110 『やはり大したもんだ』
お遊び要素というにはちょっと高額なものになりますが、魔晶などを使った装備の強化ギャンブルというのもありましたね。
現在【ふろんてぃあーず】では個人がアイテムを販売する場合、露店やお店、【開拓者組合】でのクエスト形式などでしか販売する以外ありません。
よく違うゲームで目にするゲーム内の全員が使用できる商売用のシステムなんかは実装されていないんですよね。
これが実装されたらお店を持つ必要性が薄くなるというのもあるのかもしれません。
実際、そういった商売システムで売り買い出来れば店舗代や従業員のお給料なども必要ないですからね。
ただ戦闘系プレイヤー開拓者などはお店を持つメリットがかなり薄いですし、気軽にアイテムを販売できる商売システムは要望が高かったりします。
実装されるかどうかは運営次第ですが、生産者、特にお店をすでに持っている人達からは不満が出るでしょうね。
ただ、店舗はそこまで足を運ばなければいけませんが、商売システムなどは他のゲームを見る限りではもっと使いやすいものです。
ですのでもしかしたら【ふろんてぃあーず】でも実装される日が来るかもしれませんが、その時は店舗所持者に何かしらの救済がほしいところですね。
店舗所持者は出品枠が増えるとか。
まぁこれも今後の運営次第です。
私としては現時点で大して困っていませんので今のままでもいいんですけどね。
そういえば、『メール』でアイテムが送れる仕様はいつの間にかひっそりと削除されていました。
あれも実はお互いがセーフティエリアにいないと使えないんですよね。
しかもフィールドエリアのセーフティエリアではだめという仕様でした。
結局私は使いませんでしたけど、簡単な配達程度なら活用できたんでしょうね。
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『ゲーム内時間』も昼タイムになったのでそろそろ納品に行こうかと思います。
もちろんその前に【開拓者組合】にもよりますけどね。
【開拓者組合】への道すがら戦闘系プレイヤー開拓者と思しき集団がレイドの話をしていました。
イベントも終盤戦になり、皆ラストスパートに余念がありません。
特に『影の涙』の入手はトップを狙う人達にとって重要です。
値段の上昇もまだ続いているようですしね。
こればかりはイベントが終わるまで続きそうですよね。
評価査定をさくっと終わらせて駅馬車を使って北門通りへ。
そこからさらに奥へ進めば目的地です。
「こんにちはー」
「おう、らっしゃい! 今日はなんだい?
まさかもう出来たのか!?」
「はいー」
さすがに納期までまだまだある状態での納品ですので驚かれてしまったようです。
鍛冶師5人組だともう納品が早くてもそれが当たり前のようになっていたので驚くこともなくなっていたのですけどね。
クエストを何度もやっていけば彼もそうなるでしょう。
「確かに。いや、しかし噂以上だな。大したもんだ」
「いえいえー」
「……もうあと2,3回頼んでからにしようと思ってたが……これならいけるかもな」
「なんです?」
「バケツさん、実は今回納品してもらったやつは試験も兼ねてたんだ。
噂であんたが凄腕の職人だとは知っていたが、実際にこの目で見るまでは完全には信用できないからな。
気に障ったんなら謝る。
だがこれで確信した。あんたになら任せられるってな」
「ええっと」
「まずは何も言わずにコレを見てくれ」
「……これは」
何やら1人で納得したり、謝ったりと色々忙しいドワーフさんでしたが、机の上に出されたものは今までの言動なんてどうでもよくなるものでした。
「『聖銀鉱石』。
例の『ドトリル銀鉱山』の奥深くで見つかった大きな鉱脈の中にあったものだそうだ」
「もう奥まで進んでる人がいるんですか?」
まったく見たこと無い、未知の素材が目の前にあります。
しかも掲示板でも『ドトリル銀鉱山』の奥まで進んだプレイヤー開拓者は現れていません。
戦闘能力の高いプレイヤー開拓者はみんなイベントに夢中ですし。
そうなると……。
「あぁ、国が雇ってるやつらが行って来たみたいだ。
まぁそんな貴重なもんがなんでここにあるのかは聞くな。
問題はコレの加工だ」
国が雇っているやつら、つまりはNPC開拓者のことでしょう。
彼らは今残りの異変の対処をしていると思ったのですが、一部は『ドトリル銀鉱山』にも潜っていたみたいですね。
聞くなと言われましたが、そんな国が所有者となっているような貴重な素材がここにあるのはすごく気になります。
クエストも試験って言ってましたし、このドワーフさんは実はすごい人なんでしょうか?
