おしまいっ! Konara Angle 9/18 16:20
誤字脱字等有りましたら指摘お願いします。
暗転。
長い長い走馬燈から、やっと現実に戻されました。そう、殺戮の魔女に体の中をあさられ、食べられている真っ最中という、信じたくない現実に。
もう視界と呼ばれる、この目で見ていた現実はなくなり、目を瞑って見える、真っ黒な何も見えるはずもない空間しか見えませんでした。
もうすぐ死ぬんだと思いました。どんどんと意識が無くなっていって、淡くぼやけていって消えていくんだなと思いました。死ぬのが嫌だからとあわてることは不思議とありませんでした。自分でも驚くほど、何故か自然に受け止められました。きっと感情も緩やかに死んでいるため、麻痺してあまり感じられなくなっているのでしょう。
見えないけれど、何故か音は聞こえました。ほら、今、誰か、男の人が魔女に話しかけています。すると魔女は食べるのやめ、さっきとは全然違う感じの人格になり、何でこんな事をしているのか分からないと、とぼけています。その後、その男の人と魔女は、二人でどこかに行ってしまいました。
彼らが去った後、二人組の、私よりも年下の男の子の声と口が悪いどこか勝ち気な女性の会話が聞こえました。私の近くで何か話しているようですが、男の子が自己流哲学的なさっぱり意図が理解できないことを言って、女性が分からないと返しているだけでした。どうして、何をしたくて、妙な組み合わせの二人が話しているのか、さっぱり分かりませんでした。
(ねえ、君、僕のためにちょっと働いてくれるかな? 一方的にするから、拒否権はないんだけどね。働いてくれるなら、ちゃんと見合った給料を払うよ。しかも、先払いだ。いいでしょ?)と男の子は誰かにそう尋ねました。私は死んでいるので、私に話しかけて言うわけでなく、どうやら、近くにもう一人いるのではないか? と考えました。
(じゃあ、君のその左目、いただくよ)
そして、その誰かに、その人は左目をあげたようです。
その二人は、怪しい取引をした後、男の子の方は私のことをじっと観察して、不思議な会話をし、捕獲員や魔女草が来るからといって、二人は去っていくようで、どんどんと声はフェードアウトするように小さくなっていきました。
そして声は聞こえなくなり、私は一人、取り残されました。あのヘンテコな二人組が言ったことが間違いないなら、捕獲員――先輩や百合子さん、回収班の人がここに来てくれるはずです。そういえば、私、百合子さんに魔女捕まえるから、回収班を呼んどいてくださいってメールしたんだから、必ず、来るじゃないですか。
その少しの一人の間、私はなんで、あんな走馬燈を見たのか、考えてみました。
確かに、あの出来事は、私の人生で一番の大事件だったと思います。伊達さんが言うには私の記憶の中で一番を占めているみたいで、触ってしまう度に見えてしまうと、ぼやいていたので、思い違いではないです。
だから、あれが一番にあったから再生されたんじゃないかと思いました。
それとも登場人物に意味があるのでしょうか。あの走馬燈に出できた人は、捕獲員では、先輩と伊達さん、光さん――は、あのときの私は会っていなかったし、見てなかったようです。あとは、魔女になって記憶を失って、魔女草に入った私の最愛の友人、鞠藻。死んでしまったつつじ。あと、あと――
あの赤髪の魔女と、その魔女に襲われて、何故か助けてくれた、あの金髪でウエーブがかかった魔女――タンポポさん。
あの二人の魔女は、いったいどんな関係だったのか、詳しくは分かりません。友達関係だったのかもしれませんが、本当にそうなのか、確かめるすべもありません。
あの後、その赤髪の魔女は機関から模倣の魔女と呼ばれるようになりました。魔女の中でダントツに被害者が多い魔女、男ばかり狙うことから男好きの魔女と揶揄されている、特殊な魔女。しかも、この魔女は、魔女の本来の摂食行動ではなく、自分の欲求の為に人を殺して食べていると、機関でそう推測、断定され、魔女の中で唯一、実名が公開されて、指名手配されているという、魔女というよりは重犯罪者として追われているのです。
最近、光さんが追いつめ、捕まえようとして、いつも通りに魔女に重傷を負わせる(本当は、首を切る以外はやっちゃいけないんですけど、光さんはいつも余計な攻撃を与えてしまいます)まではできたのですが、後一歩のところで、逃げられたと、光さんは悔しそうに言っていたのが記憶に新しいです。
じゃあ、その一方でタンポポさんは、いったいどんな魔女だったんでしょうか? タンポポさんの能力を推測して、能力が確認されている捕まっていない魔女(ほとんど魔女草の魔女ですが)や魔女収容所にいる魔女を調べたのですが、当てはまる能力を持った魔女が十数人いて、どの魔女も年は同じくらいなので、結局、誰なのか、どんな魔女なのか、わかりませんでした。
もしかしたら、まだ機関に見つかってない、魔女なのかもしれません。それか、もう、この世界を去った魔女なのかもしれません。
どちらにしても、私も後者のようになってしまうのですから、知ることもできません。
また、どこかで会える気がしていたのですが、そう人生はうまく出来てはいなかったようです。
ふと気がつくと、けたたましい音、先輩のバイクが近づいてくるのが聞こえました。
先輩、来てくれたんですか。
私はたまらなく嬉しくなりました。聞きたいと思っても、聞けないと思って諦めていたところに、先輩は駆けつけて、私の願いを叶えてくれました。
そう言えば、先輩は私にとても、甘かった様な気がします。私と同じ同世代の榊くんやいちりちゃんに対してはそこまで甘くはなかったので勘違いではないです。だって、普通、ねだられて大型バイクを買う気なる人なんて、そうそういません。
私はちょっと、寂しくなりました。
どうしても、訊きたかったことが増えてしまったからです。いえ、これ一つ、訊きたかったのです。
ねぇ、先輩。
私に甘かったのは、私が家族を殺されて、一人身になってしまったから、可哀想だから、優しく接してくれたのですか?
それとも、
私の事が――――
先輩の声が聞こえる前に、急に眠気が襲ってきました。ああ、こうやって、消えて逝くんだと、実感しました。
あの時の私の世界は、壊れて破片になって、また集まって、新しい世界を作り出しました。
その新しい世界は、壊れる前とは違って、若干好きになれました。
でも、その世界も、もうすぐ、終わりが近づいてきます。
壊れることなく、無くなるのです。
意識が遠退いていくき、考えることが億劫になっていきました。
最後に言い残した、言葉を言って、
先輩。
好きです。
言いたくありませんが、
さようなら。
こうして、私の短い人生を終えたかのように、締めくくりました――――