14. たのしい村祭り
※書いた人悪乗り回。話が進まないので読まなくてもOKですが、
普段のリジーやノインと違った様子が書けてワシ大満足という誰得回。
とにかく村長さんには挨拶をしておかないといけない、ってことで急いで一階の居間へ。なんだか普通とは違う雰囲気を察したからだろうか、真剣な物持ちで村長さんが出迎えてくれた。
「そ、それは本当か!? 本当なのか!?」
噛みつかんばかりに言い寄られてしまいうんうんと頷きながら、実際に見てもらうのが早いと思ってそのまま二階へ。言われるまでも無く駆け上がるように龍神様の部屋へと移動した。
「……はて? 龍神様はどちらに? というかそちらのご婦人は……?」
「シン坊やか、久しいの。いや長い事世話をかけた。これこの通り礼を申すぞ」
先ほどの口調とは打って変った落ち着いた感じで龍神様が語りだす。といっても先ほどまで老婆だった人が若返りましたとか言われても誰が信じるんだか。
そんな騒ぎを聞きつけて駆けつけた村人も疑問や不信を口に出す。誰も龍神様のこのくらいの年齢像について知らなかったらしい。いったいどんだけ老婆してたんですか。
だがその中で一人の老人が声を上げた。「肖像画そのままじゃ!」と両手には何かの紙を持っている。この老人は以前から「龍神様ブロマイド」を所持しており、このお姿が本当なんじゃと言いまわっていたが実際には只のボケ老人化している姿しか知らないものからは「お爺ちゃんいつまでもお元気ねぇ」と冷たい目で見られていたらしい。しかしこの絵が今の龍神様そっくり(乳含む)だったためにさぁ大変。一躍時の人と大注目されることになる。といってもブロマイドだけだが。
「本当にありがとう! 村を代表して感謝するよ、私の代ではもう無理かと諦めていたんだが…… とにかく礼を言う。やはりルクツベインの生徒は優秀だな」
しきりに感激されてしまいこのまま宴会になだれ込むような雰囲気になってしまう。だが龍神様の言葉がそれを遮る。
「この若者には私から直接礼をすることにしたいんだが……」
「何を仰いますか! 龍神様の恩人なら村にとっても恩人以外の何者でもありますまい! これは村を上げての歓待をさせて頂かねば! ほらお前ら! 急げ! 祭りだ! 龍神様の快気祝いだ!」
村長さんの号令に村人が声を上げて応じる。一人の例外なく皆が嬉しそうに微笑んでいる。そういうのを見ちゃうとなんだかこっちも嬉しくなってきちゃうな。
てなわけで村を上げてのお祭りが始まった。
――
「あぁ、お客人はそのまま座っていて下され! 村の恩人を働かせたとあっては私が叱られてしまいます!」
何か手伝えることはないかと思いこういう時に人手が一番足りなそうな台所に行ってみたんだけど、しっかり断れてしまった。うむぅ、あんまりのんびりとしてるのって性に合わないんだけどなぁ。
仕方ないのでこの間に学院への任務達成の連絡を飛ばしてもらうことにした。通信手段が限られるので八日から十日はかかると言われたが、しばらく戻れそうにないことも考えれば連絡だけはしておく必要があるだろう。
ちなみに龍神様だが、主に村の子供に大人気である。お婆ちゃん時代もそれなりの人気だったそうだが、若返ったことで更に男子の視線を釘づけにしてしまったらしい。ちなみに女子の視線も釘づけである。なにやら秘訣を教えてもらおうとか、触らせてもらえればきっと将来はとかいろいろな憶測が飛んでいる。あたらしい信仰が生まれそうである。
そんな頃に村人の一人が広場に来てほしいと呼びに来た。どうやら祭りの準備が整ったらしい。子供たちに手を引かれながらも皆でワイワイと、これだけでももうお祭りみたいなもんだな。
いつの間にか広間は整えられ円座のように広く座る場所が用意されていた。中心に大皿で様々な料理が並べられ、その正面、多分だが上座に位置する場所なんだろう、には龍神様の席とおぼわしき立派な座椅子が用意されていた。真っ赤なクッションで綺麗にととのえられている。なんだか気持ちよさそうである。
私達の席はその横にと指定された。ちなみにあのクッションは無かった。たぶん龍神様用なんだろう。
しかし本当にどこから出てきたと言わんばかりの村人が集まっている。三百人くらいはいるんじゃないか? 普段どこにいたんだ。あ、仕事ですよねそうですよね。
なんで人が多いとこう話し声でザワつくんだろうと感心してしまうが、龍神様が立ち上がるとそれを合図にするように皆が静かになった。ある程度落ち着いてきたところで龍神様が話し始めた。
「無意識とはいえこの村に色々と迷惑をかけたと思う。色々済まなかった」
そういうと龍神様が一礼する。
そんな様子を見て村人まで一斉にお辞儀しだす。というか誰か止めてよ話が進まないって。
「今後はこうったことが無い、とは言わんがまぁなんとかなろう。まぁ今宵は大いに楽しもうではないか!」
それを合図に人々がジョッキのようなものを手に取って立ち上がる。私の元にもその飲み物が回されてきた。乳白色というのかな? ちょっと白い感じの。これってもしかすると……?
