01. ある技術者を襲ったトラブルとその起こり
初投稿なので多分機能として理解していない所も多く、知識も技術も無いのでダメダメな所も多々あるかと思いますが、そういうのを笑ってスルー出来る方にはお付き合い頂けると嬉しいです。いやぁこれでちゃんと投稿できてるのかなぁ。不安でしかたありません。
これを読んでいる貴方は『無』というものをどう定義しているだろうか?
『何もない状態』
確かにその通りだが、その『何もない』というのはどうやって知りえたんだろうか。計測機器によって得られた情報では『その機械に反応しない』だけで何もないとは誰にもわからない。そもそも計測できている段階で何かしらの関与が考えられはしないだろうか?
『無』というのは、何も存在せず誰にも知られることの無い状態だと考える。
何が言いたいかというと、何も認識できないが『私』の意識が存在している時点でここは『無』ではないのだ。
つまりそんなことを考えてしまうくらい何も無くって暇なんだ。
ほんとにどうしてこうなった。
――
私は本庄。年は39。とある商社の経理開発部門に勤めるしがないサラリーマンだ。
システム運用のリーダー的な立場になってから3年。そろそろ出世とか考えた方がいいのだろうかと悩み始めた。同期は既に課長になっているものもいるが、自分は出世とは無縁と思っていたので気にして、はいたが気にしないようにしていた。
昨日から月次処理のバッチ処理を実行していた。同じ系列の子会社の一つが経理システムを再構築するということで私のチームが担当することになったのだ。今日はそのシステム稼働しての初の月次処理。おかげで徹夜確定だ。元々家に帰るつもりはないし予定でも泊まり込み確定だが、余計なトラブルがまた発生して追加で二時間かかることがわかった。監視のため寝られるはずの時間がまるまる潰れるはめに。そろそろ辛いんだよな徹夜って。
実際、今やっている処理は半分無駄といっていい。先月導入を開始した新規システムではリアルタイムで状況を把握できるので、ここまで時間をかける処理を実行する必要はない。
ではどうしてか? というと新規システムへの移行期間にバックアップとして、現行システムでも対応できるようにデータを準備しておく必要があるからだ。まぁぶっちゃけると旧システムはCO○OLベースなのでそちら用にコンバートかけるのが凄い時間がかかるんだ。今時磁気テープってなんだよ? なんと紙カードのリーダーまでついてる年代ものだ。ちなみに私は紙テープを読めない。学生のころ実習で習ったのは紙カード止まりだ。
端末だってwin98で動いてるし、MS-D○Sってなんですか?と新人に聞かれたときはどうしようと思った。とりあえずコンソールみたいなもんだと教えておいた。実際D○Sベースですることはほとんどないしそういう解釈でも問題ないだろう。正確には困るんだか、新規システムには存在しないようなもんだし。まぁ気にしなくてもいいか。
システムがちゃんと動けばいいが、期待通りに動くことは稀だ。準備期間に半年をかけ本番同様のデータを扱うテストも行ったが、実際に稼働させるとなると勝手が違う。直前で想定量を超えた処理が発生したためにワークがあふれて酷いことになった。これだからCO○OLは。最初からやり直しだ。
「なんかワークいっぱいとって面倒だなぁとか思ってましたけど、ちゃんと保存しといてよかったっすよね!」
と、気楽なことを言っているのは入社2年目の竹中だ。そろそろいちいち指示をしないでも動いて欲しいのだが。まだ自信がないのかいちいち確認してくる。もともとコイツのミスで中間ファイルが全損するトラブルが発生して、そういうミスが起こっても簡単にリカバリできるようにとの対策していた。あの時はひどかったなぁ。まさか3日も泊まり込むはめになるとは。おかげで余計なDATの束を作る羽目になった。ちょっと請求関連がトラブったけどまぁなんとかなった。ありがとう営業の福井さん。今度奢ろう。
