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02. ノインのナイショの

 各々課題をクリアしたところで、早速反省会となった。

 各人の魔法の使い方とその欠点、もしくは生かし方について各々意見を出し合うことになる。


 順番通りでまず私だ。


「まぁアレだけど、『状況を見て』ってより『こんなの使えるようになったゼ!』って感じよね。あと『ナイフ』の数が多すぎ。自信ないのはわかるけどせめてもうちょっと練習して精度を上げるべきね。何よりもっと単純に対応できたはず。というか『ソード』を強くすればそれだけで勝てたんじゃないの?」


 リジーのツッコミが厳しい。というか的確だな。

 確かに色々試してみようってのが強かったのは否定しない。なにしろ訓練だし。実践に近い状況を準備してもらえているのだからと思って試していたんだ。


「一番の問題は、『自前の魔力だけで全て解決』しようとしたところかな。確かに君ならそれだけの能力があるかもしれないが、常に全力を出せる戦いなど限られている。もっと周囲のものを利用したり、最小限の消耗に抑えるよう考えるべきだろうね」


 ウィル先生がやんわりと指摘してくれているが、要は考えろということか。

 『バインド』もそうだが、基本的に自分の魔力塊だけで構成するものばかりだ。今回は問題ないが連戦だったり疲労している場合ではあれだけ使いまくれるかなんて保障はない。五回くらいは余裕な気はするが六回目・七回目と続いたらどうなる? そんな状況に陥らないとは限らないのだ。


「まぁそう悪い話ばかりでもない、自前の魔力だけで済むんだから周り左右されない分、汎用性が高い。状況を見極めて使えるものは使うが使えない、もしくは使う方が不利になりそうなら迷わず自分の力で振るえばいい。要は見極めだね」


 魔力は万能だが万全ではないってあたりかな。本当に難しい。



 続いてリジーの番だ。早速疑問に思ったことを聞いてみよう。


「そういやさ、最初に炎を投げたのはどういうことなの?」


「あら、解らなかったの? あれでヤツの耐性を確認したのよ。ホンジョーの戦いを見ていたから『魔力を弾く』ことは解っていたわ。だからまず魔力以外に対する反応を確認しておきたかったの。で、通じたら楽そうだなぁ~って炎を投げただドンピシャ! あの程度の炎で変色するならこれはもう試す価値あり! ってことで例のアレを使ってみたのよ」


 炎のナイフか。もともとの切れ味にプラスして炎の熱を追加したリジーオリジナル技だ。この方が私っぽいでしょ?ってなことを言っていたことがある。ちなみに名前は考えてないそうだ。適当だなぁ。


「未知の敵に対して必要なのは情報収集だ。幸いホンジョー君の戦闘を見ていたおかげで、個々の技量は大したことが無いってのはわかっていたから、あの装甲に対する手段があればリジーには敵にもならなかったってことだね」


 どうみてもドヤ顔です本当に、いやちょっと照れてる感じが可愛いな。


「だけどだ、君もだよリジー。あのナイフを使う必要は無かったんじゃないか?」


 少し気まずそうに顔をそむける。あの状況において選択的に間違いは無かったんじゃないかな?


「ホンジョー君と違ってそれほど膨大な魔力を持っていないんだ、いつでも使えるものではないはず。あれは君の切り札だろう? うかつに見せてよいものではないはずだ。もっと別の方法を使う考えは無かったのかい?」


 ちょっと困った感じに考え込んでみたが、えへへと力なく笑うばかりだった。あとで一緒に何か考えた方がいいんだろうか。リジーは有能だからあんまり役に立てることがないけど、少しは手伝えるといいんだけど。



 最後はノインだ。まさかあんな風に魔力を使いこなすとは、まさしく魔法って感じだったな。


「ノイン君は非常にいいですね。お手本にしたいくらいの見事さでした。まぁちょっと大げさな感じはしましたが、周囲の状況や敵の特徴・弱点をついた良い方法でした」


 なかなかベタ褒めだな。実際のところ非常によかったと思う。攻防一帯って感じだったし。


「でもあれですね、土壁を作って防壁としたところですが、土の強度では持たなかった気がするのですがどう工夫したんですか?」


「はい、あれは壁としてつくるよりも地面を持ち上げてしまった方が強くなると思って実行してみました」


 土壁の裏側だったからわからなかったけど実は地面が盛り上がっていたのか。実際には2mくらいの高さまで上がっていたようで、それで上から見回して行動できたのかもしれない。


「なるほど、堀を掘るのも兼ねていたんでしょう。でもやはり掘り下げただけでは土を掘りぬかれてしまうだけですよね?」


「そう思って堀の内面の土は押し固めて強いものにしました。あとボールでくりぬいたような形にして簡単に昇ってこれないようにもしました」


 見た目よりも深い溝になったのは押し固められて密度が上がったからかな。オーバーハングにしたのも狙い通りだったみたいだ。


「あとは、全部落ちるのを見届けてから、壁をとがらせて落としただけです。お二人の戦う様子を見ながら考える時間がありましたから自分なりに工夫してみたつもりですけど、どうでしたか?」


 ウィル先生の評価は満点なんだが、どうやら私にどう言われるかが気になるらしい。


「すごかったよノイン。よくあんなやり方を思いついたね」


「はい! ありがとうございます!」


 なんだろう、ウィル先生がちょっと寂しそうだがノインが嬉しそうなのでヨシとするか。



――



 改めて考えてみて、ちょっと腑に落ちない点がある。

 リジーが凄いのは解る。なんだかんだ言って有能だし。だけどノインがこれだけ魔法を使えるようになっているのはどういうことなんだ?


