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03. 実はエディさんを知っていた件について

※今更ですが、この文章に登場する人物は全て架空の人物です。よく似てる人がモデルになっていますがご本人とは一切関係ありません。知り合いでもないのでどんな方かもわかりませんし。


 あぁ、なんだか真っ暗は所にいる。見覚えがある気がするな。あれか! なんだか変な夢を見たな。エディさんだっけ? あの人の発明で云々とかいうアレ。よしちゃんと覚えてるな。起きたらメモしよう。


 で、この真っ暗な空間だが、一つ変化しているところがあった。自分の頭の上から垂直にまっすぐの1本線が、自分を貫通してのびている。特に感触もなく実際に触ることもできないようだ、首をひねったりするのにも支障が無い。


 で、頭の先は例の白いところにつながっていた。と思ったらまた声が聞こえてきた。声? またってなんだ? いやどこかで聞いたことがあるような……


(……ほら、この線がそうです! はい、ひっぱってみます!)


 急にひっぱりあげられる感覚がした。この加速もなかなかだ!というか前より早くないかこれ! やべぇ! 死ぬ気がする!?



――



 なんだか全身にすごい衝撃を感じた気がする。崖から転落して地面に激突したかのように。気分的にはボスン!と落下音が響いた気さえした。誰だかしらんけどもっと手加減して引っ張ってほしいものだ。ってあの声って誰だ?


「おぉ、目覚めたかね! えっとホンジョー君だったっけ?」


「はい。おはようございます」


 なんかもういいや、えっとここはアレか。夢の続きってことか。

 ……

 すいません、まだあきらめきれないんでもうちょっと夢ん中って気分でいいですかね?

あきらめがつくころには認めたいと思いますんで。はい。


「いや。ちょっとした手違いでね、本来ならこちらで固定するはずだったんだが、どうやら向こうの肉体の覚醒時は強制的に元の体に戻っちゃうみたいだね」


 あれ?そうだっけ? かなり朦朧としているのでちゃんと把握できてない気がする。


「つまりこっちにいられるのは、今のところ寝てたりして意識の無い間ってことになるね」


「はぁ。」


 と気の無い返事をしてしまった。これではますます夢の中と区別が付かない気がするな。


「あまりコロコロといなくなられても困るのでね。そのうち対策を取るとしよう。そんなことはいいんだ。重要なことじゃない」


 と、ひときわギラッとした感じでメガネのレンズを反射させながらエディさんは切り出した。



――



 いったいなにが始まるんです? と悩んでも意味はないから素直にバラすと、私への尋問というか質問攻めだった。自分の出身地とか地球の年代とか世界情勢はどうなっているとか著名な発明品はとかとやかく。LEDのことを話したらかなり興味を持っていたようだ。


「で、その素子が発光するってどういう状態なんだ? もうちょっと詳しく教えてくれ」


「いや、私素人ですし人様に説明できるほどの専門知識ありませんよ」


 そんな知識があってもなぁ。自作できたら色々楽しめるんだろうが、市販されているのを利用するほうがはるかに簡単でラクチンだし。


「専門はコンピュータの操作なんだろ? それほど高度な知識を必要とする職種の人間がどうして知らんのだ?」


「コンピュータ専門だからですが」


「ぐぬぬ」


 ちっともかわいくないのでそのポーズやめてください。



 電気が交流電流でほぼ統一されているのを聞いて残念そうにしていたのが印象的だった。あんな危険なものがどうしてまかり通っているんだ!とか云々。ってかちょっと待てよ? なんかおかしくないか?


「ん? だって、元君と同じ世界の人だし。エディソンって知らん? トーマス・エディソン」


「エジソン!?」


「だからエディソン。 ちゃんと発音する! まぁエディでいいから」


「って、あの発明王とか、コンクリートを利用してお金儲けしようとした人ですよね?」


「いや、金儲けってそりゃ無償で提供できないだけであって、普及させるための手段でしかなかったんだが…… 便利だろ?」


 現代の建築物には必要不可欠でしたけど、タンスとか家具にまで使うのは無理だと思うんだが…… いや問題はそこじゃない。


「ってちょっと待って欲しいんですけど、エディソン博士ってすでに亡くなられているはずですが、そういう意味でも同一人物と取るには無理がありませんか? いや知ってるって段階でかなり異質ですけど」


 見た感じ三十代も半ばに見える。あの写真と比較してもずいぶん若い上にイケメンだ。直視しようとしなかった事実だがイケメンだ。そのうえ貴族のボンボンだと? 勝ち組もいいところじゃねぇか! ちくしょうこんな差別だらけの世の中なんて! まぁいいやなんか自分も今はそこそこイケメンぽいし。もてるといいなぁ、もてるってどんなんだ? 汚いようなものを見る目でしか見られた記憶が無いな。ちなみに職場の女性陣には嫌われないよう最低限の気配りはしていたおかげか、人間扱いはされている気はする。あくまで個人的感想だが。実際の評判は怖すぎて知りたくない。まぁいいや話を戻そう。


