ばらばらっ! Friend Angle 9/20 15:57
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「ザコいよ、ほんとにさぁ〜」
七竈は、上半身と下半身に切り分けられた部分を合わせ、随分前に奪い取った能力で、すぐに内蔵や骨、肉をくっつけ、一分も経たない内に全回した。立ち上がり、肉だけを切り刻まれ、倒れた黒宮を見下す。
黒宮は辛うじて息はしていたが、呼吸するだけで、体中に痛みが走り、時折、血で気道が塞がれ詰まるのか、苦しそうに咳き込んだりしている。
「あれだけ吠えといて、このザマとか。ホントにウケる」
ケラケラと笑いながら、黒宮を胸めがけ、右足で踏みつぶした。ゴキュッと鈍い音がして、黒宮の口から噴水の用に血が吹き出る、吹き出た血が七竈の赤い髪をさらに赤黒く染めた。胸骨が皮膚を突き破り、七竈の足にも刺さったが全く気にせずに、何度も、何度も、地団太を踏むように、思い通りにいかなかったから、その腹いせに、めちゃくちゃにした。黒宮の胸は足形に陥没し、口からは、血ではなく、食道かはたまた、気管か、肺か――そんな感じのものが吹き出していた。そのグロテスクな光景に七竈は舌なめずりをして、つばを飲み込んだ。
「さて、頂きますか♪」
そういい、食べようとした時、家の中に誰かが入ってくるのに気がついた。七竈の能力で感じられるということは、能力者と言うことになる。
「なんだよ、せっかくのお食事タイムなのに」
そう愚痴をこぼしながら、その誰かが入ってくると思われる方を見つめていた。
七竈も気づけなかったのだ。
何故、この首切り飛蝗こと、黒宮椿が、ここまでくることが出来たかということと、実際に黒宮が家の中に進入するまで気づかなかったということを。今来た進入者も、同じように家に入られてから気づいたということも。それができるのは、あの人の弟くらいだということを。
「やあ。やっと会えたね。模倣犯」
そこには小学生くらいの背の、あの人の弟――葛が現れた。
「な、なんで、あんた、いるの?」とその姿を見た七竈はガクガクと震え出す。葛がここにいるとは、あの人からも訊いていないし、葛にあってしまったら、葛に殺されるか、例え、仮に、逃げられたとしても、間違いなく七竈は殺される。
「その椿をね、返して貰いに来たんだよ。椿一人で、君を殺せると思っていたんだけど、それ君は以上だったみたいだね。それにしても、いったいどんな能力を持った人を食べたんだい? 模倣犯?」
七竈は震えながら、早くここから逃げないと、出口――窓の方をちらっと見る。
「あ、逃げるなら、逃げてもいいよ。こちらは、椿を返してくれるんだったら、君には何もしない。殺しも、詳しい事情を訊くことも一切しない。これで、君が処分されることはない。良かったじゃないか?」
「あたしは、あんたに会った時点でもう殺されることが確定してんだよ!」
「それは、どうして? 君みたいな姉さんの嗜好品の食用の牛、豚、養鶏が肥える前に、殺されるわけないだろ? まあ、悪い病気にかかったとか、別の質の良いストックが増えて邪魔になったとか、そんなことがなければの話だけどね」
「――――」
「何? 嗜好品の家畜って、例えられるのがそんなに嫌? いいて妙だと僕は思うんだけどなぁ。姉さんだったら、もっと酷いこと言いそうなのに」
「……このクソガキが」
七竈の罵声は聞こえてないのか葛がさらにしゃべる。
「まぁ、椿を失うのは、こちらとしても痛いからね。今回は見逃してあげるよ。でも次会ったときは、躊躇いなく、殺すから、よろしくね」と葛は笑顔で言い放った。
そういわれた七竈は憤慨した。上から見下されていると感じたわけではない。ただ、その交換条件が、気に食わなかったからだった。
「こんな状態で、生きているっていえるのかよっ!?」と七竈は胸が陥没してもう虫の息となった黒宮を指さしながら言った。この状態では魔女でも、復活は難しいだろう。辛うじてなら、回復できるかもしれないが。
「そうやって、もうダメだから、殺すって言って、あたしを殺す気だろっ! あたしを騙そうって――」
「何言ってんのさ?」と葛が真面目な顔で言った。
「これくらいだったら、大丈夫だよ」
「……へ?」
「まあ、心臓と肺、あと食道かな、それらは無くなっちゃうから喋れなくなるけどね。しょうがないさ。いっつも派手に汚すから、その事についてのお灸を据えたってことにしておこう。そんなことよりも、長時間、僕と一緒に居たらさぁ――それこそ、まずいよね?」
「っ!」
そうだった。こんなところにいるわけにはいかない。長居していたら、あの人に葛と密会していたと誤解され、殺されてしまう危険もある。七竈は葛の横をわき目も振れず、逃げることだけに集中して、通り過ぎようとした。
「あ、後一つ、君の友達、こっちに向かってきてるよ。一体、何しにくるんだろうね?」
「っ!?」と七竈は飛び跳ねるように驚いた。そうだ、あたしは、蒲公英と絶交してしまったんだった、と怒りと快楽によって忘れていた大切なものを、頭の奥から、引きずり出した。
「なんだ、椿と殺り合っている間、忘れてたのかい? 君は薄情な奴だね」
「うっさい!!」
七竈は葛に揶揄されながら、飛び出すように家を出た。
「まあ、それも姉さんのせいなんだろうけど」
葛はぼそっと呟いたが、七竈には届かなかった。