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29. 自分だけの魔法

 決断したんだ。そんな気はしてなかったけど。ちょっと試そうかな、そんな気分だったんだ。

 どうしよう、なんだか無性にイジイジしてくる。これでいいのか? って考えしか浮かばない。


(……たぶん、帰れないよなぁ……)


 あの糸。多分体と魂が繋がっていたであろうあの糸。自分で切っちゃったもんなぁ。

 あそこまで簡単にブチッと行っちゃうのって正直想像してなかったんだよ。自分で切っといてなんだけど。もうちょっと抵抗してほしかったっていうか、首の皮一枚的なものでつながってて欲しかったっていうか、もうちょっと根性出せよ!


 うむ、イジイジするの終了!


 どうにもならないことを後悔するのは死ぬ前か老後の楽しみにとっておこう。ボケて忘れてなければだが。

 少なくともだが、自分が意識を失ってすぐにノインが誘拐?されたそうだ。

 私のために何かをしてくれた、と思ったら利用されていた。ってことなんだろう。


 これからのこともあるが、まずはノイン救出を当面の目標としよう。それから後のことは後になって考えればいいや。もう地球に戻されることもない。ゆっくり決めればいい。

実年齢?を意識できるように「私」と自分のことを思い続けていたけど、もうそんなこだわりも無用だな。



「思い当たることはあるかしら?」


 こちらの考えがまとまるのを待っていてくれたのだろうか、学院長の声にふと我に返ったかのように反応してしまう。そんなにじっと見つめられてしまうとちょっと恥ずかしいんですよ。夜バージョンの学院長は美人なので真面目に目のやり場に困る。


「はい、多分エディさんのことだと思います」


「えっとエディってのはグリーツベインの領主の坊やの事ですから」


 リジーさんのフォローが入る。普通に考えて名前で通じるはずがないものね。


「まぁそうでしょうね。しかし3日後に来いっていうのはどういう理由でしょうか。いちおう今から出発すれば3日くらいで到着できるという算段でしょうが……」


 こちらの体制が整わないうちに選択肢を狭めていくって作戦だろうか。そんなことをしなくてもエディ君ならもっと別の手段を取るんじゃないだろうか。貴族なんだから権力とかで絡め手を使った方が確実な気がするし。


「すでに貴方たちは学院の生徒。表だって働きかければ学院全体からの抗議や抵抗を受けることになる。あくまで個人的な案件とすべく動いたのでしょう。でも学院にここまでの被害を出してくれたのですから相応の報いを受けてもらわねばなりません。短時間で準備したとはいえよくできた部屋でしたのに……」


 あぁ怒ってる怒ってる。主に個人的な理由に聞こえる気がするけど。


「そういうわけですが学院は貴方のサポートを惜しまないことにします。そもそも人の生徒を誘拐するような輩に容赦するつもりはありません」


 そういうと、ウィル先生はともかくバートランド先生がめちゃくちゃ楽しそうな笑顔を見せている。やっべまじ戦争問題っぽくなってきた。私が言うのもなんだけど一応確認しておくべきだろうか。


「学院が全力で、相手に非があるとはいえ貴族に対して敵意をあらわにするのは、あまりよろしくないのではないでしょうか?」


 権力機構に異を唱えたいのはやまやまだろうが、そんな大胆なことをしたら学院の存続にかかわる事態になりかえない気がする。少なくとも軍を派遣されたりしちゃう気がしますよ。


「えぇ、対外的に中立であることがこの学院存続が許されている理由です。でも今回は生徒が被害にあっていますからね。大義名分は立ちます」


 やべ~ やる気まんまんだった~ じつは一番危険な考え持ってないかこの人。


「そこを曲げてお願いします。この件は私に任せてもらえませんか? ノインのことは私がなんとかする問題だと思うんです」


 むしろ私以外の誰にも任せてはいけない問題だと思うんだ。事の起こりは自分が原因なら、事を収めるのも自分でありたい。


「……わかりました、こちらもできうる限りのサポートを行うことに専念しましょう。でもそのためにはホンジョーさん、かなり難しい授業を受けてもらわねばなりません。それこそ魔族に対抗しうるくらいの実力が必要です。耐えられますね?」


 言われることは多分解っていない、でもやらなきゃいけないって所だけは解ってるつもりだ。



――



 訓練用に部屋を用意してもらう。真ん中にテーブルが一つあるだけで何も装飾のない寂しい部屋だ。


「訓練用に急きょ用意したので飾り気はありませんが、貴方が無茶をしても平気なようにしてあります。当然ですが外部からの監視も入りません。では始めますよ?」


 オス! よろしくお願いします!