「それでは、乾杯!」
「「「龍神様万歳!」」」
村人が手を大きく振り上げて合図する。ガチャンと音を立ててぶつかり合うジョッキから色々とこぼれているが誰も気にしない。私たちもそれにならってお互いにカチャンと突っつけあったりしてみたり。当然龍神様ともやりましたですよはい。
飲み物だが、やっぱりというかなんというか、多分だがドブロクというものだと思う。ちょっと淡泊ではあるが立派な酒の第一段階だ。どうやら勇者が伝えたものらしいんだが、途中で失伝したらしく新しく作り上げるべく模索中だそうだ。先日できたばかりの新作だそうだが、これからもっと改良していくと話してくれた。
「お気に召しませんかな?」とこのどぶろくを作った人に聞かれてしまったが、実際あまり酒を飲む方ではないのでよくわからなかった。あっちでもビールを呑む真似事しかしてないしなぁ。夏場の一杯目が一番旨いっていうけど、そんな喉がカラカラな時って何を飲んでも旨くね? と本気で思う。
というわけで自然と料理の方に口が向く訳だが結構いろいろあった。短時間でよくこれだけ準備したものだ。佃煮っぽいのとか、煮つけっぽいのとか、まぁ野菜系が中心だが、炊き込みご飯的なオニギリもあった。この村は米の産地でもあるらしく、いろいろな料理があるそうだ。といっても手間がかかるものが多いから普段はやらないものばかりらしい。
その一つが餅だ。あの搗いて捏ねるあれだ。普通の米とは配合が異なるとかいろいろと言っていたが、目の前に現れる餅のインパクトにはちょっと勝てなった。何しろカラフルだ。原色かと思うくらいに派手派手しい。赤青緑と数えているうちにどうやら虹を現しているものっぽいことが分かった。そして中央に描かれた赤い龍。一メートルくらいあるんじゃないかという大作である。これ食べていいのか悩むな。
「これは後日皆で切り分けて頂きます」
さすがに龍神様の前で切り刻むことはしないそうだ。あんまり見たい光景ではないが、切る時は裏返すんだという。龍の宝玉の部分をもらえた人はその年は病気をしないらしい。どういう理屈だ。
他にも鳥の丸焼きとか、これはから揚げかな? 竜田揚げかもしれない。そんな揚げ物とか、このへんの果物だろうか、リンゴか梨っぽいものが甘くておいしかった。絞ってジュースにしてさっきのドブロクに混ぜてもいいかもしれないとかちょっと思った。
祭りが始まってしばらくすると、なにやら奥からゴロゴロと音がし始めた。高さ五メートルくらいの大きな赤いドラゴンの人形だろうか? 神輿のように木組みの土台に乗っかったものが現れた。左右にそれぞれ人がついていたが、馬に惹かれて出てきたところがちょっと残念だ。相当の重量だろうし人が担ぐもんでもないと言われたらそうかもしれないけど。
「うむ、今年も見れないと思っていたが、いや見事なもんだな『龍神輿』」
後ろに立っていたおじさんがそうつぶやく。ねじり鉢巻きにハッピ…… みたいな妙な服装で立っていた。江戸っ子っぽい怪しげな服装である、襟首に何か文字のようなものが書かれているが、あれは村の名前かな。
なんて見ていたら、そのおじさんの後ろからら同じような服装をした集団が現れた。軽やかな音楽に合わせて、えっとなんだこれ? 盆踊り? なんか違うような気はするが確かになんかそれっぽい感じではある。
「おぉ、新作ボボボン踊りか! やるなぁシマさん!」
「いやいや、今年は披露することもないかと思っていたが、やはり血が騒いでな。準備していて正解だった」
二人して笑い合っている。いやぁ満足そうである。
神輿らしいものを中心に踊りの輪が広がっている、盆踊りっぽいファンキーな踊りというか一種儀式のようにも見えるものが続いている。まぁみんな楽しそうだしいいのかもしれないな。
楽しげな笛の音に包まれながら、村の祭りは夜更けまで続いていく。
――
夜も更ける。飾りの餅細工が撤去され、その場所にはキャンプファイヤよろしくたき火が積まれている。村の周囲もかがり火が照らされて村全体が照らし出されていた。ここまでやっちゃうと翌日は仕事にならないだろうな。
「てへへ、聞いてますかぁ? ホンジョォ様ぁ~」
さっきっからノインがこの調子だ。あまり呑み過ぎるなよ言っておいたのだが、すっかりいい感じに出来上がっているらしい。いやはや絡み酒とは、ちょっと意外だが酒が入ると人格が変わる人なんて結構いたしそこはまぁいいとしよう。
「いやほら、こっちですよ~。ちゃんとみてくださぁい♪」
どこに向いて返事をしてるんだ? 既に幻覚まで見えているような、ちょっとまずい酒っぽいので持っていたグラスを取り上げる。
「あぁ~! それ取っちゃだめですよぉ~! ホンジョォ様ぁ~!」
呂律もそうだが体の動きも怪しい。っていうか腰砕けになっちゃってもうどうしようって感じになってるな。予め酔い止めの薬をもらっていたはずなんだが全く効いてない様子である。
「も~、ほら~、ホンジョォ様も楽しんでくださいよぉ~」
ジョッキを奪い返そうと私に絡みついてくるが、もうこれ以上呑ませるわけにもいかない。奪い返されないようにと手を伸ばすがそれ目がけてまるで枝にとりついた猫のように私の体に引っ張りついている。もう子供だなこりゃ、ってなんでこんなダダッ子になってるんだか。というかグラスを握る腕を揺らされるからこぼれたしずくが顔とかにかかってベトベトである。
「あぁ、こんなところに~~♪」
ターゲットがこっちに移った。というか顔中をペロペロとなめとられていく。く、くすぐったいっ!
