第1話 進級式
遠のいた思い出
手元の写真眺めて少女は今までの孤独感を体中で感じ取る
2、いやもう3年前になるだろうか
少女は今年中学3年で
「受験」という頭が痛い日々を過ごしていたのだ
こう考えると2、3年前なら小学生の頃まだなんにも悩まずなんにも苦労しなかった頃…ストーリーは少女の小学生の記憶なのだ とても幼かった自分を懐かしむ、それだけではなかった−−−
少女は目を伏せて
夕暮れの静まった教室にひとり机に顔をうずめている
カレンダーは4月
これで進級式を行うのも6回目。いい加減緊張することないしいうならば鞄の中身に忘れ物がないかのほうが心配だ毎年クラス替えがあるのは友達と離れてしまう不安もあるが散々うんざりした人とも離れられる可能性もあって複雑だ
校門の前には丁寧に紙の花が行儀よくはられた看板に大きく
「入学式」なんてかいてあって異様に背のランドセルが巨大にみえる新1年生と十分化粧を頑張った母親らしき人と並んで写真撮影が連続だ
はっきり言って通路の邪魔ですよ奥さま、なんてこと思いながら校庭を横切り生徒玄関へむかった
灰色の靴棚に白い模造紙にクラス全員の名前がびっしり書かれてあった毎年こうだけど見るほうはこんなに大きな紙の名前の中から自分の氏名を探すなんて結構大変じゃないか?
特に遅生まれで出席番号が後ろのほうなんて更に面倒だ
名前のやまの中からやっと自分の名前を探し当てた少女
「沙世」は模造紙の上に
「6−4」と書かれてあったからさっそくクラスへ歩いていくそういえばまえ姉が6年のとき小4だった沙世は忘れものを届けに6年教室まで行ってすごい緊張したなとか思いながらそして今自分が学年の一番最上級生になるのか、とか思いながら見慣れた校舎の3階へ続く階段をのぼっていった
桜が花ひらくのは
たしか4月の終わり頃
この日は透き通った青空だった…