「はい、アルフさんに色々教えて頂いていたんです!」


 学院長さんがそんなことをしていたのか。

 学院に来て魔力を使えると解って、最初の実戦練習の後からノインは学院長に頼み込んで魔法の手ほどきを受けていたらしい。妖精ノイン状態だった時は意味はあったんだろうかという気がしたが、前とは違って魂ごと定着したみたいだからOKだったんだろうか。魔法って結構アバウトだな。


 実際に見せたいものがあるとの言葉にノインに連れられ学院長の部屋へ向かう。だが目の前の扉を通り過ぎ、隣の小さい扉を開けて中に入っていく。どうやら書庫だろうか? 中央に広いテーブルがあり何かしらの作業ができそうな場所になっていた。


 テーブルの上には粘土細工の様々な像のようなものが置いてある。全体的に高さ十cmから二十cm程度の物が多く、数はテーブルの上にある限りでは二十くらいか。テーブルの下や床にもいくつか置いてあるようで全体としてはかなりの数になる。テーブルの横には、縦横1m程度の大きな粘土の塊も置いあり、いくつか抉れた跡もあるのでここから削り取ったもので作られたと想像できた。


「なんでもあなたを驚かせたかったみたいですよ」


 室内のドアから学院長が現れた。


「勝手に入ってしまってすいませんでした。ノインがどうしても見せたいものがあると言っていたのですが、これの事だったんですね」


 一瞥しただけでわかる。あれらは地球のビルとか何かのキャラクターを模したものだ。



――



「ノインさんに魔法を教えて欲しいと頼まれたときはどうしようかと思いましたよ。体の修復が終わってからにしましょう、と言い聞かせてはみましたが、できることがあるならと熱心にせがまれてしまいました。やはり生徒に乞われれば断ることなどできませんね」


 相当に無理をお願いしたのかもしれない。だが魔力を使えるだけで技術も何もない現実、自分の無力さに何か感じるものがあったのかもしれない。あの蟻との模擬対戦の後のノインの妙に考え込んだような顔を思い出してしまった。


「最初は基本的なことしか教えるつもりはなかったのですよ? あまり無理をさせてもいいことはありませんからね。でも……これが才能というものでしょうか」


 物体操作の基本としての粘土細工。自分の手ではなく魔力を通じてものを動かし形作るのだが、ノインは呑み込みが良く、始めてそれほどかからずに色々なものを作ることができるようになったという。


「粘土の場合、動かしやすいから練習には適しているのですけど、反面脆くて大したものはできないはず。それが……」


 部屋の隅にあるいくつかは、子供の粘土細工のようなあまりぱっとしないものだが、机の上のものになってくると、鋭角で整えられた角や平らな面など明らかに精度の違いが見て取れた。触ってみると焼き固めたかのようにツルツルとした手触りがある。明らかに出来がいい。


「物を形作る以上に難しいのが強度の調整と変化させるタイミングです。最初から固く作ればそりゃ丈夫にはなりますけど加工変形がやりにくくなってしまいます。そのへんのコツのようなものをノインさんは、そうね、なんだか知っているみたいに軽々と熟していきましたよ。教えもしないのに骨を作ってから始めた時はビックリしました」


 骨、というといわゆる基礎とか骨格のことかな。フレームを作ってから肉付けしていくのは何事においても基本だというがそういうことだろうか。

 しかしまぁ見事に再現したものか。これはデュエルタワーか? こっちは東京ランドマークタワーだな。これはスカイハイツリーかな。個人的には大江戸鉄塔って名称の方が好きだったんだが。ってあっちはフィギュアコーナーかな。某格ゲーの猫娘とか、デッカイ剣を使うドジッ子メイドさんとか、サテライト球体関節さんとか、あぁスーパードルバン君もいるな。なかなかいい趣味しているじゃないか。

 改めて考えるとこれって全部自分の記憶を見てのことか、単に私の好み、というかよく見ていたものをピックアップして作っただけかもしれない。うむむ、変な趣味に目覚める前に忠告しておこう、自分のことは棚に置いて。


 ここまで精巧なものを作ろうとしなければ、戦闘での応用も難しくないのかもしれない。なかなか汎用性がありそうだ。


「でも、実はちょっと問題があるんです……」


 なんだか申し訳なさそうな感じでノインがつぶやく。これだけの応用力で何か問題があるようには思えないんだが……


「実は、まだ土しか操作することができません。石くらいならなんとかなりますが、金属とか木とか、完全に別のものになるとお手上げで……」


 操作できる対象がまだ狭いってことか。


「なんだ、それこそ問題ないよ。いきなりこんなことできちゃうんだから、練習すればもっと色んなものが扱えるようになるさ。むしろ1つでもここまで使えるのって立派な才能だと思うよ」


 なんだかションボリとした雰囲気だったのでついて頭を撫でてしまう。うつむいててちょっと撫でやすかったのもあるけど。身長がほとんど一緒なので今まで撫でにくかったんだ。


「ほら、ホンジョーさんならそう言うでしょうって、その通りでしたでしょ? 貴方は立派にお役にたてるようになったのです。ご安心しなさい」


 つまり一緒に依頼を受けに出かけても問題ないってことになっちゃったのか。ますます置いていけなくなってしまったなぁ。いざとなったら夜逃げ風にでもして置いていこうかとも思っていたが、本格的に連れて行く体で考えないとダメかもわからんね。


12/5 誤字訂正  順番通りでます →  順番通りでまず

君はホンジョーと違って → ホンジョー君と違って

何度見直しても誤字がへりません……ぐぼぁっ

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