ばらばらっ! Friend Angle 9/20 15:53
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「ごめんってばぁ! もうやらないからっ! 絶交なんてヤだよぉっ!」
と涙と鼻水を垂らし、顔を真っ赤にしながら、泣き叫んでいる七竈は、必死に友の姿を探した。当然見つかるわけもない。あるのは隠れて食べた、バラバラになった女性の死体と雄豚二匹分の死体だった。
「許さない」
七竈は、蒲公英の声が聞こえた方向――家の奥への方へと、振り向き、「ぽぽっ!」と叫びながら、家の奥の方へと全速力で向かったが、もちろん、誰もいない。
「ねぇ、悪かったてばぁ、もうしないから、許してよぉ」
七竈はぼたぼたと大粒の涙を流し、その涙を血に濡れた腕でこすりながら、約束を破ってしまった、裏切ってしまった事を後悔していた。
「そうしなきゃぁ、あたしたち、殺されるんだよぉ。幸せにはなれないんだよぉ」
泣きながら、何でこんな事をやってしまったかを、曖昧に述べていく。それを聞いたとしても、その友人は信じてはくれないだろう。
七竈は蒲公英の声が聞こえた方にあった、周りには花瓶やテレビ、受話器などが置いてある居間にたどりつき、その真ん中で、うずくまるようにして、泣いていた。
もうしないから、もうしないから、と連呼していて、誰もいないのに許して貰おうと、駄々こねているよう泣きわめいた。
すると七竈は急に泣きやんだ。泣きやんだと言っても、声に出して泣くことを止めただけで、まだ涙をこぼれて続けている。
「ホント、なんで、こんな時に限って」
そう誰もいない部屋に向かって独り言をいった。
「そういう所を狙うのが、セオリーだろ?」
居間の七竈が入ってきた所から、ロングコート着て、眼帯をした雄豚が入ってきた。七竈は涙で滲む視界の中で、ボヤケた輪郭の雄豚に向かってを睨む。
「あんた、その能力といい、何者なの? 魔女? それともただの能力者?」
そう雄豚に七竈が尋ねると、雄豚は笑った。
「そうだな、あえていうなら、魔法使い、か? ……違うな。おまえを殺しに来たんだから、死神でもいいか」
「どっちでもいいよ。どうせ、あたしに勝てっこないだから」とぶすっと機嫌が悪そうに七竈はいった。この雄豚の勝ち気な態度と、蒲公英と一方敵に絶交してしまったことで、相当機嫌が悪かった。
「ウザいから、ぐちゃぐちゃのバラバラになって死ね」
七竈は、その雄豚との間を一瞬で詰め、その首をめがけ、手刀をくりだす。だが、雄豚は手首を掴み押さえた。そして、七竈の右手首を切り落とした。
「っ!?」
切断面からホースから水が吹き出るように、ボタボタと血が吹き出した。左手で止血をしながら、すぐに自分の右手を持った雄豚から距離を置いた。
「あんたが、首切り飛蝗――黒宮椿かっ!!」
「だから、その名で呼ばないでくれ」訂正しながら、黒宮は持っていた手首を床に捨てた。もうそれは、手とは呼べないほど、細切れで原型を止めていなかったが。
「ふんっ。ただの切断するだけの能力じゃん。それくらいだった、あたしの方が強い」
七竈は手首を切り取られた右腕を前に突き出して、力を込めた。
すると、断面からニョキニョキと肉と骨、血管が生えてきた。どんどんそれらは、手の形にそって盛り上がり、すぐに新しい皮膚が生え、手ができた。七竈は出来立ての手をグーパー、グーパー、してちゃんと動くか確かめていた。
「この模倣犯、化け物め」と不気味なその光景を目にした黒宮が呟く。
「あんただって、十分化け物じゃん。首切り飛蝗」じゃあ仕切直しね。といい七竈は再び仕掛けた。今度は、近くに置いてあった花瓶を黒宮の顔に向かって投げた。黒宮は投げられた花瓶を体を横にずらして避けた。七竈はその一瞬で黒宮に近づく。
「何度やっても同じ事だ」
黒宮が右手が七竈の頭に向け、振り下ろされる。
「違うよ」
七竈はその振り下ろされた腕を両手で掴かみ、素早く、骨をへし折って捻った。
「ぐっ!?」
黒宮が慌てて、七竈の左わき腹に蹴りを入れ、触れた場所を斬り伏せた。わき腹からからどばどばと血が吹き出て、床を赤く濡らす。それでも七竈は笑っていた。
「ははははは! やっぱり、あんたも人間じゃん! その能力は、自分に触れた、触った相手を思い通り、斬り裂けるんだろうけど、服の上から触られたんじゃあ、斬り分けるのが難しいだろうね! だから、ワンテンポ遅れる! その間に攻撃すりゃあいい!」
喚くように七竈は、黒宮の折れた腕を舐め回すように見つめた。黒宮は折れた腕を押さえて、熱を帯びた痛みにより、顔を歪め、油汗が吹き出ていた。
「それに感覚がないんじゃあ、かじられても、能力が使えないよねぇ?」
そう、黒宮には、折れた腕の先、右手の感覚がもう無かった。ひねりを加えられ、折れた骨が神経を切ったのだろう。七竈はニタニタと笑いながら、黒宮の感覚のない右手めがけ、噛みつこうと急接近する。
「くそっ!!」
黒宮は、まだ動く左腕を七竈の体めがけ振るった。触れて切り刻もうとしたが、七竈は体を屈めてその左腕を避けた。空を切った左腕は、そのまま下に下ろし、七竈の背中に当たり、上半身と下半身を真っ二つに斬り分けた。
「あぐっ」
だが、七竈の口が感覚のない右手に到達していた。
グチュッ。
七竈の口の中に、触れたものを斬り裂く能力を持った黒宮の肉が入った。
上半身と下半身を斬り分けられた七竈は、その場にグチャッと潰れるように倒れ、大量の血と、溢れた内蔵をぶちまけた。
黒宮が息も絶え絶えにその場に座り込んだ。そして、かじり盗られた右手の断面をおそるおそる見る。しっかりと七竈の歯形通り切り取られ、おびただしい量の血が出ていた。幸い、感覚が死んでいたのでかじり盗られたときの痛みはなかったが、折られた捻られた方の痛みが強い。
「止血しないと」
黒宮は立ち上がって止血用に布か紐を探そうとした。
「誰が死んだって?」掠れた声が聞こえた。
「っ!?」
七竈の手が、黒宮の右足を掴んだ。この時、黒宮は迂闊だった。葛から聞かされた事から、この相手がこのくらいで死ぬと思いこんでいたのだった。そして、この相手が魔女や能力者の肉を食って、能力を自分のものとして使う、模倣犯だという事を。そして、自分の肉を今さっき食べたという事を。
すっかり、見誤っていた。
七竈は掠れた声でぺらぺらとしゃべる
「ほんと、半分にするって、あたし、プラナリアじゃねえんだぞ? まあいいよ。あたし、魔女だもん。このくらいじゃ死なないもん。このくらいの傷だったら、あんた喰えば、すぐに治るしね。それに――」
黒宮は驚きを隠せず、動けずにいた。それが敗因だった。
相手から触れているのだから、さっさとこの模倣犯を切り刻めばよかったのに、それすら頭になかったのだった。
「すごい強い能力、貰ったし。ね?」
ブシュッ。
黒宮の体から、切り刻まれたように血が吹き出た。