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奇妙な同行者

第十三話です。

楽しんで読んでいただければ幸いです。

陽が半分以上沈み、薄暗くなった中。

シアンとビアンカは、アークセイラーを目指していた。

空を見上げると、一番星が見えた。

「ね〜シアンくん。のんびり歩いてていいの?」

ビアンカが頭の後ろで手を組んで言う。

「ん? お前疲れてないのか?」

「わお、私心配されてたのかよ」

ビアンカは大袈裟に両手を広げた。

それを見たシアンは、ニヤッと笑った。

「よし、走るか」

「わあ、待って待って。疲れてる、疲れてるよ」

シアンが走る時のモーションになると、ビアンカは慌てて言った。

シアンはこのくらいではまだまだ疲れは感じない。

人間だったなら致命傷になるであろう傷を負えば、疲れは感じるかもしれない。

獣人であるビアンカは、普通の人よりは体力はある。

だが休み無しで走ってきて、悪魔と戦って、また走るというのはいくら獣人と言っても体力が持たない。

シアンは口には出さなかったが、ビアンカを気遣って、歩いて行っていたのだ。

「まさかシアンくんに気遣われるとは思わなかったぞ〜」

「なんか腹立つ言い方だな」

「気の所為気の所為〜」

シアンくんも、やっと周りを見れる余裕が出来たって事だね、とビアンカは言った。

夜にのんびりと外を歩くのは久しぶりだな、とシアンはふと思った。

前は依頼や討伐のため、夜に動き回る事も多かった。

今もこうして動いてはいるが、前ほどではないとシアンは思う。

大体、今思い返してみても、夜に動いていた時はのんびり歩いていた事などない。誰かが一緒にいても、話すらしなかったように思う。

シアンが夜に散歩したのは、カインがいなくなる少し前が最後だった。

「おっシアン、今日は満月だぜ〜。ビアンカさん元気になっちゃう〜」

空を見上げ、ビアンカが満月を指した。

「お前狼系だっけ?」

「さあ? 少しは入ってるかもよ? 私雑種だし」

ビアンカはバサッと尻尾を振った。

「尻尾は狼っぽいよな。赤いけど」

「う〜ん、狼かは分かんないけど、イヌ科かなあ? 狐は......ないな、多分」

ビアンカは顎に手を当て言った。その間もバサバサ尻尾が振られている。

「......意地が悪い時の顔は狐っぽいぞ」

「それ関係なくね。ていうかみんなそんなもんでしょ!!」

ビアンカはプイッと顔を背けた。

しかし会話が楽しいのか、尻尾は振られたままだった。

「何で狐はないんだ?」

「ん? ああ、それはね......あらら?」

ビアンカは言いかけて止まる。

「どうした? ......ああっ?」

シアンもビアンカが見ている方を見た。

そして素っ頓狂な声を上げた。

「何だあの天使?」

向こうの方に、天使が飛んでくるのが見える。

周りが暗いので、ぼんやりと光って見える天使はよく目立つ。

身体は小さく、下級天使のように見える。

しかしその天使は、大きな銃を持っていた。

六本の細い筒がまとめられている、ように見える。ビアンカには銃ということしか分からなかったが、シアンには分かったらしい。

「おいおい、あれガトリングガンじゃねぇか」

「何それ」

「銃弾を連射できる銃。コストが高いし、デカすぎて持ち運びに不便だし、撃ち尽くして殺せてなかったら後がないからお蔵入りになったはずだが......」

シアンがブツブツと呟き出す。

ビアンカは、そうだ、銃マニアだった、こいつと聞いた事を少し後悔した。しかし、ビアンカが何も言わなくとも、勝手に話し出していそうである。

「あー、魔弾を連続で撃てる馬鹿でかい銃って事でオーケー?」

「そうだな。しかし何故天使が持っているのやら。......天使だったら持ったまま撃てるのか?」

天使がこちらに気がついた。真っ直ぐとこちらを見ている。

「げ。あれ撃つとかないよね?」

「ないと思いたいな」

言っている間にも、天使はこちらに向かってくる。

しかし銃を使う気配はない。こちらに狙いを定めている感じではないし、そもそも指をトリガーにかけていない。

「あ〜の〜すいませ〜ん」

「うわ喋った」

天使が困った顔で声をかけてくる。

ビアンカは引き気味だ。

「そりゃ下級でも喋るだろ。こっち来んな撃つぞ」

「ええええっ!? シアンくん、天使嫌いすぎだろ」

言って魔弾銃を構えるシアンに、その反応は予想外! とビアンカが声を上げる。

「その銃はどこから持ってきた? 事と次第によってはこっち来なくても撃つぞ」

「し、シアンく〜ん」

「あうあ〜、すいません、撃たないでくださ〜い。人を探しているだけなんです〜」

天使は情けない声を上げながら、ふらふらと飛んでくる。

「ほら、敵意は無いみたいだしさ、取り敢えずシアンくん。銃を下ろそう」

「......」

ビアンカに促され、シアンは渋々銃を下ろす。

天使はホッとした顔をして、ゆっくりとシアンたちの前に降りてきた。

「説明しろ。その銃はどこから持ってきた?」

「そっちから聞くのね、いや、分かってたけど」

シアンの目はもはや銃しか捉えていなかった。

ビアンカは呆れた顔をしている。

「あ〜これはですね〜確か、お師匠が面白そうだと呟いていたので、喜ぶかなと思って持って来ましたです、はい〜」

「なんじゃそら」

「誰か殺していないだろうな?」

「してないですよ、はい。誰もいなかったです〜」

天使はブンブンと首を振って答える。

この天使はどうにも普通の天使とは違うようだった。何と言うか、アホっぽい。

「で、私たちに何か用なわけ?」

「えっと......何でしたっけ」

「知るか」

天使は首を傾げる。

訂正、アホっぽいのではなく、アホだ。

「あ、あーっ、そうです! お手紙届けに来たんです〜。フィクローズさんのお弟子さんの、えっと? か、カイ......カイコさん?」

「へ〜、それで、どこにいるか分からないから、取り敢えず聞いたって感じ?」

「そうです、それです!」

「いや知らねぇよ」

物覚えも相当悪いようだ。

何だか気の抜けてしまったシアンは、銃をしまった。

「な、何ですと」

「そんなに驚かれても」

予想外の答えだったのか、天使は目を見開いて狼狽した。考えが足りていない。子供のようだ。いや、この天使の見た目は子供なのだが。

「......時間の無駄だな、行くぞ」

「へいへい」

シアンはさっさと歩きだし、ビアンカもその後を追う。

さらにその後に、天使がついてきていた。

「シアンくん、天使ついて来てるよ」

「勝手にさせとけ」

シアンは息を一つ吐いて言った。

空にはもう、多くの星が瞬いていた。

十三話でした。

日に日に話が短くなってる気がします。ぼちぼち書いていこうと思います。


新しい銃の登場にテンションが上がっているシアンくんなのでした。

それでは。

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