「リジーさんはともかく、ホンジョーさんは魔力の量に物を言わせるくらいしか手が無いのが現状での最大の問題です。もっと効果的な魔力の運用方法や『貴方に合った』やり方を考えましょう。あまり時間がありませんので、まずは効率的な方法について学んでいただきます」


 学院長が何かガラス瓶のようなものを2つ取り出した。たしか魔力計といったか。テーブルの上に2つ並べてから語り始めた。


「まずはこの機械が反応しないくらいに魔力の放出を抑えてください」


 魔力の無意識の放出を計測するという魔力計。私がいるだけで小刻みに震えるほど反応していたが、バートランド先生にコントロールを叩き込まれたおかげで意外にスムーズに反応を小さくすることができた。自分を中心にしたカプセルに入ったイメージ。循環しつつも閉じた魔力の流れ。そんな感じだ。


「まぁいいでしょう、では次に『右の魔力計』に反応するように魔力を放ってみてください。あまり強くする必要はありませんよ。ちなみにそこから動いたり必要以上に手をのばしたりといったことは禁止です」


 近づいていいならそんなに難しくないないし、この訓練の意味が無いんだろう。えっと、ボールみたいなイメージで投げつけるように魔力を投げつけてみよう。

 右手のひらに意識を集める。そんなに強くなくていいってことだし。石コロ程度の大きさでいいか。魔力ボールだなこれは。イメージとしては綿かなにか。壊すわけじゃないし当たっても何も壊れないようにしないとね。

 程よい感じになったと思うので、そのまま魔力計めがけて投げつけてみる。

 魔力ボールが手を離れたあたりで魔力計が反応を始める。しかも2つとも同時だ。


「誰が2つも反応させろといいましたか? 『右の魔力計』だけ反応させなさい」


 これは思った以上に難しいぞ……?



――



 何度か試してみたが、ことごとく失敗する。魔力を放つところまではまだなんとかなるが、その次には魔力計が反応してしまうんだ。両方とも。 魔力を小さくすればいいのかとも思ったがそういう問題でもないらしい。


「ホンジョーさん、やり方はいくらでもあります。ですが今の貴方にできる方法は限られるでしょう。自分の体から放射される魔力は抑えられるようですが『自分から放たれた魔力から放射される』ものは抑えることができないようです。それを抑えるにはどうすればいいのか。もう一度よく考えてください」


 そうは言われても、どう認識すればいいのか。何かのナゾナゾのようでもあるな。

 いかん! こういうものはあまり複雑に考え過ぎると逆に混乱するパターンだ。まずできることを組み合わせよう。

 『自分から放射される魔力』は抑えられる。『自分が放った魔力からの放射は抑えられない』。

 あぁそういうことか、なら簡単じゃないか。自分が手放さなければいいんだ。


 魔力ボールにしていたからダメなんだ。魔力で棒をつくって魔力計をつっついてみよう。右手に細い棒を意識する。魔力で作るんだから鞭とかもでいいか。自由に動くものを想像しよう。円形の魔力が細長い棒状へと変化する。あとはこれを右の魔力計に伸ばせば……!


 先端が届くまであと1mくらいのところで、魔力計は反応した。しかも2つも。


「よい考えでしたが、魔力塊の先から放射がもれています。意識をしっかりと集中して。魔力の先からも漏れないようにしっかり意識してみなさい」


 なまじ魔力が光って見えるせいか、魔力が放射されている状態にしてしまったらしい。いかんいかん。全体をチョコか何かでコーティングした感じにするか。まるでポ○キーだなこれ。これでどうだ?

 さっきよりは良くなった気がするが、やはり同時に反応されてしまう。どうやればいいんだろう。個体として扱うからいけないのか? 魔力の流れを意識するように。そうだな。表面を呪文が覆っているような『抑制の指輪』の模様のような何かが覆っていて常に動いているイメージにしてみよう。これでだめなら。もう一回考え直しだ。


 魔力棒の全体を変化するテクスチャで覆ったようにイメージする。模様はなんでもいいか。とりあえずわかりやすくシマシマ模様で。魔力の流れに一定の流れができたみたいだ。これなら。


 魔力棒の先端をのばし魔力計の近づける。

 あと30cm。これまでの最高記録を更新。

 あと20cm。両方とも反応しない。

 あと10cm。近づけた方が少し反応を見せた気がするが、反対の魔力計は変化なし。


 コツン。


 魔力棒で魔力計をつっついてみた。ちゃんと反応した。

 隣の魔力系は静かなままだ。

 うまくいった。

 しかし額が汗だらけだ、たいして魔力を使っていないのにこれはきつい。


「うん、よく短時間でコツをつかみました。それが一つの方法ですね。他にも最初に試していた魔力塊を投げる方法に、魔力の放出を抑える制御を加えて投げてみるとか、左の魔力計を反応させないように強制的に抑え込むといった方法もありますが効率という点では失格ですね。こういった手段の全てを使えるようになれば申し分ないのですが、今は時間がありません。当面の目標として『魔力を無駄のない塊として捉える方法』を学んでいきましょう」




 魔力を一つの塊として捉えることはとても大きなメリットがあった。

 今まで無意識にせよ放出するしかなかったので、量の加減がきかず「出す・出さない」しかできなかったが、塊の一つの単位とすることで意識的に利用する魔力の量を調節することができるようになった。

