ばらばらっ! Friends Angle 9/20 16:35
誤字脱字等有りましたら指摘お願いします。
「ねぇ? ぽぽ」
「なぁに、なな?」
降りやまない、雨の中、出会った二人は、十字路に立っている。彼女たちは話し合っていた。
「あたしは、あたしたちが幸せになるために、やったの。そうしないと、これから先、絶対に二人だけでは生きていけないから、仕方がなくやったの」
七竈が泣きながら、掠れそうな声で言った。雨の音が微かに七竈の声よりも負けているくらいの音量だった。
「……何それ? そんな曖昧に話さないで、もっと具体的に話してよ」
曖昧な答えを信じれるはずもなく、蒲公英が追求する。
「駄目。それは絶対に駄目。深いところまで、ぽぽが知ったら、ぽぽも殺されちゃう!」
ヒステリックに、高い、切り裂けそうな声で七竈は叫んだ。蒲公英は、その様子から、察したことを話した。
「誰かに脅されて、女の子を襲ったの? だから、能力を持った女の子たちまで殺していたの? なら、ななを脅した奴を二人で殺しにいこうよ? 二人なら絶対に殺せるからさぁ?」
「違う。そういうことじゃない! 脅されてやった訳じゃないっ!」
「じゃあ、なんなのっ!? はっきりと教えてよっ!?」
今度は、痺れを切らした蒲公英が叫んだ。その声に驚き、たじろいだ七竈は、決心したように言った。
「あたしが、蒲公英を守るために、強くなるために、食べてた」
そういうと蒲公英はすぐに返した。
「嘘! そんなの嘘に決まってる!」
「じゃあ、なんて言えば納得してくれるの!? 好きで食べていましたって言えばいいの!?」
何を言ってもわかってくれない蒲公英に対して、逆に七竈がキレた。
「そういうことじゃないっ! ただ、本当のことを話して欲しいだけ!」
「だから、本当の話をしたじゃんっ! 強くなるために食べたって!」
にらみ合いが続き、お互い一歩も引かない状態が、当たりが暗くなるまで続きそうだった。
「これじゃあ、きりないね」と七竈がいい、「うんそうだね」が同意した。
「ねぇ、なな」
「なに、ぽぽ?」
「あのとき、覚えてる? わたしたちが魔女になったときのこと」
「……うん、覚えてるよ。――忘れたいけど」
「わたしもそう。でも、あの時にした約束が、決意が、今のわたしの生きる糧になっているの。一番嫌な出来事だったのに、わたしの一番の物と結びついて、離れなくなってるの。でも、それでも良いって思っている。わたしがこの決意を破ってしまったら死んでもいいって、そもそも、わたしはあの時死んだんだから、別にかまわない。死ぬことよりも、約束、決意を果たせない方が何十倍もつらいの――だからね、わたしはあの約束を、決意を守りたい。わたしたちみたいな、人が少しでも減って欲しいと願っているから――ななは、そう思ってくれていたよね?」
「…………」
蒲公英のあの時の決意を聞いた七竈は、口を閉ざし、黙ったままだった。
「もう……、いいよ」
蒲公英は、一呼吸置いてから言った。
「じゃあ、なな、喧嘩しよ?」
そう素っ頓狂なことを提案され、七竈は首を傾げた。
「……へ? 喧嘩?」
蒲公英は大まじめに言う。
「うん、喧嘩。能力も道具も使わない、素手で殴り合うだけの喧嘩」
「……拳で語り合うってやつ?」
「そう。話し合いで解決しないなら、もうこれしかないでしょ?」
そう断言された。それが少しおかしくて、七竈は少し笑った。
「男の子っぽいよ? その考え」
二人は久しぶりに感じられる程、同時に笑った。
「わたしが勝ったら、女の子を食べなくちゃいけなかった理由を話してね」と蒲公英は早速、賭をするようだった。
「その前に、どうやって、勝敗を決めるのさ?」
「倒れて殴れなくなったら、負け。最後まで、立っていた方が勝ち」
「オッケー。足は使っちゃ、駄目なんでしょ?」
「うん、足まで使ったら、殴り合いじゃない」
「わかった。じゃあ、あたしが勝ったら……」
「勝ったら?」
「……その時に決める」
「そう、じゃあ、始めよう」
「うん」
そういって、蒲公英と七竈は、殴り合いの喧嘩を始めた。
運命の分かれ道の真ん中で。
†
「やっぱり、葛に気づかれていたわね。こちらに感知されないように能力を押さえながら、首切り飛蝗と離れて動いていると思ったら、面倒なことをしてくれるじゃないの。気づくのが遅れて、見つかるところだったわ。ニエを肥えさせる餌を増やそうと捕獲員を呼び寄せるために、放った狂犬は、首切り飛蝗に駆逐されちゃうし。せっかくの時限爆弾も、魔女草の鈴に、記憶を変えられて盗られちゃうし。いっそ、新しい犬でも増やしましょうか。でも、そうすると、手に余っちゃったりして、飼い犬に手を噛まれちゃう、なんてことになったら、癪だし……。まあいいわ、諦めることにしましょう。高望みはしないで、ニエをちゃんと肥えるまで育てないとね。葛に邪魔されて、殺される可能性も高いから、大事に肥えさせないと。本当にその時が来るまで楽しみだわ……。それにしても魔女草は邪魔ね。葛がバックについてるから、今は、潰せないのよね……。うん、魔女草の件は、まだ、ほっとくことにしましょう。今の私には、何にも出来ないもの。でも、その内、必ず潰してあげるから、楽しみにしていないさいな」
今から喧嘩しようとしてる二人から、離れていく。
「ああ、それと、この喧嘩は、私が介入してあげるわ。もちろん最悪な方向に」
笑っていた。