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105 『……やりすぎた?』

「出来たよ!」

「完成だよ!」

「「任務達成だよ!」」

「ご苦労さまー」


 珍しく『バケツさん工房』に元気な双子の声が響いていますが、今日は双子に私の方から依頼して来てもらっていたりします。


「これが『魔導銀』……。2人共ありがとねー」

「さすがボク達だね!」

「僕達じゃないとできないね!」

「「もっと褒めて!」」

「はいはい、すごいねー。さすがミーとムーだよー」

「「えへへ~」」


 ご希望通りに双子の頭をなでなでしながら褒めてあげれば、普段騒がしい2人には珍しく歳相応の可愛らしい照れ具合をみせています。

 普段もこんな感じだったらいいのに……。


「でもどうするのこれ?」

「何に使うのこれ?」

「「教えて!教えて!」」

「あれー? 言ってなかったっけ?」

「言ってないよ!」

「聞いてないよ!」

「「何するの?」」


 どうやら協力の依頼をしたときにてっきり話したと思い込んでいたようです。


「えっとね。これを作ろうかと」

「どれどれ?」

「ほうほう?」

「「何これ!?」」


 双子に見せたのは図書館2階で手に入れたレシピ――『レシピ/魔導人形:蟲型・蜘蛛』。

 そう、新しい人形のレシピなのです。


 今まで木人形しかなかった人形のレシピなのですが、つい最近発見したのがコレなのです。

 てっきり鉄や青銅、銅などを挟んでいくものとばかり思っていたのですが、いきなりコレです。びっくりですよね。


 でももっとびっくりしたのはその素材だったのです。

 中間素材を結構な量……それこそスティール系装備以上で必要としているのですから驚くなという方が無理ですよね。

 中間素材の量から難易度がかなり高いことは容易に読み取れます。

 でもそれ以上に問題だったのが、未知の素材です。


 そう、それが『魔導銀』だったのです。

 しかもこれ、結構な量を要求されていたので困り果てていたのですよね。

 残念ながら図書館2階で『魔導銀』のレシピは入手出来ていませんでしたし。


 そこで微妙に錬金術の素材っぽい名前だったので双子に、となったわけです。

 まぁ他のスキルの可能性も高かったのでダメ元でもあったのですけどね。


 ですがそんな懸念もなんのその、見事に双子によって『魔導銀』は製作できたのでした。

 どうやら図書館の1階で入手できるレシピに『魔導銀』があったらしいのです。

 でも私はゲットできていません。

 おそらくは『錬金術』の進化が必須なのでしょうね。

 私は『錬金術・改』までしか進化していませんが、双子はその2つ上までいっていますし。


 ですが残念ながら彼らはまだ『魔導銀』を製作したことがありませんでした。

 なぜなら設備が足りなかったからです。

 やはり『鍛冶』でいうところのスティール系装備以上の難易度なのでしょうね。

 なので、2人にとっても意味のある依頼だったみたいです。


 でもまだまだ『魔導銀』は必要です。

 私では製作できませんので、双子にはもっともっと頑張って貰いますよ!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「終わったー!」