今回の移行においてはドキュメントもしっかりしたものを用意したと自負している。設計段階から先方も大きくかかわっているし、実際に担当するの人とも関係が良好だったため余計な細工を色々仕込んでいたものを教えてあげた。といっても通常仕様とは異なる条件で検索できるメニューを教えただけだ。お約束だよねこういうの。
リアルタイムでSQLに全体検索をかけると全体のレスポンスが低下する。当たり前といえば当たり前なので、一日一回ログを取得し利用状況の参照をするためだけのサーバを立てている。このサーバは経理と営業と運用しかアクセスしないのでかなりショボい。なのでこういった負荷のかかる全体検索を常時実行するようなコマンドは運用サーバでも重くなるのにショボサーバでは危険すぎる。
そのため利用可能なIDを絞ることにしている。まぁぶっちゃけるとadminとシスオペと担当リーダーのIDの3つだけだ。この3つだけなら利用状況を判断して負荷のかかっていないタイミングを選んで実行できるし便利だもんね。
しかし便利なものを使いたがる人は多い。多分経理の原さんも使いたがるだろう。十分注意しないと経理全体で使われかねない。あの人はコッソリ使ってねといった次の日に経理全員に教えてるんだからたまったものじゃない。なんのための制限なのか考えてほしいものだ。
だがそのうちバれるのはわかっているので必要な時は自分を呼んでもらおう。メニュー自体は共通だしパスを抜かれない限りは悪用されまい。と思っていたが離席中にPC使われたら終わりだな。どうしよう。入れたくはないがスクリーンセーバーにパスでも設定しておくか。
そういうわけで今回はなんとか無事に終わったことだし、来月以降は全く準備せずに終わらせる予定だ。あと2か月ほどで完全動作させ先方へ納品予定だが、今回でいろいろバグ出しができたので来月は随分と楽ができるはずだが、トラブルというのはなにもシステム内部から出てくるとは限らない。用心するにこしたことはない。新仕様について十分話し合ったはずなのに、できあがってからメニューを変更させられるとかザラだし、まだまだ問題は発生するだろう。いい加減にしてほしいものだ。
月次処理が終了し、これ以上トラブルが無ければ呼び出されることもないだろうということで予定通り1日休暇を頂いた。待機時間でレポートは書き上げていたし、オペレータの矢木君に起こった詳細とか改善の提案とかしといたからうまくやってくれるだろう。
ここ3か月は休日返上だったし、そろそろダラダラと寝るだけの日を作ってもいいんじゃないかな。たまった録画を消化しつつビールを呑むだけになりそうだ。仕事を終えた一杯なら旨いんじゃないかと思う。よくわからないけど。
なんてことを考えながら帰りの電車に揺られていたはずだった。流石に午前11時の下り方面電車。ガラガラで席も座り放題でこりゃ楽だね!とぼんやりしていたところまでは覚えている。 たぶん電車で寝てたんだと思う。途中大きく車体が揺れた気がするんだが、なんだか大きな音もしたような。
プツンッ
そんな音が頭の中で響いた気がした。
――
というわけで冒頭に戻ることになる。
きっとあれだな、明晰夢というやつだろう。自分でもはっきりとは覚えていないが、寝ている時は夢をみることが多いと思う。毎日ではないが3日に2回は見ている気がする。夢なので起きたら忘れてしまうが。
自分の見る夢の荒唐無稽さに、覚えておいたら話のタネになるかと勤めて覚えておくように努力している。なにしろ1回しかないが、スタッフロールのついた映画のような夢をみたこともあるくらいだ。同僚に聞いてみたがそういった夢を見たというものは誰もいなかった。まぁそれがどうしたといわれるとそうですね、としか言いようがないのだが。
だがそのほとんどは何かしらの行動をおこしたり誰かと話したりといったストーリーがあった。今のような、何も無い真っ暗な夢というのは初めてだ。
何も変化がない。どういうことだ、こんなつまらない夢はなかなかないぞ。別の意味で記憶に残りそうだ。