「ホンジョォ様美味しいですぅ♪」
こちらが止めるのも聞かずにひたすら舐め続ける。既にヨダレの方が多くなっていると思うくらいに。もともとそんな気分でも見ることがあったが、ノインはこうなると犬にしか見えなくなってくるな。いや可愛いんだけどそろそろやめて欲しいんだが。
ちなみにリジーは既にダウン中だ。随分大人しく飲んでいると思ったら変なテンションで落ち込んでいた。
「だってホンジョーって何でもできちゃうじゃない? あたしなんかいなくてもいつの間にか凄い感じになってるし、結局今回だって役に立ってないわけだし。どうしてついてきたのかしら、っていうか私ってホンジョーにとってどういう存在なの? 便利なお姉さん? というか便利でもないわよね。空飛べる訳でもないし。道案内が精々ってとこよね。それなら私じゃなくても出来るわけだし。てことはもしかしてついていく理由なんてないのかしら? 私がホンジョーから受ける恩恵の方が遥かに高いのよね。でもそんな依存する関係ならいっその事いなくなる方がいいんじゃないかしら。だって役に立てないのだもの、いるだけで無駄よね私……」
ダメだ、こっちはコッチで異常に酷い状態になってる。もう涙目で酷い有様だ。そんな状態でも酒を手放さないんだから更に始末に負えない。仕方ないからこちらのジョッキも取り上げて、テーブルの手が届かないだろう場所に置いた。何か文句を言っていたが、流石に絡みついてくるようなこともない所は助かるが、いつの間にか私の膝を枕にして寝始めてしまった。
てな訳で気が付いたら二人とも私の膝を枕にして寝始めてしまった。これでは動きようがないじゃないか。なんだかめんどくさくなってきたので、そのまま後ろに倒れ込んで寝てしまうことにした。動けないなら寝てても一緒だ。
――
鳥の囀りを聞いて目が覚める。既に空は白み始めていた。今日もいい天気になりそうだな。
膝枕状態で寝ていたと思っていた二人だが、気が付いたらノインだけ腕枕に移行していた。多分リジーと頭をぶつけたりして途中で目が覚めたのかもしれない。右腕に頭を乗せて、そのまま胴に絡みつくような姿勢で寝息をたてていた。静かな吐息が胸元を通り抜ける様がちょっとくすぐったい。でも気持ちよさそうに寝ている様子を見ちゃうとそっとしておきたくもなるんだが、流石に腕もしびれてて辛いです。
なんとか起こさずに起き上がれないかと四苦八苦してみるが、モゾモゾと動き出したところで目を覚ましてしまった。
「お、おはようございますホンジョー様……」
いつもよりも断然近い距離で見つめあうことになってしまい、つい顔を赤らめてしまう。寝顔を見られたことが恥ずかしいとかいうアレだろうか。可愛かったからいいんだけどさ。
「ゴメン、ちょっと手が痛くて。動かしていいかな?」
「あ、はい! すいませんすぐ退きますので……」
体を起こしながらも隣にペタンとした姿勢で座り込んでしまう。ま、寝起きだしね。私も上半身を起こして見る。リジーは膝枕の姿勢だったが、よだれが凄いことになっている。まぁこういうのは見ないふりをしてあげたいんだが……というところでノインがタオルを差し出してくれた。うむありがとう。目覚める前にリジーの頬等をふき取ってあげる。
「ん~~、あぁホンジョー、おはよ……。今日は優しいのねぇ……」
まだ寝ぼけてるな。あまり現実を突きつけるのも忍びないのでそのまま挨拶をしつつ起きてもらうようお願いする。あのまま寝てしまったことを思い出したようで、起き上がり手に持ったタオルを奪い取って口元を隠す。まぁもう無駄なんだが、それはそれで突っ込まないでおこう。
「さ、それじゃそろそろ行きましょうか。私の家に招待するわね~」
龍神様は実は寝てなかったようだ。もともと寝なくてもいいらしいが、老人状態だと眠気が酷いことになってたそうだ。というか寝貯めができてたのかもしれないな。こちらの惨状を見てニヤニヤしていたっぽい。いやほんと恥ずかしいところを見られたもんだ。