 リジーやノインに魔力を渡す場合、自分の魔力総量、というか減った魔力から類推するくらいしかできなかったが、『魔力ボール1個』とか具体的な単位を意識して調節できるようになる、ということらしい。


 また魔力の密度を上げることもイメージしやすくなった。単純にいえば棒を重ねて強度を増す感じだ。

 魔力ボールを重ね合わせるようにすればちょっとした石くらいの質感を伴った魔力の塊になった。といっても脆いようで、何かにぶつかると砕け散ってしまう。これはこれでそこそこの威力がありそうではあるが、実用的かと言われると疑問だな。


 魔力棒を五個分重ねると、木刀として扱えそうな感じになった。光り輝く魔力の塊だ。これくらいになると普通に目で見える。なんだかライトセ○バーっぽい。これはもう剣だな。魔力剣。長さも変えられるし、なんだかワクワクしてくる。

 調子にのって振り回していたら、机が真っ二つになってしまった。手ごたえもなにのなかったのになんて切れ味だ。なんだこれかなり怖いぞ。


「魔力を放射しないようにしているのでその程度ですが、その密度の魔力を対象に流し込むように意図してコントロールできればもっと凄いことになります。せっかくだしこの机で試してみなさい」


 魔力剣の先端に穴を開けるイメージを作る。途端に剣の形態がぐにゃぐなとして不安定になる。これは相当難しいかもしれない。ちょっと別の方法にしてみよう。

 穴をあけるようにするから大変なんだ。いっそのこと先端を切り離すようにしてみるか。


 魔力剣の先端5cmくらいを切り落とすように。折刃カッターのように切り離す。切り取った先端がテーブルに触れた瞬間。


<ボン!>


 大きな音を放ってテーブルが破裂する。魔力剣の刃が落ちたところがえぐれて直径三十cmくらいの穴になっていた。魔力が反応したということだろうか。


「魔力が過剰反応したのです。あなたの魔力を急激に流し込まれて耐えられなくなったのですよ」


 しばらく茫然としてしまった。集中が切れたせいで持っていた魔力剣も消えてしまう。手のひらを開けてみると魔力の残渣が砂のようにキラキラと消え去っていくところだった。


「正しく扱われる魔力はどういう威力を持つか、理解できましたか?」


「……あ、あの、実感ありませんけど……」


 怖いな。

 こんなものを扱っていたのか。こんなものをリジーやノインに流し込んでいたのか。自分の中にこんなものが、あふれているのか。何よりこれだけのことをしでかしたのに、減った魔力が減っている様子すらない。

 これじゃまるで、歩く爆弾かなにかじゃないか。


「普通に才能のある人が今のようなことをするには、それこそ全魔力をつぎ込んでできるかどうか。実感はないかもしれないけど貴方の魔力はそれこそ『無限』と評されてもおかしくないのよ。その力をどう使うか、ちゃんと考えてちょうだいね」


 考えがまとまりきらいないせいか、ただ無言でうなずくことしかできなかった。



――



「ソード」


 短いキーワードを唱えると、右手に魔力が集中し発光しだす。次第に細長い形を経て長さ1.5m程度の棒のようになっていった。

 訓練は終わっているが自分の部屋で自主トレ中だ。魔力を消費したからしっかり休憩しなさいと言われたが、まだ五割以上の余裕がある。感覚が残っている間にものにしたい。


「魔術の基本は魔力をいかに操るかで成します。ですがその工程を全て思い描きながら再現していたのでは効率が悪くなるばかりです。そこでよく行う動作については繰り返し行うことで自然に再現できるようにします」


 学院長さんの言っていたことを思い出す。いわゆる『手が勝手に動く』ってやつかな。ブラインドタッチと意味合いは似てるかもしれない。


「よく用いられる方法が『呪文を唱える』ことよ。集中して特定のキーワードを唱えることで自然に魔力を扱えるように訓練するの」


 リジーの自慢げな顔と共に思い出す。時々やっていたのはそれか。一工程で再現するには複雑なことをしていたと思っていたけどそういう理屈だったのね。


「しゃべる必要はないわ。まだどんな言葉でも構わない。あんまり長いと呪文を唱える方が大変になっちゃうから注意してちょうだいね。シンプルな方がいいけど、日常生活では使わない言葉の方がいいかしらね。暴発することはないだろうけど危険は避けるべきだし」


 いちいちドヤ顔と一緒に思い出すのもアレだけど。

 確かに寝言で魔力が暴走してはたまったものではない。まぁ寝ている間に魔法が発動するかはわからないけど。何か適当なものを考えてみよう。そんなことがあって、いろいろとバリエーションを検討中だ。


 まだ5秒はかかる。実用性を考えれば、形を成すのはもっと短く、最低でも一秒以内でできるのが目標だ。誰もが<ビヨ~ン>と延びてくる光った剣に見とれてくれる訳ではないのだ。


誤字訂正 ×発行→○発光

ついでにちょっと修正しますた。

しかしどうしてこんな間違いを……げふっ

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