「それで私に?」
「まぁそういうことだ。レシピと設備についてはこちらが提供する。
あんたほどの腕前なら可能なはずだ。
挑戦してみないか?」
「えぇっと質問がいくつかありますー」
なんだかよくわからないうちに新たなNPCクエストが発生していますが、受ける前に色々聞かなければいけません。
『聖銀鉱石』が貴重な素材であることは言わずもがなでしょう。
ならば失敗した場合はどうなるのか。
いくつ『聖銀鉱石』があるのか。
提供される設備やレシピがどれほどのものなのか。
期限はどのくらいなのか。
そして報酬です。
ウィンドウに表示されているNPCクエストの報酬欄が何故か空白なのです。
これは無報酬ということなのでしょうか?
「――最後に報酬についてなんですが」
「報酬については受けた後に話すことになっている。
だが相応の報酬であることは約束しよう」
「そうですかー」
私の質問に淀みなく答えていたドワーフさんですが、報酬についてだけは断固として教えてくれなさそうです。
これじゃ躊躇してしまうと思うんですけどねー。
でも私としては受けてみたいと思っています。
というか受けます。
何せ初めての素材ですよ。
失敗に関してはある程度大目に見てくれるそうですし、『聖銀鉱石』の数もそこそこあるみたいです。
全部失敗できるというわけではありませんが、それなりの回数チャレンジはできるみたいです。
でも失敗が嵩めばそこでクエストは終わりになるそうです。
その場合はクエスト失敗扱いにはならないものの報酬もなしだそうです。
デメリットがないのですからやるべきでしょう。
拘束時間もそれほどでもなさそうですし。
期限についても結構長めです。
でも今ならすぐにでも出来そうなので一度挑戦してみてダメならスキルLv上げや進化などをしてから再挑戦したいですね。
「受けますー!」
「よし! ではコレがレシピだ。
設備の場所だが――」
クエストを受けるとさっそくドワーフさんから色々と説明がありました。
肝心の報酬ですが、なんと道具レシピの上級が貰えるそうです!
ただし加工に成功し、且つランクが高くないとだめだそうです。
でもランクが高ければ複数のレシピが貰えるみたいですので頑張りたいですね。
ちなみに設備は全て上級のものが揃っていました。
道具もです。
中級改のレシピを飛ばしていますが、上級のレシピが手に入るならそれに越したことはありません。
というか道具レシピの入手はかなり難易度が高くないですかね?
未だに中級改は見つかってもいませんし。
今回だって偶然です。
むしろクエストを受けなければわからなかったくらいです。
向田さんからも聞いてませんでしたし。
彼もおそらくは知らないでしょう。
「レシピを見ていけそうならさっそくやってみるか?」
「そうですねー。やってみますー!」
報酬に浮かれてばかりもいられません。
提供されたレシピによると中間素材の数や『聖銀鉱石』のランクなどからスティール系と同等程度のレベルだとわかります。
ちなみに製作対象は『ディヴァインゴブレット』です。
カテゴリーは食器ですが、難易度が低いはずの食器でこれですからね。
もし装備だったら今の私では無理だったかもしれません。
設備はいつも使っているものばかりなので問題ありませんが、道具は違うので少し慣らしも兼ねて中間素材を製作していきましょう。
上級の道具だとどれくらい違うんですかね?
2段階飛ばしですから期待してしまいますよ!
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「やはり大したもんだ」
「いえいえー。これは道具のおかげですねー」
「いや腕がなければそもそも道具も扱えないだろう」
製作した中間素材は今まで製作していたものよりもランクが2つも上がっていました。
製作している最中もその効果が実感できるほどのものです。
さすがに2段階も上がると体感できるほど違いがでますね。
そのおかげか、ドワーフさんにもお褒めの言葉を頂きました。
中間素材に関しては思った以上の高ランクを製作できましたので、本番の『ディヴァインゴブレット』には万全の状態で挑めそうです。
食器ですので『オプション』はつかないと思いますが、それでも報酬のために高ランクを目指しますよ!
めざせ全上級道具レシピ入手です!




