ナレーター「東○大学理科Ⅳ類 受験生の朝は早い」
受験シーズンという事で。
誰もが一度は考えるであろう、学歴社会というヒエラルキーの頂点に燦然と輝くあの学部の話です。
『東○大学理科Ⅳ類』
知らない方も多いだろう。
日本に存在する全学府全学部の最高峰であり、あまりの重要性・危険性のため世間一般から隠蔽された学部の事である。
存在を知ることで命を狙われる危険性も孕む中、我々は一人の東○大学理科4類受験生との接触に成功した。
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Q こんにちは、東○大学理科Ⅳ類を受験する拾軒様で間違いありませんか。
「こんにちは。
はい、私で間違いないですよ。
あまり頭良さそうには見えないって良く言われますけど(笑)。
まあ、ただの受験生ですからね」
Q ちなみに、ご年齢は。
「23歳です、今年で5浪3転になりました」
Q 3転とは。
「『転生』の略です。
理科Ⅳ類受験生の平均合格年齢は350歳を超えています。
合格者の半分以上が転生経験者ですね」
Q 転生すればすると、有利なんじゃないですか。
「浪人でも言えることですが、やればやるほど有利というものでもありません。
伸びる時期は現役、1転、7転と言われています」
Q 去年のセンター結果を教えてください。
英語:622/200
数学ⅠA:263/100
数学ⅡB:206/100
国語:298/200
物理:238/100
生物:222/100
世界史:188/100
合計2037/900
「国語と世界史でボーンヘッドしてしまいましたが、英語でなんとかカバー出来ました。
足切りは2000点/900点だったみたいで、結構ギリギリでしたね(笑)」
Q 満点を超えている物があるのは何故ですか。
「……?
それだけの実力を備えているからです。
誰でも頑張れば越えられますよ?」
Q 東○大学のホームページなどにも理科Ⅳ類に関して記載はないが、願書などはどうやって提出したんですか。
「念話を通じて願書を取り寄せます。
送られてくる願書は超エニグマ級の暗号で書かれている事が多いですね」
Q 受験会場も、東○大学内では無いようですが。
「年によって様々で、受験生たちには場所を知らされません。
というか、受験会場を見つけることも試験の一つになっている節がありますね(笑)。
去年の会場はマリアナ海溝、その前はムー大陸、更にその前は月でした。
大体、呼吸で苦労している印象があります(笑)」
Q 2次試験はどんなものですか。
英語120(超音波リスニングあり、アメリカ先住民諸語含む)
数学120(ⅠⅡⅢⅣⅤABCDE)
国語80(古代文字・神代文字含む)
理科120(物理・化学・生物・地学のうち2つ)
社会60(世界史・日本史・地理のうち1つ)
「他の理系学部との一番の違いは、2次試験に社会科があることですね」
Q 一番の違いは、そこではないと思いますが。
「……?
確かに、難易度も少し違いますね」
Q 何が一番難しいですか?
「個人的にですが、国語と社会が苦手ですね。
国語は古史古伝なんか出ると頭を抱えます(笑)。
社会は世界史選択なんですが、範囲が40億年前から西暦5000年までと範囲が広大なんですよね。
『歴史を変えろ』系の問題は得意なので、今年は出て欲しいです」
Q 逆に得意な物は?
「理科……特に生物ですかね。
『生命を生み出せ』『惑星を作れ』系が特に得意です」
Q 一日の勉強時間はどのくらいですか。
「平日なら1日に4年くらい勉強しています」
Q ……?
「ああ、理科Ⅳ類受験生に時間操作やアカシックレコード改変技術は必須ですからね。
受験生の平均勉強時間は平日に3年、土曜日は4年、日曜日は6年くらいだと思いますよ。
サンシロー、なんて言われてますね。
私は頭がよくない方なので、平日4年、土曜日6年、日曜日8年くらい勉強しています。
ヨーロッパ、なんて呼んでますよ(笑)」
Q おすすめの参考書を教えてください。
「うーん、国語や英語は原典の丸暗記が一番早いし。
数学・理科・社会はこの世界そのものが一番の参考書かな、なんてね(笑)」
Q その手に持っているものは?
「う……。
透明チャートです。
最近数学がスランプ気味なので、買っちゃいました」
Q 紙が透明で、向こうの文章も透けて見えますね。
「読みにくそうですけど、しばらく使い込むと全部の問題をいっぺんに確認できるから便利ですよ」
Q ……『解法の手引き』には全部『証明不可能』と書かれていますが。
「未解決問題しか載っていないですからね」
Q ところで、東○大学理科Ⅳ類卒業生には、どんな方がいらっしゃいますか。
「駐車場業界最大手の月極氏や、土木関係の定礎氏などが有名ですね。
まあ、理科Ⅳ類の中では『お金しか稼げない落ちこぼれ』という評価らしいのですが。
私たち受験生にとっては、神様のような存在ですよ(笑)」
Q 最後に、拾軒様にとって、東○大学理科Ⅳ類とは。
「手段であり目的、そして、超えなくてはいけない壁、ですかね」
Q 快くインタビューに応じて頂きまして、真にありがとうございました。
「ありがとうございました」
※このインタビューの3日後、拾軒様は何者かに爆殺されましたが、無事転生されたそうです。
拾軒様の今後益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます※
※この小説は、東〇大学前期日程が終了次第、手動的に削除されます※
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ちなみに某巨大掲示板に溢れる理科Ⅳ類情報なども。
・募集要項がマオリ語や甲骨文字。
・願書請求の足きり得点率は105%
・過去問は通称「緑本」で、一問に100ページ以上の解説が充てられている。しかも解けていない。
・受験者のセンター平均得点率は130%
・倍率は118倍
・キャンパスが皇居の地下。
・主要機関が小笠原諸島にある。
・東大理四受験専門塾「超鉄緑会」が存在する。
・駿台・NASA共催の東大理四実戦模試が存在する。
・京都大学魔法学部(通称・京魔)や北海道大学魔獣学部(通称・北大魔獣)と提携している。
変な小説書いてます。
短編『NiO軍曹のセンター試験対策講座』
http://ncode.syosetu.com/n2170db/
短編『ナレーター「転生トラックドライバーの朝は早い」』
http://ncode.syosetu.com/n7629cq/
中編『ブレーメンの屠殺場』
http://ncode.syosetu.com/n9431ct/
長編『豚公爵と猛毒姫』
http://ncode.syosetu.com/n8014ci/