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葬儀屋にて

第七話になります。

楽しんで頂けると幸いです。

ガタガタ、ガタッ。

カルメたち四人は、ただひたすらに棺を運んでいた。シアンたちが寝泊まり出来る空き部屋を作るために。

「おい、これどこに置く?」

「......テディに頼むか?」

「それ絶対返ってこないやつや......」

イブキは顔をしかめてそう言った。

「私の部屋でも構わないが」

重い棺も物ともせず。カルメは涼しい顔でそう言った。

しかし、

「貴女の部屋は既に棺だらけでしょ。散らかるからダメよ」

アッシュが眉根を寄せてそう言った。

アッシュは綺麗好きだ。同じ家に住む者ならば、決して物を散らかせる事はさせない。汚す事も許さない。

カルメはアッシュの方を振り返る。

「じゃあお前の部屋に置くか。初めて会った時に棺で寝てたし」

カルメがニヤッと笑いながらそう言った。

言われたアッシュは、ワナワナと肩を揺らすと、

「カルメちゃん......言って良い事と悪い事があるのよ?」

と言った。

「人の寝顔を見るなんて......」

「これ見よがしに棺を置いておくお前が悪い」

「ていうか、乙女みてぇなこと言ってんじゃねぇよ」

カルメはすました顔で言った。イブキは顔をしかめていた。

イブキの言葉に、アッシュは笑顔で、

「あら、何が悪いのかしら。アホみたいな金髪のアホ獣人」

と毒を吐いた。

「はあ!? 誰がアホだ!!」

イブキはグルルルと牙をむいてそう怒鳴った。

「あら、本当の事じゃない」

アッシュは冷たく笑いながらそう言う。ぐぬぬとイブキはアッシュを睨みつける。

「ケンカしてないで片付けましょうよ」

ヴィンセントはさして困った顔もせず、そう言った。

「ケンカなんて、してないわよ。このアホ獣人が......」

「してねぇよ。このカマ野郎が......」

イブキとアッシュは同時に話し出したが、お互いの悪口を聞き取ると、

「カマ野郎ですって?」

「アホ獣人じゃねぇ!!」

とまた言い合いを始めた。

埒が明かないと、ヴィンセントはカルメの方に目を向けた。しかし、カルメはカルメで何かを考えているようだった。作業は進んでいない。

「なあ......」

カルメの一言、呼ぶ言葉で二人の言い合いが止まった。

「何? カルメちゃん」

「あいつら、本当にどういう集まりなんだろうな」

カルメは顎に手を当てながらそう言った。話が色々すっ飛んでいるが、本人はいたって真面目だ。

「......そうね。人間は二人しかいなかったし」

「一人めちゃくちゃ魂歪んでた奴いたよな」

イブキもアッシュも、先ほど言い争っていたのが嘘かのように話し出す。

「天魔の一族の人間によく似た魂の感じだったが......。それだけじゃない。あれは......」

「一度死んでるわね」

カルメの言葉の続きを、アッシュが言った。

「それに、何故人間と共に行動しているのか、分からない人がいますよね」

「あぁ......」

ヴィンセントの言葉にカルメは頷く。

うーん、とカルメはまた考えて始めるが、

「人間に危害を加えないなら良いか」

という結論に至り、また棺を運び始めた。

「ていうか、結局それどこ置くんだよ」

まだほとんど作業は終わっていない。


一方、待っているシアンたち。

「ふーん、つまりお前は天使と悪魔に追いかけられて、カルメたちに助けられたって訳か」

「うん。あの時は本当にヤバかったよ」

シャロンの話を聞き、シアンはそうまとめた。シャロンは頷きながら、両腕をさすっている。

「それにしても、聖女ねぇ。聖王国の連中って、相変わらずキモい事やってんのね」

ビアンカも、う〜鳥肌と言いながら腕をさすった。

「聖王国って、どんなところだ?」

アゼルは首を傾げながらそう言った。

「聖王国は、神を崇拝している国だよ」

「あの国、天使も崇めてるからな。絶対俺は住めねえわ」

「ていうかアゼル〜それくらい知っとこうよ〜。あんた、私と会う前から旅してたのよね?」

シャロンは苦笑しながらそう言った。シアンは、頬杖を付きながら嫌そうな顔をしている。ビアンカは小馬鹿にしたような笑い方をしていた。ハロルドは黙ってシアンたちの話を聞いていた。

