だけど、シングルよりは期待できると思うよ?」

「……ぼ、防具を……」

「んー。そっちでもいいけど、優先販売で姫ちゃんと勝負になるよ?」

「まぁそれは仕方ない」

「んじゃ防具の方を優先するねー」

「よろしくー!」


 見事に『ダブルオプション』がついているとはいえ、やはり有用なものでなければミカちゃんの武器更新にはなりませんね。

 ミカちゃんもその辺は理解しているので防具を優先するみたいです。


 優先販売もミカちゃんと姫ちゃんでは同列ですので、欲しいものがかぶれば勝負となります。

 とはいってもPvPをしたりするわけではなく、サイコロを振るだけなんですけどね。

 大きい目を出した方が勝ちです。

 ちなみにシステムではなく、木材を削って作った手製のサイコロです。

 システムでもダイスロールが実装すればいいんですけどねー。


「さって、それじゃあたしは行くわー。期待してるよユリー!」

「はいはい、またねー」


 結局読めない本を眺めてソファーでゴロゴロしていただけのミカちゃんでした。

 まぁ私としては別にいいんですけどね。

 あ、でもソギちゃんを奪っていくのは勘弁してください。

 ミカちゃんが来るとソギちゃんを毎回奪われるんですよね。

 ソギちゃんもソギちゃんです。

 あなたの飼い主は誰でしたっけ?


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