「もっともな疑問だね。たしかに地球人のトーマス・エディソンは死亡しているよ。私の場合はね、正しく表現するなら『エディソンの記憶だけ移されたこちらの世界の人間』なんだよ。なので正確には別人だね」


「記憶だけ移されたって、どうやったんですか?」


「ほら知らない? 『私』が最後の方に作った『霊界通信機』」


 エディソン博士が晩年に没頭していたといわれる発明品のことだろう。あまりくわしくは知らないが、夫人が無くなったときにどうにかしてその声を聞こうと作られたものだとか。


「そう、その通信機なんだけど、自分が死んだときにこれのスイッチを入れてほしいって頼んでおいたのさ。うまくいったら、自分の声が現世に届くかなぁって思ったんだけど、実際には『あの世』には繋がってなかったんだね」


 そう簡単に存在すら証明されてない世界につながってたまるもんですか。いや、目的地は違ったけど証明されてない別世界には繋がったんだろう。


「で、起動したのはいいんだけど、通信機ではなく送信機として機能したみたいだね。たまたま貴族のドラ息子に波長があったんだ。いやぁお金に困らないし権力もあるしなかなか良かったよ!」


 なんかすごい他人事みたいに自分のことを言うんだな。


「こっちに来て色々わかったんだけど、どうやら電気で作っていたのがダメだったみたいだよ」


 電気エネルギーを電波に変えている時点で失敗だったらしい。


「人間の記憶は脳に蓄積されてるってのは理解しているかな?」


「まぁその程度は」


「うむ、その記憶っていうのは一種の電気信号で構成されているんだよ。正確にはオン/オフの切り替えではないかと言われているけどね」


「脳細胞のシナプスがどうこうっていうアレですか?」


「うむ、地球人は知能レベルが高くていいねぇ! いや君が日本人だからか? どうもここの人間はロクに勉学に触れる機会がないせいか、まったく理解してもらえなくて困ったよ! まぁ細かいところは『ドラ息子の変態趣味』で押し通すしかなかったんだが」


 なんだかんだで楽しい生活してたみたいですね。


「で話を戻すが、『電気を媒介とする以上電気以外のものに働きかける機械は作れない』ってことだったみたいなんだ」


「えぇっと、どういうことなんですか?」


「んまぁあれだな、子供の形をした人形からおっさんの声がすると気持ち悪いだろ? 扱うカテゴリが違うのに過ぎた結果を求めてはいかんということだな」


「それは貴方の失敗した発明品の話ですよね? 喋る人形って」


「お、知ってたのか? あれはウケると思ったんだけどなぁ、がんばってかわいい声でしゃべったり歌ったりしたつもりだったんだけどねぇ」


 今の声しか知りませんがやっぱりおっさんの声じゃキモいだろ。 ちょっと想像してみちゃった。

 『こんにちは! わたしエディよ! うふ!』


 やべぇ、無言で殴りてぇ。ダッシュで殴りてぇ。どうせならイケボで言おうぜ。どっちにしろ気持ち悪い人形だろうけど。


「ま、まぁつまり電気では同じ電気のカテゴリしか扱えないってことでかね? たぶん。じゃぁ私の魂ってどうやって引っ張ってきたんですか?」


「そりゃ魂だからな。同じく霊的なものを動力としたもので試すことにした」


 あぁ、確か霊脈がどうこう言ってたな。それか。


「実際、異世界からの放浪者って記録はいくつかあるんだよ。極端に少ないうえに口伝ばかりだから正確にはわからないけど」


「ちなみにどういうケースだったんですか?」


「一番有名なのは、救国の英雄として語られる『キング・サートン2世』の逸話だな」


 えらくデカいのが来たな。英雄でキングか。


「ほかにも人以外なら魔族とか悪魔と呼ばれる存在が『異界』から流れてきたんじゃないかと言われているな」


「異界? 他にもあるんですか?」


 なんか聞いたことが無いものばかりだ。ちょっと整理しないとわからなくなりそうだぞ。


「異界というか、この地にはいなかったはずの生き物だから分けて表現している。そもそも地球にはアクマみたいなものは、エクソシスト以外合ったことがないんじゃないか? 私は地球での記憶にも見たことはないがね」


 あんまりボロボロと出てこられても困りますけどね。主に平和的な意味で。


「で、その来た者たちの間で共通してたのが『強力な魔力を持っている』ということなんだ」


 なんか一説によると、世界を突破する際に『世界の境界』と接触したことで世界を構成する力の一部を手に入れているじゃないだろうかってことらしい。そういや殻っていうかなんか突破した感じはあったな。あれかな?


