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何がほしい?

アクシデントは唐突だった。

重い身体を引きずって、二階への階段を登っていく。

時刻は12:00

どうにも体が重い。きっと働きすぎだから、疲れなんだなとおもって足を上げた時だった。

ズル・・

底の減った革靴が階段で滑った。

「!」

捕まろうと、とにかく何でもいいから。思ってはいただろうけれど、手は空を切った。

落ちる―

後ろへ、身体が回るのを感じながら、俺は気を失った。


ふっ、、、と目が覚めた。

「んぁ・・・?」

白くて、ふわふわした感覚に夢なんだな。と感じた。

夢じゃよくあることさ。不思議にも思わず身体を動かそうとした時だった。

・・・・動かない。

金縛りのように意識があるのに、ピクリとも、動かない。

「それは、身体が死んでいるから」

どこからだろう。声がした。

・・・・なんだって? 死んだ?理解が追い付かない。

「意識は、精神はまだかろうじて認識できている。そんな状態」

また声は言った。

「おつかれさまでした。いきなり死んでしまったのだけれど、後悔はないわよね?」

・・・・そんな訳あるか。階段落ちで死ぬなんて、誰にも看取られず逝くなんて。納得できない、したく無い。

「後悔はある。ラオウじゃねーんだぞ。いっぱいヤリタイこともしたいことも在ったんだ。むしろ後悔だらけだね」

皮肉いっぱいに、告げた。実際には口は開かなかった。けれど、なぜだか自分でしゃべっている。そんな感じが在った。

「フウン。フーン。ソウナンダ。後悔だらけで、やりたいこともいっぱい・・・か。

じゃあさ。もう一回人生やり直せるって言ったら、どう?」

声はそんなことを言ってきた。

「・・・・やり直せる?生き返るって?」

僕は思わず、聞き返していた。

「生き返る。じゃあなくて、生きなおすだけどネ。」

「転生ってやつか」

しばらく考えた。この声に従っていいのか? 死んでるって本当なのか? いろいろ思い浮かぶことはあったけれど・・・・。

「まぁもう一度人生やれるんなら、やらせてもらいたいね」

そう答えていた。

「いい返事だ。それと、何か、ほしいものはあるかな?」

声はそんなことを聴いてきた。

「?」

ほしい物、ほしいモノ・・・・。考えた。

死ぬ前はあんまりパッとしない生き方だった。理解ははやいほうだった。でも・・・

あんまりいい人間関係は築けなかった。なんでだろう・・・。

しばらく黙考して、あることに気が付いた。教えてくれる人がいなかったなぁ。と。

勿論、小学校から中学、高校の先生たちはいた。親たちも無論いた。

でも、彼らは決まったようにこういうのだ。 『いいからやりなさい』と。

元来、素直じゃなかったのもあって、剝れながらではあるけれど、やり始めて、学んで、・・・

大学に行って、就職もした。

大人になると、周りはもっと教えてくれなくなった。頭を下げて頼んでも、無理なひともいたし、教えてはくれたけれど、今一歩、な人もいた。

まぁ、聞き方が悪かったのもあるし、素直じゃないのもあると思うけど、あんまりいい先生達には会えなかった。

「そうだなぁ・・・・」

「師匠がほしい」

口走ったのは、なんとも変な要望だった。

「師匠?」

声はよくわかっていないようだった。そしてこう続けてきた。

「もうちょっと、わかりやすく言ってもらえると助かるのだけどね」

どうやら、考えていることは伝わらなかったようだったので、声に出すようにして(実際には声に出ているかは不明だったが)

わかり易く言ってみた。

「教えてくれる人がほしいんだ。人生を迷わないようにね。甘い考えだとわかってはいるけど」

「・・・なるほどね。」

声はすこし笑ったようなニュアンスを含んでいた。なにかおかしいこと言ったか?

「面白い考えだわ。今まで「力がほしい」「金がほしい」「チート能力がほしい」なんていったのはいたけれど、「師匠がほしい」とは・・・」

チートか・・・しまったな。そういう望みもあったんだ。

でも、まぁいいか。ヒーローや英雄、ましてや化け物なんかになりたくないし。

次は失敗しないように生きたいだけなんだ。本当に。

「いいでしょう。「師匠」に会えるように、道に困らないようにしてあげる。あとは、なにかあるかな?」

「?」

「なんでもいい。面白い答えが聞けたからボーナスってところかな。もう一つなにか望むものはあるかい?」

「女運を良くしてほしい」

場が静まり返った・・・。が、そのあとで

「なんとも、現金だね。だが、素直でいいと思うね。そういう人間臭さも大切なことだよ。ふふふ」

声は面白そうな、なんとも愉快といった風でそう答えたのだ。






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