「しゅーりょー!」

「「今度こそ任務達成!」」

「お疲れ様ー。ほんとありがとうねー」


 たった1体の『レシピ/魔導人形:蟲型・蜘蛛』の製作に結構な労力がかかっていますが、それだけに完成したときが非常に楽しみです。

 でもこれ、木人形のパターンで言えば『オプション』が発生するんですよね……。

 数を作る必要がある『オプション品』なのにこんなに製作に時間がかかるのでは有用な『オプション』はとてもじゃないですが狙えそうもないですね。

 でも双子が設備を整えるか、うちの設備を使えば出来ないこともないんですよね。


 『魔導銀』が必要量揃った事によって、素材の用意は完了です。

 一番のネックだったのがコレですからね。

 あとはなんとでもなります。というかなりました。


 でも実はもう1つ問題があるんですよね。

 素材が用意できても製作できるのかどうか、です。

 何せ今の私の『人形製作』は『人形製作・改Lv86』です。

 材料が材料だけにちょっと厳しいような気がしないでもないです。


 でも『人形製作』には『鍛冶』系の生産スキルがとても役に立つのを私は知っています。

 だからこその挑戦なのですけどね。


「よっし。じゃあ作るよー!」

「「おー!」」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「すごい!」

「ぶらぼー!」

「「エクセレント!」」

「ふぅー……なんとかなったねー。

 素材無駄にならなくてよかったよー」


 ところどころ危ない場面はあったものの、なんとか製作完了しました。

 やはり『人形製作』スキルのLvが低いのが原因ですね。

 出来ればあと2つくらい進化してからやるべきだったと思います。

 今回は確実に他の生産スキルや設備、道具に助けられた感じです。

 どれが欠けても失敗に終わっていたでしょう。


 完成した『レシピ/魔導人形:蟲型・蜘蛛』はこちら――


 ====

 魔導人形:蟲型・蜘蛛

 人形/★4/ATK+187 CRT+87/クリティカル・大/耐久30

 魔導ボーナス/マリオネットカスタマイズ

 ====


 ……ちょっとすごすぎじゃないですか?

 『封闇秘剣』や『攻撃力・大』のついた『スティールショートスピア』を上回っていますよ?

 それに謎のボーナスがついてます。


「ねぇねぇこれ……やばくない?」

「ねぇねぇこれ……やばいよね?」

「「どうするの!?」」

「え、もちろん姫ちゃん用だよ?」

「やっぱり!」

「だと思った!」

「「予想通りだよ!」」


 双子も驚愕の性能にものすごく驚いていますが、使うのは当然姫ちゃんです。

 他にも人形を使っている人はたくさんいるでしょうが、他人に渡すつもりは絶対ありません。


「というか!」

「じゃなくて!」

「「魔導ボーナス!」」

「だねー。えぇっと詳細は……」


 驚愕の性能ですが、それ以上に謎のボーナスが気になります。

 詳細欄を確認してみると、どうやら木人形では後付できなかった様々な装備や変更が出来るようになっているみたいです。

 でもスティール系の武装はつけてあるんですよね。

 一先ずこれ以上の人形用の武装はないので使う事はないかな?


「ねぇ、これ」

「うん、たぶん」

「「パーツの付け替え出来る?」」

「うん? 武装じゃなくて? 爪とか牙とか」

「それもあるけど」

「こういうの」

「「足を剣に!」」

「えぇー? 足を剣にしちゃうの? 爪じゃなくて?」


 双子の発想はどうやら蜘蛛の足をそのまま剣にしちゃうというもののようです。

 爪や牙など、現実に即した武装ばかりを製作していたのでその発想はありませんでした。

 そうですよね。別に現実に即した武装にする必要性はどこにもないんです。


「じゃー……こういうのは?」

「おおー!」

「うおー!」

「「バケツさんすごい!」」

「へっへーん。こういうもどうかな!」

「「おおおー!」」


 一度発想の枷が外れてしまえば色々とアイディアが湧いてくるものですね!

 双子に色々と構想を見せては色々な意見を貰ったりして、『魔導人形:蟲型・蜘蛛』がすごいことになりそうです。

 でも今よりも性能が高くなるんだったら大丈夫ですよね。

 きっと姫ちゃんなら使いこなしてくれるでしょうし!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 結局、双子と一緒に悪ノリしてしまいました。

 えぇ、明らかに悪ノリです。


 蜘蛛……。

 確か元々は蜘蛛だったと思うんです。

 えぇ、今でも名称は蜘蛛のままなんですけど……どう見ても蜘蛛じゃないような気がします。


 8本の足は全て収納できる大剣に。

 顔の部分には大型の牙。

 胴体の上には人型が設置され、さらに様々な武器を装備しています。

 もちろん鎧も着込んでいますので防御力もかなり高いです。

 全部スティール系装備ですし、攻撃力も確かです。


 そして何より……元々の大きさの4倍近くになっているのです。


「ねー……」

「……うん」

「……はい」

「「……やりすぎた?」」

「かなー? 明らかにおかしいよねー」


 ちなみに最終的な性能は――


 ====

 魔導人形:蟲型・蜘蛛

 人形/★4/ATK+247 CRT+87/クリティカル・大/耐久30

 魔導ボーナス/マリオネットカスタマイズ

 ====


 ……ちょっとどうしようかってくらいになってます。

 でもこれだけ魔改造したのに名前は変わらないんですね。


「すごいのできちゃったなー」

「「うん」」


 双子と一緒に呆然と『魔導人形:蟲型・蜘蛛』をしばしの間眺めていました。


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