「ほう、そういうものなのか。これは貴重な情報だ。で、その破片というのはどうなったんだ?」


「消えちゃったみたいですね。前情報があればなんとか回収してみたかったですけど、さわってみようと思っても感触もなかったですし。もう一回やろうとしても無理じゃないですか? そもそも見えてませんでしたし。」


「そうか、残念だな。 まぁ仮に手に入れていたとしても、手に入れる前との比較ができない以上、どういった効果があるのかは検証しようがないんだがね」


 なんかすごいことらしいが全く実感が無い。異界から来たモノは一様に魔力が高いらしいし、それが境界とか幕とか破片とかのおかげなのかせいなのかもわからないみたいだな。そう考えると一つ疑問が思い当たる。


「エディさんもなんか強力な魔力とか持ってないんですか? 世界の壁を突破してきたんだし」


 そういうとちょっと残念そうにかたをすぼめながら話し出した。


「いや、私の場合『記憶』だけが飛ばされてきただけなんだよ。とくに体があったわけではないからひっかかる要素もなかったんじゃないかな」


 電気信号は質量と認められないんだろうか? でも魂にも質量ってあったか? 21gとか言われてるけどそれも1例しか上がってないものを信用するのはどうかと思うが。


「なるほど、でも魂だけの私も似たようなものでは?」


「魂といっても『霊体』を持って移動しているからね。下手に肉体があるより強力な魔力を得ている可能性すらある」


 体という概念が重要らしい。このへんは科学ではわからない世界なのかもしれない。つまりあれか、肉体が来てたら肉体が、魂だけだと精神(魔力)が強化されるってことか。


「そういう解釈でいいのかもしれないね。ただし肉体ごと転移に成功した例はないんだよ。やってみたいけど理論がわからなくてね」


 と非常に残念そうにつぶやいた。



「で、色々知ったしせっかくだから、地球の知識とこっちの知識を組み合わせた全く新しい何かを作って、今度は地球に戻れないかなぁって思ったんだけど、よく考えなくても自分の元の体って腐ってるだろ?」


 アメリカとかあっちは埋葬が基本だからね。 火葬する人もいるらしいが遺灰は暖炉の上とかに置くらしい。なんかすごいよね。感性の違いだろうか。


「自分で戻るのはたぶんもう無理かなぁって思ったから、往復できそうな人を呼ぶことにしてみたんだ。なんかこの世界間の交流ができたらすごくね? とか思って。でも最初はうまくいかなくてねぇ。実験だし失敗するのは当然だし、資金の続く限り繰り返すつもりなんだけど……」


 たしか自分で9回目だったかな? 随分大変だったんだろうなぁ。


「9回で? いやこんなのまだ始まったばかりと変わらないよ! 必要なら必要な回数だけ繰り返す。たとえ5万回繰り返し、すべてが失敗しても得られるものがある。私は成功するまで続けるからこその発明家なのだよ」


 めちゃくちゃポジティブだなこの人。さすが偉人にあげられる人(の記憶を持った人)は違うなぁ。知らないけど。


「実際それだけだとお金出なかったんだけどね。君にはやってもらいたいこともあるし」


 なにやら悪い笑顔だ。さわやかな雰囲気をかもしだそうとしているがどう見ても黒いオーラがにじみ出た嫌な感じがする。というか漫画的な表現だとおもっていたが本当に人からオーラって出るんだな。ビックリしたよもう。


「一つは情報の伝播だな。君自信の経験を語ってもらえればこちらの世界へのアプローチを試みる人が増えるんじゃないかと思うんだよ。そうすれば交流の可能性が出てくる」


 エディさんいわく、これまでも何度か交信と思わしき情報をキャッチしたこともあるそうだが、こちらに向けて発信されたものではないためうまく捉えることができなかったそうだ。やはり交信相手が特定されないと交流が成り立つことは難しいらしい。


「そこで君が役に立つ。本来ならもう少しこの世界にとどまってもらってから元に戻して、君自身の経験を文章や娯楽の形でもいいので広く伝えてもらおうかと考えていたんだ」


「あれ? 学会とかに持って行けって話じゃないんですか?」


 一般大衆に広めるってただの娯楽じゃないか。たぶんただの物語の一つとして消化吸収消滅していくだけな気がする。


「いや娯楽だからこそいいんだよ。まぁ君に面白おかしく文章を書きあげる才能があるかは別にして、荒唐無稽な物語というのは一定の興味を引くものだよ。そういった話が広く伝わることでこちらの世界を認識するきっかけとしてもらえれば。私はそう考えているんだ」


 はぁ、えらく気の長い話で。文章化されてどこかに掲載されて、さらにそれが広く伝わるってそれはもう凄い奇跡の連続にしか思えないんだけど、なんか策でもあるんですかね?


「そこはそれ、君が集めきらない知識は私がここで調べたことと合わせて覚えて帰ることで、非常にリアリティあふれた個性的な物語として仕上げることができるだろう。何しろ実際に生活するんだからな。空気感とかかなりハンパないぞ? きっとだが」


 すいません、まだこの部屋の様子しかしらないんですけど。それ以前に文章書かせるとか勘弁してください。かなり面倒っぽいじゃないですか。


「ま、こっちはオマケだ。可能性は大きくするに限るからな。どっちかってぇともう一つの案件の方が重要だ」


と急に姿勢を正してこちらを正面から見据えるように立ち上がる。


「ありていに言うと、世界を救ってもらいたいんだよ。勇者的なアレで」


 いや、異世界召喚の定番ですけど、自分何もできませんよ?




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