そんなことを思いながらじっと耐える。5分くらいな気もするし2・3時間経過しているような気もする。どうにかしようと思ってもどうにもならない。もういいや寝ちゃうか。いやたぶん寝てるんだし更に寝るってどういうことだ? 実は次元の壁を突破して二次元に旅立っているとか? そこまで重度のオタクだったのか…… いやまぁ重度のオタクだが。
とかどうでもいいことを思っていた矢先、周囲に変化がおとずれた。真っ暗で何もないと思っていた空間だが、よく見てみると細かく小さいチリのようなものが無数に漂っているようだ。自分は花粉症持ちなので一瞬かなり動揺したが、呼吸と一緒に吸い込まれる類のものではないらしい、ちょっと安心。
このチリだが、自分を基準として言っていいのかわからないがとにかく感覚的に『上』もしくは『下』に向かってゆっくりと動いているようだ。中には淡いながら輝きを放つものもありちょっと幻想的な風景になっている。鼻先をこするように飛んでいくツブが何個かかすめたせいか、妙に鼻がむずがゆくなってくしゃみをしてしまった。たぶん気分的なものだろう、というか気にし過ぎて反応しちゃったのかもしれない。というか夢の中でくしゃみをした記憶もないな。もしかすると初めてかもしれない。
などと思っていると、唐突に自分の体が動き始めた。チリの流れでいう『上』の方へと引き寄せられるような、すいとられるように。なんで動いているかを把握できたのは、動いた軌跡を描くように白いラインが自分の後に残っていったからだ。ちょっと光ってる感じがしてかっこいい。TR○Nバイクみたいだ! と今時の人にわからない例えをしてみる。リメイクもされたし案外通じるかもしれん。個人的感想だが相変わらず中身の無い映画でよかった。
なんとかして目線を引き寄せられる方向へ向けてみる。チリが集まって白くうっすらと光を放っているように見えた。まぶしいという感じではないが、随分と遠くへ引き寄せられている気がする。空を見上げている気分だ。あの星まで何マイルあるんだ? 行かないけど。比較対象がないのが辛い。といってもタバコの箱とか置かれても困ってしまう。小さすぎて見えてることにも気づかないだろう。
と、のんきに構えていたら、突然目の前? でパリンと何かが割れる音がした。思わず体が反応してビクンと痙攣してしまう。ああいう突発音苦手なんだよなぁ。何か見えていた訳でもないんだが、どういうことだろう? それより全く痛くもない。ただのドッキリイベントか?
目の前に破裂音の正体らしきものが浮かんでいた。ガラスのような無色透明のフィルムの切れ端みたいなものがあった。この層を突破したのかもしれない。手のひらくらいの大きさのそれを、手をのばしどんなものかと確かめてもようとする、指先が触れたと思った瞬間に反射光のようにキラッと輝きを放つと不意に消えてしまった。衝撃に弱いものだったんだろうか? 何しろ触ったという実感もないのだから確認しようがない。周囲に浮いていたチリの元になるものかもしれないな。気分でしかないが同じようなものっぽく思えた。他にも見かけたので手を伸ばしてみるが、同じように消えたり中には届かないものもあった。やはり無駄か、あきらめよう。
たぶん何かを突破したせいで他にも破片が飛び散っているのだと思っていたがそうではなかったらしい、周囲を見渡すと明らかにチリの量が増えている。中には明滅を繰り返し消えるように見えなくなるものもあるが、全体としては先ほどよりも強い光を放つものが多い印象だ。すごいと思う反面、見ていてちょっと切なさも感じる不思議な景色だ。
しかしこれはなかなかファンタジックな夢だな。大宇宙の真理とかに目覚めそうで怖い。どこぞの宗教家もこういったものを見て神の存在とか信じちゃったんだろうか。こういう時はたいていお約束で、神もしくは代理人みたいな人から声をかけられちゃったりするんだよな。
