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まじょがりっ!  作者: ハクアキ
第二章 Mywonderworld Breaker
88/121

ばらばらっ! Friend Angle 9/20 15:50

誤字脱字等有りましたら指摘お願いします。

「絶交。もう、ななは、あんたなんか、友達でも何でもない」

 蒲公英ははっきりとそう言った。七竈の私欲むき出しの暴挙に対して心の底から傷つき、心から信じて、許しあって、二人で残酷な世界から身を守るために生きてきたというのに、一方的に騙され、裏切られたと感じたからだった。

 二人、魔女になった一年前はこんなふうに、嘘なんてついていなかった。二人で女の子をいたぶる奴らを、喰い殺してやろうって誓いあったのに、簡単に、自分のために、自分が心をぐちゃぐちゃにされて、這い蹲って、吐いて、泣いて、そんなことまでされたのに、それと同等のことをやろうとしている七竈が、あのときのゴミと一緒に見えて仕方がなかった。

 少し前、蒲公英は二手に分かれた、あのときに、こっそりと七竈の後に付いていったのだった。別に七竈をがちゃんと女の子を襲わないか約束を守っているかどうかを監視するためではない。ただ一緒にいたかっただけだった。一年前に女の子をいたぶる奴らを殺そうと、言ったのは蒲公英だったが、ここまで続けられたのは七竈という、心から信頼した友達がいたからだ。一人だったなら、その誓いも早々に崩れさってしまうものだっただろう。元々蒲公英は一人でいるのが、嫌いだったこともあってか、こうやって気づかれないように能力を使って、こっそり、七竈の後を着いていったのだ。食べ物くらい、七竈の用事が終わってからでも大丈夫と思いながら。

 でも、現実はそうではなかった。

 七竈はその能力者の家に着くとすぐに、インターフォンも何も押さずに家の中に入った。蒲公英はその大胆な行動に少し驚いた。そして自分も入ろうか悩んでいる内に、女性と雄豚の悲鳴が聞こえた。蒲公英は気を使って、能力の範囲を広げ、周りの住民に音が聞こえないようにして、きっと豚を殺したんだと思い、確認とそのおこぼれをもらいに家の中に入った。

 そこには、両腕、両足がぐにゃりと曲がった二匹の雄豚と、その二匹の目線の先にいた、生きたまま七竈に食べられている女性の姿があった。

 蒲公英はその光景に愕然とした。雄豚たちのやめろという怒声と女性激痛に絶えきれずに叫ぶ声が蒲公英の耳を聾した。女の子、女性を殺さないと誓いあった七竈は無邪気に笑っていた。嬉しそうに笑って女性を食べていた。

 蒲公英はこれは自分に能力をかけてしまったんだ。これは何かの間違いだ。きっとあれは七竈じゃなくて、違う、似ている人なんだと、自問自答し始めた。自分が間違っている。これは現実じゃないと思いたかったのだ。

 でも、それは現実だった。

 残った二匹の雄豚の解体を終わらせてしばらくすると、お目当ての能力者――女の子が帰ってきた。そして、何の躊躇いもなく、殺して食べようとした。

 昨日、女の子は食べない、って軽々しく了承したように見えたが、それは単に七竈のしゃべり口調であって、本当は何よりも守って、実行してくれると信じていたのに、全部嘘だった。虚言だった。それに二手に分かれようとした理由も気づいてしまった。七竈は最初から、この能力者は女の子だと分かっていたのだ。だから、蒲公英に邪魔をされないように、殺して食べようとしていたのだ。雄豚だったと偽るために。

 それらは、蒲公英の七竈に対する信頼をばっさりと斬り伏せたのだった。

 もう、蒲公英は七竈の言うことを信じられない。

「……ぽぽ、これは、違うよ」

 七竈は何か言い訳始めた。魔女草ストライガの魔女に操られてやったんだとか言うのだろう。例の首切り飛蝗に脅されてとかでも言うのだろう。

 結局、全部、嘘しか言わないのだろう。

「話したくない」

 蒲公英は、七竈の前を通り過ぎ、さっきまで、七竈に食べられそうになっていた。能力者の女の子に近づいていく。女の子は怯えているのと、

「また能力使ったのっ!? ねえっ!? ぽぽっ!? どこにいるのっ!?」

 と目の前にいるのに喚いている七竈の姿をみて、困惑もしていた。

「大丈夫。とりあえず、外にでよ」

 そう女の子にいい、震える右手を掴んで、ドアを開けて、一緒に外にでた。七竈はまだ、見えない蒲公英を探し喚く。

「ごめんってばぁ! もうやらないからっ! 絶交なんてヤだよぉっ!」

 と涙と鼻水を垂らし、顔を真っ赤にしながら、泣き叫んでいる七竈に蒲公英は一言いった。

「許さない」

 七竈は、蒲公英の聞こえた方向――家の奥への方へと、ぽぽっ!? と叫びながら、走っていった。

 ドアを閉めて、見渡すと、外はまだ、雨が降っていた。

「……どうして、わたしを助けてくれるんですか」

 震えるように怯えている女の子は蒲公英に訊いた。蒲公英はあなたの名前はと訊き、その女の子はこならと答えた。名前を訊き終え、蒲公英がいった。

「こならちゃんが、女の子だからだよ」

「……それだけですか?」

「だけじゃないよ。地球上には女の子が約三十億はいるんだよ? それだけで、十分な理由じゃん。ここにいても危ないだけだから、逃げよ?」

 蒲公英はこならの手を引っ張って、雨の中を走っていく。

 遠くへ、もっと遠くへ。

 何から逃げているのだかわからない。

 きっと、自分が見たものが信じられず、ただ本当の現実から逃げているのだと、冷たい雨に当たりながら、涙を流しながら思った。

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