「おう。でも、興味無い事は何も知らない」

「知ろうとしてないから、知ってないのは当然ね」

ビアンカが今度は、呆れたように言った。

「神を崇拝している、か」

ハロルドがそう呟いた時、

「神なんていないよ」

と、声がした。

声のした方を見ると、フリルのついたドレスを着た少女が立っていた。

こちらを見透かすように、水晶の目が見つめる。表情はなかった。

「......貴女は?」

ハロルドがそう尋ねた時、カルメが戻ってきた。

「テディ、ここにいたのか。珍しいな、外に出るなんて」

カルメが来た途端、少女はカルメの後ろに隠れる。

「その子が、テディ?」

シアンに尋ねられたカルメは、そうだ、と頷いた。

「もし本当に神がいるなら、テディも、お姉ちゃんも、そこのお兄ちゃんも、存在していなかったよ」

少女、テディはシアンを指差しながらそう言った。

カルメは黙ってテディの頭を撫でた。テディはカルメにされるがままだった。

「すまない、まだ片付けに時間がかかりそうだ」

「いえ、泊めてもらう身ですから」

カルメは、そうか、と言うと、また奥へ入って行った。

カルメの後ろにいたテディは、最後までシアンを見ていた。


これは夢だ。......誰の夢だ?

キラキラと星が夜空に輝いている。

少女がいて、一人で夜空を見上げていた。

......どうやら泣いているらしい。

「っうぅ......。寂しいよ......」

少女は膝を抱えて、一人で泣いていた。

この少女はシャロンだ。

シャロンがいるところは、この間いた屋敷とは全く違う。

近くに小さな家が一つ。着ている服も、上質そうな布のワンピースだったのが、質素なものになっている。

「シャロン様、中にお戻り下さい。また悪魔たちが来るかもしれません......」

召使いだった女が、シャロンに向かってそう言う。女は、怯えていた。

「悪魔たちがまた来たら、家の中にいても意味がないよ」

シャロンは女の方を振り返らず、泣いていた事を隠すように言った。

「ですが......。......シャロン様。気の済むまで、そうしていて下さい。私は、ここにおりますから」

女は、微笑みながらそう言った。シャロンには見えていないだろうけど。

「これは夢ではないよ」

女がそう言った。しかし、女の口は動いていない。

「ましてや記憶でもない」

女の声は、俺に向かってそう続ける。

「過去に直接飛んでいるの。お兄ちゃんの身体が眠っている間にね」

女とは違う声が混ざった。いつの間にか、俺の隣にテディがいた。

「あまり、深入りしちゃダメだよ」

そう言うとテディは、消えた。

一体どういう事だ?