少し期待していたんだがそんな声は聞こえてこなかった。代わりに今までとは比べ物にならない変化が現れた。文字通り大きな手だ。自分の身長よりも遥かに巨大きな手が現れた。マジか!? なんだこの怪物! とっさに逃げようとするが自分で動けないんだからどうしょうもない。これは夢だ。夢ってのは自分の願望とか欲望とかいろいろにじみ出るんだ。つまり自分はそんな大きな力に支配されたがっているって表現なのか? いやアレむちゃくちゃでかいぞ? 近づいてきてわかったが10m以上ありそう。
どうにか逃げ出す方法を考えていたが、どうかできるわけでもない。結局その腕に全身をガシッと鷲掴みにされ、ものすごい加速で白く色付いた方向へと引き寄せられていった。うわやべ、こんな加速生まれて初めて。
――
「……ぉ~~い、聞こえてる?」
次の瞬間、どうやら場面転換しては登場人物のいるシーンになったようだ。凝り性だなこの夢。
「身体再現率はかなりのものだし、魂魄定着率もこれまでとは比べ物にならん。100%成功しているはずなんだが…… お~い!? 君? 意識はあるかね?」
いやそんな耳元でどならなくても聞こえてますし。
「大丈夫。聞こえてますよ」
ここは十分明るいようだ。というか夢としか思えない訳で。まだ十分に眠いが、頑張ってまぶたを開けてみる。周囲の明るさがまぶしい。とっさに右手でまぶたを覆う。今は朝か? 確か昼過ぎに会社を出たはず、だが周囲はやたら明るいので夜ではないと思う。スポットライトの集中照射でもされてる気分だ、蛍光灯の明るさでこんなにまぶしく感じるとは思えない。
どうやらベッドの上に寝かされていたようだ。周囲がやたらまぶしいので、せめて手触りで様子をうかがおうとしているんだが、なんだか全身がぼやけたようなあやふやな感じでいまいちはっきりしない。やわらかい布団の上に寝かされていることだけは合っている気がする。そういえばなんか消毒された薬品みたいな臭いがするな。
とにもかくにも起き上がって周囲を確認、しようとするが、うまく体に力が入らない。やっと目が慣れてきたので寝たままの姿勢で周囲を見渡してみる。白い木綿か何かの肌着を着せられているようだ。あまりできが良くないのかちょっとゴワゴワした感触がする。服のことを気にしても始まらないし、まずは現状確認だ。
自分の左側、木製の机の上に何やら頑丈そうな表紙の本が何冊も乱雑に積み上げられている。そこに走り書きだろうか? 紙とペンが置いてあるようだ。流石に何が書いてあるかはわからないが、周囲に散乱する金属の塊が気になる。
何かの機械のようではあるが、見慣れた日常用品のそれとは違った、装飾も何もないシンプルな構造のものな気がする。それと色とりどりの薬品。中にはそれっぽく煙が出ているものが…… あったりしたら面白いんだがそういうものは無かった。液体だけではなく粉状のものもあるんだろうか? すり鉢みたいなものも置いてあった。
光って目立っていたから金属の方を先に見てしまったが、冷静に見回すと医薬品系の方が多そうだ。自作でいろいろこさえる趣味をもった過疎の医者ってところだろうか。認可を取ってない民間治療ってこういう風に行われてるんじゃないかと妄想してしまった。
「さて、名前は言えるかな?」
先ほどから声を上げていた男、が私に返答を求めている。意識レベルの確認というやつかな。なんだか本当に医者っぽいな。何か事故にでも巻き込まれたのだろうか? とりあえずちゃんとしていると主張しておくべきだろう。
「あ、はい。本庄です」
だんだんと目が慣れてきた。薄目を開けて周囲を再確認する。どうやらその男は白衣を着ていたらしい。白は余計にまぶしく感じるし今は勘弁してほしい。
私の返答に満足したのか、男は続けてこういってきた。
「ここではこういうべきだろう、ようこそ異世界へ! 君はこの私に選ばれたのだよ!」
……今日の夢は壮大なものらしい、起きたらちゃんとメモを取らなきゃ。
12/2 サブタイトル修正
編集すると日付が変わると思って今まで手を出せませんでした。いやほら1からキッチリ1か月くらい並んでいるのを見たかったんですよ。マジでそれだけの理由です。うへへ(満足したらしい