「......ごめん、ルルマリ。私......」

シャロンが声を震わせながらそう言う。

「いいのですよ、シャロン様。貴女はまだ大人ではないのですから。泣いてください」

女、ルルマリはシャロンを諭すように言う。

シャロンは、声を上げてたくさん泣いた。


目を開けると、見覚えのない天井。

カルメたちに使えと言われた部屋だ。

横を見ると、近くのベットで寝ていたはずのアゼルが、ドアの近くに転がっていた。ちなみにハロルドはもう起きたのか、部屋にはいなかった。

「何やってんだ」

アゼルからの返事はない。まだ寝ているらしい。

「起きないとドアに当たるぞ」

シアンがそう言って起こそうとした時。

「早く起きなさいよ!!」

バーンとドアが開き、アゼルの頭にドアが衝突しる。ガンッと大きな音がした。

「って、なんてとこで寝てんのよ、あんた!!」

「......痛い」

アゼルは寝っ転がったまま、頭を抱えていた。

「大丈夫ですか? 今すごい音しましたけど......」

ヴィンセントがひょっこり顔を出してそう言った。心配そうな顔をしている。

「あー、うん。大丈夫よ、多分」

「......痛い」

アゼルはマイペースに頭をさすった。

「えーと、朝ご飯、出来てますからね」

「そうそう、早く来ないと、あんたたちの分の肉食べちゃうから!」

ヴィンセントがそう言うと、ビアンカもビシッと指を差して言い、揃って部屋から出て行った。

「アゼル、取り敢えず起きようぜ」

「たんこぶ出来たかも」


シアンとアゼルが部屋に行くと、もう全員が揃っていた。

「おはよう、よく寝れた?」

「あー、よく分かんねえ」

「何じゃそら」

シャロンに訊かれたシアンは、頭をガシガシかきながらそう言った。

変な夢を見て、いや夢ではないらしいのだが、疲れてはいないが寝た気がしない。

「アゼルは何で頭を押さえてるの?」

「......ドアぶつけられた」

「あぁ、もう、悪かったわね!」

不思議そうな顔をして尋ねるシャロンに、アゼルはまだ頭を押さえながら答えた。ビアンカは頬を膨らませながらそう言った。

「それであの大きな音ですか」

ハロルドが苦笑しながら言う。

「え、聞こえてたの......?」

恐る恐る、といった風にビアンカが訊く。

「ええ、まあ」

カルメたちも顔を見合わせる。

「ガッツリ聞こえたぞ」

「派手にぶつけたな」

「氷当てる?」

そして口々にそう言った。

「あぁ、ところで」

カルメがシアンの方を見て言う。

「お前一度死んだりとかしたか?」

カルメが突然そう言ったので、アッシュとイブキが慌て出す。

「ちょ、ちょっと待ってカルメちゃん」

「こういうのって、普通そんな直球で訊かないよな。トラウマみたいになってて答えてくれねえよな」

「? あぁ、そうだけど」

「「答えるんかい」」

何故そう訊かれるのか、何故二人が慌てているのか分からないまま、不思議そうな顔をしてシアンは言った。

「魂の歪みが天魔の人間と少し似たところがあるが。それは元からか?」

「えーと?」

シアンが答えに困っていると、代わりにアゼルが答えた。

「シアンは、天魔にやられたから。......あいつは天魔の一族じゃないけど」

「......そうか。しかし、魂まで見えるようになっているんだな、お前」

「はあ、 みたいだな」

いまいち実感の湧かないシアンは、曖昧に言う。

「アンデットって初めて見たけど、こんな色々能力持っちゃうもんなんですか?」

ヴィンセントが誰にでもなく尋ねる。

「多分、蘇った人を見るのはここにいる全員初めてだと思う」

「この世の禁忌だもの」

カルメが言い、アッシュが続ける。

「天下の吸血鬼様も見たことないからな」

「ちょっと、やめなさいよね」

カルメが真顔で揶揄いを入れた。

「吸血鬼?」

シャロンが不思議そうな顔をして言った。

それを見たハロルドが言う。

「私たちのいた地方では、意思もない、蘇った死者の事を吸血鬼と呼びます。生物の血を啜って、生きようとするからです。実質アンデットですね。それとは別に、吸血鬼という存在はいますよ」

「そ。それがアタシ。吸血鬼なの。この世に生を受けてからずっとね」

アッシュは微笑みながらそう言った。

「へぇ〜。確かにシアンは血も飲まないし、日光も平気だよね」

シャロンは納得したように言った。

「あら、アタシも日光は平気よ」

「それ以前に十字架背負って平気でいやがるしな」

「? え?」

「まあアタシも色々やってるからね。普通の吸血鬼だったら日光に弱いわよ」

混乱した様子を見せるシャロンに、アッシュはクスクス笑いながら言った。

「あとは......あれか。情報が欲しいんだったな」

カルメは腕を組みながら言った。

「はい、お願いします」

「まず、この国の事だが。基本的に来るもの拒まず、行くもの追わずのスタンスだからな。天使も悪魔も当然いる」

「まあ、どこの国でも、完全には天使と悪魔の侵入は防げないだろ」

イブキがもぐもぐ食べながらそう言う。アッシュは腕を組みながら、顎に手を当てて言った。

「んー、風の噂だけれど、天使たちが近々この、人の世界に本格的に侵攻してくるっていうのがあるのよね」

「えっ!?」

「それ、ヤバくない?」

ガタッとシャロンは立ち上がり、ビアンカは言葉の割には冷静だった。

「まあ噂だから。今度知り合いに訊いてみるけれど」

手をヒラヒラさせながらアッシュは言う。

「しばらくはここにいるといい。私たちも、天使と悪魔に対応できる」

カルメは珍しく、少し笑いながらそう言った。

七話でした。

会話たくさんしてます。

今更ですが、シアンくんのスペックが高いですね。オリジナルの弾丸作れるし、銃の命中率が高いし、復活するし、天魔の力も使えそうだし、魂見えるし。

問題と言えば人間性くらいですかね。死んでからまとも(?)になっているかもですが〜。

それでは。

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